ディアンケヒト・ファミリアの末っ子   作:マジックテープ財布

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時系列を良く見返したら、ラキアの前に春姫の加入でした。申し訳ない。

まぁ、【百騎幻槍】(ひゃっきげんそう)3については適当に読み直してくんろ。

七夕なのにイチャイチャを書かないなんてふざけてるの? うん、本編が1年に1度とは言わずに一生会えなくなる織姫と彦星の物語みたいなもんだし。


【百騎幻槍】(ひゃっきげんそう)4 とある狐人(ルナール)が加入する裏では

 時はアレス軍がオラリオにカチコミをかける以前。もっと詳細に言えば、なんやかんやあって【イシュタル・ファミリア】がベル・クラネルと命を拉致したことまで遡る。

 

 子供は親。ないしは周囲の不安を敏感に感じ取る。

 そこから子供特有の処世術である『良い子になろう』として親の都合が良い行動をとり、褒めてもらうことで見限られないように努力するのが、育児に置いて『あるある』な子供の行動パターンだ。

 

 それは12歳のアクスであっても同じことが言え、【ロキ・ファミリア】に頼まれた『別の要件』の都合で【イシュタル・ファミリア】襲撃という難から逃れることが出来たアクスは、慌ただしくなった本拠(ホーム)の空気が徐々に悪くなっていっていることを敏感に感じ取っていた。

 数人が部屋を出入りする音の中に混じる金属が擦れる音。物々しいと形容できるほどの慌ただしさに加え、いつもなら帰ってきているお兄ちゃん(ベル)お姉ちゃん()が居ないこと。

 そしてなにより、『家族であるはずの自分がのけ者にされているような感覚』に不安を極限まで募らせた末っ子は、とんでもない行動を起こした。

 

 この行動は【イシュタル・ファミリア】が壊滅した翌日──美の女神に連れられたアクスがゲロるまで【ヘスティア・ファミリア】や【タケミカヅチ・ファミリア】の面々が知ることはなかったものの、その後に他の戦闘娼婦(バーベラ)から事情を聴いた【麗傑】(アンティアネイラ)アイシャ・ベルカはこう振り返ったらしい。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──と。

 

***

 

 アクスのやったこと。それは『完全なる根回しと妨害工作』だった。

 

 たかが火の玉1つを取っても一般人に当たれば命はなく、建物に当たれば最悪全焼するため、オラリオで魔法の類──それも攻撃魔法に属することは基本的に厳禁である。それに付随してファミリア同士の抗争ともなれば、本来はアポロンとヘスティアが行ったように神会(デナトゥス)で色々決めてから『よーいドン』するのが通例なのだが、これまた『例外』はある。

 

 よくあるのが『既にファミリアに実害がある場合』だ。

 ファミリアの本拠(ホーム)を壊された。主神や団員に怪我を負わせた。団員を亡き者にされた。例を言ったら星の数だが、実害を被ったファミリアがお上品にギルドに申し立てるのはほぼ皆無である。なぜなら、貴重な戦力を抗争で潰さないために話し合いで事を納めたがるのは目に見えているからだ。

 なので、『眷属によるカチコミ』という手段が生まれ、抗争が激化する……という最悪の図式となる。一般人にとってはたまったことじゃない。

 

 そんな一般人の心情をよく理解していたアクスは、ヘスティアやタケミカヅチたちが準備をしている裏で本拠(ホーム)から脱走。その足で【ガネーシャ・ファミリア】へと向かった。

 都合よくシャクティが応対してくれたため、部屋の外から聞こえて来た経緯──【イシュタル・ファミリア】によって団長と団員がダンジョン内で拉致されたことを密告。ギルドに話してもファミリアのランク的にイシュタルに無視される可能性が高いため、これから強行的に救出作戦を行うことを伝達し、【ガネーシャ・ファミリア】には歓楽街から避難してきた一般市民や娼婦の受け入れを依頼した。

 

 初めこそギルドを通さない私闘に怪訝な表情を浮かべていたシャクティであったが、私闘を行う原因も理由も明らかに【イシュタル・ファミリア】が悪いし、ギルドから警告してもイシュタルは素知らぬ顔をするのが目に見えている。

