早朝というか、まだ日が上がりきっていない時分。オラリオの外観が全く見えなくなるほど離れた平原にて、サポーター用の超巨大なバックパックを背負った2人の上級冒険者が突っ立っていた。
「ガレス、そろそろあのパルゥムの頭を殴っても許されると思うんだ。私は」
「まぁ、待てリヴェリア。まずは儂が小生意気なあやつの身長をもっと縮めてからだ」
まさに怒り心頭といった様子の2人。それもそのはずで、ガレスたちがここに来るようにフィンから言われたのは今から数時間前。付け加えるなら、睡眠中に叩き起こされた挙句に碌な報連相もなしに大量の飲食物や武器。テントといった野外キットを満載させたバックパックを背負わされ、そのままオラリオの外に追い出されたのである。
「この紙だが、炙り出しとか試すか?」
「やめておけ。素材からしてそういった細工に向いとらん、燃えて終わりじゃろうて」
上級冒険者の中でも上澄みのLV6が平然とオラリオの外に出れたことを鑑みるに、十中八九ギルドと
「これからここに来る者へ訓練をつけてほしいか」
「しかも、ここで見聞きしたものは口外するなと来たものだ。まったく、面倒なことを押し付けおって」
指令書の中にはその2つ。いや、よくよく見たら紙の隅っこに『ぶったまげるんやないで〜』とロキの字で書かれている。つまりは、
しかしながら、リヴェリアたちも第2次侵攻の準備に忙しい身。各状況ごとに編成や戦い方を考えるフィンよりはマシなものの、訓練をつける時間は雀の涙の程しかないのが正直な所である。
「誰が来ると思う? 【ナイト・オブ・ナイト】とかが来てくれたら心強いが」
「学区はまだ数か月先じゃろ。それに、フィンの書いてる"訓練"の意味が破綻するわい。儂はアイズが気になっておったあの……なんだったか」
「ベル・クラネルか?」
「おぉ、そうじゃ。せめて、あやつぐらい気骨のある若者でないと降りるぞ」
そう断言したガレスは、偏屈なドワーフらしく鼻を鳴らす。ただ、リヴェリアもその意見には賛成だった。
万に一つどころか億に一つの確率だが、この場に【ナイト・オブ・ナイト】が来てくれれば2人は過去の遺恨を水に流して迎え入れるだろう。それこそ
だが、せめてベル・クラネルのような新進気鋭なルーキーが来てほしい。そう願っていた矢先、いくつかの足音が聞こえてきた。
「お出ましか」
「そのようじゃな。……いや、待て? なんでゼノスがこんなところに?」
レベル6の視力でもって音とした方を振り向くと、角が生えた農耕馬のようなのように真っ白い馬。その背中には、
やけにフレンドリーに近づいてくることからモンスターの方はゼノスと判断で来たものの、人間の方はどういった関係性なのか分からなかった。
いや──、頭では分かっていた。ただ、
アクスは死んだ。それはロキやフィン経由だがディアンケヒトから聞かされた事実である。
なので、あのユニコーン(なのか怪しい存在)に跨っているのは、全くの別人。そう思っていた──が。
「あれ、リヴェリアさん。ガレスさんも。お久しぶりです」
「……ガレス」
「リヴェリア。皆まで言うな」
あっさりと兜を取り去ったアクス。死んだなんてとんでもない。相変わらず元気そうな顔にリヴェリアたちは少しばかり呆けると、揃って嘘を言っていたフィンやロキに対する怒りに燃えた。
***
その後、カクカクシカジカ四角い■ューブとアクスが事情を話すと、大きなバックパックを降ろしながら聞いていたガレスたちは思いのほかすんなり納得した。
「あれ、信じるんですか? 自分でも結構無茶したと思ってるんですが」
「現にここにおるじゃろ。のぅ?」
