ディアンケヒト・ファミリアの末っ子   作:マジックテープ財布

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アンケートにご協力ありがとうございます。
とりあえず、週1更新は頑張りたいと思います。出来なかったらごめんちゃいで。

アミッドとのイチャイチャについては…。最近、どこまでがイチャイチャなのかが行方不明です。
アポロン・ファミリアの舞踏会に参加しなかった裏で治療院で踊るのは…イチャイチャになるんだろうか。アクス、お前シークレットブーツはけ。


117:会合

 魔法を解除した後、アクスは疲労困憊といった様子で顔を両手で覆う。今の彼はシャツとパンツだけというラフどころか完全無防備な状態で()()の入った大きな平たい器の中に入っていた。

 これは数年前の猛暑日にディアンケヒトを含めた男性団員が行い、そのだらしなさに見かねた女性団員の雷が落ちた禁忌の納涼術である。

 ただ、ここには注意するような【ディアンケヒト・ファミリア】の団員は居ない。また、これはアクス本人にしか分からなかったが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 よって、残り少ない氷の魔剣『フォボス』で氷柱を生み出し、現在進行形でウィーネやアルルたちに氷を地道に削っては器の中に入れてもらっているわけだ。

 

「あ”~」

 

「負担を負わせてしまってすまない」

 

英勇詩篇(ミレシアン)。いえ、逆に気付けて良かったです」

 

 すまなさそうに声をかけてくるフェルズに、アクスは再び幻影を生み出しながら答える。

 

 アクスが新たに発現した英勇詩篇(ミレシアン)は、アミッドと同等の治療師(ヒーラー)になりつつある彼が数人に増えるという素晴らしい魔法である。

 ただ、完全無欠な冒険者は居ないように()()()()()()()()()()()()()()()()。この魔法も詠唱が長く、筆談でしか遠く離れた術者と意思疎通が図れないといったデメリットがあるが、どちらも事前準備をしておけばそこまで致命的(クリティカル)というわけではない。

 

 ただ──。

 

 先ほど発覚した『複数の幻影を一気に操作する』。()()()()()()()()()()()()()()()()

 幻影の操作はアクスの簡単な指示を最優先とした自動。言い方を変えれば『半自動(セミ・オート)』というべきだろうか。1人や2人ならアクスの処理能力でも十分に対処は出来るが、それが4人や5人ともなればアクス本人の動きが止めることでやっと制御が出来、9人となった瞬間に()()()()()()()()

 

 『Aを操縦したかと思えば、Bを操縦。Cは一旦放置し、今度はDの面倒を見る』。瞬間、瞬間でそんな判断を下さなければならないと言えば、その苦労は分かるだろうか。なににせよ、言葉にすれば簡単だが……というやつだ。

 指示や索敵だけでも限界近いのに、そこに『判断』が挟み込まれるたびにアクスの脳が焼き切れるほどに熱くなり、それに付随して体温もグングン上がっていき、思考が徐々に鈍っていく。

 そんな熱中症不可避な状況であれほど無茶苦茶な動きをしていたのだ。そりゃ、ミスをするというのも致し方ない。

 

 例を言えば、『あれ、今誰を動かしてたっけ?』という本末転倒な疑問で足を止めかけたことは数知れず。命を助ける時も、本来は火炎石と馬部分の幻影で彼女を水面まで引っ張っていこうと思ってたのだが、熱さでぼーっとしてしまったせいでタイミングを逃してしまった。

 結果的に命は助かったものの、むざむざ1体犠牲を出してしまったことは反省しなければならない……が、いつまでも反省出来るような状況ではないのもまた事実。気を取り直したアクスは先ほどアイシャに流した情報を込みでフェルズに情報を共有した。

 

「なるほど。ベル・クラネルは27階層の奥に行ったと」

 

「それより、すみません。バレてしまって」

 

「構わない。むしろ、高レベル冒険者には動きから君を推測できることが分かっただけでも良かった。ひとまず、改めて報告を頼む」

 

 簡単に正体がバレたことに対して焦ったものの、アイシャに渡す情報を事細かく指示を出したのはフェルズとウラノスである。

 

 実を言うと、アイシャが書類上の派閥とは異なる派閥──【ヘルメス・ファミリア】に所属していることはウラノスとフェルズには分かっていた。

 【イシュタル・ファミリア】は【フレイヤ・ファミリア】と並んで色々真っ黒い派閥であったため、イシュタルの送還をもって解散した派閥の特に名の売れたバーベラはフェルズの監視対象となっていた。その中でアイシャだけが怪しい行動を取っており、見るからに胡散臭い神(ヘルメス)と接触したことは分かっているし、その後に提出された書類に全く異なる(プルートス)ファミリアが記載されて受理されたことも知っている。

