ディアンケヒト・ファミリアの末っ子   作:マジックテープ財布

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アンケートにご協力ありがとうございます。
結果として『更新してくれれば文字数は気にしない』が圧倒的だったので、【その週の気分】で投降するようにします。
よって、今週は月水の5000文字形式。来週は日のみの10000文字形式となります。

『聖女とのイチャイチャをもっと寄越せ』については、土日とか使ってちょっと頑張ります。少々お待ちを。
話は変わりますが、小さい子が頑張ってお姉ちゃんとダンスを踊るとか、良くないですか?


118:連絡役

 とある鬼畜エルフにより、()()()()()()()()()()()()という貴重な体験をしたアクス。そんな彼は今、ダンジョンの天井を突き抜けそうな木の太い幹の上に居た。

 周囲には先ほど雷兵(まほう)を差し向けて来た鬼畜ホワイトエルフ(ヘディン)をはじめ、数人の【フレイヤ・ファミリア】の幹部が正座をしているアクスと()()()()()()()()()()()()を見つめている。

 

「話せ」

 

 先ほどのクソガキムーブにまだご立腹なのか、ヘディンは紫電を放出する右手を掲げながらアクスを脅す。そんな大人げないエルフの姿にアルフリッグが『うわぁ』と引く半面、ヘグニは『アクスもアクスで悪いよな』とどっちつかずな反応を示した。

 

「とりあえず、なにについてお話すれば? まずはそちらの目的をお話してくれないと分かりません」

 

 そんな中、アクスはヘディンに質問をする。

 【フレイヤ・ファミリア】を発見した際、アクスはフェルズやウラノスに『どのぐらいの情報を相手に伝えるか』を聞いていた。フレイヤがエニュオの件やクノッソスの件を知っているため、それらを加味して『【フレイヤ・ファミリア】が望む全ての情報を与える』といった決定が下されたものの、それを鵜呑みにするほどアクスはバカではない。

 間違ってもギルドにも知らせていないジャガーノートについては言えないし、相手が欲しい情報以外のことを話すと【フレイヤ・ファミリア】のことだから人海戦術で調査を行うはず。だからこそ、恭順しているように振舞いつつもヘディンたちの欲しい情報を探ろうとしているのだ。

 

 なお、これはとあるパルゥム仮面(フィン・ディムナ)の『相手に気分よく情報を喋ってもらうマル秘テクニック』だとか、なんとか。

 

「全てを話せ……と言いたいが、まずはベル・クラネルと【疾風】について話してもらおうか」

 

「それについてはリヴィラの街以上のことは知らないですよ」

 

「構わない。むしろ、話の整合性が取れる」

 

 ヘディンの許可に、アクスはフェルズたちから聞いたあらましとアイシャから教えてもらったベルの居場所について答えていく。すると、アルフリッグの『マズいな』という声が漏れた。

 彼の話を聞くに、どうやら彼らは25階層ぐらいをベルたちが探索していると思っていたらしい。下層の構造的に28階層より下に言った場合、危険度は跳ね上がるためにアルフリッグはアクスへさらなる情報を求めた。

 

「アクス、他に気になったことはあるか?」

 

「僕は見ていませんが、【疾風】のレベル的に大規模なパーティだと思うんです。ですが、出現したアンフィス・バエナに討伐隊が対応する気配はありませんでした」

 

「おい、チビ。ここは中層だぞ。フカしてんじゃねぇ」

 

 アンフィス・バエナのことを話し出した途端、今まで仏頂面だったアレンが苛立たし気に舌打ちをする。

 【フレイヤ・ファミリア】がアンフィス・バエナの復活を逃げ出して来た冒険者たちの叫びから察したのは先ほどのこと。今しがた舌打ちした戦車(アレン)ならいざ知らず、情報を下層からここまで持って来るにはいささか()()()()

 

 ただ、アレンの言葉を聞いても尚、アクスは『見ただけなんで』となにやら事情がありそうな呟きと共にヘディンを見た。

 

