夜明けまで、あと数時間。また、同時にオラリオが滅び去るまであと数時間でもある。
猶予はない。刻一刻と迫る破滅を前に、もはや一刻の遅滞すら許されぬ状況下でフィンの宣言が響き渡った。
第2次クノッソス侵攻──『
その宣言に、この場に集結した冒険者たちが一斉に雄叫びを上げた。
幾十もの声が重なり合い、オラリオとすぐ下に広がるクノッソスの空気を震わせる。武器を掲げる者、拳を握り締める者、仲間と視線を交わす者──それぞれの胸に宿る決意が、怒号にも似た咆哮となって集合場所であるダイダロス通りを満たしていく。
だが、熱狂に浸る時間はない。
「作戦を開始する! 総員突入開始! 目標は魔城クノッソス!!」
フィンの鋭い号令が、鬨の声を切り裂く。次の瞬間、総勢250名もの冒険者たちは一斉に動き出した。
緑肉の除去が済んだクノッソスの入り口、タナトスが送還の際に開けた穴の側面に設置された梯子、崩落しかけの足場、自身のフィジカルを信じた
特に人数の多い第1から第3部隊に割り当てられた者たちは一気に9階層まで降り立つと、何も言われずとも円陣を組んで警戒する。
しかし、襲撃はない。待ち伏せが無いことに安堵しつつも、彼らは周囲への確認を密にしながら走り出す。
目標は同階層北東に位置する大広間。そこが、彼らが一丸となって動けるリミットだった。
ここから先は3つの部隊に分かれ、それぞれ異なる経路を進む。第10階層に至ればさらに細かく分隊し、10階層の各所に配された
通常のモンスターや階層主であれば十分と言えるが、
「死ぬなよ」
「そっちこそ、帰ったら酒でも付き合え」
「借りた金、まだ返してねえからな。勝手に死ぬんじゃねえぞ」
それでも、今行かねば明日はない。近くに居る同僚同士で軽く別れの挨拶を済ませた面々は、割り当てられた隊列へと走っていく。肩を叩き合う者もいれば、無言で拳を突き合わせる者もいる。
ただ、叩く力や突き合わせた拳が異様に強かったり、冗談めかして躱した言葉の端々から隠しきれない緊張が滲んでいたが、自覚をすれば最後──足が止まってしまうと予感した全員はあえてその緊張を無視することにした。
***
一方その頃。アミッドが参加していた第4部隊はと言うと……。
「よっしゃぁ! 行くぞぉぉ!」
『おぉぉお!』
咆哮と呼ぶにはあまりにも怒気の滲んだ声が、長い通路に轟いた。突然の大音声にティオネたちが一斉に振り返ると、清潔感のある白いローブを纏い、杖や治療器具といった後方支援用の装備を携えた男女が揃って拳を天高く突き上げていた。
言うまでもない。【ディアンケヒト・ファミリア】である。
彼らは『
──よくも、うちの末っ子に手をかけてくれたな。ゆ゛る゛さ゛ん゛!!
普段は患者の傷を癒やし、苦痛を取り除くことを生業とする彼らも仲間。それも末っ子を亡き者にされた怒りまでは抑えられないらしい。普段はにこやかに接客や治療を行っている温厚な
「負傷者には!」
『手厚い看護!』
「諸悪の病巣!」
『駆逐一択!!』
「主神は!」
『守銭奴!』
「団長は!」
『天使!』
「欲しがりません!」
『長期休暇は!』
「【ディアンケヒト・ファミリア】-! ファイッ!」
『オォオー!』
「救いに行くぞぉ!!」
『患者はどこだぁ!』
えらく熱血的な
まるでどこぞの体育会系さながらのノリで士気を高める【ディアンケヒト・ファミリア】の面々。だが、意外なことに、当人たちは至って正常だった。
というのも、団員の中には暗黒期以降に加入した者たちも少なくない。今回のような大規模な作戦は、彼らにとって初めての大舞台なのだ。慣れぬ緊張に呑まれ、実力を発揮できなくなる者が出てもおかしくはない。
そこでアミッドと同じ部隊に割り振られたマルタやアルバートといった古参が考えた手段が、あえてこうした熱血的な雰囲気を作り出し、
その目論見は見事に当たり、少なくとも今の彼らに気後れしている様子はない。拳を突き上げ、声を張り上げ、仲間と気勢を合わせる。その姿からは、これから死地へ赴く者たちとは思えぬほどの活気が溢れていた。
もっとも、末っ子を傷つけた相手への怒りまで士気高揚のための演出に含まれていたかどうかは……、また別の話である。
ただ、そんな熱気に満ちた空間から、他人の振りを決め込んで逃げ出そうとしている者──というか、
