18階層は17階層までのダンジョンと違って異色揃いの階層だ。モンスターが壁から沸いて来ず、人間も食することの出来る木の実や喉を潤せる清流があり、そして何より──昼夜が存在する。
もちろん、地上で拝むことが出来る日の光ではない。天井に存在する大量の水晶による明暗で冒険者たちが昼と夜と勝手に解釈しているだけだ。それでも光の差さないダンジョンの中を駆け巡る冒険者たちにとっては、この仮初の光だけでも十分にありがたい存在である。
階層全体に生えている神秘的な水晶も相まり、この階層に付けられた名前は『
そんな冒険者にとって極上の女性のような街の南側にある宿屋。何の変哲もない宿だが、今は【ディアンケヒト・ファミリア】の臨時治療院になっていることから長蛇の列を生んでいた。
「
「おい、こっちが先に並んでるんだぞ!」
「あぁ!? こっちのが重体なんだよ!」
「イーナを! イーナを助けてくれよぉ!」
列からはひっ迫した叫び声が聞こえてくる。中層に位置するここは1撃で冒険者に致命傷を与えるモンスターをはじめ、状態異常の攻撃をしてくるモンスターなど多種多様な化け物が多く生息している。
なので、こうしてひっきりなしに患者がやってくるわけだが、アクスの部屋は固く閉じられている。未だ【ロキ・ファミリア】の往診から戻ってこないことを宿屋の主が説明しても話を聞かないため、急遽として顔役のボールスがやってきて何とか混乱を収めている。
すると、南の方が詩が聞こえた。
死と再生の象徴よ、我が声に耳を傾けたまえ。癒しを求める者よ、我が声に集まりたまえ
癒しを求める者に呼びかける詩と共に光玉と薬草のエンブレムが刻まれた旗が翻る。その声と旗を見た全員が向かってくる存在にある種の期待を寄せた。
我が癒し、
続けて聞こえてくる相互扶助の精神を呼びかける詩。混乱していた場が一気に沈静化したことで、ボールスの掛け声に従って長蛇の列が1塊になる。
誓いをここに。
我は侵された者の安寧を願う者。
我は傷ついた者を癒す者。
我は膝を折った戦士を立ち上がらせる者。
身体の異常全てを癒す歌の数々を一気に歌い上げた存在──アクスは魔力を練り上げながら中心で手を上げるボールスに向かって最後の詩を紡いだ。
この誓いに基づき、我が行使する。
ケーリュケイオン
直径15Mの
しかし、致命傷に近い冒険者も少なからず居り、彼らは多少治るぐらいではまともに動けずにいた。
「これより、重症者の治療を行います! 手が空いてる人は手伝ってください!」
パルゥムの小さな身体では大人1人運ぶのも難儀である。そのため人手を募ると、重症者のパーティメンバーをはじめ、先ほどの治療ですっかり元気になった冒険者たちが一丸となって動いてくれる。
弱者は食い物にされるリヴィラの街だが、【ディアンケヒト・ファミリア】の臨時治療院の前ではその限りではない。それが長年、この町に手を差し伸べてきた
「
「デッドリー・ホーネットの大群に襲われたんだ! 頼む!」
「レベルが高くてよかったですね。解毒しますので、他の方も集まってください」
新たに治療を施した端から新たな患者が運び込まれてくる。
【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院は団員総出で対応を行う。中には高度な治癒魔法が必要な治療だったり、補助が必要だったりでアミッドが選出した数人で治療を行うこともあるが、そんな例外を除けば全員が一丸となって大勢の人たちを救うために日夜奮闘している。
ただ、ここにはアクス1人しか居ない。彼が自ら聞き、自ら判断し、自らが処置する。1分1秒すら気が休まらない状況の中、幾人も処置をしたアクスの身体には乾いている場所がないほど汗に濡れていた。
「解毒終わりました! 次の方、どうぞ!」
「バグ・ベアーに横っ腹を抉られたんだ! こいつを助けてくれ!」
だが、足りない。まだ、不足だ。
アミッドは指示を出しながらこのぐらいはやってのける。アミッドならばかなり熟達した高速詠唱をもって症状が軽い冒険者たちを一気に治療することが出来る。