 なので、【ガネーシャ・ファミリア】は例え【ヘスティア・ファミリア】が敗北しても、ギルドにこのことを報告。しかるべき措置を【イシュタル・ファミリア】に与えることを約束し、歓楽街の出入り口()()【ガネーシャ・ファミリア】で固めることに同意した。

 なお、これは本来主神であるヘスティアなどが行わなければならない根回しの類だが、ファミリアを結成して間もない彼女は絶賛頭に血が上っている真っ最中。つまりは、駄女神状態にあった。

 

 なお、アクスは一応【ロキ・ファミリア】にも声をかけようと考えていた──が、団長であるフィンを含めてほとんどは【ディアンケヒト・ファミリア】に入院している。

 数日前にいきなり『幻影100人貸して欲しい』と人員斡旋を申し出てきたため、おそらくどこか危険なところに行ったのだろう。即座に動いてもらうのは望み薄といえる。

 

 そんなこんなでアクスの働きで【イシュタル・ファミリア】所属の全戦闘娼婦(バーベラ)の内、4分の1の人数が出入り口の対応をせざるを得なくなった。さらには【イシュタル・ファミリア】の本拠(ホーム)の爆発音に『私闘の開始』を悟った団員たちが、戦闘娼婦(バーベラ)を押しのけて『私闘の参加者(ヘスティア)たち』を中へ招き入れるという【ヘスティア・ファミリア】たちにとって追い風となるような動きも行ってくれた。

 

 これだけでも裏方としては合格点な動きだが、アクスの動きは止まらない。本拠(ホーム)に還った時には既に全員出払っていたため、彼は即座に魔法を行使。50人の騎兵と50人の歩兵を呼びだした。

 彼らに武装を施した後、アクスは歓楽街へと突撃をかます。そのまま戦闘娼婦(バーベラ)たちを騎兵の数と突進力の暴力で跳ね除け、多少の犠牲を払いながらも彼女たちの本拠(ホーム)の入り口を陣取った彼は改めて魔法を詠唱。歩兵100人を召喚し、出入り口を背にした状態で隊伍を組む。

 ヴェルフ製の鋼鉄の大盾が隙間なく並び、前列は膝を沈め、後列は肩越しに槍を突き出す。それはまさに集団を1つの鉄壁にする布陣であった。

 

 そのままアクスは本拠(ホーム)に入ろうと殺到する戦闘娼婦(バーベラ)たち相手に遅滞戦術を仕掛けた。

 

 長剣を振るう者。

 湾刀を携える者。

 大斧を肩に担ぐ巨躯。

 二本の短槍を指先で弄ぶ軽戦士。

 

 武器も戦い方も統一されていない。されど、共通していたのは全員が『1段階神に近づいた者たち(LV2)』であった。

 槍衾が牙を剥き、1人の戦闘娼婦(バーベラ)の全身を貫く。本来ならば致命傷のはずだが、それでも女戦士は強引だった。

 肩を貫かれながらも止まらない。血飛沫を撒き散らしながら盾へ激突し、そのまま怪力でもって盾を1枚叩き割る。

 圧倒的な膂力を前に、陣形の1部が揺らぐ。そこへ横合いから別のアマゾネスが猫のような体捌きで陣形の中へ浸透していく。

 陣形の内側に入りや否や、戦斧が踊ることで分身の胴が纏めて薙ぎ払われる。それでもアクスはその圧倒的な力を排除しようと指示を出し、木片の如く空間にばらまかれた分身の残滓ごと戦闘娼婦(バーベラ)を追い出すように後列を前進させた。

 

「うざってぇな!」

 

 雪崩の如く押し寄せてくる幻影に対して戦闘娼婦(バーベラ)も応戦する。

 ただ、『量より質』も正義だが、『質より量』もまた正義であった。

 決して乱れず。決して恐れず。何よりも数が多い。そんな集団を前に戦闘娼婦(バーベラ)たちは徐々に押し出されていく。

 それでも、無事では済まないのがレベルの差である。100人居た歩兵が40人まで減り、このままでは突破を許してしまう。

 

 ならばどうするか。決まっている、『追加発注』だ。

 

「詠唱!? 潰せ!」

 

 圧倒的隙が生じる詠唱を前に戦闘娼婦(バーベラ)たちが突撃するも、アメフトのラインマンが如く歩兵たちはアクスに近づけないようブロックし、横合いから騎兵が殴りこむことで相手の気勢を削ぐ。それだけで数十秒という貴重な時間が稼げ、さらには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()割かし早くなった詠唱速度でもって彼女たちがアクスを潰す前に魔法が完成した。

