ディアンケヒト・ファミリアの末っ子   作:マジックテープ財布

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ゴールデンウィーク中になんか四方山話的なの投稿できたらいいな。


109:蘇生

 デメテル。神の恩恵(ファルナ)の恩恵を授かっていない非戦闘員を含めれば、かの【ガネーシャ・ファミリア】をもしのぐ団員数を誇る超が付くほど大規模な派閥の主神である。

 彼女が司るのは『豊穣』。他にもハトホルやダミアーやイシュタル、側面で言えばフレイヤも豊穣を司る豊穣神ではあるが、デメテルは文字通り格が違う。

 

 まず、【デメテル・ファミリア】は商業系の中でも生産系ファミリアに位置づけられている。穀物や野菜、果物や畜産などで得た糧を主にオラリオに出荷することで、日夜増減するオラリオに住む人々の食糧需要を一手に引き受けていた。

 仮に……万に一つもあり得ないが、【デメテル・ファミリア】がオラリオから消失。もしくは主神であるデメテル共々オラリオから居なくなった場合、オラリオには永遠に開けない冬が到来するとまで言われているほどに大事な神であり、派閥である。

 

 さらに特筆すべきはその善良性。ヘスティアやアストレア、アルテミスなどといった善神と呼ばれる中でも彼女はさらに『神格者』でも通っている。

 

 これはデメテルと()()だけにしか知り得ない情報だが、どこかの酒場のウェイトレスは賞金稼ぎをしていた頃からのステイタス更新の場として、彼女の派閥を借りている。今はそんな物騒な稼業から足を洗ったが、拳を血で汚していたウェイトレスに対してデメテルは『彼女の仕事』について何も聞かずにひたすら言葉を交わし、次の生き方を決めたウェイトレスを祝福しようと職場に大量の食材を手土産にやってくるほどデメテルは人──というか、神が出来ていた。

 その証拠に壁外には【デメテル・ファミリア】が運営している大規模な農場があり、デメテルもそこで働いている。神の恩恵(ファルナ)を与えられた眷属や与えられていない一般農家の人に混ざる形で泥だらけになりつつ農作業に従事している彼女の姿は、神々しいというよりも微笑ましいと主に男神が述べているほどである。

 

「嘘よ……」

 

 フレイヤの口からか細い否定の声が漏れる。

 彼女とデメテルは神友同士である。それこそ殆どの女神から受けが悪いフレイヤだが、彼女とは少し前まで神聖浴場に誘われて湯あみを共にするぐらいの仲良しであった。

 そんなデメテルがエニュオ。ロキたちの話を聞く限りではイヴィルスと同じくオラリオを崩壊をもくろむ邪神のようだが、フレイヤはまさかデメテルに疑惑が掛けられるなど思っても見なかった彼女はロキに向かって声を上げた。

 

「待ちなさい、ロキ」

 

「獣人の子は後衛に回したほうが良ぇ。神酒(ソーマ)嗅いだらマズい……ってどないした、フレイヤ」

 

「あなたたち、本当にデメテルが犯人と思っているの?」

 

 下界の子供は神に嘘は付けないが、何事にも『抜け道』があるのが世の常だ。

 神の聞いてきた事に何も答えない。魅了で本人の意思を介在させないといった様々な抜け道があるものの、その中に『子供が勘違いした』というケースが存在する。見間違いや聞き間違いなどを本当のことのように思ってしまえば、それを嘘と断じることは出来ない。

 アクスの情報もそれに準じたものではないか──というのがフレイヤの意見であった。

 

 だが、そんな彼女の意見に『それは違うよ』とさらなる情報をアクスは叩きつけて来る。

 

「ディオニュソス様が収穫に来たのは僕も見てましたが、デメテル様が元気がないと気付いたのは実は僕じゃないんです」

 

「誰や、それ。【デメテル・ファミリア】の子か?」

 

「はい。ですが、正確には農園で働く眷属の方ではありません」

 

