ディアンケヒト・ファミリアの末っ子   作:マジックテープ財布

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アミッドとアクスのイチャイチャ回【【小神父】2人だけの円舞曲(ワルツ)】投稿中!
現状の治療院との温度感で風邪をひく人が多数居た模様。やったぜ。


119:連絡役2

 縦穴を使って素早く26階層まで降りて来たアクスたち。そこで定期連絡の時間となったため、彼は視界を共有してからヘディンたちの方に向かう。

 

「すみません、遅れました」

 

「いや、予定通りだ。少なくとも、貴様は"そこの愚猫"と違って命令を無視することも無ければ自由きままに動くこともないからな」

 

「チッ」

 

 ナチュラルにディスり、アレンの怒りを買うヘディン。もはやわざとやっているのではなかろうかとアクスは内心ひやひやしながらも、異端児(ゼノス)側は無事に26階層へ降りたことを伝えた。

 

 こうして、ヘディンの想定通りの布陣が完成する。

 先鋒はアーニャやクロエといった『ヘスティアが頼んだ正規の救出部隊』。アーニャや着いてきている椿のレベルから他のメンバーも実力者であることが伺えるため、こうしている間にも今は25階層の終盤ぐらいだろう。

 

 中衛は縦穴から26階層まで降りた異端児(ゼノス)たちが請け負う。これは変に先行したことでアーニャたちが()()()()()()()()、そこで戦闘になることを防ぐためである。リドたちもそれには納得しており、アクスが戻って来るまでは降りて来た小さな小部屋で待機してもらっている。

 

 そして後衛がヘディンたちだ。

 彼らの仕事は司令塔と遊撃。ヘディンが情報を精査しながらアレンを配し、アーニャたちや異端児(ゼノス)たちが対処できないような物量かつ背後や側面からの奇襲を潰すのが役割だ。

 

「下層のモンスターが凶暴化しているという情報から、おそらく湧いている数も膨大だろう。場合によっては"護送"もあり得る」

 

「そうなると進軍速度が遅くなりますね。ヘディンさんの魔法では威力が高すぎますし、アレンさんが正規ルート上の敵を間引いてくれたり?」

 

「おい、チビ。俺を勝手に使うんじゃねぇ」

 

 アクスの言葉にヘディンは目を丸くし、明らかに驚きの表情を出す。魔法の特徴やこの隠密が絶対条件の救出作戦には不向きであることを看破され、()()()()()()()()()()()()()()()()を提案してきたのだ。

 【ディアンケヒト・ファミリア】の指揮官教育が凄まじいのか、それとも【ロキ・ファミリア】の【勇者】(ブレイバー)が入れ知恵したのか、それともあの豚共(アンドフリームニル)が何かをしたのだろうか──と彼は思考する。

 

 1番最後はおそらくない。だが、結果的に目の前のパルゥムは『治癒魔法』という能を有しただけではなく『観察眼』や『論理的思考』までも有したのだ。

 改めて評価するに値する存在ということで、ヘディンは珍しく一言だけ()()を行う。

 

「悪くないが、愚猫がダンジョンからのモンスター供給を断つ方が効率的だ。帰ったら伝えておけ、"我々を無視しろ"とな」

 

「テメェら!」

 

 人の許可も取らずに話を進めていくことにアレンが叫ぶと、ヘディンは深いため息をつく。その態度にますます怒るアレンを無視して『作戦を開始する』と宣言。その瞬間にアクスは1騎の幻影には『目の前のパルゥム(アルフリッグ)についていく』という指示を出し、再び場所を入れ替えてから1騎の幻影には『エルフ(ヘディン)についていく』という指示。もう1騎の幻影には『ダークエルフ(ヘグニ)についていく』という指示を出した。

 

 これは先だってのリドとの訓練で咄嗟に出来たことなのだが、幻影は『●●について行く』や『●●の戦闘を手伝う』といった具合に主語がしっかりしていれば、命令に結構融通が利く。アンフィス・バエナ戦でもその技術でもって臨んだものの、()()()()()()()()()()ので過信は出来ないがこれで操作の負担はかなり減るはずだ。

 

「戻りました。ヘディンさんより伝令です」

 

 戻るや否や、アクスはグロスとリドにヘディンからの連絡を伝える。その内容に後ろから高レベルの冒険者が人知れず追い抜いて同族(モンスター)を間引いて帰っていくという想像をしたのか、全員の顔が僅かに強張った。

 頻りに『大丈夫なのか』と聞いて来ることはなかったものの、『冒険者怖い』という空気が蔓延する。流石にそれ以上は地上に憧憬を抱く異端児(ゼノス)たちに悪影響が出ると察したアクスは、『【フレイヤ・ファミリア】とはそういう物』とひとまず【フレイヤ・ファミリア】が特別だと説明してお茶を濁した。

 

「後ロ ニハ 十分気ヲツケルカ」

 

「そうだな、そろそろレットたちが戻って──」

 

「戻りました」

 