 

 改めて生み出された歩兵が100名。地面に散らばった武具を拾い上げながら陣形を再構築する。

 その後はいわば『焼き直し』であった。

 防御陣地と獰猛なアマゾネスのぶつかり合い。侵入されたと同時に排除を開始。数が少なくなれば追加発注。そんなイタチごっこが数度続いた頃──歓楽街に火の手が上がり出す。

 

「なんだ!?」

 

「大変だ! 【フレイヤ・ファミリア】が攻めてきやがった!」

 

 攻め込もうとしていた派閥から逆に侵攻されることになった戦闘娼婦(バーベラ)たちは、驚きながらも自分たちの私財を纏めようと蜘蛛の子を散らすようにその場から離れていく。いきなり敵の姿が無くなったことにアクスは呆然と立ち尽くしていると、速過ぎる何かが本拠(ホーム)に向かって突っ込んできた。

 いや、『突っ込んできた』と思った時にはもう遅い。70人ほどいた幻影の半分ほどを()()()()()何かはそのまま【イシュタル・ファミリア】の本拠(ホーム)へと突っ込んでいったため、ヘスティアに危害が加えられる前に止めようと追いかける──その時だった。

 

「あら?」

 

 突然の声にアクスは反射的に槍を向けてしまう。

 

 しかし、それが良くなかった。

 

 炎と闇のコントラストでよく見えないが、槍を向けた方向から途端に濃密な『死の気配』がアクス目掛けて流れ込んでくる。目を離せばたちまち身体をバラバラに解体され、真っ黒に炭化する未来が脳裏にはっきりと浮かび上がるほどの殺気に、アクスは救いたい存在のために未だ戦っているであろう団長(ベル)を思い出しながら『それでも』と前を向く。

 そうしていると、件の存在が徐々に近づいてきたことによってその正体が露わになった。

 

「ふ、フレイヤ様! お久しぶりです!」

 

「えぇ、久しぶりね」

 

 以前お世話になった美の女神の登場に、アクスは手に持った槍を置いて片膝をつく。周囲に居た幻影たちも同時に武器を置いて片膝をついたのでちょっとした王への謁見染みたことになってしまったが、フレイヤ自身は特に気にした様子もなく『ヘスティアね』とアクスがここに居る理由を問いかけた。

 

「はい。団長であるベル・クラネルが拉致されたため、現在ヘスティア様とタケミカヅチ様がイシュタル様に直談判に向かっている最中です。よろしければ今しばらくお待ちを」

 

「いいえ、待てないわ。私もちょっとイシュタルに話があるの。女同士の……ね」

 

 少々怒りが見え隠れする表情をしながら、フレイヤは『通らせてもらうわね』とアクスに近づいていく。

 本来であればフレイヤも通すべきではないのだろう。しかし、目の前の女神を通さないということはすなわち、()()()()()()()()()()()()()と同義である。

 

 【フレイヤ・ファミリア】は不愛想な叔父さん率いるお兄さん、お姉さんの集まりでは決してない。女神が心変わりすればオラリオを焦土と化すことも厭わない異常者の集まりである。

 オラリオで生まれ、オラリオで育ったゆえにそのことが分かっていたアクスは、大人しく幻影たちに指示して道を明け渡す。ずれたことで綺麗な1本道が形成され、そこをフレイヤはオラリオの頂点に君臨するに相応しい神の風格を漂わせながら歩いて行く。

 

 しかし、ふと足を止めたかと思いきや。後ろをついて来ていた4人のパルゥムに声をかけた。

 

「アルフリッグ、ドヴァリン、ベーリング、グレール」

 

『はっ!』

 

「この子と一緒に入り口を守りなさい」

 

 フレイヤの命令にガリバー兄弟は承服し、即座にアクスの前に立つ。そこに疑問も、反論すらない。

 

 なぜならそれが女神の神意だから。

 

 改めて都市最大派閥のなんやかんやをまざまざと見せつけられたアクスだが、真剣(シリアス)な時間はここまでである。

 正直なところ、【フレイヤ・ファミリア】が乱入してきた時点でイシュタルの命運は決まっていた。彼女の眷属である戦闘娼婦(バーベラ)たちも根城である歓楽街を燃やし、力の差を見せつけられ、抵抗すらできずに戦闘不能になっていく。