「
「バトルボアが……強く打った……ゴホッ」
アミッドならば──。アミッドならば──。アミッドならば──。
研鑽すればするほど背中が遠くなる。だが、諦めればそこで情景はただの願望へと腐りきってしまう。
「ありがとうございます。後はもう喋らないで、これを服用ください。お次、どうぞ!」
「────!」
ゆえに止まらない。
「──! 次の方ぁ!」
ゆえに止められない。
「次ぃ!」
まだまだあの背中は遥か彼方なのだから。
***
「次の方は?」
「患者は全員帰ったか、こっちで泊まらせている。ポイズン・ウェルミス関係はお前の隣の部屋に全員詰め込んでる」
宿屋の主の言葉にアクスは大きく息を吐く。ひとまずは小休止といったところだろうか。
しかし、ポイズン・ウェルミスもそうだが24階層のイレギュラーが尾を引いているのだろう。少し前のリヴィラの街の往診と比べてモンスターの被害がやや多いように感じる。【ロキ・ファミリア】の遠征では力の差に隠れていたのか、それともひき潰されてもそれ以上の物量で生み出されているのか。
どちらにせよ、ダンジョンのことに関してアクスは知識不足だ。詳しいことはギルドに任せておけばいい。
いつものように治療道具を蒸留酒で消毒していると、部屋の扉が遠慮がちに叩かれた。
「レフィーヤ様、エルフィ様。どうなさいましたか?」
「おー、本当にお医者さんしてるー!」
「ちょっ、エルフィ! アクス君、迎えに来ましたよ」
目をキラキラさせながら部屋中の医療道具を見渡すエルフィを窘めたレフィーヤが用向きを答える。
昨日の夕方に治癒魔法を使用した結果、ポイズン・ウェルミスの毒に冒された冒険者たちは元気になった。本日の早朝にも簡易的な検査をしたが、毒の症状が全く見られなかったので完治した──とはアクスの口からは言えなかった。
なにせ、暗殺者も愛用する毒だ。今は解毒できているだろうが、再発する可能性もあるので定期的な観察は必要不可欠。そのため、こうして迎えに来てもらっている。
ただ、アキの時も思ったが【ロキ・ファミリア】は自分のことを
「エルフィ様。本日はどうなさいましたか?」
「えーっとですねぇ。同室の子にレフィーヤって子が居るんですけどぉ。毎日、アイズさんアイズさんって煩くて」
「エルフィ!? 私、そんなに煩くしてないから!」
「あー、それは手遅れですね」
「アクス君! 人を勝手に手遅れ扱いしないで!」
即興にしてはうまくいった寸劇にケラケラ笑う2人にレフィーヤは顔を真っ赤にさせながら怒る。ひとしきり彼女の反応を楽しんだ後は、『じゃあ、行こうか』というエルフィの言葉に未だ怒りを覚えていたレフィーヤがアクスの手を強く引いて宿屋から出る。
「大体、アクス君は私をからかい過ぎです。私は君よりもお姉さんなんですよ?」
「でも、冒険者としてはアクス君の方が先輩だよね?」
「うっ……、それはそれ。これはこれ! 歳で言ったら私の方が上!」
最近、何かにつけてマウントを取ってくる人とよく会っている気がする。レフィーヤの謎理論やエルフィの正論に付き合いながらもそんな感想をアクスは飲みこんだ。
主に下着をチラ見せしながら殴りつけてくる師匠とか、主に『師匠と呼んで~』と掴みかかってくる
しかし、ここまで歳のことを言われると、それこそ1桁の頃から治療院の手伝いをやっているアクスとしてはちょっとモヤるわけで……。
なので、再び意地悪をすることにした。
「じゃあ、なんですか? "レフィーヤお姉ちゃん"って言えば良いんですか?」
「ほぐぅっ!」
「あ、レフィーヤ倒れた」
「えぇ、何このエルフ。面倒くさい」
実際に例で姉呼びをすれば変な声を上げて倒れるほど嫌悪感を露わにしているエルフに、とうとうアクスはぶっちゃけた。
しかし、当の本人は『ウェヘヘ』とまるで酒に酔っぱらったロキのような声を出しながらゆっくりと立ち上がり、あろうことか再び姉呼びを強要してくる。
「嫌だよ。レフィーヤさんも僕にお姉ちゃんって言われるの嫌がってるんでしょ?」