 

 ただ、冒険者やファミリアのパワーバランスやランクという物に拘っているのは有体にいうとギルド(ロイマン)だけである。そのため、強請れる時(そのとき)が来るまではウラノスとフェルズは黙っておくことに決めたらしい。

 問題はアイシャにヘルメス詰め寄られることだが、『自分の眷属の面倒ぐらいは見て欲しい』というやつだ。

 

 そんなヘルメスが後々被るであろう受難については右から左に流すとして……。アクスの方はすっかり慣れた調子で幻影を展開していた。

 

「6騎、予定通り18階層までの道程を逆走しています」

 

「【ヘスティア・ファミリア】の様子は?」

 

「下層への階段近くを見張っている幻影の視界には捉えて……。あ、豊穣の女主人の方々と椿・コルブランドさんが下層に向かっています」

 

「? 関係性は見えないな。それに【ヘスティア・ファミリア】の様子が気になる。巨蒼の滝(グレート・フォール)はどうなっているのか、見てもらっても?」

 

「もう少し待ってください。予想以上にモンスターが多いので、迂回中です」

 

 脳に負担を掛けないよう軽い指示のみで幻影を捜査していたアクスは、視界共有でフェルズが気になっている部分を見て回っていた。

 

 まずは6騎を用いて18階層までの偵察。これは18階層から降りてくる冒険者がどういった面々かを巨蒼の滝(グレート・フォール)までの到達予想をし、下層へ突入しようとしているゼノスたちと鉢合わせしないように見張るのが役目である。

 

 続いて中層から下層の階段の見張り。これは撤退してくるであろう【ヘスティア・ファミリア】や18階層まで戻っている一団の目を掻い潜って来た冒険者たちを確認する、云わば『検問』である。先ほども豊穣の女主人の店員と【単眼の巨師】《キュクロプス》椿・コルブランドが下層へと降りて行ったのでさっそく役目を果たせたわけだが、同時にこれでゼノスたちは正規のルートではなく隠れ里近くの竪穴から下層へ侵入する必要が出てきた。

 その竪穴の出口は26階層。もちろんだが、モンスターは普通に湧いているので鉢合わせ……ということも往々にしてある。

 なので、出来れば使いたくないルートだが……。

 

巨蒼の滝(グレート・フォール)に着きました……が、かなり酷いですね。中層に生えてる巨木の根っこが落ちて来てます」

 

「やはり、竪穴を使った方が良いか。【ヘスティア・ファミリア】の様子は? すれ違ってないのか?」

 

「すれ違ってませんし、ここにも居ませんね。……と、待ってください。下へ繋がる連絡路の壁に大きくて深い傷があります。おそらく、アイシャさんかと」

 

「そうなると、連合はこのままベル・クラネルを迎えに行くつもりか?」

 

「みたいですね」

 

 最後の1騎──巨蒼の滝(グレート・フォール)の状況を見にいった騎士の視界を共有したアクスの目には、木々の根っこや水晶の残骸。大小の岩石といった物によって無残な姿になった巨蒼の滝(グレート・フォール)が見えていた。

 それに、先ほどまでアイシャたちが居たところに彼女たちの姿はない。仮に撤退していたとなると、これまでの道程や階段の監視を行っていた騎士が補足できていないはずがなく、さらには下へ向かう連絡路の壁には大きな傷。現在の巨蒼の滝(グレート・フォール)の惨状を鑑みて件のジャガーノートが生みだされそうなほどに深い傷跡を見つけたアクスは、フェルズの意見に同意する。

 

 こうしてベル・クラネル。ならびに【ヘスティア・ファミリア】を含めた派閥連合を救助する判断がフェルズによって決定された……のだが。

 

「すみません、18階層まで上がっていっている幻影に【フレイヤ・ファミリア】の人たちが映りました。現在、19階層です」

 

「……なんで?」

 

 唐突に上がってきた報告に一瞬フェルズが呆けたものの、今までの記憶や調査内容やら一切合財を動員して悩んだ末。『接触してほしい』という指示をアクスに出した。

 

***

 

 一方その頃、リヴィラの町を抜けて『大樹の迷宮』を順調すぎる速度で下へ下へと潜っていく一団があった。

 

「愚図の癖に碌な情報はなかったが……。ベル・クラネルと【疾風】のおおよその位置は特定したな」

 

「下層か。ギリギリだな」

 