「あぁ。それに、自覚があるならもう少し慎重にだな……」
「あの時は慎重になる時間もなかったですし、フィンさんさえ生きていればなんとかなると思って……。今もそう思ってます」
現実主義というか、物事を深く考えることが苦手なガレスが同意を求めるようにリヴェリアに視線を向けたものの、アクスの物言いが気に食わないと彼女が小言を吐く。ただ、
「まったく、フィンのやつに似てきおったな」
「フィンの話は良い。それより、ここに来たと言うことは訓練を行う相手はアクスで構わないか?」
「はい。前にロキ様から手紙を預かってます。リヴェリアさんたちに渡して欲しいって」
『中身は知りませんが』とアクスが手渡してきた便箋を受け取ったリヴェリアは、中に目を通していく。そこにはロキの字で、今まで彼女や他の神々。それとアクスの集めた情報を集結させたエニュオの正体を含めた現状の推測や第2次侵攻におけるアクスの重要性がびっしりと書かれていた。
「ランクアップに【
「リヴェリア、儂にも見せろ」
呆然とするリヴェリアの手から手紙をむしり取ったガレスは、同じく信じられないと目を見開く。『死者の完全なる蘇生』というスキルを引っ提げて来たパルゥムに何をどう声をかけていいか分からないのだ。
されど、手紙に書かれていた神との契約。すなわち、『第2次侵攻に参加する派閥で死んでしまった眷属たちを全て生き返らせる』という約束事の重要性だけは彼らの頭の中にしっかりと記憶された。
そして、最後に書かれていた『決してアクスを死なせるな』という文字。筆圧の強さからロキの真剣さがひしひしと伝わってくる。
なればこそ、決して手は抜けない。眠気や【ロキ・ファミリア】恒例の朝食の場に参加できなかった負い目といった
「そこのゴブリン。お主も鍛えられる側か?」
「いエ、ミスタ。私ハ彼らの目付トシてフェルズに依頼サれました」
「そうか。リヴェリア、先手は任せる。儂はこのゴブリンと見学しておこう」
『ほれ、こっちに来い』と手招きするガレスに、レットは目をぱちくりさせながらも大人しく近づいていく。どちらにせよ2人でアクスを鍛え上げるのは変わらないが、相手をする順番を譲られたリヴェリアは訝しんだ。
「珍しいな、ガレス。お前が真っ先に試さないのは」
「儂はグランド・デイの前夜祭でベル・クラネルやレフィーヤと1戦交えたからな。譲ってやろう」
そういえば、そうだった。
ついでにアミッドから購入させられた大量の限定ポーションがまだ倉庫にいくつか残っているため、後でちゃっかりフィンやガレスあたりの荷物に紛れ込ませようと画策しながらも、リヴェリアはマグナ・アルヴスを構える。特に何の前兆もなく切り替わったリヴェリアの戦闘態勢に、アクスはすぐさまユーノの走り出させた。
これは訓練。よって『よーいドン』と戦闘を開始するのが常識的な行動と言える。
ただ、リヴェリアは
本来は、1番初めにそこを指摘しようとしていた彼女。それを『良い意味』で覆してくれたアクスに感嘆の念を抱きながらも、リヴェリアは詠唱を開始する。
「終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に
詠唱が開始されると同時にリヴェリアの背後に3つの六花を模したマジックサークルが出現し、そこから底冷えするような冷気が漏れ出す。周囲の草原を凍り付かせるほどの冷気がアクスの頬を撫でつけ、
それでも彼は決してユーノに足を止めさせない。
止めたが最後、即座に照準をつけた彼女が『高速詠唱』でもってたちまち詠唱を完成させ、極寒の冷気を放って来るであろう。訓練なので威力は弱いとは思うが、ラキア王国との戦争中にも関わらずに