「え、嫌がってたわけじゃないよ? 皆さんのお姉さんをしてるアリシアさんに憧れてるけど、私が最近ファミリアに入ってきたから姉扱いされる機会が全然なかったの。だから、お姉ちゃん呼びにびっくりしたっていうか……耐性の問題?」
耐性とはいったい何なのだろうか。エルフィの方を向いても彼女は首を左右に振るばかり。
もしかしたらエルフは人知を超えた不可思議な存在なのかもしれない。そうなると、今の治療が本当は危険だった……ということも十分ありうる。
今度、リヴェリアやアリシアにエルフについて聞いてみようとアクスは心に決めた。
そんなやり取りをしながらも一行は南にある【ロキ・ファミリア】のキャンプへとやってきた。キャンプの周辺では昨日まで毒に苦しんでいた冒険者たちが素振りや走り込み、筋トレといった身体を日常に戻すための訓練を行っており、アクスの接近に気づいた冒険者の言葉を皮切りにあっという間にアクスを取り囲む。
「好調なようですが、いかがですか?」
「本気で組手し過ぎてノビた奴が1人居るけど、それ以外は大丈夫だよ」
話を聞きがてら器具無しで出来る簡単な検診をするが、寝たきり状態で多少体力が落ちたからか息が荒い程度で毒の後遺症らしきものはなかった。
これならば本当に治ったかもしれない。それでも医療に携わる身にとしては、一縷の不安があった。
『初見の処置』というものは何がどうなってそうなったのかという羅針盤が存在しないため、恐怖以外何物でもない。ただ、出来る限りのことはしようと声につられて出てきたフィンに『地上へ戻る際は前線ではなく中衛あたりに配置するのが最善』とアクスは提案する。
「
「ありがとうございます」
「なに、帰るまでが遠征って言うだろう。最後に足を掬われないようにこうして英気を養うのも悪くはないさ」
製薬の時間も考えればベートの足ならば1週間もしない内に戻ってくるだろう。その間に骨休めをする気満々なフィンの言葉に、アクスは『ただでは起きない人だなぁ』と至極もっともな感想を呟いた。
***
こうして、朝から昼は臨時治療院で戦場さながらの治療行為を行い、夕方は【ロキ・ファミリア】へ定期検診を含めた往診。夜は明日の準備や急患の対応と慌ただしく過ごしていたある日の夜のこと。
医療器具の洗浄と消毒を済ませたアクスがそろそろ寝ようと横になっていると、咆哮が聞こえてきた。
おそらくはゴライアスが生まれたのだろう。ただ、今回は【ロキ・ファミリア】が倒してくれるだろうし、そろそろボールスと話して往診の終了日を決めねばならないとおぼろげに考えていたところ、宿屋の主人の声と扉を叩く音にアクスは飛び起きた。
「急患ですか!?」
「いや、そうっぽいんだが……」
「アクス」
言い淀む宿屋の主の横からアイズが身を乗り出してくる。息が上がっていることからよほど急いでいることがうかがえるため、アクスは
「キャンプが襲撃でもされましたか?」
「ううん、怪我人を保護したの。診てあげて」
「このことをフィンさんは?」
「ガレスには話してる。フィンは仮眠してるから知らない……」
ひとしきりアイズから説明を受けたが、総合すると団長であるフィンに無許可で怪我人をキャンプに引き入れるという頭のおかしい図式が出来上がった。さすがのアクスでも、いくら傷ついているとはいえアミッドの許可なく冒険者を治療院に入院させない。
犬猫ではないのだ。もしかしたら【ディアンケヒト・ファミリア】の妨害を行う輩である可能性も大いにある。
ただ、【ロキ・ファミリア】は三首領が舵を取っている。そのため、他派閥とは根本的に違うのだろうとアクスは考えながらも、一応はアイズに注意した。
「流石にそこはフィンさんにも言いましょうよ」
「うん、それよりも治療が大事。ベルが死んじゃう」
アクスは思わず立ち止まる。同じく止まってこちらを見てくるアイズは今、何と言っただろうか。
ベル? ……ベル・クラネル? なんで? 中層を突っ切って? もしかすると、リリルカ・アーデがランクアップしたから?
