時間にしてど深夜。【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院は店仕舞いしていたものの、煌々と明かりが灯っていた。
「解呪が完了した方から病室へ移送してください!」
「アミッド、増血剤がないわ!」
「
清潔感のある寝台に寝かされた数名の冒険者にアミッドは額から大量の汗を流しながら治癒魔法を何度も行使している。
フィンを始め、【ロキ・ファミリア】の団員たちが食らった
最終手段として多大な
そんな野戦病院のような治療院の一画。既に治療を終えて休んでいる【ロキ・ファミリア】の団員たちの他にアクスは寝かされていた。
「酷いです。アクス君が何をしたって言うんですか……」
「地雷……つっても分からんか。アクスがベートの痛い傷を不用意に触ってしもたんや。でも、これはうちの責任や。ヴィーザルにも言われとったのに……、ミスったわぁ」
おかしなことを言ってることにはいったん目を瞑り、目を覚まさないアクスの顔を覗き込みながら怒るレフィーヤ。しかし、その横でロキは自分の額に手を当てながら本気で落ち込んでいた。
ベートの『傷』について、元のファミリアの主神であるヴィーザルから聞かされて分かっていた。否、
まさか殴り掛かるとは思ってはおらず、あの時は般若のごとき怒りようのアミッドにフィンとガレスから誠心誠意の謝罪をし、ベートには
それでも処分が軽すぎると怒りが収まらない様子のアミッドにリヴェリアからこっそり事情を話してもらってひとまずは納得してもらい、フィンとアクスが意識を取り戻した際に改めて話をすることにしてもらった。
正直、ロキ本人も胸焼けするレベルの甘い処分だという自覚はある。だが、ディアンケヒトの言ったように死者蘇生に関することは神々の責任であるため、どちらかと言うと
「こういうことになるんやったら、皆に説明しとけば良かったわ。でもなぁ~」
「やっぱり、脱退になるんでしょうか?」
「それは誰も幸せにならんしなぁ。そもそも、アクスのやったあれこれについてはうちの……あーっ! めんどくさいわぁ!」
自身の不手際が招いた結果とはいえ、どこから処理をしていくかと頭を悩ませても良い考えが浮かんでこない。こんな時は
「レフィーヤ、もっとグッと行ってもバレ……ハッ、寝込みはあかんで!?」
「しませんよ! あ、ロキ。アクス君の……その……そs 「レフィーヤ」 ごめんなさい」
この場には【ロキ・ファミリア】の他に【ディアンケヒト・ファミリア】も居る。
だが、言いたいことは分かる。そこで、今後リヴェリアの後釜として色々学ばせなければならないと思ったロキは、アクスの寝ている寝台のカーテンを閉じて疑似的な密室を作り出してから
「レフィーヤ、"あれ"とか"それ"みたいな物言いをしぃ。それやったらここでも答えられるわ」
「……分かりました。ロキ、"あれ"はなんですか」
「ヘルメスのアホの言葉を借りると、"下界の神秘"やな」
率直な疑問にロキはアクスの行った偉業ともいえる功績を思い返す。
死者蘇生の詠唱によって命を失った数名の蘇生が滞りなく行われた。初めこそディアンケヒトに言われた『記憶を失う』という欠点を警戒してロキが話しかけるが、彼らはこういった。
──ヴァレッタはどこに行ったと。
結論から言えば消えると言っていた記憶やファルナ自体は
具体的に言えば『LV.1のオールアビリティ0』に戻ったと言った方がしっくりくるだろうか。冒険者として再スタートには変わりないが、記憶は無事なのでダンジョン攻略のイロハや仲間との連携を覚えているのは大きい。
残念なことにリヴェリアの知識でも、代償の変化については分からなかった。アクスの魔力が上がったことによるものか、それともアミッドたちの勘違いといった他の要因によるものなのか……。
詳しく調べようにも内容が内容かつ、ディアンケヒトからも強く言われているためにひとまずは
それでも、死者0という【ロキ・ファミリア】にとって
ベートのことについては──棚上げしなければやってられない。
「んで、レフィーヤ。自分はうちの言ってたことは分かるやろ?」
「はい。ロキの言うことは分かっています。おそらくあれはリヴェリア様や私以上に厄介の種になります」
「せやなぁ」
レフィーヤの言うことは尤もだった。
以前、『世界最高の魔導士はリヴェリア・リヨス・アールヴである』というオラリオのエルフの言葉で
そのことを考えると、アクスの死者蘇生は樽に詰まった火薬と同義。バレたらオラリオのみならず、世界から狙われるのは火を見るより明らかだ。
「そこまで分かってくれとるんなら大丈夫や。他の子らにそれとなく伝えてな。……あ、何度も言うんやけど」
「"あれ"とか"それ"ですね。分かってます」
すっかり
「神ロキ、何をしてらっしゃるのですか?」
「ひえっ、アミッドたん!? もう終わったんか!」
「えぇ、全員の治療が完了しました。それよりも詳しく……、説明して下さい。今、私は冷静さを欠こうとしています」
ほんのお遊びで叩いたにしても1発は1発だ。カーテンから顔を半分出しながらロキの方を見るアミッドにロキは『ヒーラーは見た』と茶化すものの、無言で見つめられ続けたことで呆気なく撃沈。未だに起きないアクスを叩き起こせないかと思ったことを正直に話すと、案の定アミッドがキレた。