 既に冒険者──ではないが、一線から退いた身と考えたアクスは名前を濁す。それでも、断片的な情報から『誰か』と気付いたフレイヤは、おそるおそる問いかける。

 

「それは、ルノア・ファウストかしら? 豊穣の女主人の」

 

「はい、ルノアさんが気付いて僕に教えてくれたんです。眷属の方々が少ないかもしれないって疑問に、"少ない"って断言してくれたのもルノアさんです。ところで、ルノアさんのことをご存知なので?」

 

「あそこの店主はミアよ? 眷属の店のことはある程度知ってるのは当たり前でしょ?」

 

 嘘をつくコツは真実の中にさりげなく混ぜ込むことだ。【フレイヤ・ファミリア】の元団長(ミア・グランド)が営んでいるという確かな情報を隠れ蓑に()()()()()()()()()()()()()()()を捻じ曲げることで、ミアの人柄を知っている全員が『あー、あの人経由』か納得する。

 一気に信ぴょう性が増したことで神々や冒険者たちがデメテルへの懐疑心を募らせる一方、フレイヤは彼/彼女たちに聞こえないような声量で『あの子がね』と呟くと祈祷の間を出て行こうとする。

 

「あれ、フレイヤ様。お帰りかい?」

 

「えぇ、もう十分楽しめたもの。それに、これ以上ここに居たら友達の悪口を沢山言われそうだしね」

 

 若干どころかキツめの言い方に、眉を吊り上げたロキの視線がフレイヤの視線と交差する。彼女とて好きでデメテルを犯人扱いしているわけでもないし、むしろその逆で『あり得ないからこそガサ入れではっきりさせよう』というスタンスでこれからの行動を決めていた。

 しかしながら、フレイヤも『友達を悪く言われるのは気に食わない』といった思いから席を外そうとしている。

 どちらも正しければ、どちらも歩み寄ろうとしない。そんな同じ方向を向くことがないような視線が数秒ほど交わったかと思えば、フレイヤが続けざまにはなった言葉でより剣呑な空気を生み出してしまう。

 

「あ、あとなんだけど。クノッソスの第2侵攻のことなんだけど、私たちは貴女(ロキ)たちの指示じゃ絶対動かないわよ?」

 

「はぁ!? 自分、何言うとるか分かっとんのか!」

 

「分かってるわよ? だからこそ、"私の手で"箱庭にたかってる害虫を駆除するのよ」

 

 売り言葉に買い言葉。怒髪天を突いたように怒り狂うロキに、フレイヤは鼻を鳴らしながら『独断専行』を宣言する。都市最強(オッタル)の他に上級冒険者が多く在籍している【フレイヤ・ファミリア】ならば、多大な犠牲を出しつつも精霊の分身(デミ・スピリット)を破壊し尽くすのは可能であろう。

 それでもかなりの出血は強いるだろうが、『女神(フレイヤ)のため』を是とする派閥の前ではかすり傷程度にしかならない。

 

 ただ、これまでの間に犠牲を強いてきたロキやヘルメス。【ディオニュソス・ファミリア】のように犠牲になった面々。そして……、それらの犠牲を『必要のない犠牲』と言ってのけた上で蘇生しようとする聖者(アクス)に報いるためにも。

 ロキたちは──オラリオに住む者たちは──一丸となって戦わなければならない。

 

 しかし、それを今のフレイヤに伝えるのは至難の業。されど、このままだと作戦が根底から崩されかねない。

 どうしたら良いかとロキが頭をフル回転させていると、フレイヤはゴブニュの持って来た鎧の試着をしていたアクスからフィンの方へと視線を写しながら『ただ……』と後付けをし始めた。

 

「ダンスを踊るに相応しい相手なら、手を取るのは吝かではないわ。あ、あと神とダンスなんて天界で嫌って程やってるから。そこら辺をわきまえてくれる人選でよろしくね」

 

「ふざけんなや、自分がいつも言っとる"伴侶(オーズ)"ぐらいやないか! そんなの!」

 

 無茶ぶりともいえる条件を提示するフレイヤにぶちギレるロキ。ただ、()()()()()()()に気づいたフィンだけは冷静な思考で彼女に話しかけた。

 

