ディアンケヒト・ファミリアの末っ子   作:マジックテープ財布

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 お久ぶりの方はお久ぶりです。はじめましての方は初めまして。
 現在も当方の作品を見ていただいている方はご愛読ありがとうございます。
 マジックテープ財布と申します。

 本日は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のソーシャルゲーム。メモリア・フレーゼのイベントに出てきた勇士達の太神楽(ヴァルハラ・パニック)の二次創作となります。
 キャラが違う?こんなキャラじゃない?そこはすみません。
 

※おいおい、いきなり外伝乗せんじゃねぇよという方も申し訳ございません。
 近日中に1話は投稿します--が、既に隔週で別作品を投稿しているので途中で更新は途切れることをお許しください。(多分5話か6話ぐらいでストップ。書きたくなっちゃんだからしゃあない)


メモリア・フレーゼ系
この世はどこも苦労人で溢れている。癒さなきゃ


 オラリオ。『ダンジョン』と皆が呼んでいる地下迷宮の上に築かれ、今や世界に轟く大都市にまで発展した迷宮都市である。

 そこではダンジョンに潜ってはそこでモンスターと戦い、『魔石』と呼ばれる石やモンスターの一部である『ドロップアイテム』をダンジョンや街の管理を行っている『ギルド』などに売ることで生活の糧にしている冒険者という存在が居り、彼らはオラリオの中に何柱も居る神々の中から1柱の神を主神として定め、眷属──『ファミリア』となることでダンジョンでもある程度戦えるように変化する。

 そんな『ファミリア』だが、探索系と呼ばれるダンジョンに深く潜ったり素材を持って帰ることを命題にしたファミリアの他、市民を含めた食糧供給や娯楽の供給。探索系のファミリアを相手にした武器や回復薬(ポーション)の製造や販売など、主神によって活動は大きく異なる。

 

 ただ、そんな主神は当たり前だが神である。下界の人間たちよりも気まぐれが多い。当の神たちが言うには『暇を持て余した神々の遊び』らしいが、それに付き合うのは──そのファミリアの眷属たちであった。

 

***

 

 朝の7時具合ごろ、オラリオの中央から北西のメインストリートに位置する白い石造りの建物。光玉と薬草のエンブレムが刻まれた看板が揺れるこの建物の中のカウンターでは3人の男女が話し込んでいた。

 

「うちのアクスを貸して欲しいとは……。いきなりですね。また、豊穣の女主人の臨時バイトでしょうか?」

 

 白銀の長髪を垂らした人形のような女性──【戦場の聖女(デア・セイント)】アミッド・テアサナーレが問い掛ける。医療院が開いていない時間帯に押しかけてくるという非常識さには目を瞑るが、いきなり横で検品の手伝いをしてくれているアクスというパルゥムの団員を貸せと言うのは如何なものかと思った彼女は少々不機嫌そうな雰囲気で返事をする。

 そんなアミッドから発せられる不機嫌そうな雰囲気をのらりくらりと躱す女性はシル・フローヴァ。豊穣の女主人という酒場の看板娘で一般人なのだが、彼女は自分よりも身体能力が上のアミッドに対してまるでそよ風の中を歩いているかのように平然と理由を話し出した。

 

「いえ。あっちもあっちで大変なんですが……。実は私、とある神からある店舗の経営を任されることになってまして」

 

 曰く、とある神──ぶっちゃけるとこのオラリオで最強の一角とされる【フレイヤ・ファミリア】の主神がいきなり店を開くことに決めたのだとか。

 その店の店名はすなわち『美男☆楽園(イケメン☆パラダイス)』。それを聞いた神々がド直球な店名に噴き出したらしいが、神々のセンスをあまりよく知らないアミッドとアクスは『イケ……メン?』『パラァ……ダイム?』と、かなり棒読みで意味が分からないといった具合に首を傾げていた。

 

「つまり、格好良い男の人と一緒にお酒を飲むところです。そこでなんですけど、アクス君にも接客のお手本として1日こちらに入っていただきたいのですが」

 

「僕、お酒飲めないです」

 

「12歳ですもんね。だけど、その時は果実水を飲んでくれていいから」

 

「アクスは世間一般の格好良いではありませんが?」

 