 ギルドや【ロキ・ファミリア】などがその言葉を聞いたら無言でうなずくのは必至であろう言葉でなんとか誤魔化したのも束の間、小部屋にレットたちが戻ってくる。どうやらその小さな身体を使って隠れながら偵察していたらしく、つい先ほど上の階層に続く連絡路付近が騒がしくなってきたので戻って来たのだとか。

 

「ソロソロ 移動 カ」

 

「あ、グロスさん。その前に幻影に索敵させます」

 

 すぐさま飛び出せるように装備の点検や最終確認をするリドやグロスに一声かけたアクスは、すぐさま魔法を詠唱する。

 ダンジョンは下へ行くほど1階層あたりの広さは広くなっていく。下層やそれより下の深層ともなればその広さはオラリオよりも広いとも言われており、そんな広大な階層かつモンスターが蔓延る所から特定の冒険者や連合を見つけるのは並大抵のことではない。

 

 そのため、まずは幻影による索敵と要救助者たちの捜索を敢行する。使用する幻影は2騎と少ないが、敵と真正面からドンパチする必要もなければ本命は異端児(こちら)側。まさしく、『見つけることができたラッキー程度』でしかない。

 それでも、やらないよりは遥かに良い。仮に()()()()()()()()()()()()ならなおさらだ。

 

「念のため、僕たちと離れたところで壁を傷つけながら探索します」

 

「分カッタ。ラーニェ、アクスニ地図ヲ」

 

「今居る場所はここだ。私たちはこちらから正規ルートを通る形でこう回る」

 

「では、こっちからこうやって回らせますね」

 

 冒険者からぶんどった地図をアクスに渡したラーニェは、現在地やヘディンたちと話している間に決めた進行ルートを彼に伝えていく。アクスもその地図に指を這わせながら幻影のルートを定義させると、治癒魔法をストックさせた2騎の幻影を小部屋から出撃させた。

 

 この作戦は救助作戦なので、手掛かりを見落とさないよう出来得る限りくまなく探す。その分だけ体力は削られるが、生半可な探索で手がかりや()()()()を見逃してしまえば本末転倒である。

 ただ、体力とは言っても彼らは異端児(ゼノス)。モンスターであるがゆえに体力も並の冒険者以上にあり、魔石といういざという時に強化出来る物資もある……が、それだけでこんな広大な階層をくまなく探索するには体力が足りない。

 よって、アクスの治癒魔法や幻影魔法が大幅に活動時間を増やすカギとなってくる。

 

「ユーノ。俺たちはお前たちに同胞(モンスター)を近づけさせないようにする……が、万が一はお前が頼りだ。頼むぞ」

 

「"任せろ"って言ってますね」

 

「本当、便利だな。それ」

 

 喋れない異端児(ゼノス)の代弁に使用できるアクスのスキルをリドは若干羨ましがったが、グロスの号令に急いで前へ出る。耳を澄ませると少し遠くから『どこニャー! リュー! 白髪頭ー!』という咆哮染みた声が反響してくるため、そろそろ待機も終わりであろう。

 

「冒険者たちに見つからないように雄叫びは無しだ! だけど、"気持ちだけ"なら聞かれねぇ! ベルっちたちを助けに行こうぜ!」

 

 リドの言葉に全員は今一度この進行の意味を強く噛み締め、強く肯定を示しながら小部屋から所々に薄く光る水晶が生える洞窟へと身を投じて行った。

 

***

 

 向かってきた同胞(モンスター)を爪で引き裂き、持っている剣や斧で叩き切り、頑強な外皮を纏った拳で叩き潰しながら下層を縦横無尽に駆け回る異端児(ゼノス)たち。彼らが進攻を開始して数十分経過するが、地図的に見れば探索率は全体の1割も満たなかった。

 

 それでも、別方向で探索をしているアクスの幻影がモンスターから逃げながら壁を傷つけてくれているおかげでモンスターの遭遇率はかなり低い。

 さらには少し前の定時報告で『後衛』も25階層にたどり着き、アクスの報告からアーニャたちが26階層に居るという確証を得たヘディンが『1階層離れていれば大丈夫だろう』と魔法による面制圧を実施。25階層のモンスターを一掃することで27階層までの吹き抜け構造である『水の迷都』の総モンスター数を減らすことに成功した。

 

 それでも、流石にダンジョン内のモンスターを狩り尽くすほどではない。むしろ、これでようやく『元のダンジョンに近づけた』ぐらいだ。

 油断は禁物と決意を込めつつ、アクスはラーニェに声をかけた。

 

「定時報告に行ってきます」

 

「分かった。進行ルートはこのまま真っすぐ。この広間を右に曲がって、一旦正規ルートを横切るてはずだ。他の冒険者が居るなら、多少足止めして欲しいと伝えてくれ」

 

「分かりました」

 

 彼女の頼みを承諾したアクスは、まずアルフリッグについて行かせた幻影と位置を交換する。無機質な気配から有機的な気配に変わったことに彼は『もう時間か』と呟きながら、一旦近くの巨木の幹に降り立った。