「ねぇー、アミッドー。自分ん所のファミリアだよ? 参加しなくていいの?」
「知りません」
「あなたの副官、笑顔で手招きしてるわよ?」
「知りませんっ! 知らない人です!!」
ヒリュテ姉妹の追及に、プルプルと小刻みに身を震わせていたアミッドは一切取り合わなかった。
それもそのはず。なにしろ、背後から聞こえてくるのは拳を突き上げて士気を高める団員たちの雄叫びである。普段は治療院で薬を調合し、患者に優しく微笑みかけている面々が、今や揃いも揃って熱血武闘派のような顔をしているのだ。
しかも、その中心で副官がこちらに向かって満面の笑みを浮かべている。
このままでは、団長である自分まであの熱血じみた掛け声に参加させられる。最悪の場合、先頭に立って拳を突き上げ、団員たちと声を揃える羽目になるかもしれない。
想像しただけで頬が熱くなったアミッドは、ある種の強硬策に出ることにした。
「あれ? アミッド、ちょっとー?」
「ちょっと待って。なんで最前線に向かってるの?」
「最も効率的な移動経路だからです」
「いや、
「知りません!」
白銀の長髪を揺らしながら、アミッドは冒険者たちの間を縫うように進んでいく。味方の装備を避け、荷物を担いだ団員の脇をすり抜け、誰かが広げた地図の端をひらりとかわす。その足取りは、回復魔法を届けるために戦場を駆ける
「あそこまで嫌なのね」
「私は元気があって良いと思うんだけどなぁ」
「あんただけよ」
いくらティオナたちが呼び止めても、彼女は迷う素振りすら見せない。背後から聞こえる4人の歓声が大きくなるたび、むしろ速度を上げているようにすら見えたのは決して気のせいではないだろう。
このまま行くと本当に単騎で突っ込みを仕掛けそうな気配を察知したヒリュテ姉妹は、何も見なかった体にしてアミッドを確保することにした。
***
そんな具合に少しばかり気の抜けたやり取りが行われていたものの、
おそらくは6体の大精霊を繋げるための超巨大な
ただ、彼/彼女たちは一切の戦闘を行わずに10階層にたどり着いただけ。
──そう、
その証拠に、冒険者たちが侵入してきたことを察知したクノッソス──祭壇に配置された
通路内に充満していた魔素が急激に流れを変える。空間を漂うのみであったそれは意思が宿ったように収束していくと、やがて『1つの
「避け──」
1人の冒険者が回避を叫ぶが、それよりも早く
「走れ! この通路全体が"砲台だ"!」
後衛に居た誰かの言葉に全員がハッと周囲をみやる。そこには、
周囲の顔色がサッと青くなる。それと同時にその『砲撃陣地』から様々な属性の魔法が飛来する。
炎、氷、風、雷、土。魔導士の卵やその講師役といった存在が居れば、これほど充実した教材はないであろう属性魔法のオンパレードに、早くも
幸運にも死者は出ていないが、このままではそれも時間の問題。全員の脳裏に『全滅』という言葉がチラつくが、ここで【ロキ・ファミリア】が率先して動く。
「赤! 団長!」
「流石だ、アークス。頼んだ!」
フィンが指示を出そうとする前に、アクスがダイダロス通りにて魔剣の雷撃を旗で無効化した現象を覚えていたアークスが赤い精霊旗を掲げながら突っ込んでいく。
既に発射された様々な魔法をその身に受けながらも必死に目標である赤い
『椿たちが準備した"精霊旗"を使え! 発光した色と同じ色の旗で対応しろ!』
対
残念ながらアクスの持っている団旗とは違って1属性の魔法にしか対応できないが、『1属性』と突き詰めたことによって対応する属性であれば団旗と匹敵する防御性能を誇っているこの精霊旗の力で、部隊は再び前へと進む。
それでも、まだ問題があった。
如何に冒険者が
疲労は血が流れたり、骨が折れるといった目に見えるものではない。ただ、1度でも体力の限界を踏み越えてしまえば、気力やカラ元気といった生半可な対応だけでどうにかなるものではない厄介な症状である。
されど、その症状に対する『特効薬』はフィンの采配で既に各部隊に編成されていた。
ここぞとばかりに各部隊の
身体を動かすことそのものに付きまとっていた重苦しい抵抗が消え、旗竿を握る指に力が戻る。まるで、何時間も休息を取った直後のような感覚に、各部隊の前衛はより一層奮起する。
***
リヴェリアが指揮を執る隊でも、
