5000文字は作るのにちょうどいいってわかりました。
アクス・フローレンス。【ディアンケヒト・ファミリア】所属の
彼はいわば『特別』で、治療院で働く片手間に往診という形でオラリオやダンジョンを練り歩きながら体調不良者や怪我人といった存在を癒している。団員たちも人手が限られているため、怪我人が担ぎ込まれてくる前にやれる範囲の応急処置を事前にされていたり、そもそも治療されたことで治療院に担ぎ込まれずに済んだーーという対応には助けられており、そのことからアクスの奇行とも言うべきライフワークを不問にしている。
ただ、いくら冒険者といってもアクスはパルゥムの子供というか弱き存在。そんな彼を心配してこれまで様々な試みが行われたが、残念ながらそれら全ては失敗に終わる。
最終的に『あ、こいつは野放しにする方が万事上手く行くわ』という結果になり、基本的に放逐状態。主神たちの目線で語ると『勝手に散歩に行って帰ってくるお利口だが、それ以外は駄犬』のような対応になってしまった。
本日は、そんな試みの数々をご覧いただこう。
●Chapter1:見張り●
この日、アミッドは往診に向かうアクスの見張りとしてとある団員を抜擢していた。
彼は【ディアンケヒト・ファミリア】に入ったばかり。されど、試しに振ってみた製薬作業も特に遅延することなく進めることが出来たので来週にでも本格的にシフトに入ってもらう手筈の期待の新人であった。
なので、オラリオに来て日も浅いという理由から地理を覚えてもらおうと、アミッドは『適当に監視しながら街を回ってみてください』と言って彼を送り出す。
アクスは平穏無事に往診を済ませて帰ってくる。そして、彼も地理を少しは把握して来てくれているはず。
──アミッドはそう考えていた。
ただ、彼女の考えは大きく外れてしまう。なんと、1時間も経たない内にアクスと共に出かけたはずの彼が血相を変えて帰ってきたのだ。
「ほんのちょっと目を離しただけなんです! 本当なんです!」
「大丈夫ですよ、いつものことなので。アミッド様」
「はい。今のこの時間となると【ニョルズ・ファミリア】の鮮魚店ですかね。まぁ、数時間もすれば戻って来るでしょう。あなたは日報を書いてから、もう1度街を見て回ってください。特にギルドへの道筋は覚えておくように」
涙声で事情を話す彼をマルタは慰めつつ、アミッドに視線を移す。その視線に気づいた彼女はアクスの本日の動きをそらんじ、メレン在住のファミリアの名前を出した。
出掛ける前にお小遣いをせびって来たので、今頃は往診しながら魚を興味津々な様子で見ている頃だろうか。そう考えるとちょっと面白くなったアミッドはクスリと笑うと、未だ涙目な新人に今後の予定を伝えると業務に戻っていく。
なお、アミッドの想像通りに数時間後にアクスは何事もなく帰還。注意をしても、お土産で買ってきた魚を片手に相変わらず絶対分かっていない生返事を返したのだった。
●Chapter2:手繋ぎ●
これもまたとある日。治療院には珍客が訪れていた。
「リヴェリア様、ようこそいらっしゃいました。ご用件は遠征でしょうか? 少々早い気がしますが」
「今回はアンフィス・バエナの討伐も視野に入れているからな」
リヴェリアが言うには遠征中にアンフィス・バエナのインターバルが明けるため、ラウルを指揮官とした2軍で事に当たらせるらしい。そのため、事故を見越しての
幸いなことに他の治癒系
「助かる。それで、代金だが……」
「すみません、代金の前にリヴェリア様に
「突然だな。素材でも足りないのか?」
「いいえ、この子に着いて行って欲しいのです」
首を傾げるリヴェリアに、アミッドは隣で我関せずと往診の準備を行っていたアクスを持ち上げる。突然のことにしばらくジタバタしながらも、持ち上げた存在がアミッドということで大人しくなった彼もまたリヴェリアの目を見ながら首を傾げる。
「アクスに着いて行って欲しい……とはなんだ?」
「言葉通りの意味です。この子は往診中によく行方不明になるので、リヴェリア様なら追いきれると思いまして」
アミッドの説明にリヴェリアは初めこそ訳が分からなさそうに聞いていた。しかし、これまで何人もの団員が途中でアクスを見失い、数時間後に彼が1人で帰って来るということを繰り返しているという話に珍妙な生物に出会ったような眼差しでアクスを見る。
【逃走】という不名誉な発展アビリティの類ではないかと尋ねるが、アミッドは『素でこれなんです』とそれを否定。そもそも、あれはLV4以降に発現するレアアビリティ。アクスの今のレベルでは絶対に不可能である。
「ひとまずは分かった。それで……見張れば良いのか?」