(咄嗟に遮蔽物を探すか。悪くない……が、こんな手もある)
しかし、そこは第1級冒険者。さらっと並行詠唱をしながらその場に屈むと、小石を拾い集めていく。明らかに無防備なものの、このまま突撃しようものなら屈んだ状態で魔法を放たれる可能性もあるためにアクスはリヴェリアの周辺を駆け回ることしか出来なかった。
(慎重すぎるな。どれ、少し揺さぶってみようか)
しかしながら、
たかが小石と侮るなかれ。粉砕するかしないかという絶妙な力加減で射出された石礫は、弾丸の如くアクスへ飛翔。何か得体のしれない物が飛んでくる気配に身を屈めることでかろうじて避けれたが、第2第3の小石がユーノの進行方向を塞ぐように飛んできた。
「うわっ!」
「ウィン・フィンブルヴェトル!」
小技によってユーノが足を止めた刹那。リヴェリアは留めていた魔法を解放した。
マジックサークルから放たれた極寒の吹雪がアクスたちを飲み込まんと突き進んでくる。いくら死なないよう加減とはいえ、1度足を止めた騎兵が避けれるような範囲にはしていない。
(あの無鉄砲さがアクスの持ち味だったはずなのに……。フィンには1度きつく言わないといけないな)
このまま軽く氷漬けにし、動きを完全に止めたところで訓練は終了。少しばかり総評に力を入れてみようとリヴェリアが『次』に目を向けだした。
その時だった。
三条放たれたはずの吹雪。そのうちの一条が
「なっ!」
驚くリヴェリアの視線の先には、身体の所々が凍りながらも槍を振り回しながら突撃してくるアクスたちの姿。魔力を限界まで抑えたとはいえ、リヴァリアはLV6。あれほど軽症になることはあり得ない。
そう思っていた矢先、アクスの槍の切っ先が
「あの"旗"か!」
「やぁああ!」
アクスが突き込んだ槍の穂先を巧みな杖術で逸らすリヴェリア。全速力の突撃を凌がれたため、ユーノはそのまま彼女の横をすり抜けて走り去っていくが、
それもそのはず。突撃が失敗に終わった時点で、彼はユーノの背中から飛び降りていたのだ。
「接近戦か。面白い、魔導士が近接戦が出来ないわけではないぞ!」
「せいっ! やぁっ!」
胴を狙う横薙ぎを半歩下がることで避け、突き出した切っ先を首を傾けることで躱す。その合間にリヴェリアも杖を様々な角度から打ち込むが、アクスも柄や石突でもってそれを凌ぐ。
どちらが優先ともいえない一進一退の攻防の中、リヴェリアはアクスの技量についてひたすらに驚愕していた。
アビリティでは推し量ることが出来ない技術面。特に接近戦のような個人のセンスによって左右する技術は、決して一朝一夕で出来るようなものではない。
いったい、姿を隠してからどれだけの研鑽を積んだのか。そんなことを考えながらリヴェリアが数秒ごとに入れ替わる攻撃と防御を褪せ一つ書かずにこなしていたが、唐突にアクスは
「風よ語れ、彼の地に散りし勇の名を。地よ刻め、踏み躙られし誓約の残滓を──」
「3つ目!?」
初めて聞く詠唱にリヴェリアは詠唱を潰そうとするが、守勢に回られたアクスが妙に守り慣れているせいで
そうしているうちに詠唱は完成し、9騎の幻影が顕現する。
長々しい詠唱の割には生み出す数が微妙な幻影魔法。しかし、そういった類がよほど性質が悪いと長年の研鑽でよく知っていたリヴェリアは、
「間もなく、
選択したのは広域殲滅魔法。高速詠唱でもって徐々に高まりつつある魔力にぎょっとしたアクスは、即座に行動を開始した。
「詠唱が──」
「魔法にはこういう使い方もある。覚えておけ」
本来は詠唱を行うことで敵の注意を自分に集中させ、その隙に味方が相手の意識外から攻撃する『囮攻撃』。すなわち、1人でやっても『初見殺し』にしかならない