以前、彼女が教導した際には、小走りをしながら詠唱を維持するのが精々だった者たちだ。それが今では、前衛のすぐ後ろを、近すぎず離れすぎずという絶妙な距離を保ちながら駆け抜けている。
さらに彼/彼女らは戦場を飛び交う魔法陣の色を瞬時に見分け、対応する色の旗を掲げた冒険者を見つけると、その背後へと滑り込むように移動していく。前衛の動きを妨げることなく、その身体を盾として利用しながら、詠唱を途切れさせることなく回復支援を続けているのだ。
技量のみならず、判断力までもが高みへと至っている。日々の業務をこなしながら、これほどの練度にまで己を磨き上げたのだ。戦場を駆ける
「見事な並行詠唱だ。それに、判断も早い」
「リヴェリア様やリーネさんたちのおかげです。それに、居なくなった末っ子に負けていられませんから」
その努力と成長を称える言葉を贈ると、近くを走っていたエルフの
【ディアンケヒト・ファミリア】は、医療を担うファミリアだ。その性質上、団員の大半は治療院での業務に従事することとなる。冒険者としてダンジョンに潜る機会は限られ、日々の鍛錬に充てられる時間も決して多くはない。
治療院で患者を診て、薬を調え、次々と運び込まれる負傷者の治療に追われる。そうした日常を送る彼らにとって、戦闘に出る魔導士が必要とする技術を磨き続けることは決して容易な話ではなかった。
だが、彼/彼女たちは変わった。1人のパルゥムの喪失により、
【ディアンケヒト・ファミリア】は決してアミッドやアクスに対し、おんぶに抱っこ
その結果がアクスの死亡である。目標がいきなり喪失したことで、目の前が真っ白になって混乱した覚えは数知れず。その末に彼らはその寂しさを埋めるため。そして、今にも後を追いそうなぐらい物悲しい雰囲気を放っているアミッドのために、彼/彼女らの間に『全員がアクスと同じ技量を持つ』という信念が生まれた。
「そうか……。すまない、その調子で頼む」
「承知しました」
恭しく一礼を残し、
リヴェリアは眉間に皺を寄せ、こめかみを押さえた。口元こそ平静を保っていたものの、眉尻はわずかに下がり、長い耳も心なしか垂れ気味になっている。
『フィンの共犯者』たる彼女は、戦いが終わった後に待ち受けるであろう、あれやこれやを容易に想像できてしまったのだ。
そして、想像してしまった以上、知らぬ存ぜぬで通すこともできない。
眉間の皺がさらに深まる。何か言いたげに開きかけた唇は、結局ため息を吐き出すためだけに動いた。
今回の作戦で初めて負ったダメージ。それも敵の攻撃ではなく、『胃痛』という戦場では実にどうでもよいが、本人にとっては深刻極まりない傷。それもあってか、リヴェリアは周囲に気取られぬよう疲れ切った顔をわずかに俯かせる。
即死級の魔法が飛んでくる緊張とはまるで別種の苦悩を押し殺し、彼女はまたしても息を吐いた。
***
さて、突入した冒険者たちが、行く手を阻む障害に四苦八苦しながら通路を進んでいた頃。オラリオの上空を規格外な一団が飛行していた。
「ほな、レイたん。頼むわ」
「こちらも大丈夫だ。やってくれ」
「分かりマシた」
ロキとディアンケヒトに左右の足を掴まれたレイが、2柱の許可を合図にフィンたちの降下に使われた穴へと急降下していく。穴の周辺には『予備隊のさらに予備』と後方支援や事後処理を担う者たちが見張りなどをして待機をしていたものの、戦闘能力は総じて低い彼らは文字どおり一瞬の出来事に気付くことはなかった。
「レイたん、重ないかー?」
「だ、大丈夫でス。それよリも、本当ニ大丈夫デシょうか? 勝手ニ降りテシまって……」
「儂らが突入することを知っておる者は、すでに全員下におる。今さら説明しようにも、確認を取るだけで難儀するじゃろうて」
「は、ハぁ……」
ディアンケヒトの言うとおり、神が2柱も戦場へ投入されるという手筈はごく限られた者にしか知らされていない。
ゆえに、ここで正規の手続きを踏もうとすれば、面倒なことになる。
説明、確認、護衛の手配、そしてようやく降下。
たったそれだけの工程で、いったいどれほどの時間を浪費することになるのか。しかも、確認を取ろうとしたところで、無事にフィンたちの下へ確認へ行ける保証などない。そうなると、むしろ『神々を危険にさらすわけにはいかない』と無理矢理待機させられる可能性すらある。
