『需要には鮮度があるんですよ、リューノスケェ』ってCOOLに目玉ぎょろつかせたおじさんも言ってたから書かなきゃ。
オアシスの屋敷。リオードの町内の巨大なオアシスの中央にある島に建てられた豪華絢爛な邸宅である。白い石材で作られた建物は日差しを照り返し、所々にちりばめられた金の装飾は道行く人々の目に野望を灯らせるにふさわしい格を備えていた。
なお、そのお値段は奴隷を全員購入したことでひっ迫していたとあるファミリアの財政をさらに悪くした……とだけ言っておこう。
そんな屋敷の調理場では、1人の
「若い人への塩は多めに! 老人や子供、身体が弱ってる人は麦粥からお願いします」
「
「調合します。オーブンに割り当てられた人はこの肉をじっくりと焼いてください」
もはやこの場は第2の
ならば、フレイヤに仕える
「定時報告!」
「洗い物、まだ大丈夫です!」
「調理、炒め物の食材が尽きそうです!」
「配膳、ボフマン様が使い物になりません!」
「酷いですぞぉー!」
数十分に1回の定時報告。しかし状況は芳しくない。
料理は作っても作っても足りず、食料は
脳裏でオッタルが残念そうな表情が過ぎるものの、今この場を満足させずして何が女神の小姓か。ここは涙を呑んでもらう他ない。
「ボフマン様は他の商会から人と食糧などを調達してきてください! 商会の代表が来たら相手は無下にはしないはずです!」
「わ、分かりましたぞ!」
「炒め物は中止! しばらく煮込み料理で凌ぎます。ですが、多少増やすのみでお願いします。主に材料不足を悟られるようでは従者失格です」
「はい!」
「配膳の方は果物を並べてください。洗って適当に盆に乗せればすぐにお出しできるので、繋ぎにはなります!」
「既に持って行ってます!」
矢継ぎ早に繰り出される指示に全員がそれぞれの仕事に邁進する。
途中、屋敷から他の商会に向かって走り出していたボフマンが『うちの商会、乗っ取られかけてます?』と正気に戻ったものの、今から戻ったとしてもこの状況を立て直せる算段を付けることが出来なかった。さらに言えばアクスが居なくなると余計にボフマンへの負担が重くなるため、
一方その頃。勝手に侍ってきた美男美女によるハーレムを築いているフレイヤが見える位置で待機していたヘディンは、あらかた指示を出し終えて一山超えた状態のアクスを呼び出していた。
「アクス、仮に我らが居なくなった場合。人数に応じて取れる戦術をここに記しておいた。目を通しておけ」
「ヘディン様が抜けた場合……。ヘグニお兄ちゃん……。叔父さん……。アルグリッグお兄ちゃんたち……。副団長は?」
「言葉遣いっ! あの駄猫はフレイヤ様の傍を離れん。ゆえに考えるのもバカらしくて止めた」
注意を促しながらアクスの額を小突いたヘディンは上に視線を向けながら苛立った様子で愚痴を吐く。その額には青筋が立っており、心底ご立腹なのが伺えるためにアクスは飛び火するのを恐れてその場を去ろうとするが──。
「うん、今のヘディンは怖いだろうけど我慢して。アクスにとって大事な話はまだあるんだ」
ヘグニによってその逃亡が失敗に終わる。いつの間に後ろに居たのか──などとは言うまい、第1級冒険者というものはそういうものなのだ。
「お前には関係ないことだったな。唯一気を付けなければならないのは、フレイヤ様がなにかしらの心変わりをされてリオードの町を一時的に離れる場合だ。
「傭兵系ファミリアを相手に1人で相対しろと?」
「
眼鏡を光らせながら嗤うヘディンの言い分に物申したかったが、素直に言うと黒焦げ──ということになりかねないためにアクスは押し黙った。