 もはや、『詰み』の状態であるイシュタルが塔から誤って転落した瞬間。アクスたちはというと──。

 

「バベル!」

 

「おー、30人規模だと迫力がすごいな」

 

「それにしても暇だな」

 

「僕は腹が減った。ヴァン、なにか買って来てくれ」

 

「じゃが丸君で良いから」

 

「うぇっ!? か、買ってきます!」

 

 割と自由にしていた。

 何人もの幻影が基礎となり、その上にさらに何人もの幻影が乗って土台になり、それがさらに……といった具合に巨大な人の塔の天辺にてアクスが決めポーズをとり、宴の後で戦闘になったために小腹が空いたドヴァリンが近くで待機していたハーフパルゥムの青年をパシろうとし、その青年が一瞬だけ呆けた後にじゃが丸君ダッシュを決めようとしていた。

 

「あ、送還の光だ」

 

「【イシュタル・ファミリア】の奴ら、来なかったな」

 

「俺たちとLV1が101人居る中を突撃してくるバカは居ないだろ」

 

「そろそろ引き上げるぞ。ヴァン、じゃが丸君は良い。ヘイズに作らせよう」

 

 グレールが言った通り、【炎金の四戦士】(ブリンガル)とそれに付随する【フレイヤ・ファミリア】の1部隊に加えてアクスと幻影たちという『101匹ポメっ子』が居るのだ。よほどのことが無ければ喧嘩を売ろうとは思わないだろう。

 

 そんなこんなでアクスの戦いはヘスティアたちに気付かれることなく終わる。

 その後はお腹を鳴らしながら帰ろうとしていたところをフレイヤに拉致られ、【フレイヤ・ファミリア】の本拠(ホーム)にある『銀の館』にて食事をご馳走され、『一飯の恩義』で宴の補助や後片付け。ついでに明日の朝食の仕込みや館内の掃除までを幻影を用いた人海戦術で行うという満たす煤者達(アンドフリームニル)にとって一飯の恩義としてはもらい過ぎなことを平然とやってのけ、そのお礼として中々高級な食材をお裾分けしてもらってつつ、フレイヤとオッタルに連れられながら竃の館へと帰ってきた。

 

 出迎えて来たヘスティアがアクスの姿に安堵するが、同時にフレイヤとオッタルの姿が目に入る。

 そのままアクス、フレイヤ、オッタルと3人の姿を何回か見渡した後、敵意バリバリの眼差しをフレイヤに向けた。

 

「フレイヤ、なんで君が行方不明だったアクス君を連れているんだい?」

 

「え、この子。ヘスティアが居るからって入り口を守ってたのだけど、貴女の指示じゃないの?」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

『えぇ?』

 

 思ってた返答が来なかったからか、2回ばかり聞き返すフレイヤとヘスティア。両者ともそのまま微動だにせず数秒の沈黙の末、『ちょっと待つんだ』とヘスティアが会話のイニシアチブをとった。

 

 まず、ヘスティアたちはアクスが竃の館で良い子にして待っているだろうと思っていたのだが、帰ってきたら館内は人っ子一人居なかった。末っ子の失踪に当然ながらヘスティアたちは彼を探すが、それでもアクスは出てこない。

 困った末にギルドに迷子案内でもしてもらおうかと思った矢先──フレイヤたちがやって来たのである。

 

「魅了を使って誘拐したと思っちゃったよ」

 

「私がそんな下劣なことをするはずないじゃない。イシュタルでもあるまいし……」

 

 ()()()()()()()()()ことに対し、あまりの馬鹿馬鹿しさにフレイヤはため息をつく。それと同時に自身が来た時には既にアクスが幻影を用いた防御陣形で戦闘娼婦(バーベラ)たちを数人押し留めていたことを伝えると、ヘスティアはオッタルの手を握っていた彼を突然抱き上げた。

 

「ぬぁんで君はそう知らないところで変なことしてるんだぁ!」

 

「だって後ろから攻撃されるのが1番駄目だってフィンさん言ってたもぉぉん!」

 