しかしながら、ここまで使わされるとは思わなかった。改めて若者の成長速度はすさまじいと多少老け込んだ思考をしながらマグナ・アルヴスでアクスの胴体を叩こうとするが、彼は『
──
槍を握った片手に平手をぶつけるという不格好な柏手(の音に紛れ込ませた
突然の現象に彼女は目を白黒させつつも、目の前の幻影を叩き消す。そして、はるか遠くで彼女を油断なく見つめていたアクスに向かって片手を上げて声を上げた。
「一旦、止めよう!」
「いいんですか?」
「たしかに、あのまま戦えば私が勝っていた。だが、奥の手を出した時点で私の負けだ」
レベル差というものはどうしても覆しにくい。しかし、魔道士にとって最大の武器である魔法を陽動に用いた時点で『魔道士としての敗北』、『奇策を使うに値する』と言っているようなものである。
それに、これは殺し合いではなく訓練。得るものがあった時点で終わりにするのは自明の理ともいえる。
「ようやく終わったか。しかし、魔道士相手によく戦った。偉いぞ」
「しかし、少しばかり消極的だったな。あれではせっかくの好機を潰してしまうぞ」
そうして、ひとまず評定をしようと全員が集まってくる。特にガレスは魔道士相手に臆することなく戦ったことを褒めるが、実際に戦っていたリヴェリアは積極性がなかったことを指摘する。
だが、アクス曰くそれは『計算していた』とのこと。流石に投石してくるとは思わなかったみたいだが、何かしらの足止めをして魔法を打って来ると予想はしていたみたいで、その証拠に先ほど魔法を切り裂いた槍を見せた。
「オブシディアン・ソルジャーの体石を用いた槍と精霊の護符を編み込んだ団旗です。これでリヴェリアさんの魔法を無効化しました。全部無効化出来れば良かったんですけど、あいにくそういった技量がないので」
「旗は聞いていたが、槍も魔法特攻だったか。どちらにせよ、満足に動ける状態で立ち向かってきたからな。無効化したと言っても良いだろう、よくやったな」
「よし、それじゃあ今度は儂じゃが……。その前に休憩にしよう」
先ほどの消極的な行動だが、計算ずくかつ、対処できると踏んだからこその陽動であれば十分評価に値する。先ほどの指導を撤回したリヴェリアはアクスを撫でていると、持ってきた大きなバックパックから取り出した様々な獲物から大剣を選んだガレスが素振りをしながら声をかけてくる。リヴェリアもバックパックから水や食べ物といった物を取り出しており、そのまま休息に入る──かと思いきや。
「やらせてください」
「いや、連戦は止めておけ。疲れているはずだ」
「いえ、じっとしていられないんです」
凄まじいやる気にリヴェリアとガレスは顔を見合わす。しかしながら、本当に驚いたのはアクスだった。
本当はアクス本人も休もうと考えていた。ただ、『もっと強くなろう』という気持ちが先行してしまい、いつの間にか言葉が自然に口から出て行ってしまっていた。
なにがどうしてそうなったといった具体的な理由はアクス本人でも分からない。でも、『
「不器用じゃなぁ」
「そうか? そこらの冒険者よりも好感が持てるぞ、私は」
しかし、どうやら色々と駄々洩れだったらしい。不器用な愛にガレスは笑いながらも大剣を肩に担ぎ、リヴェリアは水や食料をレットに渡しながら傍に座り込む。
改めてお互い距離を十分開けていると、唐突にガレスの声が響く。
「アクス、全力だ。全力で向かって来い」
「分かりましたー」
ガレスは耐久や力に秀でたLV6のドワーフ。そして、遠征中に聞いたがスキルや魔法も力や耐久をさらに補正してくれている『壁』というより『要塞』といっても過言ではない冒険者である。