しかし、いかに『鬼畜ホワイトエルフ』と呼び声の高い彼も他の聞かん坊な幹部たちと違って(小指の先ほど)マシなアクスを地獄に叩き落すのは後ろめたさを感じたのだろう。もう1枚の紙を差し出した。
「たしかに我々が出て行けばフレイヤ様の眷属はお前1人になるだろう。フレイヤ様に直談判して眷属を臨時的に増やすことも考えたが、それだと我々の品位が下がる。ゆえに……一般人が神の眷属を相手にする方法を考えた」
「クロスボウですか?」
クロスボウ──弩とも呼ぶこの武器は、専用の矢を板ばねの力で弦により発射する。ダンジョンでもたまに使っている冒険者は居るが、大抵はその装填速度の遅さから先制攻撃に用いられることが多い。
そんな見地から役に立つのか分からない様子のアクスに、神を横から見ていたヘグニは『あー、たしかに防衛だとそれだね』としたり顔で答える。
「ヘグニお兄ちゃん、使えるの? これ」
「うん。昔の話になるけど、魔法を撃てなくなった奴らが防衛する時は弓かクロスボウが主流だったからさ。装填速度については手回し式にして、盾に隠れさせた女子供にやってもらえば解消するんじゃないかな。……まぁ、俺はただ見ていただけなんだけどね」
流石、『戦王』と呼ばれるだけあるダークエルフ。1枚の紙きれだけでヘディンの言わんとした作戦の詳細を看破したヘグニは、アクスの肩をポンと叩きながら闇へと消えていく。
「他にも色々あるが、全て懇切丁寧に教えるほど私は暇ではない。最終的にお前が矢面に立つこともあるだろう。その時は今までの洗礼の成果を遺憾なく発揮し、フレイヤ様の財を脅かす輩を殺せ」
「承知しました」
恭しく頭を下げたアクスの横を通り過ぎたヘディンが踊り場から姿を消す。これからどうなるかは分からないが、準備しておいて損はないことは明日にでも取り掛かろうと明日行うことについて記憶したアクスが調理場に戻ろうとすると、階下にようやく戻ってきたボフマンがまたしてもおかしなことを宣っていた。
「フレイヤ様。わ、我々は……、あなた様に惜しみない献身を尽くしております。な、なの……で、あなた様の念願がかなったその時は……"褒美"を……。ドゥフ、ドゥフフフ……」
文字通り『神に振り回された』ボフマンは疲労困憊といった様子でうわ言を宣う。
そう、これは疲労困憊からの意識の混濁によって自分の妄想を口から垂れ流しているだけなのだ。アクスも
一息に踊り場から身を投じたアクスは懐に仕舞った
──が。
「落ち着け、アクス」
横合いから
「命拾いしたな、豚」
「だが、躾はしないといけないな。豚」
「それよりも去勢だろ。なぁ、豚」
「えっと、ちょ……そっちには曲がらな……。ぎゃあああ!」
足払いに関節技。息をつく暇もない連携攻撃にボフマンは泣き叫ぶが、当の本人たち──アルフリッグたちは彼を一切見ずに未だ暴れているアクスの方を見る。
「ベーリングお兄ちゃん、どいて! そいつ殺せない!」
「落ち着け、あいつが居なきゃこの砂漠の目と足が無くなる!」
どこかの電波みたいなことを叫ぶアクスを抑えながら必死に宥めるベーリング。少しでも拘束を緩めるとアクスが袖に隠したテーブルナイフをボフマン目掛けて投げつけるため、ベーリングを除くガリバー兄弟は『早くこいつを調教しなければ』とフレイヤに許可をもらってから早々にボフマンを引き摺りながら部屋から出て行った。
「あいつ、だんだんヘイズに似て来たな」
「この前、ヘイズが無理やりあいつに着け髪と
「素直に言うことを聞くからなぁ、アクスは」
自分たちのことを完全に棚に上げた発言をしながら去っていくアルフリッグたち。やがてボフマンの汚い悲鳴が完全に聞こえなくなる頃にはアクスも落ち着きを取り戻したので、『あの豚のことは任せろ』とベーリングも部屋から出ていく。