「神フレイヤ、ドレスコードは必要かい?」

 

「そうね、私好みの"誘い文句"と"資質"。それがドレスコードよ。【勇者】(ブレイバー)、あなたに用意出来て?」

 

「あぁ、必ず貴女の手を取ってもらえるような言葉を携えて参じてみせるよ」

 

 挑発的な物言いをしたフレイヤだったが、フィンの言葉に一瞬だけ目を丸くする。彼の利己的で打算的な気質には無かった『理想』。その片鱗ともいえる返しをされたことに、笑みを深くした彼女は『期待しているわ』と言いながら階段を上っていく。

 

 そんな彼女の後姿を睨みつけながら自身の眷属に粉をかけたことに対して怒り心頭だったロキは、深い息とともに怒りの感情を外に逃がす。

 

「はぁー……、こんなもんかぁ。ごっつい疲れたわ」

 

「そうじゃな。ただ、蘇生に関してお主らの裁量に任せるが、くれぐれも……」

 

「分かっとる。まずは1番レベルが高いハシャーナから。それで良ぇな」

 

 なんといってもまずは検証である。正直、寿命を削る検証など進んでやりたいと思えないのだが、これをしなければアクスはいつもの悪い癖によっていつの間にか消滅しかねない。

 手綱を握るためにも必要な措置だと今一度強く念押ししてくるディアンケヒトに、ロキも強く頷いた。

 

 すると、ようやくとばかりにゴブニュが『出来たぞ』と声をかけてくる。彼の方を見やると、そこには『騎士』が立っていた。

 

 その鎧は防具というよりも、アクス(アミッド)の持つ『崇高な固い意志』を体現したようなものだった。

 胸当ては滑らかな曲線で形作られ、光を受けるたびに淡く反射する。純白というよりは、わずかに温度を感じさせる象牙色。そこに走る細い金の装飾線が、鎧全体に気品と格式を与えている。

 しかし、肩当てはパルゥムの身体に対して大ぶりだ。衝撃を受け止めるための厚みを持ちながらも外縁に金の縁取りが施されており、防御力と装飾に拘ったことが伺える。

 腕部は白銀と黒の対比が印象的で、関節部には黒い素材──革か、あるいは柔軟性のあるドロップアイテムが使われており、硬質な装甲との境界を際立たせている。

 手甲は指先まで覆う精緻な造り。装着具合を確認していたアクスが拳を握り込んだ際、わずかに光を弾いたその一瞬に、武具としての鋭さが垣間見えた。

 胸元から腰にかけては、青を差し色とした布が覗く。

 白と金の中に落とされたその深い青は、まるで冷静さや誓いそのものを象徴しているかのようだ。動くたびにその青が視界に入り、硬質な鎧に柔らかい印象を与えている。

 

 全体として過剰な装飾はなく、どことなく地味な鎧。しかしながら要所にだけは確かな意匠が施されている。

 しかし、これで良い。この鎧は己を誇示するためではなく、『勇気』というパルゥムの根底にある在り方を外へ示すためのもの。少なくとも、ゴブニュはそう考えていた。

 

「アクス、これで最後だ」

 

「なんですか、これ」

 

 ゴブニュから渡されたのは、流線型の白い装甲に金の縁取りが施されたフェイスガードだった。

 鎧と同じ意匠で統一されており、研ぎ澄まされた刃のような静かな美しさを宿しているそれを見たアクスが首を傾げるが、ゴブニュは珍しく微笑みながらフェイスガードをアクスの顔の上半分に装着する。細く切り抜かれた視界口でよく見えるが、顔面を守る防具としては頼りない。

 

 ただ、それで良い。フェイスガード(これ)の役割は正体を隠すこと。それに重苦しい兜は無粋であり、調和を見出す。

 そしてなによりも──『ロマン』がない。

 

「思った通り……。いや、それ以上だ」

 

「ねぇ、ゴブニュ。これ、絶対手慰みじゃないわよね?」

 