「可愛い系なので問題ないでーす。後、地味にアクス君が泣いてますよ?」

 

「グスッ。僕、今日仕事……」

 

「お休みだよね?」

 

 一体どこから漏れたのだろうか。そもそもここ、【ディアンケヒト・ファミリア】が運営する治療院の接客とそういった女性との語り合う場の接客では色々違うことを理由に拒否するが、明らかに劣勢だと悟った彼女はカウンターに身を乗り出して涙目でアクスの目を見た。

 

「駄目……ですか?」

 

「駄目です。無理です。出来ません」

 

 必殺のあざとさを用いた懇願を前に、どこぞのブラックファミリア(ヘルメス・ファミリア)の団長のような死んだ魚の目をするアクス。まるで雲をつかむような手応えに彼女が頬を膨らませていると、そこにアミッドがまさかのOKを出した。

 

「あのー、お姉ちゃん?」

 

「治療院では団長と呼びなさい。アクス、冒険者以外の職業を体験するのも良い経験になると思います。仮にこのファミリアを去ると決めた場合、選択肢は多い方が良いので。つきましてはフローヴァ様。よろしくお願いします」

 

「はい」

 

「くれぐれもお酒は飲ませないこと。後、おやつを与えすぎないように。後、夜遅くに帰らせないように。後、【フレイヤ・ファミリア】の【黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)】に変な言葉を吹き込まれないように──」

 

 出るわ出るわ注意点の数々。まるで初めてのお使いに出かける子供に言い含めるような注意点の数々に、シルはついつい『うわぁ……』という言葉が漏れる。ただ、アクスはこの【ディアンケヒト・ファミリア】で最年少ゆえに団員たちから末っ子扱いされているため、そういった心配は尤もだとシルは自信満々に『お任せください!』というや否や、唐突に出てきた1人のパルゥムの手によってアクスは強制連行される。

 

「や”-! 人攫いー! なんでアルフリッグさんが居るんですかー!」

 

「店長命令だ。黙ってついて来い、同胞」

 

 【炎金の四戦士(ブリンガル)】ガリバー兄弟の1人であるアルフリッグに引き摺られながら小さくなっていくアクスの姿に手を振るアミッド。

 なお、ここまでアクスから『行く』とは言っていない。悲しいかな、姉と歳上の女性によって齢12歳のパルゥムは別の職業へと出荷されていくのであった。

 

***

 

「では、お手本をどうぞ!」

 

 自分はなぜこんな所に居るのだろうか。本日10回目の自問自答をしたアクスは目の前の女性を見る。

 【万能者】(ペルセウス)アスフィ・アンドロメダ。主神であるヘルメスに引っ張り回されている【ヘルメス・ファミリア】の苦労人だ。その目はこの世全ての理不尽を詰め込んだようにどす黒く、何を思うこともなくアクスを見つめている。

 そんな『仕事があるから仕方なく働く苦労人(ヘルメス・ファミリアのやみ)』のような瞳を見て、アクスは決意した。

 

 あぁ、この人は心の病気なんだ。ならば、癒してあげないと。

 

 彼を拾ったアミッドの背中を一心に追いかけていたアクスは近くに居た【猛者】オッタルに果実酒を注文。アスフィの前に置いた。

 

「こちら、果実酒です。清涼感のある風味ですが、御嫌いでしょうか?」

 

「あ、すみません。いただきま……うぇあ!? なんで【小神父】(リトル・プリースト)が!?」

 

「こちらではアクスとお呼びください。ここに居る理由については雇われ店長とアルフリッグさんに拉致られました」

 

 今更気付いたのか、驚くアスフィにアクスは無表情で淡々と説明する。理由に納得した彼女は同類を見るような目で彼を見、ガリバー兄弟の他の3人は『そこまで堕ちたか、このクソは』という一糸乱れぬ罵倒を長兄のアルフリッグにぶつけていた。

 

「本日はどのような経緯でご来店を?」

 

「えっと、ヘルメス様から依頼があって……」

 

「なるほど。ですが、時にはお休みになられた方がよろしいかと。アスフィさんに何かあればヘルメス様も大層お嘆きになりますし、僕も悲しいです。今だけはここで羽根をお休めください」

 