そのような豪傑に対し、『大丈夫ですか』など侮辱以外何物でもない。だからこそアクスは素直に承諾する。
「良い子だー! 先手は譲るから好きに打って来い!」
ニカッと笑ったガレスに甘える形でアクスは早速、ミレシアンを行使。9騎の幻影でもってガレスを取り囲み、一斉に突撃させる。
漆黒の馬が地面を蹴り、剣や槍といった獲物を片手に姿勢を低くした黒い騎兵が弾丸の如くガレスへ迫っていく。
多方向から襲い掛かってくる複数の騎兵。並の冒険者であれば回避を選択する場面だが、ガレスは興冷めしたような表情を一瞬浮かべてから手にした大剣を
「どうしたぁ! 温いぞぉ!」
身の丈に迫るほど巨大な刀身でもって、一瞬の内に9騎の幻影が切り伏せられる。騎兵の名残である黒い残滓が視界にチラつく最中、ガレスはアクスの先手があまりにも手緩いことを叫び──すぐさま迎撃の構えを取った。
リヴェリアはわざと魔法を打たせられ、アクスはそれを逆手にとって突撃を行った。ならば、今回も同じことを行うのではないか。
そう推測したガレスが両手でしっかりと大剣を握り込み、周囲を警戒していると──、白銀の鬣をなびかせたユニコーンが一直線にガレスへ突進してきた。
「はぁっ!」
「真正面! いいぞ、アクス!」
愚直な突撃にリヴェリアは『野蛮な』と眉をひそめたものの、ガレスにとってそれは大好物であった。すっかり気を良くした彼は、持っていた大剣を放り捨てると足を開き、腰を落とす。
発せられる気迫によって彼の姿を何倍にも大きくなったかのように錯覚させるが、アクスはひるむことなく前進を指示。ユーノはさらに速度を上げた。
「さらに速くなったか……。ならば!」
「ガレス!」
「分かっておる! "微震"じゃ!」
ベートには劣るが、LV3の速力を逸脱した速さで突っ込んで来るユーノたちにガレスは詠唱を開始する。やがて、詠唱が完了した彼は【アースレイド】と魔法名を言いながら大地に拳を叩きつけた。
ドワーフならば多くが発現する『地波魔法』。彼の宣言通り、その揺れは震度1にも満たない小規模な揺れだったが、アースレイドの真骨頂はここからである。
「さぁ、来ぉい!!」
魔法の副次効果で【力】のアビリティが底上げされたガレスは、全身の筋肉を隆起させながら身構える。次の瞬間、ユーノとガレスは馬車と建物が衝突したかのような豪快な衝撃音と共に激突する。
ユニコーンの象徴である太い角を両手でしっかりと握ったガレスは、歯を食いしばりながらもひたすら耐える。彼の足元から土が弾け、身体が数Мほど押し込まれたが、それでも倒れない。
「ぬぉぉぉ!」
踏みしめた足が地面を掴んだガレスは、雄叫びを発しながらさらに力を込める。そうしていると、いつしかユーノの突進力が完全に失われてしまった。
突進力が無くなった騎兵など遅るるに足らない。ガレスは再び持てる力を総動員させると、輓馬のように膨れ上がったユーノの身体がいとも簡単に浮き上がる。
「なんじゃ、全然軽いではないか。もっと食え、もっとぉ!」
農耕馬クラスの怪物を持ち上げて軽いと言えるのは、片手で数えるほどしか居ないだろう。主にリヴェリアの居る方向から『無茶いうな』という呆れ交じりの視線を感じ取ったのか、ガレスは咳払いをしながらユーノを放り投げた。
当然ながらその背に乗ったアクスも宙を舞う──が、あろうことか彼は
「ほぅ、即座に武器を切り替えるか! 良いのぉ!」
とっさにガレスは右腕で頭部を庇う。カキンと硬質な音を出しながら鏃がはじき返されてしまったが、アクスは
「儂を傷つけたいなら、
「そんなお金ないです!」
「知っとる。ほれ、もっと来い!」