次から次へと疑問が湧いては沈んでいく。とりあえず話を──詳しい話をぜひとも聞きたいとアクスが思った矢先、アイズは彼の手を掴んでから一気に速度を上げる。
叫び声をあげる間もなく一息にキャンプの外れにあるテントまでたどり着いたアイズは、入口を陣取っていたガレスはため息をつきながら親指でテントを指差した。
「アクス、夜中にすまん。どうやらアイズの知り合いらしくてな」
「いえ、おそらくですが僕の知り合いでもあるかと。後、フィン様やリヴェリア様も知っておられる方かと」
「そうか。なら、話が早い。頼めるか?」
ガレスの問いにアクスは頷いてからテントに入る。並んで寝かされているそれぞれの顔を見ると、『やっぱり』とアクスは落胆した。
あれほど中層にはパーティで行けと言ったにも関わらずここまで来て、案の定全員が動けないほどのダメージで命辛々といった様子だ。
本当に命が惜しくないのだろうか。いや、包丁を渡してきた鍛冶師──ヴェルフ・クロッゾが居るからこその中層探索に踏み切ったのかもしれない。
アクスがそんな考察をしながらも、全員の装備を脱がしてから目や口の様子などを診察する。
疲労に次ぐ疲労を背負いながらもここにたどり着いたは良いが、その瞬間に緊張の糸がぷっつりと切れたのだろう。外傷は少々酷い火傷に裂傷、あとは骨折も見受けられる。
汚れてボロボロになった包帯を変え、骨折は応急処置を外してちゃんと固定できるように処置しなおす。
3人分を一気に処置するのは大変だったが、アイズと手分けしてようやく治癒魔法が掛けられる環境となった頃。ベルの顔を心配そうに見つめながら彼女が問いかけてきた。
「すぐに目を覚ましそう?」
「傷の処置と体力の回復では起きないかと。心的疲労も重なっているので、このまま安静にさせてください」
「分かった」
そう言いながら治癒魔法を掛けたアクスはリュックから
リリルカあたりが何か言ってきそうで怖いが、彼女の巨大なバックパックも見当たらない。おそらく予想以上の猛攻に荷物すら放り出したのだろう。
そんな状態で
「終わったか?」
「多分ですが、中層を無理矢理突破してきたのでしょう。さすがに今回は状況によっては叱りたいのですが、泊まっても構いませんか?」
「構わんが……。臨時治療院はどうする?」
臨時治療院を始めて数日。ゴライアスが出現したので、そろそろ撤収準備をしなければならない。今からでもボールスに言って撤収する旨を伝えた方が宿代も節約出来て良さげだと考えたアクスは、ガレスに護衛を任せる形でリヴィラの街にあるボールスの換金所へと向かった。
「あー、たしかにそろそろ閉めてくれねぇと【闇医者】が食いっぱぐれるからなぁ。……分かった、もう臨時治療院は引き上げてくれて構わねぇ」
てっきり引き留められると思ったが、あっさり撤退が決まった。どうやら既に【闇医者】から実入りの低さに不平不満が出ているらしく、このまま長くやると再び【ディアンケヒト・ファミリア】への妨害が起こりそうな気配をボールスは察知したらしい。
撤退理由が客の食い合いとはなんとも間抜けな話だが、リヴィラにはリヴィラの掟がある。いくら臨時治療院の周辺では騒ぎを起こさないように例外を作っても、冒険者としての掟がある以上は1ファミリアが幅を利かせるのはマナー違反だ。
「では、さっそく片づけを始めます。お世話になりました」
「礼を言いたいのはこっちだ。おかげで街の空気がいくらかマシになった。例の
「何を言っとるか。どうせ、儂たちに押し付けるつもりじゃろうて」
冒険者は自己責任が伴う職業。ゆえに冒険は最小限に済ませ、利益は最大限を勝ち取るというのが常識だ。
そんな彼らが積極的に危険を冒してゴライアスに挑むはずもなく……。まぁ、そういうことだ。ボールスの意味深な笑みに鼻を鳴らしながらガレスは先だって三首領で話し合った通り、ゴライアスの討伐を【ロキ・ファミリア】で請け負うことをボールスに告げる。