 アスフィの身体を気遣う物腰柔らかな言葉の数々。それに伴って『お酒のみではお体を崩します』とナッツが少量盛られた小皿が彼女の前に出される。

 惜しむらくはどこぞの死の1歩前から復活させる聖女(アミッド)のように無表情なのだが、それを抜きにしても完璧すぎた接客にアスフィは気づくと両手で大きく丸を作っていた。

 

「ちょっとー! なにあの子ー! あなたの眷属ぅ!?」

 

「【ディアンケヒト・ファミリア】から借りてきちゃいました」

 

「おや、アフロディーテ様。ご機嫌麗しゅうございます。そのような我々の目の届かぬ場所に居られましてはせっかくの美貌が台無しです。ささ、こちらへどうぞ」

 

 布と紐という際どい衣装を身に着けた女神──アフロディーテが叫ぶと、それを見つけたアクスがカウンター席を勧める。若干挙動不審になりながらも席に座るや否や、『本日はどのようなお酒を召し上がりますか?』とアクスは訊ねる。

 

「そうね。ブランデーを……ってちがぁぁう!」

 

 ついつい客になりかけていたアフロディーテが叫ぶ。叫びながらもちゃっかりオッタルからブランデーを受け取った彼女は、アクスを親指で差しながら【フレイヤ・ファミリア】の幹部たちを一瞥する。

 

「うちのファミリアの空気とはかなり毛色は違うけど、100点。……いえ、100万点あげるわ! あなたたち、この子の真似をしなさい」

 

「チッ、【小神父】(リトル・プリースト)の真似が早々に出来て堪るかよ」

 

「あぁ、彼は同胞の中では珍しく捻くれることが無く育ったパルゥムだ。そんな真似をしてみろ、俺たちの情緒が死ぬ」

 

『それな!』

 

「彼の気性や寄り添う姿勢はあの【戦場の聖女】(デア・セイント)由来だ。簡単に模倣出来るはずなかろう、時間の無駄だ」

 

「非情という漆黒の衣を纏いし我には無き素養であるゆえに。……いや、ほんとキツイ」

 

 全員が全員拒否を示す中、アクスは新たな客──紙袋を携えた薄紅色の髪をした女性をアスフィの隣に座らせていた。彼女はアフロディーテの発する改革に狼狽える幹部たちを心底楽しげな瞳で見つめると、すぐにアクスの方へと向き直った。

 

「アクス君、私を呼ぶときはちょっと小声でお願いしますね。後ろのに聞かれると面倒なので」

 

「承知しました、ヘイズさん。果実水にしておきましょうか? この後お仕事ならばお酒は控えるべきかと」

 

「あ"ぁ~。あの戦闘狂たちに無い心遣いが身体にスゥーッと効いてくるぅ」

 

 【女神の黄金】(ヴァナ・マルデル)ヘイズ・ベルベット。またの名を『仕事があるから働く苦労人2号(フレイヤ・ファミリアのやみ)』だ。『なぜ居るんだ』と尋ねたオッタルから無言で果実水を乱暴に引っ手繰った彼女は一気に飲み干すと、アルコールが入っていないにも関わらずトロンとした目でアクスを見やる。

 

「私だって頑張ってるんですよぉ~。ですがね、団長が何も改善してくれなくって……」

 

「ヘイズさんは治療だけではなくて団員の方々への食事も管理されてらっしゃるとか。中々出来ることではありませんし、そのお姿に僕も尊敬しております。それに、皆さんもあなたに感謝していると思いますよ?」

 

「してませんって。皆、私たち都合のいい回復薬(ポーション)代わりと思ってますよ」

 

「ですが、ヘイズさんたちが居なければ訓練でそのままです。その度に回復薬(ポーション)を使うのもお財布が厳しい。感謝こそすれ、無関心とはいかないでしょ」

 

 ヘイズが吐露した心境にアクスは丁寧に答えつつ、『ねっ、オッタルさん』と隣で佇んでいたオッタルに同意を求める。以前、彼女が指揮をしている『満たす煤者達(アンドフリームニル)』という救護部隊の労働環境について苦情を言われても一切改善することが無かったという駄目っぷりを披露した彼だが、今回も駄目であった。

 

「俺に言われても……困る」

 

「あ"あ"ぁ"ああ"ぁあ!」

 