「ヘファイストス、しつこいぞ。手慰みと言っているじゃろ。だからディアンケヒト、そんな顔をするな。金は取らん」

 

「なら良し! 言質は取ったぞ!」

 

 ゴブニュはジト目をするヘファイストスの質問におざなりに答えながら、ディアンケヒトに金銭を要求しないことを宣言する。

 

 なに──(秘蔵していたとっておきの勇鉄を使ったが)端材で、(睡眠時間を削ったが)手の空いた時間で、(権能有り有りの本気だが)自分の調子を確かめたかったから作った品なので、『手慰み』だ。

 ちょっと多めに使ってしまった材料については……、黙っていればバレないだろう。

 

 だが、『見たかったものが見れた』。

 かつて見たあの熱き戦い。あの場に居た勇者と──その後ろを付き従う勇士。1人減り、2人減り、それでも尚前へと突き進んだあのパルゥムたちの眩しい姿を想起させるような出で立ちにゴブニュは満足げに頷くと、今度はアスフィの方を振り返る。

 

【万能者】(ペルセウス)。この通り、鎧はこちらで用意した。変装用の魔道具(マジックアイテム)に作り変えて欲しい」

 

「感謝します。この装備に使われている物を触媒にすれば、すぐに用意できます」

 

 鎧はあくまでも鎧。身長や髪色から正体が露見しかねないため、鎧を魔道具(マジックアイテム)にすることでよりバレにくくする。

 これでアクスがダンジョン暮らしをする上で気をつけねばならない事項はほぼ解消した。

 

 後は──。

 

「武器ね。アクス、これちょっと預からせてもらえる?」

 

 ヘファイストスがそう呟くと、アクスの傍らに置かれていたブリューナクの破片を拾い上げる。折れたのは柄だけなので再利用は可能だが、彼女の職人魂が『同じような物を作る』ことを嫌がった。

 おそらく最高の鍛冶師である団長(椿・コルブランド)もそう考えるに違いない。主神(おや)の勘がそう告げたのか定かではないが、ブリューナクの穂先を丁寧に仕舞い込んだヘファイストスにアクスが頭を下げた。

 

「折っちゃってごめんなさい」

 

「良いのよ、むしろ私たちの方もごめんなさい。不確かな仕事をした分は、確かな仕事で返すから。そこだけは安心して」

 

「それじゃあ、その間の武器はこれを持っておくと良いよ」

 

 そう言ってフィンは『スピア・ローラン』をアクスに手渡す。決して間に合わせでもなければ、ポンと渡して良い物でもないのだが、武器が無い状態でダンジョンに放り出すわけにもいかないので、ヘファイストスはフィンの奇行に目を瞑った。

 

「ひとまず、蘇生は明日やな。もう時間の猶予もないわ」

 

「だよねぇ……。はぁ、今から全員に召集掛けないと」

 

 その後、『今、この瞬間にもオラリオが崩壊する可能性』を考えて蘇生は明日ということが決定する。そのためには今から様々なところに働きかけなければならないということで、オラリオに居る全【ヘルメス・ファミリア】を総動員させる必要が出てきた。

 ガサ入れに【ガネーシャ・ファミリア】の連絡。後は18階層に埋めたキークスたちの遺体の回収。やることがやることなので人数的に厳しいが、【ヘルメス・ファミリア】以外でそれをやりきれる者たちは居ないのも事実である。

 

「アスフィさん、ちょっと手伝って……」

 

「あ”ぁ?」

 

「あ、はい。ナンデモナイデス」

 

 かくなる上は『どこに置いても通用する最高の相棒(アスフィ)』に頼もうとするが、既に魔道具(マジックアイテム)作成という大仕事が入っている彼女の一喝により、ヘルメス自身も忙しなく動くことが確定した。残当である。

 

「まずは儂とロキたちから出るとしよう。連絡は眼晶(オクルス)で良いな?」

 

「あぁ、構わない」

 