 ヘスティアの絶叫にアクスも反論するが、戦いのことなど知らない彼女に1mmも届かない。すると、見かねたオッタルがヘスティアの名前を呼び、アクスが行ったことの重要性を説き出す。

 

 戦いにおいて背後を取られるのは極力避けたいもの。特に神々と一緒に居る場合、『背後からの1撃』は常に気を配っておく必要がある。

 今回、アクスが行ったことは外部のみとはいえそれを防ぐ行為に他ならない。LV1にも拘らず、それを1人で行おうとする忠誠心は、派閥は違えど神の眷属としては褒められるにふさわしき行い。決して非難するべきではないと説いた。

 

【猛者】と呼ばれるオラリオ最高峰の冒険者にそこまで言われると、少し前までプー太郎をしていたヘスティアはグゥの音も出ない。

 しかし、そんな彼の口数を訝しんだフレイヤは、ヘスティアたちに背を向けながらオッタルに小さく囁いた。

 

「オッタル。あなた、そんなにお喋りだったかしら」

 

「ヘイズがとりあえず褒めて労働力をこちらに回して欲しい……と」

 

 台無しである。たしかに幻影を用いたあれこれは魅力的だが、そこまでして労働力の確保が急務……なのだろう。

 少し働かせすぎたことをフレイヤは反省しつつ、ふと少し前にヘルメスがアクスの幻影を用いた商売の話を持ってきたことを思い出す。

 100人であれなら数人規模でもかなりの成果を期待できる。ヘルメスから具体的な値段は聞かされていないが、財政管理をしているヘルンに言って前向きに検討してみようと決心したフレイヤは、ひとまずオッタルの案に乗ることにした。

 

「そうね、言わんとしていることは私も分かるわ。それとアクス。あなた、【ガネーシャ・ファミリア】になにかしたかしら?」

 

「はい。【ガネーシャ・ファミリア】にベルさんが拉致られたことを報告して、報復行動に目を瞑ってもらいました。後、ヘスティア様たちが入りやすいようにシャクティさんに頼んで団員の方を動かしてもらったりとか」

 

「……ヘスティア?」

 

 予想外の返答に少しばかり言葉を詰まらせたフレイヤは、本気で呆れているような表情を浮かべる。

 眷属(ヘディン)曰く、『ギルドのことや派閥のパワーバランスをよく見ている一手』らしい。実際に歓楽街への侵攻をかなり妨害され、最終的に暴力に訴えたせいで()()()()()()()()()になってしまった。

 ヘスティアがギルドの対応の遅さゆえに泣きついたと思いきや、それがまさかこんな小さなパルゥムの子供が首謀者とは夢にも思わなかったフレイヤの『貴女がやるべきことよ?』と言いたげな視線にヘスティアは呻いた後に弁解を行う。

 

「いや、僕だって知らなかったんだよぉ! たしかに途中で【ガネーシャ・ファミリア】の子たちが入れてくれたけどさ、ミアハとかが言ってくれたんだとばかり」

 

「はぁ……。私としても、この子のやったことに責はないと思うわよ。逆にヘスティア、貴女はギルドとかタケミカヅチとかに色々学んでらっしゃいな。正直、労働力を抜きにしても引く手数多よ?」

 

「ろーどーりょく?」

 

 少しばかり口が滑ってしまい、ヘスティアに不審がられたフレイヤは咳ばらいをしながら『お土産を持たせてるから、食べなさいね』と言い残して撤退。オッタルも素直にそれについていく。

 後に残されたヘスティアは未だ不思議そうな表情をするが、とりあえずはアクスが無事に帰ってきた。今はそれを素直に喜ぼうと、新たな眷属である春姫に紹介するべく彼を持ち上げたまま館の中へと入っていった。

 

***

 

 ……とまぁ、ここまでが『極東のエロ狐』──サンジョウノ・春姫が加入した事件の裏側である。

 

 しかしながら、春姫とアクスとの相性は中々に悪かった。仲が悪いわけでは決してない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()、たまにアクスがベルの膝の上で英雄譚の考察をしているところにそっと寄り添い、そのまま『良い感じの夫婦感』を出す()()()()()をヘスティアとリリルカが何度か成敗したことはある。

 

 問題はそれ以外──率直に言えば、『家事のブッキング』であった。

 

「あの、ヘスティア様。家事についてなんですが……、アクス君に先回りされているようなんです」

 