 随分戦闘を駈ける戦車(アレン)の背中を見失わないような速度で追走するヘディンの言葉に、アルフリッグが答える。

 

 下層の序盤である『水の迷都』は、パーティや魔剣といった様々な要因で一応だがLV2でも可能となっている。ただ、それより下──凶暴な恐竜型モンスターが大量に跋扈した『密林の峡谷』以降はLV2のみのパーティでは絶対に攻略は出来ない。

 ゆえにギルドが発表した()()()()()()()はLV3。単独踏破はどこぞの規格外な脳筋(オッタル)やヘディンたちといった強者以外は不可能に近い。

 まだ難易度的にマシな『水の迷都』か、それとも狂気的(ルナティック)な『密林の峡谷』か。そのどちらかで生存率が大きく異なってくる。アルフリッグが言った『ギリギリ』はそういう意味だった。

 

「ふ、ふふ……。愚かなる兎は如何な理由で地獄の窯の底を……」

 

「ヘグニ、喋るな。それに"あれ"のことだ、大方の予想は出来る」

 

 ヘグニの厨二的発現を一蹴したヘディンは、『あの方』のお気に入りであるベル・クラネルについて調べ上げた情報を脳裏に浮かべる。大抵は取るに足らない情報だし、あの愚兎のどこに『あの方』が惹かれたのかはらわたが煮えくり返るほど不快なのだが、なんとか感情を律する。

 

「大方、人助け……だろうな。くだらん」

 

 結局のところ、よくよく考えずとも分かりきった結論しか出てこない。そのことにヘディンは忌々し気に佩き捨てていると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを知覚した。

 

「アルフリッグ、一旦あの愚猫を止まらせろ」

 

「珍しいな、僕たちを【フレイヤ・ファミリア】と知りながら近づいて来るなんて」

 

「ふ、ふふふ。不躾な視線をふりまく不埒者には、さ……裁きを。……ってなにあれ?」

 

 ヘディンの号令で全員は一旦止まり、アルフリッグに連れられたアレンが不機嫌MAXな様子で戻ってくる。声をかける気はさらさらないが、視線を合わせていると向こうから勝手に突っかかってきそうだと察したヘグニは極力彼を視線に入れないよう振舞っていると、近づいて来る存在を見て素の口調が出てしまう。

 

 それは、まるで闇夜を凝縮したような黒い物体だった。周囲の景色が暖色だったことから馬に乗った騎兵の類だと分かったが、こんなところで馬に乗ってくるなど聞いたことがない。ましてや、【フレイヤ・ファミリア】の幹部である自分たちを前にのこのこ歩いてくるなんともアンバランスな光景にヘグニが首を傾げる。

 すると、手に持った杖ディザリアを近づいて来る黒い騎馬に向けつつ、ヘディンが口を開いた。

 

「アルフリッグ、見て来い。ウォーシャドウの強化種かもしれん」

 

「は? お前が行けよ」

 

「これだから愚兄弟は……。私以外で遠距離攻撃が出来る者が居るのか?」

 

 暗に『盾になれ』という火に油を注ぐ指示にアルフリッグは怒るものの、刻一刻と接近してくる存在を無視するのもそれはそれで違う。まったくもって業腹だが、彼は槍を担ぎながら件の騎馬に近づいていく。

 

「ん? 手を振っている……のか?」

 

 油断なく近づいていく最中、アルフリッグは上に居る小さな影が手を振っていることに気付く。もはや敵意の『て』の字も無いような振る舞いに彼も手を上げると、今まで黒かった物体が途端に色を帯び出した。

 突発的な変化にヘディンがディザリアを構えながら高速で詠唱を開始する。

 

「永争せよ、不滅のっ……雷兵!」

 

 しかし、ヘディンの短文詠唱よりも騎馬の変化の方がいささか早い。

 漆黒の騎馬から白いユニコーンに跨った騎士へ。そこはかとなく無機質な物から見るからに現実的な物へと変じるや否や、彼はすぐさま狙いを()()()()()()()

 鏃状の雷弾が遠くにある木々に命中し、踏み折られるマッチ棒のように次々と薙ぎ倒されていく。遠くで倒れた巨木が地面を打つ轟音が聞こえる中、ヘディンは無言でアルフリッグに合図を送る。『連れて来い』ということだ。

 

 いつもの傍若無人ぶりにため息をつきつつ、アルフリッグは一応同胞ということで丁寧な口調で語りかけた。

 

「同胞、悪いけどこちらに来てほしい」

 

「構いませんよ、"アルフリッグさん"」

 

「? 僕を知って……。まぁ、良い。助かる」

 