 流石にそろそろ解散しなければギルド側から怪しまれるということから祈祷の間を出ていく。各派閥ごとに時間を置いて階段を上っていき、最後に残ったアクスとフェルズたちも明日に向けて隠し通路から今宵の宿であるフェルズの工房へと帰っていった。

 

***

 

 次の日。すっかり秘密の会合場所となった祈祷の間では、ウラノスの他に2柱の神。そして、それぞれの神の眷属が2人集まっていた。

 

「あれ、ディアンケヒトはどうしたんだい?」

 

「ディアンケヒトもファミリアを宥めるためと欠席連絡が来ている」

 

「あー、アミッドちゃんたちかぁ」

 

 ウラノスの報告に治療院の横を通ってギルドへとやって来たヘルメスはもっともだと頷いた。

 現在、【ディアンケヒト・ファミリア】はガッタガタである。そのため、長くホームを空けると眷属たちの士気に関わるとディアンケヒトはあらかじめ持たされていた眼晶(オクルス)でウラノスに連絡。その際に『蘇生に関してはお主たちに任せるが、く・れ・ぐ・れ・も! 報告と連絡をこちらに寄越せ!』とがなり立てていたとかなんとか。

 

「ヘルメスよ、お主こそロキはどうした?」

 

「あー、ディオニュソスのところで神酒(ソーマ)を見つけたらしい。今、厳重に梱包して持ってきてもらってる。アスフィからも魔道具(マジックアイテム)が出来たって報告が来てるから、ついでにロキと合流するように伝えてるし、ちょっと遅れるんじゃないかな」

 

「そうか、では先に始めておこう。……待たせてすまないな、ガネーシャ」

 

 毎度のことながら眼晶(オクルス)様々である。ヘルメス経由で伝えられたロキの報告に一頻り頷いたウラノスは、先ほどから待っているガネーシャに話しかけた。

 すると、ようやく声を掛けられたことにガネーシャは全身の筋肉を隆起させ、いちいち暑苦しいポージングを決めながら大声で呼びだした経緯を尋ねようとするが──。

 

「うるさいぞ、ガネーシャ」

 

「はいっ!」

 

「まったく……。神ウラノス、ガネーシャの言葉を借りるが我々をここに呼んだ理由は何だ? それも"こんな物"を持って来させるなんて」

 

 そう言ってシャクティは自らの横に鎮座した象の衣装が施された長方形の箱──棺桶を見やる。重々しい蓋からは微かに腐臭と死臭が混ざった匂いが漂ってくるが、問題は匂いではない。その中身だ。

 

 ハシャーナ・ドルリア。LV4かつ、装備さえ整っていれば単独で下層に潜れるほどの強者の亡骸がこの中に入っている。

 ウラノスの指示でガネーシャと共に冒険者墓地からハシャーナの棺を掘り返し、人に見つからないようやっとの思いで運んできた身としては、その理由はどうしても聞きたかった。

 それに、ヘルメス側も翼の意匠が施された棺が1つ。合計2つの棺が話とどう関係するのか、シャクティの頭では理解することが出来なかった。

 

 すると、ウラノスが合図を出したことでフェルズと共にユーノが部屋の隅から姿を現す。18階層で見かけたときと様変わりしていたユニコーンにシャクティが口をポカンと開けていると、その背中に乗っているアクスが目に映った。

 

「行方不明じゃ……」

 

「あぁ、"表向き"はね。そうしないといけない理由があったんだ」

 

「ヘルメス、そこから先は私からしよう」

 

 そうして説明を引き継いだウラノスは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()説明をし始める。はじめこそ、死者蘇生の実験台としてハシャーナたちが選ばれたことにガネーシャやシャクティは希望に満ちたような表情で聞いていたが、その代価としてアクスの寿命が減ってしまう事を聞いた途端に不満を噴出させる。

 

「ガネーシャ。それとシャクティちゃんも。"もうその段階は終わったんだ"」

 

「然り。アクス・フローレンスと我々は昨日契約したばかり。その場にガネーシャを呼ばなかったのはすまなかったと思っているが、それでもこの子の決心は変わらなかっただろう」