「はい。どういった時に消えるのか、着かず離れずで観察してもらえたら……と。おそらく怪我人を見つけた時だとは思いますが」
なんとも奇妙な
「着かず離れずというと、手でも繋ぐか?」
「手段はお任せします」
そう言ってアミッドは持ち上げた状態のアクスをリヴェリアへ渡す。もはや犬猫の扱いなのだが、本人は特に気にしないままリヴェリアの顔をしばらく見てからニパッと笑った。
「アイズには無かった可愛らしさだ。あの子には本当に苦労させられた……。本っっ当に!」
「私もその時にはここに居ましたが……、すごかったと聞いております」
毎日、表情をあまり変えずにダンジョンに行ってはモンスターを刈り取る幼女──『人形姫』の話は有名である。あの時の彼女と今のアクスの様子を比べてしまったリヴェリアは、昔のことを思い出したついでに色々と苦労がぶり返してしまう。
それゆえ──だろうか。『今は今』と気持ちを落ち着けたリヴェリアは、そのまま
「母親みたいだな」
「神ロキが言ってた"リヴェリアママ"だけど、魂で理解したわ!」
「未亡人的な雰囲気がやべぇ」
治療院の中に居たエルフを含めた大勢のどよめきを背中に受けつつも、治療院を出て行ったリヴェリア。そんな彼女が数時間後、酷く疲れたような表情をしながらアクスを連れて帰ってくる。
その日、『他派閥の報告書の書き方に興味がある』と書かせてもらった日報にはこう綴られていた。
●Chapter3:ハーネス●
これまた、とある日のこと。ライフワークである午前の銭勘定を思いのほか早く済ませたディアンケヒトは、往診へ向かうアクスに『ついて行こう』と声をかけた。
「あの、大丈夫ですか? ディアンケヒト様」
「見失うんじゃろ? 面白いではないか」
準備をするディアンケヒトにアミッドは遠慮がちに尋ねるが、彼はサムズアップをしながら『問題ない』と白い歯を見せる。
ファミリアの団員が軒並みアクスを見失う。それはすなわち神々が好む『未知』に他ならない。
ならばこそ、その未知を娯楽代わりに体験しなければ無作法というもの。そんな天界から降りてきた神々に標準装備されている欲望を胸に、ディアンケヒトは『秘密兵器』をアクスに装着する。
それは肩や胸、太ももの付け根の部分をベルトで固定する器具。簡単な言い方をすれば、ハーネスだった。
高所作業での転落防止のために装着するのが一般的な使い方だが、この場合の用途は『アクスの躾』である。『これならば勝手にどこぞに行かんじゃろ!』とどや顔でハーネスから伸びた紐を自身の腰に巻き付けるディアンケヒトに、アミッドはちょっと引いていた。
「じゃあ、行ってくる!」
「お気をつけて」
もはや何も言えなくなったアミッドに変わり、ベルナデットが彼らを見送る。その後ろ姿にほんの少しどころか、どこからどう見ても不安しか見えなかったのは彼女だけの秘密である。
そして──。
その不安が的中し、1時間後に全身ボロボロのディアンケヒトを引き摺りながらアクスが帰ってきた。幸いなことに骨折はなかったが、それでも酷い様相なためにディアンケヒトはすぐさま自室のベッドに寝かされる。
そんな彼が言うには
●Chapter4:達観●
度重なる見守りの失敗。最終的にディアンケヒトという別に尊くもない犠牲により、『もうあいつ1人で良いんじゃないか』という空気が流れたある日。
いつものように団員1人1人の日報を見ながらスケジュール全体の進捗を確認していたアミッドだったが……。
「またですか」
手にしていたのは、販売担当をしていた団員が書いた日報。その内容にアミッドはため息をつく。
他にも似たような被害を報告する日報がちらほらと……。
テイクアウトなどやっていないのに、未だそんなことをするなぞ頭がおかしいのではないだろうか。もはや、
そんな思いがアミッドの脳裏を駆け巡るが、それはそれで『虐待ファミリア』と言われそうなので自重する。
そんなこんなでしばらくアミッドやディアンケヒト。それと上層陣が頭を悩ませる日々が続いたものの、結果的にブロニアたちの報告を境に販売業務時のアクスの定位置はアミッドの隣となり、同時に往診は1人で行かせるように決まったとか何とか。
最初は同伴だったが、色々あって1人になったの図。
なんだろう、どこかアーマードコア6の621のように感じてしまう。
つまり、ディアンケヒト:ハンドラー・ウォルター概念!?
「ディアンケヒト、調子はどないや」
「ロキか。アミッドが塞ぎこんでおる。マルタやベルナデットもよくやってくれてるが、治療院の雰囲気が暗い」
「自分の調子を聞いたんやけどなぁ…」
よし、この線で行くか。