「流石天下の【ロキ・ファミリア】様。頼りにしてるぜ」
「抜け抜けとよく言うわ」
おべっかたっぷりの言葉に身震いしたガレスは、『長居は無用』と言ってからアクスを連れて彼の借りている宿へと向かう。最初こそ急に出ていくということもあって少々揉めたが、顔役であるボールスから聞いた妨害の可能性を聞いた宿屋の主はあっという間に手の平を返す。
そのままガレスの腕力をもってアクスの荷物を全て回収し、彼らは【ロキ・ファミリア】のキャンプへと移動した。
「やぁ、夜逃げご苦労様」
「フィン、一応ボールスの許可は取ってきた。夜逃げではなかろう」
ふざけながら片手をあげたフィンの案内で【ロキ・ファミリア】のテントの1つを借り受けたアクスは、せめてもの宿泊代として
フィンたちからしてみてもポイズン・ウェルミスの毒を経過観察中とはいえほとんどの解毒を成功させたアクスへの支払いについて、本人がいくら地上価格で構わないと言っても相当な物になる。なので、宿泊代で何とか安く調整したいという大人の悪知恵が働いた結果なのだが、当の本人は降って湧いた自由時間にすっかりフリーズしてしまった。
「どうしよ……」
「アイズが保護してきたという少年の世話でもしたら良いんじゃないかな?」
「あのぐらいの童なら色々あるじゃろうに……」
「【ディアンケヒト・ファミリア】は我々以上に激務だからな。仕方ない」
何をどうやって自由時間を過ごすか。そこから頭を悩ませながら出ていったアクスに、三首領は着実に彼が【ディアンケヒト・ファミリア】の
***
こうしてアイズと交代で1晩中見張ったが、朝になってもベルたちは目覚めなかった。【ロキ・ファミリア】の団員たちが起き出したことでベルたちの存在が明るみになったが、アクスがここにいることについては全員特に何も言わずに受け入れてくれた。
若干、家出していた存在が返ってきたかのような受け入れ具合だったが、おそらくは気のせいだろう。
「はい、腕上げてー。可動域は問題なし」
「アクス君、やっぱり治ってるんじゃないの? これ」
「治ってると良いんですがねー。なにぶん、お姉ちゃんしか治した事例がないから困ってるんですよ」
何がどうあっても治療できたとは断言しないアクス。その慎重さに団員達もすっかり呆れ、『自己責任』と元の生活へと戻っていた。それでも経過観察はしなければならないとカルテらしいメモを取るが、ここ最近の結果がすべて『異常なし』なのでアクス本人もそろそろ飽きてきたのは内緒である。
「アクス、ちょっとアイズが保護した青年たちについて話を聞きたい」
「分かりました。では、寝かされているテントでお話ししましょう」
検診を手早く終わらせたアクスがベルたちが寝かされているテントに入る。アイズに聞いてもまだ目覚めていないらしく、軽く診察してみても既に身体は回復しきっていることぐらいしか彼には分からなかった。
「じゃあ、改めて聞こう。僕は話程度しか聞かされていないから名前と所属ファミリアしか知らないけど、アイズとアクスはこの冒険者とは面識はあるね?」
「はい、【ヘスティア・ファミリア】には数度往診を行いました」
「えっと、彼の防具を拾って……返したり……しました」
若干言い方が怪しいアイズをいったん放っておくことにしたフィンは、寝かされた3人を見る。パルゥムの少女は見るからにサポーターなので、LV.1だろう。赤髪の青年も椿の話ではLV.1で誰とも組まずに1人でよくダンジョンに潜っている鍛冶師らしい。
「アクス、彼のレベルはいくつだい?」
「ギルドの発表ではLV.2になったと報告されています。所要期間は1か月半。アイズさんの記録を大幅に塗り替えました」
どうせギルドに行けばバレるので、アクスは誤魔化さずに話す。だが、LV.2になったとしてもLV.1を2人連れての18階層は無茶以外に何者でもない。