 

 しかし、それらの不満をヘルメスとウラノスは無理矢理抑え込む。

 すでにその段階は通り過ぎている。ガネーシャたちの言うことも昨日の内に何度も議論を重ねられており、さらにはアクスの悪癖や想定外の事象も考慮した上で『ハシャーナを蘇生させる』と意見を一致させていた。

 

「しかし、俺がガネーシャである以上は首を縦に振るわけにはいかないゾウ!」

 

「まぁ、そう言うと思ったよ」

 

 ただ、そんなことも民衆の主(ガネーシャ)には関係ない。仕方ないだろう、いかにともにオラリオの治安を守ってきた眷属の蘇生という棚から牡丹餅どころか黄金が出てきたような吉報であっても、その代償として支払うのはガネーシャが愛してやまない民衆の──それも子供の寿命(みらい)である。

 

 それでも、ここまではヘルメスも予想できた。予想できたが、どうやっても上手く丸め込めるビジョンが見えないためにどうしたものかと思案していると、()()()()()()()()が相変わらずの足取りでハシャーナの眠る棺の前に座り込み──。

 

 詠唱を始めてしまった。

 

「アクス! 何をやっているっ!」

 

 許可など出した覚えがない勝手な行動を見たガネーシャは、普段のエンターテイナー染みた言動ではなく本気で激怒する。その怒号は横に立っていたシャクティでさえも肩をビクリと震わせる程だったが、アクスはお構いなしに詠唱を続ける。

 

「アクス! 止め──」

 

「ガネーシャ、止めろ!」

 

「シャクティ!?」

 

「"アクスは詠唱中だ!"」

 

 自己犠牲の上に成り立つ蘇生を止めさせるためにガネーシャが手を伸ばそうとすると、それをシャクティが止める。その行動に彼は思わず叫んだものの、シャクティの言葉に冷静さを取り戻した。

 普段は民衆を楽しませようと道化を演じるガネーシャだが、神の一員である。持ち前の『全知』によってアクスの周囲には尋常ではない程の魔力が渦巻いていることと共に『これが暴走した場合』の結末が分かってしまう。

 詠唱1節謳い上げるごとにまるで高レベルの魔導士が放つ大規模な殲滅魔法のような魔力の流れ的に、()()()()()()この祈祷の間だけ。最悪、ギルド含めて一帯が吹き飛んでもおかしくはない。

 当然ながら自身も送還されるだろうが、ウラノスの送還はまずい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……なんてことになりかねないため、ガネーシャは腕を組んで静観を決め込んだ。

 

「シャクティ……俺は……俺はっ!」

 

「あぁ、民衆の主(ガネーシャ)だ。"犠牲"なんて言うまい。この子の献身は決して忘れないし、無駄にはしない」

 

 傍から見れば自己犠牲。さりとて、その行動の根幹はやや歪ながらも親切心から来ている。

 そのことを胸に刻みつけながらも成り行きを見守っていると、詠唱を終わらせたアクスの背がぼんやりと緑色に光り出す。

 

「ガネーシャ、神血(イコル)を」

 

「分かっている」

 

 ヘルメスの言葉に、ガネーシャは()()()()()()()()()()()から血を1滴垂らす。紅い雫は重力に従ってアクスの背中へと落ちていき、吸い込まれるように消えた瞬間──祈祷の間全体に巨大な魔法円(マジック・サークル)が出現した。

 温かな、されど目を焼くほどの緑の光に全員が目を瞑ったのも束の間。恐る恐る目を開けたガネーシャたちの前には『大量の光の帯』が宙に浮いていた。

 

「綺麗だ」

 

「俺の眷属たちか」

 

「あぁ、君と契約をした魂たちだ」

 

 その光景にシャクティが息を呑む横でガネーシャは確信めいたことを呟き、それにヘルメスも同調する。

 ここに居るのは天界に昇った膨大な魂の中から神血(イコル)という『フィルター』を通じて選別した【ガネーシャ・ファミリア】所属の魂たち。ヘルメスたちの言葉にシャクティは何かに気付いたのか目を限界まで見開くと、無数にある帯の中から『その何か』を探そうと目だけを激しく動かす。