「なんだ?」

 

「本当に、僕がダンジョンに居ることを黙ってもらえますか?」

 

 無能が行うような二度手間をとことん嫌うヘディンだが、同時に彼は冒険者である。冒険者という職業は情報をより多く取得した方が勝ちやすく、情報収集を疎かにした末路が『死』という非常に厳しい業界だ。

 ゆえに、アクスの言い分は冒険者としては分かる。それと同時にダンジョンへ赴く前にフレイヤから聞かされた『不快に思っている存在(イヴィルス)』の情報とアクスがここに居る理由を線で繋ぐことが出来た彼は、深く息をつくと眼鏡の位置を治しながら宣言した。

 

「フレイヤ様に誓おう。これで良いか?」

 

「ありがとうございます」

 

「ただ、"私以外は"知らん。……もっとも、女神の神意に背くなぞ臣下としてあり得ないがな。むしろ、この探索で死んでほしいまである」

 

『あ”ぁ?』

 

 【フレイヤ・ファミリア】は火に油をぶちまけるのが日常なのだろうか。一気に怒りのボルテージが上がる気配と放っておくと『第2のジャガーノート』が出現しそうな気配に、アクスは慌てて下層からここまでの道程を早く駆け抜けることが出来た秘密を話す。

 

「僕、LV3になりまして。その際に今のように幻影を生み出す魔法を発現しました。幻影は簡単な指示から視界共有。スペルキーを用いた位置の入れ替えが可能です」

 

「こんな時じゃなかったら、弟たちと治療院に押しかけたんだけどなぁ」

 

「幻影……。く、クク……漆黒の幻影(ダークネスファンタズム)……。そうか、貴様もようやく次なる位階(ステージ)に……」

 

「ヘグニ、黙れ。愚パルゥム、実際にやってみろ」

 

 残念そうに呟くアルフリッグと目を輝かせるヘグニを余所に、ヘディンはアクスの魔法を検証しだす。『そんなことをしている場合ではないだろ』と言いたげにアレンの不機嫌度がみるみる上がっていくが、彼の嚙み殺さんばかりの眼差しを右から左へと受け流したヘディンはヘグニと幻影1騎を幹より先──枝葉が茂っている方向へ向かわせる。

 

「ヘグニ、その幻影だけに見えるように何かを書け」

 

「分かった」

 

 頷いたヘグニが歩いていき、それに倣うようについていく幻影。視界を共有しながらヘグニが何を書くのか待っていると、彼は『オッタル脳筋』と書いた羊皮紙を見せてきた。

 

「"オッタル脳筋"と書いてます」

 

「本当に視界共有できるんだな」

 

「本当みたいだな」

 

「それで下層の様子を見やがったか」

 

 先ほどの訝しげな雰囲気から一変。一気に視界共有の件が本当のことだと納得してもらえた事態に、アクスは【フレイヤ・ファミリア】の信用する基準が分からなくなってくる。

 それでも、『団長の扱いは【ディアンケヒト・ファミリア】(うち)と雲泥の違い』ということだけは分かった彼は、ヘディンの目配せに頷いてからスペルキーを唱える。

 

紅き契り(フォルティア)

 

「うわっ……。べ、便利だね」

 

 いきなり出現したアクスにヘグニは思わず素面で驚いたものの、ヘディンたちの方に佇む幻影の方を見てからアクスを連れて元来た道を戻る。

 そんなに時間をかけることなく2人が戻ってくると、待っていたのは()()()()()()()。すわ、天変地異の前触れかとヘグニが嫌悪感を露わにしながら警戒するが、そんな彼にカウルスなヒルドをお見舞いしたヘディンはアクスの肩を叩く。

 

「喜べ、愚パルゥム。私が貴様を上手く使ってやる。手始めに情報が足りん。全部寄越せ」

 

 天上天下唯我独尊とばかりに自分の都合の良いようなことを押し付ける鬼畜ホワイトエルフ。もはや『NO』と言える状況ではないが、せめてもと脳内のヘイズに助けを求める──が。