「あぁ、うん。アクス君がやる前に済ませるのが大事だよ」

 

「難易度高くありませんか!?」

 

 掃除をしようとすれば既に済まされ、買い出しに行こうとすればリリルカも惚れ惚れする程の値段で必要な物品が既に買い揃えられ、それならばと明日の早朝に草むしりをしようと床に就けば夜中に幻影を使ってパパッと終わらせられる。

 これには流石の春姫も自尊心が傷つけられるというもの。泣き言を言いながらヘスティアに相談するも、碌な回答を寄越さない新たな主神に彼女はさめざめと泣いてしまう。

 

 そんな春姫の姿を見て居た堪れなくなったのか、ヘスティアはヘルメスからもたらされた商売の話を思い出した。

 

「うーん、ヘルメスの話を受けるべきかなぁ。あの子もちゃんとしたお金は持っておくべきだろうし」

 

「お話……ですか?」

 

「うん、君も見ただろう。アクス君の幻影は物を掴めるし、言う事も聞く。掃除や洗濯も出来るから、1人いくらで働かせてみないかって……。あぁ、フレイヤの言ってたのはこれか」

 

 ようやくフレイヤの言わんとしていることに気付いたヘスティアが澄み切った青空を仰ぎ、やがて決心したように館へと戻っていく。

 こうして、オラリオで人気沸騰中のレンタル幻影が生まれたのである。

 

***

 

 なお、余談だが【フレイヤ・ファミリア】に貸し出された幻影は主に満たす煤者達(アンドフリームニル)の業務補助となっているのだが、それはヘルンとの熾烈なジャンケン合戦に毎日ヘイズが勝利しているからだとか……。

 

「あ”ぁ”あ”あぁぁぁ!」

 

「なにやってるんですかぁ、ヘルン様ぁ! 書類が滞ってるんですよぉ!」

 

「ヘイズ様、2本先取にしてください! ヘルン様はLV2なんですよぉ!」

 

 (チョキ)を出したヘルンが絶叫を上げ、死体蹴りするかのごとく上司に対して怒り出す侍女たち。

 

「いぃやったぁぁぁあ! もらっていきますねぇ!」

 

「流石です、ヘイズ様!」

 

「希望の未来へレディゴーですよ!」

 

 逆に我が世の春が来たとばかりに(グー)を真上に突き出したヘイズに、喜びを露わにする満たす煤者達(アンドフリームニル)

 

 そんな具合にレンタル幻影が開始された日から、女神の付き人の悲痛な叫びが銀の館に木霊するのが日課になったとか。




【百騎幻槍】(ひゃっきげんそう)時系列は以下になります。本当、メンゴ★
1(戦争遊戯)
  ↓
ロキ・ファミリアが幻影を大量にレンタルしてクノッソスに突撃
  ↓
4(今回)
  ↓
春姫加入
  ↓
3(お金稼ぎ※)
  ↓
2(ラキアと開戦)

※なぜかアスフィが二つ名を言ってますが、華々し過ぎるデビュー及び格上殺しという『未知』に加え、アポロンとヘスティアの戦後処理でロキとフレイヤがポツリと零した詠唱文にハッスルした神々が暴走した。
神々よ、ご照覧あれは殺し文句なんよ。

アクスの妨害
 根回しは戦の基本。ただ、通報したら思いのほか自体が大きくなった。
 これにはフレイヤも苦い顔である。

遅滞戦術
 倒しても倒しても精神力が続く限り、追加発注してくる無限の用兵。
 モーロン・ラベ!

バベル
 組体操の技の1つ。幻影と追いかけっこをして遊んでいる時、通りがかった神に教えてもらったらしい。
 得意技はサボテン。

拉致られた後
 『いただきます』と『ご馳走様』と『美味しかったです』をちゃんと言えて、幻影100人で色々手伝ってくれるまともな感性を持ったパルゥムを保護したフレイヤ・ファミリア裏方の感想を推測せよ。(配点:10)

ジャンケン
 かの至高の杖同士が最終的に決着を着けた伝説の儀式。
 ちなみに、レベルが上になるほど身体能力は上がる。ゆえにレベルが下の者は、上の者の身体能力には基本的に敵わないのが普通。
 後は分かるね。
 それもこれも悪辣な労働環境が悪いということで1つ。
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