 

「シャクティ、あれだ」

 

「あっ……あぁ……」

 

 再び眷属の魂を知覚出来るようになったガネーシャが、その気配を頼りに1本の帯を指差す。他の帯と同じく白くなり始めているが、()()()()()()()()()()()にシャクティは嗚咽交じりの声と共に膝から崩れ落ちた。

 

 姿形は変わろうとも、『縁』だけで理解した。あれは、実の妹(アーディ)なのだと。

 しかし、それを理解した途端にシャクティは感情と理性のせめぎあいに巻き込まれる。『アーディを蘇生して欲しい』という感情と『アクスの寿命を犠牲にしてアーディが喜ぶのか』という理性。いずれ望むであろう黒竜への戦力的に考えれば蘇生は正しい判断だし、【ガネーシャ・ファミリア】を背負う団長しては間違っている判断ともいえる。

 

 そんな明らかに迷っている素振りを見せる彼女だったが、唐突に全身が温かくなる。前を向くと、視界一杯に『青』が広がっていた。

 目を凝らせばアクスが片方の腕を伸ばし、シャクティに向かって指をさしている。何かをしているのは明白だったが、彼女は気にすることなく目の前の『青』ごと己を抱きしめた。

 

「アー……ディ……」

 

 姿は見えずとも、自分の傍にアーディが存在する。それだけでシャクティにとっては夢のような時間だった。

 ただ、これはあくまで()()()。数分もすることなくアーディの気配が霧散し、代わりにアクスの目の前にいた全裸の男が騒々しい声を上げた。

 

「ちょっ、どこだここぉ! なぜに全裸!?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ハシャーナがすっかり元気な様子で立ち上がる。

 ハシャーナのガネーシャがパオンしている状態だが、そこは流石に冒険者。シャクティは適当な布を放り投げることでハシャーナは全裸から『半裸の変態』へジョブチェンジを果たす。

 しかし、ガネーシャの胸中は決して穏やかではなかった。もはや再び見ることが叶わないと思っていた眷属の元気そうな姿に、ガネーシャはマスクの端々から大量の水分を垂れ流しながら彼を強く抱擁しようとする。

 

「うぉぉぉん、ハシャーナァ! 良かったゾゥ!」

 

「ちょっ、暑苦しいぞガネーシャ! 俺にそんな趣味はねぇ! あれか? 女を抱こうとした俺に対する当てつけか!?」

 

「ちょうど良いじゃないか、"腹上死で死んだハシャーナ"」

 

「え、なんです? その不名誉な徒名」

 

 泣き叫ぶガネーシャを何とか抑え込んだが、シャクティが不名誉極まる徒名をつけてきたことに首を傾げるハシャーナ。まさに混沌といった様子にヘルメスは『まずは説明かな』と状況説明に入ろうとするものの、そこにロキが『待った~?』という声を引き攣れながら祈祷の間に入ってきた。

 目の前に飛び込んできたガチムチ野郎2人のレスリング……もとい、ハシャーナに抱き着くガネーシャを見た彼女は『うわぁ』とドン引くが、それ以上のリアクションは出てこない。いつもなら即座に馬鹿笑いに移行するであろう彼女の反応に不信がったヘルメスが理由を問うと、再び祈祷の間に入って来る存在が現れた。

 

 フレイヤだ。

 

「フレイヤ様!?」

 

「あら、一足遅かったかしら。でも、役者は揃っているようでなによりだわ。さぁ、こっちよ」

 

 後ろを振り返ったフレイヤがそう促すと、ローブを羽織った人物が階段から降りてくる。フードを目深にかぶっているせいで顔は見えないが、胸部の自己主張が激しいことから女神の類であるとヘルメスは察した。

 

 否、()()()()()

 

「いやいやいや、待ってくれ。フレイヤ様、まさか"彼女"なのかい!?」

 