 

【バカ弟子。人生は諦めが肝心なのよ】

 

 通算10連勤後にヘルプとして呼ばれた際、アクスを見つけて駆け寄って来た彼女の乾いた笑い声が頭の中を反響するのみであった。

 

***

 

 ヘディンの話を聞きながら、アクスはちょくちょく隠れ里に戻ってはフェルズやウラノスにヘディンの話を共有していた。話の仲介役どころではなく、もはやオクルスの気分になって数十分。長い話の末にヘディンから許しを得たアクスは、ようやく彼から解放された。

 アクスが戻ると既に【ヘスティア・ファミリア】救出のための準備が整っているらしく、リドを中心に陣形の再確認を行っていた。

 

「あぁ、戻ってきたか」

 

「はい、開始の時期はこちらに一任するようです」

 

「すまない、厄介な役目を押し付けて。【フレイヤ・ファミリア】とさすがに面と向かって話は出来ないんだ」

 

 アクスが戻ってきたことに気付いたフェルズが申し訳無さそうに謝ってくるが、逆説的にこの場で【フレイヤ・ファミリア】と話が出来るのはアクスしか居ない。そのため、アクスはいつも通り『おとっつぁん、それは言わない約束でしょ』と言ってからヘディンたちと話したことを語り出した。

 

 アクスがヘディンに渡した情報は『ジャガーノート以外の全部』である。

 これはウラノスからの指示で、ギルドの公式な情報に載ってもいなければ、【フレイヤ・ファミリア】でも倒せる確証がない存在の情報など足枷にしかならない。それに『寿命』のことも鑑みれば、彼らが救援に来た頃には既に自壊しているはずだ。

 

「まぁ、アレンさんの暴走には驚きましたけど」

 

「君は豊穣の女主人によく出入りしていたみたいだが、気付かなかったのか?」

 

「アーニャさん、そこら辺は話しませんし。治療院にも来ませんし」

 

 ポメラニアン気質。いや、この場合は小型犬のように繊細なちみっ子だからこその気遣いなのだろう。アーニャの込み入った話を聞けなかったのは、それはそれで仕方のないことだといえる。

 ただ、彼女の名前を出した途端にアレンがあれほど食って掛かるのはアクスにとって想定外だった。もはや何度目かも分からない特大の舌打ちをかましながらも先を急ごうとする彼を()()()()で押さえつけたヘディンの額にはこれまた特大の青筋が浮かぶが、ヘディンも流石に素直に使えそうな情報を吐いてくれる効率的な下僕(アクス)に対しては一定の感謝の念があるのか、溜まりに溜まった怒りをアクスに向けることはなかった。

 

 そんなこんなで、ゼノスのことを含めた情報全てがヘディンに渡る。意外だったのはゼノスに関してはヘディンたちも知っていたことぐらいだろうか。

 『我々を見くびるな』と軽い電流を流されたが、それはそれとして……。方針の変換が必要だと告げながら思考を巡らせたヘディンの口から語られたこと。それはゼノスとの共闘だった。

 

 これはアクスには話されていないことだが、ヘディンたちは()()()()()()()()()()()からベルとリューの救出を依頼されている。もはやいつものダンジョンとは言い難いこの環境下で、救助するまでは良くとも()()()()()()()()のは非常に骨が折れる。

 それに、下層を進むにあたってこのパーティでは過剰戦力も甚だしい。よって帰還ルートの確立のため、アルフリッグには『大樹の迷宮』一帯の掃除。ヘグニにはアンフィス・バエナによって甚大な被害を負っている『水の迷都』の吹き抜け一帯の掃除が任せられることとなった。

 さらに、そんな彼らに幻影がそれぞれ1体ずつ配置される。いざという時の回復や囮としても使えるが、それをするほど彼らは弱くなければヘディンもそんな使い方を想定していない。

 