 流石は敗北を重ねても諦めずに挑み続け、現在のオラリオ最強まで上り詰めた存在。どうやらファミリアを纏め上げるという団長必須のスキルすら己の強さのためにかなぐり捨てたようだ。

 そんな彼が思考を放棄した姿にヘイズは叫ぶ。それはもう毎日残業で心身ともにすり切れたOLの叫びのごとく泣き叫んだ。

 そんな叫び声にようやくヘイズの存在に気付いた幹部たちは目を丸くしていた。

 

「なんであいつがあそこに居やがんだ? 仕事はどうした」

 

「買い物の帰りだろうな。……しかし、品性の欠片もない叫びだな。【フレイヤ・ファミリア】の自覚がないのか?」

 

「あ、アクスが宥めて大人しくなった」

 

『なんだあいつ、最強かよ』

 

 ヘイズの耳に入ったら間違いなく『お前が言うな』と再度暴れそうな言葉を投げかける【女神の戦車】(ヴァナ・フレイヤ)アレン・フローメルと【白妖の魔杖】(ヒルドスレイヴ)ヘディン・セルランド。その一方でオッタルを叱りつけながらヘイズの肩を何度も叩いて宥めることに成功したアクスに【黒妖の魔剣】(ダインスレイヴ)ヘグニ・ラグナールとガリバー兄弟は当惑するのであった。

 そこからアフロディーテプロデュースによってぐい飲みコールとやらを強要された幹部たち。ヘイズが馬鹿笑いする中でもはや憤死するレベルの生き恥と恥辱に打ち震えているが、アクスは少々考えながら物申す。

 

「あ、でもさっきのぐいのみこーる? っていうの。アフロディーテ様のところだけフレイヤ様にしないと不敬では? こう……フレイちゃんとか?」

 

『出来るか!』

 

「あ、いいですね。それ採用です」

 

『え"えぇぇ!?』

 

 シルの鶴の1声によってそれぞれ死んだような目で再びコールをする羽目になった。雇用店長は強い。改めてアクスはそう思った。

 その後も【アフロディーテ・ファミリア】の眷属であるサンドロとベックリンの調節技巧を用いた『チェキ』なる物を伝授された【フレイヤ・ファミリア】の幹部たち。その技巧が『素』であることや余りの茶番ぶりに絶句する中、シルはアクスにお手本を示すように言う。

 しかし、当の本人はどうやら答える暇さえないらしい。

 

「クククッ……、贄が続々と白き衣の元に。……ってえぇ。なんで【小神父】(リトル・プリースト)のところにあんなに居るの?」

 

「こいつらほとんど満たす煤者達(アンドフリームニル)じゃねぇか!」

 

「私が精神的な回復のために連れてきました! あ、お代は団長にツケとくので!」

 

 捌いても捌いてもカウンターに座る治療師(ヒーラー)薬師(ハーバリスト)の群れに唖然とするヘグニとアレンを前にヘイズはどや顔を決める。ついでに料金については勝手にオッタル行きになった事実に彼は何も言いだすことはなかった。

 

 その後もアクスは働いた。話を親身に聞き、頑張っていることを認め、同じ治療師(ヒーラー)として尊敬の念を送る。たまにアクスを膝に乗せた状態でサンドロとベックリンに絵を描かせるという『異種チェキ』などを混ぜ込むと、彼女たちは『後1週間は戦えそう』とヘイズを残して満足げに帰っていく。

 1週間しか保つことが出来ない労働環境にアクスは改めてオッタルを見るが、我関せずとばかりにドリンクを提供して回っていた。──オラリオ最強の【猛者】の姿か、これが。

 

「良いなぁ、慰めてくれる人。私には頑張っても……なにもないのに……」

 

「アスフィさんは頑張ってますよ。ですが、忙しすぎてお化粧もそこそこのご様子。よろしければ手荒れ防止のクリームなどは如何でしょうか? ……ほら、良い匂いでしょ? あなたは素材は良いのですから、磨かないのは損ですよ」

 

「ア"ク"ス君ー! 買うー! これ買いますー!」

 

「私もー! 手荒れとかほんと酷いからー!」

 