「フレイヤ様。皆様も失礼しました」
「構わないわ。それよりも、あなたはこれからどうしたい?」
意味が分からない。
アクスはフレイヤの
すると、アクスの困った反応を見たフレイヤがクスクスと笑いながら彼を部屋に誘う。ボフマンであれば鼻の下を伸ばす展開だが、全てを見透かしたような彼女の瞳にアクスは嫌な予感を感じていた。
そして──。彼のその予感は的中することになる。
***
「
「えぇ、
深夜。オアシスの屋敷の最上階にある寝室にてフレイヤとアクスが向かい合って座っていた。
すぐそばにはオッタルはいるものの、フレイヤの『
なぜフレイヤが楽し気に話しているのか。なぜ、アクスが彼女の言葉にこの世の終わりのような表情を浮かべているのか。
それはフレイヤが見つけた『アリィ』という少女の正体に起因する。
その少女の名前はたしかにアリィだが、他に『アラム・ラザ・シャルザード』という名前を持っている。後ろに国の名前がある通り、現在進行形でワルサに侵略されているシャルザードの第1王子。それが彼女であった。
男だと思ったら女だった──というのは神々の中でも
しかし、そこでアリィはあろうことかフレイヤに自身を解放することを望んだ。
現在の彼女の立場は奴隷。そしてフレイヤは彼女を買い取った主である。そのようなことはまかり通らないとボフマンが叫ぼうとするが、
最初こそ拍子抜けした表情でフレイヤを見るアリィであったが、ようやく事態を掴めたのだろう。恭しい礼と共に従僕と共に部屋を出たアリィと入れ替わる形でオッタルとガリバー兄弟が入室し、アクスが『さっきフレイヤ様の御言葉を遮りました』とチクったことでボフマンが再度出荷されて今に至る。
「……ということは小父さんたちは?」
「俺たちはフレイヤ様についていくだけだ。奴隷のことなど知ったことではない」
「一応は私の財産になるんだけど、こう言って聞かないの。ボフマンだけじゃ心配だし、そもそも心配してたのはアクスなのだからお留守番してくれるわよね?」
本音を言えば『このフレイヤ至上主義共が』と言いたいが、アクス自身も留守番を指示されなければ7割ぐらいは付いていく方に寄っていたので我慢する。
ただ、オッタルやフレイヤの傍を離れようとしない副団長はまだしも砂漠の情勢や諸々の事情を分かっているはずの
「私が居ない間、この建物は好きになさい。奴隷もあなたの指揮下に入れてくれても構わないわ。だけど、優先順位は間違えちゃ駄目よ? 1番はあなた。次に奴隷。最後にここ。それだけは守ってね」
「承知しました」
「よろしい。じゃ、言うことをあまり聞かない小父さんたちの代わりに私の財産を守ってくれる良い子には、ご褒美を上げましょう」
フレイヤがややとげのある言い方をしつつも、『じゃん☆』と1冊の古めかしい本をアクスに手渡してくる。
華美な装飾で物々しい雰囲気を放つこの本の正式名称は『
何より目を引くのはフレイヤファミリアということで
魔法大国と名高いその国の
「受け取れません」
「あら、どうして? 別に私の懐は痛んでないわよ? "この建物にあった"んだから」
てっきりいつもの衝動買いからの扱いに困っての下賜したと思いきや、予想していなかった返答にアクスは首を傾げる。
すると、控えめなノックの音が聞こえてきた。フレイヤが入室の許可を出すとヘディンとヘグニが魔剣やら調度品やらと言ったものを抱えて入室し、それらを丁寧に置いてから臣下の礼を取る。
「フレイヤ様、壁に隠された宝物庫がありました」
「そうでしょうね。おそらくは昔の王族……いえ、豪商の子の物だったのではないかしら」