 持ち前の女好きによって培われたセンサーが警鐘を鳴らす。ヘスティア(ロリ巨乳)然り、アストレア(正義巨乳)然り、胸の大きな神はオラリオに多数存在するが、ここまでたわわに実った果実の持ち主は1柱しか居ない。

 

 そして、その1柱はフレイヤと友神同士。ここまで言えばわかるだろう。

 

「ロキやヘルメスたちがとやかく言うから……連れてきちゃった★」

 

 禁断の技(テヘペロ)と共にフレイヤがフードを取り払うと同時に、陽を浴びて実った麦穂のようなやわらかい黄金色の髪が舞う。推測が確証に変わったことでヘルメスやウラノスといった昨日居た神々はあんぐりと口を開けて驚きを露わにする。

 

 フレイヤが連れてきた女神。それはエニュオ候補に挙がっていた『デメテル本人』であった。




ファミリアクロニクル episodeヘイズの表紙を見て思ったこと
建前:整合性取れるところは取って、取れないところはオリジナル展開にしとくか。
本音:あんな小悪魔系美女がアクスにご執心とか、今からでも処すべきでは?

挿絵を見て考えた1幕
聖女の場合
 「清楚な枕…」
黄金の場合
 「邪悪なまく”っ!」

ルノア
 アクスと収穫に行った間柄。このあと、『町娘』に色々質問された。


 ナイツオブフィアナの初代と2代目フィアナの鎧を合いの子にしたような感じ
 勇鉄をふんだんに使用 100%OFF
 中層のドロップアイテム 100%OFF
 下層のドロップアイテムをちょっぴり 100%OFF
 鍛冶神の割とガチめな鍛造 100%OFF
 鍛冶神のロマン プライスレス

魔道具(マジックアイテム)
 あくまでも別人の皮をかぶせるような感じなので、性別の入れ替えも可能。ぶっちゃけ性別替えた方が手っ取り早く誤魔化せるんじゃね?と。
 魔法? ……ナンノコトカナ。
 どのような感じにするかは…未定
 ①フィアナそっくり
  フィンが猛る。訓練に誘って熱が入る。もしもし、ガネーシャ・ファミリア?
 ②フィン(ディム)そっくり
  これもフィンが猛る。伝承で見たのか、ファンボーイ的な意味で猛る。
 どちらにしてもフィン特攻。アクスはイメクラ嬢ちゃうぞ!
 
蘇生プロセス
 ①詠唱します。
  この時、邪魔しないでください。辺り一帯が吹き飛びます。
  ※ただ、オラリオが攻められて危なくなった際は防衛に組み込むと良いでしょう。
 ②死んだ眷属の現在の主神が持つ神血(イコル)を垂らします。
  ベートの場合、ヴィーザルではなくロキしか反応しない。
 ③神血(イコル)を検索条件に過去に天へ昇った魂を光の帯として降ろします。
  この際、ちょっと操作…というか、お願いして移動させることが可能。
  ※あくまで移動させるのみなので、蘇生できるかは別問題。
 ④アクスの目の前に魂を入れる器を構築。
  死体がある場合は魔力に還元し、足りなければアクスの魔力(や寿命)で補填。
  ※蘇生が不可能な場合、ここで強制終了。余談だが、しっかり寿命は削られる。
 ⑤魂を器に移して完了。
  ね、簡単でしょ?

アクス、魔法初めてなのによく操作方法分かったね
 そりゃもう、自分の魔法なんでフィーリングっすよ。

シャクティ
 脳焼きノルマ達成。もうアクスに頭上がらんのでは?

ガネーシャ
 普段はお茶らけてるが、やる時はやる神。絶賛半裸でハシャーナと熱い攻防中。

デメテル
 なんでこの段階で連行されてるのか?
 そらもう、フレイヤ様だから。
 この段階でエニュオがのた打ち回ることが確定している。

フレイヤ
 なんでデメテルと連れて来れたのかは次回をお楽しみに。
 ヒント:ダンメモイベント『シークレット・ギャンブリング』
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