「えぇ、治療院にて販売しておりますよ。ですが、今のあなた方に必要なのは安らぎ。お酒ばかりというのも単調なので、ここらへんで1杯薫り高い紅茶でも如何でしょう。誠心誠意、お淹れさせていただきます」

 

 相変わらず無表情ながらも客の自尊心を擽る言葉を言いながら紅茶を淹れるアクス。まるで本職のような接客に異様な光景にアフロディーテは頬をひきつらせた。

 

「あっちはあっちで私が教える前に色々やっちゃってるわね。地味に自分のファミリアの宣伝もしてるし」

 

「まさかあそこまで刺さるとは思ってませんでした、【ディアンケヒト・ファミリア】の接客術恐るべしっ!」

 

「よく見たらあんたのところの黒服も居るけど?」

 

 心に闇を抱えた者。悩みを持つ者。漆黒の労働環境に喘ぐ者たち。そして何故かオッタル。

 『俺は強くなって戦うしかあの方に……』と珍しく弱音を吐くオッタルに、『今の最強はあなたです。これからも最前線として輝いてください』と励ますアクスに大粒の涙を流したのは秘密である。

 

 そんなことをしていると、1人の女性が入店してくる。彼女はきょろきょろと周囲を見渡し、寄ってきた【アフロディーテ・ファミリア】の男性やトンチキな声を上げるヘグニを差し置いてカウンターへと座る。

 

「随分活躍しているみたいね」

 

「あ、お姉ちゃん」

 

「今はお客です。とりあえず飲み口の甘いお酒を1つ」

 

 すっかり使い物にならなくなったオッタルの代わりに、アクスがアミッドの前に果実酒と水が割られたものを出す。そのすっきりとした飲み口が気に入った彼女はそのまま何杯かお代わりをし、そして──。

 

「酷い……皆酷いの。私の心労も知らないで毎日毎日……」

 

「そうですよね! 回復しろとか、治せとか……。お前らもうちょっと加減しろ馬鹿って思っちゃいますよね!」

 

「はい。治すのが私たちの命題ですが、そうポンポン無茶ぶりと仕事を増やされるのは我慢がなりません!」

 

「ははっ、仕事かぁ。なんでヘルメス様、毎回こっちに振って来るんだろ。でも、それを素直に聞いている自分に腹が立ちます」

 

『それすっごく分かります~』

 

「俺は……俺はあの方の隣に立つだけで良いんだ。団長なんて……うぅっ」

 

 なんだこれは。地獄だろうか。いや、地獄の方がまだ生温い光景にアクスは心に蓋をしながら世話をし続ける。

 

治療師(ヒーラー)である私が癒しを求めるのは間違っているのでしょうか?」

 

「まちがってなーい! アハハハハ」

 

「アミッド様も人間でございます。決して癒しを求めるのは間違いではございません。我々に出来ることがあればご協力 『お姉ちゃん……』 は?」

 

「いつもみたいにお姉ちゃんと言って!」

 

 また始まった。

 アミッドは酔うと結構ダルい。普段は酒を1滴も飲まずに休日はもっぱら回復薬(ポーション)や薬の開発に従事している仕事人間な彼女だが、極々たまにそういう日もある。

 その時は決まってアクスに酌をさせながら翌日は羞恥心に叫び声を上げるのだが、恐らく今回は今までの中で1番恥ずかしくなるだろう。そう思いながらもダル絡みしてくるアミッドや『良-なー』と言って来る客相手にアクスの中にある奉仕の精神は爆発する。

 

「お姉ちゃんも無理しちゃ駄目だからね。ほら、水飲んでおつまみ作ったから食べてね」

 

「うぅ、私の癒しはもうミアハ様とアクスだけぇ」

 

「癒しがほしぃ……欲しいぃ!」

 

「私は切実にお休みが欲しいぃ。アクスぅ、明日はお願いしますねぇ」

 

「この料理……あの人の味がする。懐かしい、うぅっ」

 

 摘まめる料理を作り、慰め、癒しを提供する。歓楽街に入ったことが無いアクスだが、そういったサービスがあることを団員たちから聞いたことがあるアクスはそういったサービス業の人たちへ尊敬の念を送る。

 