このカイオス砂漠に人が渡って町や国を興す。言葉にすれば簡単だが、それこそ人の一生では到底足りない年月がかかっている。
そのため、代替わりや政争。または不慮の事故などで建物を遺して所有者が消え、そこを商人が買い取って根城にする──などといった言わば『隠れた仕様に気付かないケース』も長年下界に君臨した神であれば割とよくあるらしい。
今回は暗殺者の類が居ないか確認していたアルフリッグたちが先んじて建物を調査していたが、『何か探したら面白そうなものが見つかりそう』とまさしく
こうなっちゃったわけである。
「売り手の人に確認取らなくて良いんですか?」
「愚
「ククク……。さ、流石は我が宿敵。その魔法の冴えは恐ろしくもあり、頼もし……。でも、いきなり魔法をぶっ放すのは止めて欲しい」
「老朽化で機構が上手く動かなかったんだ。致し方ないだろう」
安定の脳味噌が筋肉で出来ているかのような解決法。『その眼鏡は飾りか』と言いたかったが、電撃(おしおき)が怖いので喉の奥に押し込んだアクスは経緯を理解して
そうして周囲が『早く読め』と無言の圧を放つ中、アクスは少々迷った後にオッタルを座らせた状態で膝に乗って
「なぜ俺に乗る?」
「1番安定するから。嫌なら降り……」
「そのままで良い」
アクスが自信満々で子供の浅知恵を披露すると、一瞬空気が凍ったものの徐々に『お前が良いならそれで良いや』となんだか投げ槍な空気になってくる。
その空気からお許しが出たと判断したアクスが
「……オッタル? あなた、なに付き合いの長い小父さんムーブしてるのかしら?」
「申し訳ありません」
すっかり身体を預けたアクスの頭をついつい撫でようとしたオッタルにフレイヤは不機嫌そうに問いかけ、その問いに彼はうっかりといった様子で手を止める。
オッタルにとってはちょうど良い位置に頭があり、大抵は恐がられるか敵意を持って接されるがゆえの反射的な行動だったのだろう。ただ、周囲の──さらに言えばフレイヤが『後でヘイズに言おうかしら』と悪い顔をしていたので、これ以上の精神的疲労は避けたいとオッタルはアクスを女神の貢物として差し出した。
***
さて、現実世界ではかなり愉快……もとい、眷属たちによる若干パワハラ気質なハートフルストーリーが展開されているわけだが、アクスは
草の匂いが強い森の中。しかし、それ以上の血の匂いがアクスの鼻に纏わりついている。
「大丈夫ですか?」
「すまない……。このような姿ですまない」
足元にはうつ伏せに倒れても尚謝罪を繰り返す偉丈夫。その背中にはぐっさりと槍が突き刺さっており、出血量から見てどうして生きているのか不思議でならない状態であった。
しかし、見かけてしまったのだから仕方がない。何故か治癒魔法が使えないために近くの小川で傷口を綺麗にしたりと出来得る限りのことをしたが、命の灯が徐々に消えゆくのをアクスは感じていた。
「すみません。手は尽くしたのですが」
「大丈夫だ。なにか礼を……、そうだ」
血色は悪いものの、近くの岩に座った偉丈夫がアクスに繕い直してもらった服の背中部分にある十字架を愛おし気に見つめながらポケットを弄ると、1つの金塊を取り出す。見るだけで人を引き付けるような魔性の輝きを前にアクスは喉を鳴らしていると、偉丈夫は笑いながら黄金をアクスの手に握らせようとする。
「本当はもっとあるのだが、俺の意思で渡せるのはこれぐらいしかないんだ。すまない。……?」
「あれ、掴めない」
握りこもうとしても黄金がアクスの手から零れ落ちる。何度か試すが一向に黄金が彼の手に収まらないことに、偉丈夫は納得したような表情で今度は黄金をアクスの心臓部分に据えた。