 

「なにか問題はありますか?」

 

「なにも問題はないな。このまま維持を……っと、助かる」

 

 進捗報告を聞きつつ、アクスは治癒魔法を詠唱する。

 見た感じでは無傷なので、体力の回復のみを選択。アルフリッグもポーションは持っているが、使わないに越したことはないのでアクスの好意を素直に受け取った。

 

「では、ヘグニさんのところへ向かいます」

 

「あぁ、気をつけてな」

 

 アルフリッグに見送られながら、アクスは次にヘグニについて回っている幻影と位置を交換。ヘグニも彼の存在に気付くと、閃燕(イグアス)の群れが居なくなったタイミングで岩場に足を付けた。

 

「定時報告です」

 

「り、退路確保(リターン・ライン)は順調。い、今は瀑布裏界(フォール・ネザーワールド)より無限湧出する飛翔魔群(スワロウ・レギオン)の迎撃にあ、当たっている。クヒヒ……、羽虫のように次々と湧き出してくるが、所詮は羽虫(インセクト)。この程度の障害ならば──」

 

「あ、体力回復かけときますねー」

 

「対応がヘイズと似てきてない!?」

 

 瀑布裏界(フォール・ネザーワールド)とかいう変な造語を作り出したところからアクスは真顔になる。

 ただ、彼は時たま【フレイヤ・ファミリア】を手伝いに行っているスーパーちみっこ。先ほどの状況的に言わんとしていることは分かるため、おざなりに治癒魔法をかけてから『お疲れ様でーす』とヘディンの幻影と位置を交換する。

 

 後ろで何か言われたが、弟子が師匠に似るのは何らおかしなことではない……はずである。

 

「相変わらず、時間通りだな」

 

「すみません、5分前ではなくて」

 

「問題ない、うちにはそれすら守れん奴が居るからな」

 

 【ディアンケヒト・ファミリア】では5分前行動が徹底されているのだが、どうやら【フレイヤ・ファミリア】は違うらしい。横に居るアレンが盛大な舌打ちをかますが、もはやそれがデフォルトだと思ったアクスは報告を始めた。

 

「アルフリッグさんはこのまま退路の維持に努めるとのこと。ヘグニさんは閃燕(イグアス)の群れを順調に撃破していたので問題ないかと」

 

「ヘグニがそれを報告したのか?」

 

「いいえ? ヘグニさんの状況を客観的に見て報告しただけです。ヘグニさんの言葉は分かり辛いので」

 

「あいつ……」

 

 報連相の基本である『相手に分かるように話す』ことさえ放棄し、見かねたアクス(12歳)に説明を補足されるヘグニ・ラグナール(76歳)。入団前から因縁がある『白黒の騎士』の片割れの不出来さにうっかり眼鏡を砕きそうになるが、今はそんなことをしている場合ではない。

 

「下僕たちのことは分かった。異端児(ゼノス)の動きを知らせろ」

 

「はい、お乗りください」

 

 地図を開きながらアクスはユーノに減速を指示する。それでも馬の速度ということで早いがLV6の身体能力で軽々とユーノに騎乗したヘディンは、アクスが取り出した地図を注視する。

 

「……から……で。つきましては──」

 

「他の冒険者が26階層に行こうとした際の妨害だな。良いだろう」

 

 打てば響くといった具合にやって欲しいことを推測したヘディンが異端児(ゼノス)側の依頼を了承し、ユーノから降りていく。それと同時にアクスはようやく異端児(ゼノス)たちの下へと還っていった。

 

 こうして、移動──状況確認──報告──再び移動という激ブラック循環を何周かした後のこと。幻影がルームになだれ込むモンスターの集団を発見する。

 1本道ながらもかなり遠くで見つけたためにほぼモンスターの後姿しか見えないが、奇跡的にモンスターの波に切れ間が出来た瞬間──。

 

 見慣れた手拭い(バンダナ)が見えた。




騎兵隊だぁー! 魔剣づくりを邪魔する奴ぁ、百年生きても恥の上書きだぜ!!
2人じゃ隊じゃないって? …俺、総勢1名参陣!!よりましだからセーフ。

アクスが居ることでの違い
 定期的に地形や仲間の位置。作業の進捗度などを定期的に話に来るため、ダンメモのサイドストーリー時空では気取られる心配で打てなかった魔法をぶっぱ。大量のモンスターと共に壁を破壊してモンスターの供給を断つことに成功する。
 吹き抜け構造ということで上から下へやってくるモンスターが減少。結果的にアクスたちが動きやすくなり、魔剣が出来るまで耐久していた派閥連合への圧力も弱まった。
 なお、ここから幻影2騎が突っ込むというね。治療院に足向けて眠れないんじゃないかな。

ヘディン
 能を有そうと足掻く弱者には優しくなる鬼畜。ただし、能があると分かった途端に使い潰そうとする。
 そうだね、アクスだね。
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