 幻影の役割。それは『連絡役』だ。

 フェルズの作った眼晶(オクルス)と言った方が想像がつきやすいだろうか。アルフリッグとヘグニ、そしてヘディンたちに幻影を同行させ、一定時間でアクスがそれぞれの幻影と場所を入れ替える。入れ替えた先で現在の進捗を報告してもらい、最終的にヘディンにゼノスの進むルートと進捗を報告。何か問題があればその都度指示を受け、リドに伝えて実行する──というのが概要である。

 

「神ウラノスも大概だと思ったが、上には上が居るんだな」

 

「アクっち、目が死んでるぞ」

 

 人を人と思っていないような所業に加え、『感謝にむせび泣くと良い』と本当に良いことをしたと思っている考えにアクスは自らの師匠が彼の暗殺を依頼してきた理由が魂で理解出来た。

 今ならヘディンに対するあれこれを肴に、ヘイズとオールナイトで語り合えるだろう。そんな確信と共に、アクスは精神力回復薬(マジック・ポーション)を飲み干してからリドに話しかける。

 

「リドさん、もう準備は終わってますか?」

 

「あぁ、既にラーニェとレットが縦穴への道を確保してるし、グロスが縦穴を抜けた先を制圧してる。おっと、そういやそこの骨から魔道具(マジックアイテム)の餞別だとよ」

 

「リド、ウラノスから頼まれたことだと言っているだろう!」

 

 マジックアイテムをアクスに渡したリドから放たれた中々にパンチの効いた皮肉。というのも、フェルズはクノッソスに蔓延る緑肉の調査を行わなければならず、【ヘスティア・ファミリア】やベルの救出に赴けないのだ。

 しかし、ゼノス側としては『ベル>【決して超えられない壁】>クノッソス』という図式が出来上がっているため、フェルズのことをお遊び7割ぐらいで『骨』と蔑んでいる。

 

 しかし、新参のヴィーネにさえも言われたのが心に響いたのか、せめてよりバレにくい変装のためにと魔道具(マジックアイテム)をアクスに渡すことで決着がついて今に至る。

 

「で、これは?」

 

「いわば、変声器だ。私の知るパルゥムはリリルカ・アーデとフィン・ディムナしか知らないから、この2人の声しか出せないが……」

 

 微妙に使えるのか使えないのか、とても判断が難しい魔道具(マジックアイテム)。それでも声から正体がバレる心配がなくなったため、とりあえずは首に巻いたアクスは改めて魔法を発動。幻影を出現させた。

 

「じゃあ、行くか」

 

「はい」

 

 ヘディンから伝えられた集合場所に9騎馬の内の3騎を向かわせたアクスは、ユーノに跨ってからリドについていく。

 こうして、ゼノスたちによる下層の侵攻が開始された。




着実に地獄行き(後々含めて)が舗装されていく…。

アクス
 最初はクソガキ感で拒否したが、ディアンケヒト・ファミリアやロキ・ファミリアで教わった報連相の要点は抑えている。

幻影
 え、俺たち自爆攻撃の次は連絡役っすか?
 元ネタに寄せると飛雷神の術のマーキングをつけた医療系忍術を修めたガチ戦闘忍者が相方についてくれるイメージ。何それ怖い。

ヘディンが若干ご機嫌な理由
 リヴィラのゴロツキたちは碌な情報も寄越さないくせに時間ばかり取らせて、アレンたちは協調性がないために自身の考える最高効率の動きが出来ずにイライラしている中を報連相ちゃんと出来る奴が連絡網として最適な魔法を引っ提げてやってくる。
 その心境をこたえよ。

魔道具(マジックアイテム)
 骨が寄越してくれた微妙に使い道がない変声期。フィンの声をした謎の騎士が下層に行った? パルゥム仮面って奴じゃないかな(ハナホジ

おしらせ
報告書みたいな書式探していたら、sakky314様が作成しているステイタス風の書式を発見したので作ってみました。【アクスステータス】参照。
1時ぐらいに発見して、気付いたら2時だった。衝動って怖いね!
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