「もう君には守るべき宝物があるのか。羨ましいことだ、俺にもこんな黄金にも負けない宝物があるんだがね」
「そんなにすごい宝物なんですか?」
「あぁ、"彼女"は俺にはもったいない人だ。残念ながらこの身体では守ることは出来ないが……、君は俺と違う。我が儘を言わせてもらえれば、これで君の宝物を守って欲しい」
そう言って偉丈夫は黄金を強く握りこむ。瞬間、眩い光が鬱蒼とした森を真昼間の平野に居るような明るさに変える。
しかし、それも瞬きの合間のような短さ。光が消えたと同時にアクスの意識は一気に浮き上がっていく。
最後に見たのは奇怪な被り物をし出した偉丈夫なのは、気のせいに違いない。
***
アクスが目を覚ますと同時に目に飛び込んできたのは、何を言って良いのか分からないといった様子で顔を顰めるフレイヤの顔であった。
「ねぇ、ヘディン。私の見間違いではないわよね?」
「はい、確かにスキルは発現してます」
「アルテラの物ってスキルまで生えてくるのかしら」
「いえ、そのような情報はありませんが……。そもそも
なにやらしきりに眼鏡を上下させるヘディンと話し込むフレイヤ。しかし、傍で聞いていたヘグニがアクスの目が覚めたことに気付くと彼にステイタスを移した紙を差し出した。
アビリティはランクアップできる条件であるD判定のものがちらほら。偉業の方もオッタルたちを迎えに行った際に色々無茶をしたせいでLV.3になる手前まではたまっていることをフレイヤが言っていたため、そろそろランクアップも視野に入るのだが──。
「なにこれ」
「むしろ俺たちが聞きたいよ。なんで
この場に居る全員の言葉を代弁するかのようなヘグニの言葉を聞きつつも、アクスは首を傾げながら新たに追加された事柄を読む。
そこにはこんなことが書かれていた。
────────────
スキル
【魔力】アビリティに高補正
【耐久】アビリティに高補正
憧憬の強さにより効果上昇
対象:ヘイズ・ベルベット
魔法
ヴァナディース
詠唱:
生と死、愛情と戦い、そして豊饒を司りし婦人を守護する戦士たちよ。
鴉の声を跳ね除け、鷹を選びし者たちよ。
どうか、力なき者に強大な敵を屠る力を分け与えたまえ。
接触した存在を一定時間、術者と同じレベルに昇華。
術者より実力が上の存在には昇華不可。
────────────
ヘディンから色々教えてもらってはいるものの、こういうシステマチックな事柄については分からなかったアクスがフレイヤに尋ねるが、彼女は再び困ったような表情をする。
「アクス、ヘイズのことはどう思ってるの?」
「ちょっと厳しいけど、優しくて大好き」
「そ、そう……」
取り繕う気もない真っ向からの好意に、フレイヤは苦笑いを浮かべる。万年
厳密に言えばこの説明は間違っているのだが、フレイヤもこんな異質なスキルは見たことなければ説明通りに話してもお子ちゃまなアクスは分かるはずがない。なので、当たらずとも遠からずな説明は致し方が無かった。
「ちなみにフレイヤ様とヘイズ。どっちが大事なんだ?」
「小父さん、僕がどこのファミリアに居るのか忘れたの? フレイヤ様しかないでしょ」
「この猪は……。だが、マズいな」
「そうだね。レベル上げる魔法も十分ヤバいけど、かなりマズいね」
フレイヤファミリアにとって愚門な質問を空気を読まずに行う
すると、そこに先ほどボフマンを引き摺って行ったアルフリッグが『豚がヤバいから治癒魔法かけてくれ』とアクスを呼びに来て、その異様な雰囲気に疑問を持ち始める。
「なにか問題か? 後、アクス何フレイヤ様の膝の上に座ってるんだ。そこ変われ」