放り投げた大剣を持ち直したガレスが手招きをする。一切ダメージを与えることが出来なかった事実と心底楽しそうな彼の様子に少々げんなりしながらも、アクスは改めて幻影を生み出した。
今度の幻影は騎兵ではなく、槍や斧や剣を持った歩兵。幻影の種類にバリエーションがあることに感心したような口ぶりのガレスを無視し、アクスは『行け』と指示を出す。
「先ほどと同じ真似は通じんぞ?」
「分かってます!」
先ほどのようにガレスの周囲に幻影を配したアクスは、槍を構えた瞬間に猛スピードで突貫する。速度を落とすことなく勢いのままに槍を突き出すが、愚直な突撃など如何に鈍重なドワーフでも見切れるというもの。
されど、先ほどアクスがやっていた位置の入れ替え。それが厄介だったが、最終的にガレスは『とりあえずは殴ってみよう』という判断から巨大な刀身でぶっ叩こうとした。
──
「むぅっ!」
案の定、柏手によってアクスから幻影へと位置が置き換わる。彼の出現した位置はガレスの背後で、そのまま背中を刺せる間合いであった。
流石にヘファイストスが鍛えた
「後ろかぁ!」
たちまちアクスの気配を感じ取ったガレスは、踏み出した状態の片足に力を籠める。そのまま前方の幻影を撤回と見まがうほどに巨大な大剣の腹で叩き消すと、地面に亀裂が走るほどに重心が乗った片足を軸足に
「いぃっ!?」
「これで終いじゃあぁ!」
独楽のようにぐるりと回るガレルと大剣。力の権化と言わざるを得ない程の力技にアクスが驚愕の声を上げたと同時に、彼は剣の腹をぶつけられた。
「あっ……」
「ガレスゥ! 貴様、何をしているぅ!」
エーカーの森でも通用するような場外ホームランだが、ここはオラリオ。さらには訓練中である。『熱き戦いじゃったもん』とあまり反省していないように見える56歳児に本気で魔法をぶつけたくなったリヴェリアだが、ひとまず飛んでいったアクスを回収するために走り出した。
***
そんなこんなで1日目の訓練は終了。帰った端から
「では、明日は私。明後日はガレスで行くか」
「分かった。明日は計画よりも速めに準備を進めておこう」
「君たち、ちょっと相談なんだけど……」
『お前(お主)(フィン)はやることがあるだろう(やろ)』
言わんとしていることが手に取るように分かったため、静観していたロキを含めた全員で止めに入られた団長が居たとか、居なかったとか。
プルス・ウルトラなんだろ? しろよ、ウルトラァ!を地で良くパルゥム。
プルス・ウルトラ
元々はスペイン王国のモットーなのだとか。
アンパ●マン気質だし、ちょくちょく『僕が来た』やってるから実質オールマイトなのでは?
能力的にリカバリーガールだけど。
リヴェリアとガレス
今まで秘密にされ、かなりオコ。しかしながら、理由的には致し方ないと思っている。
ただ、アクスのスキルや魔法といった諸々の性能的に『流石に幹部格言わないとマズい』と忠告したらしい。
対リヴェリア
魔法を如何に誘発させ、それを凌ぐかを重点的に表現しました。
あの人なら魔法だけではなく小手先だけでも巧みにアクスを翻弄するという自信があるため、小石投擲という小技とか色々考えました。
対ガレス
ユーノとの力勝負は絶対やりたかった。まぁ、LV3込々の強化種でもLV6には勝てんやろってことでああいう結果になりました。
また、鈍重なドワーフということでリヴェリアでは使えなかった巧みな小手先を披露。訓練でも決して手を抜かないのが、この子だと思うんで。
まぁ、いい勝負したんじゃないかな。最後はエーカーの森の皆が納得するホームランだったけど。
フィン
派閥大戦前にみっちり相手をする予定なので、我慢して。