結局、説明中もベルたちは起きなかったので、起きたら報告してほしいとアイズに言ってフィンはテントから出ていった。
「事故。もしくは記録更新したがための慢心……ですかね?」
「事故の方だと思う。この子は冒険はするけど、無鉄砲じゃない」
訓練を通じて彼の性格が分かっているからか、ベルがここまで来た原因が事故だとアイズは断じる。
荷物の少なさはいったん置いといて、中層を潜り抜けるには聊か物足りない防具にサラマンダーウール。おそらくこれはアドバイザーであるエイナの助言なのだろうが、彼女が今の段階の冒険者を『18階層まで行ける』と言うだろうか。
「それより髪の毛を弄るのはやめてあげてください。迷惑ですよ」
「ごめんなさい……」
「うう……ん……」
ベルの髪の毛をつまんだりして遊んでいるアイズをアクスが窘めていると、彼が呻きながらも徐々に目を開けた。目覚めた1発目で人の名前を2名ほど叫ぶが、勢いよく起き上がったことで塞がりかけていた傷が引っ張られて呻き声を上げる。
「大丈夫?」
「うぇっ!? ……え? ……はぁぁっ!?」
横からアイズに話しかけられたベルは最初こそ訳が分からずに混乱していたが、彼女の説明で自分が【ロキ・ファミリア】に保護されたことを知ると目に見えて安どの表情を浮かべる。
「そっ、そうだ! 仲間! 僕の仲間はどこに!」
「あ、まだ立つのは……」
周囲が見えていないのだろう。探し回ろうと立ち上がるベルであったが、寝たきりの状態でいきなり立ち上がったことで立ち眩みを引き起こして倒れる──前に、アイズが自らの胸で彼の顔面をキャッチする。
(あ、これレフィーヤさんが見たらキレるやつだ)
最近はもはやそういった趣向の人なのかと疑いたくなるレベルのエルフの友人を思い浮かべながらも、アクスはようやく周辺の状況を確認したことで落ち着いてくれたベルに言葉を投げかけた。
「とりあえず、ベル様。お話ししましょうか」
にっこりと笑うアクス。しかし、アイズの目には彼の後ろに同じく目が笑っていない笑みでベルを威嚇するアミッドの幻影が見えた。
副音声:ベル様。ちょっと頭、冷やそうか
アクスの並行詠唱
どこかのエルフやどこかの回復部隊からの可愛がり。あとは練習に次ぐ練習でモンスター相手ならあしらって逃げながら詠唱出来る程度に熟達。(倒すのは無理)
だけど、冒険者相手は勘弁な!
なお、高速詠唱も立ち止まった状態で成功率7割をキープ。早口言葉の壁が厚いらしい。
走りながら治癒
イメージ図
死と再生の象徴よ、我が声に耳を傾けたまえ~。癒しを求める者よ、我が声に集まりたまえ~。
/__\ || ̄ ̄ ̄ ̄|
||´・ω・`| || ______|
/  ̄ ̄ 、ヽ||
└二⊃ |∪||
ヽ⊃ー/ノ ||
レフィーヤ
前世(アルゴノウト)的にもやっぱり妹なんだろうなぁと。お姉ちゃん風ふかしたいんだろうなぁと。
アクス自体はどうでも良さそう。だが、地上の聖女が許すかな!
あっさり臨時治療院閉館
同業者の食い扶持減らして余計な軋轢を生まないため。ナワバリ争いなんて狩りゲーだけで十分
フィンへの情報伝達
ランクアップをギルドに通達しているのを見て、(聞いた)アクスによってベルがLV.2になったことを早く知る
活動報告にてスキルについてのネタ募集してます。タスケテ・・・タスケテ…
①魔力補正(治癒効果上昇)のスキル
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=323223&uid=293848
②俊敏と器用補正(パルゥムらしさ強調)のスキル
※他にもこんなスキル名や効果の方が良いよってのもお待ちしております
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=323344&uid=293848