「小父さんの膝を椅子にしてたのに、起きたらフレイヤ様になったんですが?」
「なにそれ怖い。とりあえず、何が起こったんだ?」
筋肉達磨から絶世の美女というとんだピタゴラスイッチが起こったことに嫉妬から恐怖へと塗り替わったアルフリッグが事情と同時にステイタスの紙を見て──、『うわぁ』と声を上げる。
「おまっ、これヘイズ黙ってないだろ」
「ふ、ふふふ。薄紅の巫女の寵愛を受けるのは必定」
「ヘグニ、喋るな。以前でも"あれ"だったんだ。今回だとどうなるか……」
「LV.2のことね。流石にあれほどには……どうなのかしら?」
「フレイヤ様。お言葉ですが、あなたが最良の
『分かりきったこと』を聞くヘグニに、フレイヤはちょっとふざけ過ぎたと反省しながらどうするべきか考える。
そう──あれはちょうどアクスがLV.2になった時のことだ。
その結果が【魔導】の発展アビリティと治癒魔法という範囲治癒魔法の発現。しかも詠唱文の所々にヘイズの二つ名にもなっている『黄金』がちりばめられ、最後に自身の『ゼオ・グルヴェイグ』と詠唱文なことから、彼女の心情はすっかり強火に侵されていた。
元々他者のことなど蹴落とすべき存在という殺伐な環境に居たためだろうか。食事に対しても『美味しかった』、『ごちそうさまでした』と礼儀正しさを爆発させ、なおかつ
だが、そこからリスペクト一直線の成長を遂げてくれたらどうなるか──そうだね。暴走だね。
その後、『好きぃ! (訳:この子、うちが面倒見ます)』というクソデカボイスが
まぁ、そんなことはどうでも良い。今はこの情報をヘイズに伝えるべきか否か……だ。
「フレイヤ様、一応伝えるべきかと」
「そうね、何かあればオッタル。ヘイズを止めてくれる?」
「……御意」
レベル的には抑え込めるが、問題はその後である。いかに敬愛すべき主神の命令であろうとも後のことが非常に怖いことから一瞬だけオッタルが口元を引き攣らせるが、基本的に相手の顔色など知ったことかという独善的な思想からそれがバレることはなかった。
***
夜。いきなり意識を覚醒させたヘイズが、一目散に副官であるロナとイルデの部屋へと向かった。
「ロナ、イルデ! 今、アクスがとんでもない進化をした気がするの!」
「いきなり何言ってるんですか。明日も早いんですから寝てください」
「もうあの子、【魔導】持ちの治癒魔法使いですよ? 回復方向で進化の余地ないじゃないですか」
寝巻のままでやってきたヘイズに副官2人はダルそうに追い返そうとするが、それでも興奮冷めやらぬ感じなのでもう面倒くさいとロナは彼女を自分の寝床へと引っ張り込む。
なお、ヘイズの言っていることが正しいと分かるのは今から幾日か経過した後のことだった。
魔法は1つといったな。あれは嘘だ。
彼には回復兼バッファーの道を歩んでもらう!
防衛計画
フレイヤの購入した屋敷を守るため、色々画策中。
クロスボウは宗教上非人道だから駄目?
あんな立派な邸宅(コミカライズ版参照)ならかなり昔の物だろうし、隠し財産とか『隠され過ぎた財産』とかありそうと思ってぶっこみました。
お前、その言葉を面と向かって言っとけよの人。
すまない。ラインの黄金の欠片しか渡せなくてすまない。でも、呪いはないから安心して欲しい。
そろそろ妻が同僚を呼び出す時間だから…。すまない。
魔法
春姫の劣化版だが、緊急で強者を複数増やせるだけでもかなりヤバい。
今のところ人数は5人で制限時間は10分と要所要所で春姫には劣っているが、自衛も出来て回復も出来るので有用性としてはトントンかと。
強すぎる? チート? 番外編だからへーきへーき
ヘイズ
好きぃっ!(クソデカボイス