 外野では何故か【勇者】(ブレイバー)フィン・ディムナも介入しており、【フレイヤ・ファミリア】の方はお客が入りすぎて幹部たちでは対処が追い付いていない様子。

 来て欲しいのに来てくれない。もっと自分を見て欲しい。そんな客の情念ともいうべきものが具現化してそれぞれが武器を手に戦っているが、アクスは我関せずとすっかり固定客──というか、地縛霊みたいに席を離れようとしない者たちへの接客を続けた。

 

***

 

 結局、あの後1級冒険者が暴れたことによって建物が半壊。なにもかも有耶無耶になったことでアクスは酩酊状態のアミッドを抱えて店から出ていく。

 パルゥムの身体にとってヒューマンの身体は非常に重……ゲフンゲフンだが、最近なったLV.3の身体能力は伊達ではない。なんとか治療院へと戻ることに成功する。

 朝になるとアミッドの『消えたい』などの後悔の念が彼女の部屋から呪詛のように漏れてくるのだが、こればかりは仕方ないとアクスは徹底的に無視した。

 

 そして、件の騒動から1週間。すっかり元に戻ったアミッドとアクスがいつものように接客を行っていると、治療院に珍しい客が2人も来た。どちらも薬などに使う希少な──一方はダンジョンの深層からしか取れないドロップアイテムも携えてきており、珍しく上擦った声のアミッドを前に一斉に2人は頭を下げた。

 

【小神父】(リトル・プリースト)を1日借り受けたい。これは手土産だ。後、金の方は心配するな」

 

「うちにも頼むよ。値段はこれぐらいで足りるかい?」

 

 その後、アクスは1週間おきに【フレイヤ・ファミリア】と【ヘルメス・ファミリア】を往診する羽目になった。

 どうやらアミッドの言う通り、この世は理不尽に溢れているらしい。12歳という若さでその真理にたどり着いた彼の目は死んだ魚のような目になっていた。

 

 なお、金に目がくらんだ主神のディアンケヒトは団長やその他から厳しい言葉を投げかけられ、かなり凹んだとかなんとか。




というわけで、苦労人を一杯連れて来たよ!ほんとはエイナさんも連れて来たかったけど、収拾付かなかったから入れられなかったよ!
精神が摩耗した時に可愛い系パルゥムが誠心誠意慰めてくれる。どこかに需要有りそう。
労働基準?オラリオにそんなものはないよ。

ちなみに設定は以下
名前:アクス・フローレンス
性別:男
年齢:12歳
種族:パルゥム(身長は100Cとリリぐらい
所属:ディアンケヒト・ファミリア
経緯:元々オラリオのとある料理屋の息子。大抗争時にアミッドに拾われ、そこから冒険者(ヒーラー)としてファミリア入り。4年でLv.2になり、【ロキ・ファミリア】の遠征やソード・オラトリアなどの死線を経てLv.3へ。
メインウエポン:槍
元ネタ:アスクレピオス + ナイチンゲール(某英雄ゲーの医療室組)

魔法
ケーリュケイオン治療魔法(詠唱文で効果が可変)
詠唱:
死と再生の象徴よ、我が声に耳を傾けたまえ。癒しを求める者よ、我が声に集まりたまえ。
我が癒し、万物(なんじ)を救う。万物(なんじ)は助け、我を救う。
誓いをここに。

※状態異常回復の際は詠唱
我は侵された者の安寧を願う者。

※傷の治療の際は詠唱
我は傷ついた者を癒す者。

※体力回復の際は詠唱
我は膝を折った戦士を立ち上がらせる者

※???
我は冥府の領域を侵す者。されど、その対価を冥府に放り投げる者。

この誓いに基づき、我が行使する。
ケーリュケイオン

端的に言えば、アミッドとヘイズの間のような回復。
適した詠唱で魔法を行使すればタイムラグがほぼなく呪いを含めた状態異常、傷の治癒、体力の回復ができる。アミッドのように任意で切り替えや持続回復は不可能。
発展アビリティ【魔導】のおかげで範囲回復が可能だが、精々15M程度。ヘイズのように超広範囲での回復は不可能。
元ネタはアスクレピオスの杖

プロデューサーFの談:
君、良いね。親指にティンと来た。今度の遠征について行かないかい?

某四兄弟の談:
『あいつは善意が服着て歩いてるお人好しだ。』
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