時間との勝負になっている現状で、それはあまりにも致命的だ。
だからこそ、二柱はこうして見張りの目を掻い潜り、レイを利用した制御降下──いわゆる『パラシュート降下』を敢行しているのである。
「減速シまス!」
「おお、なかなかの風圧じゃのう!」
「おほー、めっちゃ楽しい! レイたん、もうちょい右に寄れへん?」
「む、無茶を言わナイでくださイ! もう少シ緊張感を持ってくださイ!」
落下を満喫している2柱のあまりにも緊張感のないやりとりに、レイは狼狽えながらも両翼を目いっぱい広げて風を受け止めた。羽ばたくたびに空気が唸り、その度に翼の付け根に負荷がかかるが、モンスターである彼女は慣れた調子で順調に速度を落としていく。
やがて、降下速度が十分に落ちた段階で第9階層の石床に足をつけることが出来た2柱は、ようやくレイの足から手を離した。
「ふむ。レイと言ったか」
「はイ」
着地早々、ディアンケヒトが口を開く。
「地上で働きたいと思ったら、いつでも治療院に来るがよい。お主の仲間であるユーノも働く気でおるからな」
「うわ、こんな時にヘッドハンティング……って、ユーノは辞めたんやないか?」
今まさに冒険者たちがクノッソスの深部で決死の作戦が進行しているというのに、自分はゼノスを勧誘を始めるなぞ、到底眷属たちに聞かせることが出来ない所業である。
それにユーノは以前に色々あり、『退職』したはず。そのことについて尋ねると、ディアンケヒトはそっぽを向きながらどこ吹く風で受け流す。
「ふん、知らんな。仮に辞表を書いておったとしても、おそらく儂がスープでも零して捨てたのだろう」
「辞表にスープ零すって、どんな状況やねん! どう考えても故意やろ!」
「なら、鍋の敷物代わりにした。そもそも、儂は辞めるなど許しておらん! あんな便利な……ゲフン。有能なモンスターは欲しいに決まっておろう。うちの良い看板になるやもしれん」
「ぶっちゃけおったで、こいつ!」
ロキのキレのあるツッコみが、暗い迷宮の通路に響き渡る。そんな2柱のやり取りを交互に見やりつつ、レイは何とも言えない表情を浮かべた。
その胸中には『コの方々、本当ニ神様なンデすヨね?』といった疑問が明暗していたが、ひとまずロキやフィンから頼まれた任務はこれにて完遂。後はアリシアたちが行っている人質救出支援に向かう手筈ではあったが、『神をこのまま放置して良いのか』と疑問を覚えた。
すると、そんなレイの考えを見透かしたようにロキは彼女に礼を言う。
「レイたん、あんがとさん。後はうちとディアンケヒトで十分や」
「あの、差し出ガマしいでスガ……。神だケニすルのは……」
レイの懸念は実に的を得ている。仮にロキが送還されればフィンを含めた戦闘の主軸となっている者たちが一瞬で灰燼に帰すし、ディアンケヒトが送還されればアミッドを含めた回復の要となっている者たちが同様に死んでしまう。
あまりにも博打が過ぎるが、
「でスが……」
「いや、逆にレイ。お主が居た方が明らかに危険じゃからな。ここまで運んでくれたことに礼を言うが、早々にお主の仕事に向かって欲しい」
それでも引き下がろうとしないレイに、ディアンケヒトは外科手術用の小さな刃物を取り出しながら暗に『早く行け』と伝える。
この場において1番危ないのがレイだ。なにせ、下界の子供たちは神の命令には絶対服従なので、万に一つでもレイがエニュオに命令され、ロキとディアンケヒトを攻撃した場合は
なので、他の護衛は一切つかない方が逆に安全なのだ。
そのように説明を受けたレイは、不承不承ながらもアリシアたちと合流するべく10階層へ移動を始める。手を振りながらそれを見送ったロキは、都合5本目の刃先を確認していたディアンケヒトに『行こか、黒男』と茶化しながら9階層を練り歩く。
「うげぇ、何やこの匂い。青臭さの中であま~い匂いが……」
「力を全て祭壇に回しておる……と考えるべきだな。それよりもロキ、神酒の香りは覚えとろうな」
「当たり前や。こっちやで」
腐りかけの緑肉が放つ嫌な臭いに耐えつつ、ロキは微かに香ってくる神酒の匂いと第1次侵攻の記憶を頼りに通路を歩く。通路には緑肉の他にモンスターだったものだろう灰や冒険者の干からびた腕などが散乱していたが、こうなってしまえばロキやディアンケヒトにはどうにもできないために黙って最奥を目指す。