『ガリバー兄弟』ではなくアルフリッグと()()()()()()()()()こと。それに中層をソロで探索できるほどの実力を持ったパルゥムなど、かの【勇者】以外で聞いたことがない。

 さらには()と来たものだ。唯一の該当者である【狡鼠】(スライル)も死んで久しいため、ますますもって正体が分からないと肩を竦ませたアルフリッグは、ヘディンたちの元へと戻ってきた。

 

「来たか」

 

「ヘディン・セルランド様、お初にお目にかかります」

 

 畏まった挨拶をするや否や、騎士はフェイスガードを外した。

 栗色の長髪がふわりと舞うと同時に露わになった()()()がヘディンを見据える。瞳の色は違うが、【ヘスティア・ファミリア】のリリルカ・アーデに似ていることから『姉か?』と首をひねるアルフリッグを余所に、ヘディンはまるでつまらない劇を鑑賞したかの如く鼻を鳴らした。

 

「"愚パルゥム"。我々はリヴィラの街で愚図相手に貴重な時間を食った。然るべき対応を取られたくなければ、さっさとその変装を解け」

 

「何のことでしょうか?」

 

「貴様っ、このままあの豚(ヘイズ)の下に放り込んでも良いんだぞ?」

 

 白を切るようにそっぽを向く騎士の態度に、ヘディンの額に青筋が浮かぶ。このまま実力行使で本拠(ホーム)に連行して過労死(フォールクヴァング)させてやろうとしていた時、横からヘグニが割り込んできた。

 

「ヘディン、待って。"アクス"、俺たちはフレイヤ様からこの探索で見聞きしたことを口外しないよう指示を受けている。だから、情報交換だけでも協力して欲しい」

 

「は? アクス?」

 

「はぁ、明らかにおかしい魔力が流れてるだろう。その目は節穴か?」

 

「匂いが薬草臭ぇ、つまりはそういうことだ。これだから小人は」

 

 いつもの厨二セリフはどこへやら。さらっとアクスであることを看破したヘグニに対し、アルフリッグは目の前の人物が推定アクスということに目を見開く。すると、ヘディンがうんざりしたような口ぶりで人を小バカにし、アレンも鼻を鳴らしながら差別発言をしたことでプッツンしそうになるアルフリッグ。

 魔法に長けたエルフや嗅覚に優れた獣人の感覚で物事を決めつける態度にここで暴れてやろうかと思ったが、その直後に女がアクスへと化けた──いや、()()()と言った方がしっくりくるだろうか。

 

「マジでアクスか」

 

「なるほど、フレイヤ様の仰せの通り……か。それで、愚パルゥム。私たちは情報が欲しい。洗いざらい吐け、そのために来たのだろう」

 

 正に唯我独尊。あの神(フレイヤ)あってこの眷属(ヘディン)ありといった具合だろうか。

 ただ、情報交換に来たのは本当なだけにここまで言われると逆らいたくなるもの。そんなクソガキ感が爆発したのか、アルフリッグに向かって『あの人(ヘディン)居ないなら話します』と言った直後のこと。

 

 額に青筋を走らせたヘディンが無言で紫電が纏わりついた片手を掲げた。

 

「ちょっと怖すぎて何を言っているのか、わかりません」

 

「なにも言ってないからな。それよりこれから雷が落ちる。"当たりたくなければ"早く言え」

 

 早くと言いつつ、ヘディンはすぐさま魔法を詠唱する。『2秒』や『3秒』といった概念がないのか、そんあせっかちな鬼畜ホワイトエルフから放たれた雷兵の残響が19階層に轟いたとか何とか。




男は『1』と『0』。この数字さえ覚えとけば生きていけるってダンディーなおっちゃんが言ってた。

対猛暑日の納涼術
 「温いな…」
 「あぁ…」

幻影のデメリット
 空間認識能力とか、脳の処理能力とかそんなの。某機動兵器の脳波などで操作する無線兵器みたいなもんっす。
 アクスは新しい人類じゃないんすわ。

アクスの鎧
 とある神の入れ知恵で初代と2代目の姿を真似れる。だれもこんなんをアクスと思わんだろう。
 フィン? パルゥム仮面(真)ということで。

本拠(ホーム)に連行して過労死(フォールクヴァング)
 行方不明なので、何がとは言わないが()()()()()()
 ただ、絶対脱走するので、作戦が一切合切水泡に帰す。

投稿頻度と文章量について

  • 5000文字(なるべく日/水)
  • 10000文字(なるべく日)
  • どっちでもいいよ、投稿さえしてくれれば
  • 聖女とのイチャイチャをもっと寄越せ
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