「ここやな。微かに香るわ」
「あぁ、これが例の
箱に仕舞われていた瓶を持ち上げて栓を抜く。脳の髄まで蕩けそうな芳醇な香りに、ディアンケヒトは少しばかり鼻を引くつかせてから別の通路を指差す。
歩きながらも時折鼻を鳴らし、ようやくたどり着いたのが十数人入れそうな大部屋。椅子や姿見といった生活用品が無残に壊れているところから、おそらくは生活スペースだったのだろう。
「ガレスの言った通りやな。城には隠し通路が付きもんや」
「ロキ、ここだ。妙なとっかかりがある」
「自分、実は
神酒の香りを頼りに探そうとして居た瞬間、ディアンケヒトが勝手に絡繰りを操作する。石畳の一部が音を立てながらスライドし、中から
しかしながら、ディアンケヒトは医療の神。それも様々なケースで治療を行っていたスペシャリストである。
当然ながら暗闇での外科手術などといった難しい施術も経験があるため、彼にとっては暗闇の中の僅かな変化を見つけることなど児戯に等しかった。
狭く──細い階段を何段も降りた末に、ロキたちは行き止まりの壁に突き当たる。
「ロキ……」
「分かっとる。エニュオが向かってきたら頼むわ」
横に開けられた小さなくぼみを見つけたロキとディアンケヒトは、すぐそこに敵の首魁──エニュオが居ることを察する。開けた瞬間に襲い掛かって来ても対処できるよう、ディアンケヒトは服の袖口から件の小さい刃物を取り出して構えた。
しかしながら、特に罠も先制攻撃もないままに扉が展開される。扉の先は円柱形の広間となっており、蜘蛛の巣状にいくつもの通路が大口を開けていた。
「悪趣味やなぁ……。まぁ、オラリオ消し飛ばすような狂った
「調度品が無いのが頂けんな。もっと金を掛けろ、金を」
怪物から逃げ惑う人々や業火。蹂躙されていく命──まさしく地獄を体現したようなレリーフを見つつ、ロキとディアンケヒトは思い思いの感想を言い合うが、視線は真正面に向けていた。
複数の松明によって明るく照らされている中心。そこにはいくつかのポールがまるで結界の基点のように付き立っており、その中央部には異様な姿の人物──否、神が立っていた。
全身を覆い隠すような紫紺のローブを纏っている上にさらに漆黒のケープという冬でもあまり見ない重武装ぶり。くわえて、神々が持つ複数の顔を象徴するかのように仮面をケープの至る所に貼り付けているほどの破天荒具合に、ロキたちは面食らう──ことはなかった。
「つーか、それ。暑ない?」
「……」
「脱水症状で倒れられても敵わん。水なら恵んでやるぞ……ってこれ
「……」
まさに
「久しぶりやな。……デュオニュソス」
朱い双眸を開いた
ようやく、アクスが仕込んだ色んな物が花開く。
熱血治療師
元ネタは体育会系ブラックメイド喫茶
ちなみに、他の部隊に割り振られた団員たちも同じような感じである。
そりゃ、末っ子(兼団長の婿候補№1)が居なくなったらそうなるよ。
ただ、団長には不評な模様。
精霊旗
アクスがプロトタイプを使ってたことで、ガ〇ダムを開発した後の連邦の如く廉価版を作り出すのが早かった。
ちなみに、原作より精霊旗が多くなった分だけお値段がかかっているため、ロイマンの胃が死んだ。
魔法に対する精霊旗の反応
【ロキ・ファミリア】だからね。そりゃ、変なナマモノが黒いミノタウロスの放った魔剣相手に似たようなことをしてたらピンとくるよ、というわけで先手を打った感じです。
並行詠唱出来る治療師
リヴェリアの教導とリーネを部隊長にした往診行脚。そして、アクスが居なくなったことで元気がなくなったアミッドのために頑張った。それはもう頑張った。
ディアンケヒト様
原作と違い、ロキと一緒に敵陣にカチコミ。理由? アクスしかないでしょ。
アストレアには流石に負けるだろうけど、ディアンケヒトも暗黒期をミアハと駆け抜けた銭ゲバだから。戦えるって信じてる!
小型の刃物? 医者ってメス投擲がデフォじゃないの?
エニュオが居る部屋。原作と描写違うくね?
本作オリジナル。
ヒント:アミッド救済といったな? ちょっと嘘じゃ。必要なのだ聖女の絶望が!! 救済だぞ!
後書きの後書き
今更ふと思った。
アミッドの願望に理解どころか協力してくれて、応援どころか一緒にやりたいと一生懸命ステップアップしてくれる男。
この戦いが終わった後は、その