「何を考えてらっしゃるのですか!? アクスは今、重度の
「せやけど、うちは楽になりたいんやー!」
「はぁ……、分かりました。ちょうどフィン様の意識が戻ったので、アクスが起き次第始めましょう」
意識が戻ってない患者を叩き起こそうとする非常識な神に向かって強めの言葉を投げかけるが、そんなアミッドにロキは真っ向から反論する。
仕出かしたことは最悪だが、生殺し状態である彼女の心情は痛いほど分かる。そのため、アミッドはひとまずアクスから引き離すためにフィンが目覚めたことを伝えた。
流石に団長が目を覚ましたことは無視できなかったらしく、ロキとレフィーヤは全速力でフィンの病室へと向かていった。
周囲には寝かされている【ロキ・ファミリア】の団員しかおらず、アクスの寝ている寝台は部屋の最奥ということで誰も居ない。だからどう……ということではないが、周囲を何度か見渡した後にアミッドはアクスの頬を優しく撫でた。
「うへへ……お姉ちゃん、頑張ったよ」
「よく頑張りました、花丸をあげます。ベート様については、……治療院にいらしたら
褒められる夢を見ているのだろう。全くもって愛おし……げふん。子供らしく可愛らしいとアミッドは微笑む。
今回は本当にアクスは頑張ってくれた。アキやラウルといった実際にアジトに潜った冒険者が断片的に話したことなので完全に把握は出来ていないが、アジトの中にはポイズン・ウェルミスも居たのだとか。さらには自爆する
これらの障害を乗り越えて脱出してきた【ロキ・ファミリア】の実力は賞賛に値するものの、それでもレミリアやクレアのように本来であればアミッドが辿り着いていた時には既に手遅れとなっていた可能性がある冒険者が数名居る。
「むぃ~。むぃ~」
「ふふ、モチモチ」
アクスのつきたての餅のようにモチモチふわふわな頬の感触を楽しんでいたアミッドだったが、ふと彼がしきりに口をもぞもぞしていたのが気になった。夢で何かを食べているのだろうが、現実世界では無意味に口を動かすばかり。
次第に耐え切れなくなったアミッドがおそるおそる指をアクスの口元に近づけると、彼はその指を小さく食んできた。
「お腹、すいたんですか?」
アミッドの問いにアクスは何も言わずにアミッドの指のつま先をモニョモニョと食む。この時、何とも言えない多幸感のようなものに包まれたアミッドであったが、すぐにそれが睡魔へと変わっていく。
思えばここ数日は様々なクエストや調剤で碌に休みは取れておらず、本日は徹夜作業であった。そう考えると、そろそろ休憩を挟まないと業務に差し支えるかもしれない。
「ちょうど、目の前に……。いや、何を考えてるんですか。アクスは今、患者なんですよ」
誰も居ないことを良いことに自問自答をしながらアクスの口元から放した手で布団を掴み、そのまま上下に動かしているとアクスの瞼がうっすら上がってきた。
「アクス、気づきましたか? 指は何本に見えますか?」
「お姉ちゃん、一緒に寝よ」
寝ぼけ眼で寝ぼけたことを言ってくるアクス。本来のアミッドならば『バカなことを言うんじゃありません』と注意しながら改めて起こすのだが、今回ばかりは違った。
そろそろ休憩しようと思っていた矢先ということもあってか、口々に『これは患者が求めてきたこと』や『頑張った自分へのご褒美』や『数分だけ……数十分だけ』と謎の論理武装を次々と展開しながらアクスの布団に入っていく。
パルゥムの子供であるアクスとヒューマンとしては小柄なアミッドがベッドに入っても片方が転げ落ちるということはなく、なにより冬から春の初頭にかけてはアクスの子供特有の体温が心地良くなる季節。一瞬の内に眠りについたアミッドが次に目を覚ますと、既に朝日が差し込み──。
ついでにロキを含めた三首領や【ロキ・ファミリア】の団員たちが見ていた。
なお、【ディアンケヒト・ファミリア】の団員はチラチラと見つつも『あー、いつものか』といった具合に、仕事の手を止めた
「アミッド、流石に自分のベッドで寝た方が良いと思うよ?」
「アミッドさん、私にエルフの生娘みたいなことをって言っておきながら……。も、もしかして!」
「あー、でも私も親に結構甘えてましたねぇ」
「私もー。お母さん、元気かなー」
「流石アミッドたんや! おねしょたを理解しとる! 訓練でぼっこぼこにする暴力系おねしょたエルフなんて居らんかったんや!」
真面目にアミッドの体調を心配する者。割と好意的で親との記憶を懐かしがる者。エルフ特有の潔癖さでちょっと引く者。
一目見て阿鼻叫喚となっていることは理解できたものの、未だに抱き着いているアクスを慌てて引き剥がしたアミッドは【ロキ・ファミリア】の波を掻き分け、さも何事もなかったように去っていく。
──逃げたのだ。
***
「で……だ。
「はい。そちらには歯が立たないでしょうが、グランド・デイのような疑似的な不死の軍団をご覧に入れましょうか?」
先ほどまでのロキ優勢な空気はどこへやら。応接室はすっかり恐怖に支配されていた。
「お姉ちゃん、なんで怒ってるの?」
「団長と言いなさい。あなたがベート様に殴られたの。忘れたの?」
「仕方ないよ。怒らせちゃったんだし。多分だけどベートさんって、たくさん大切な人を失くしたんでしょ?」
「ちょい待ち。アクス、自分ベートのこと誰かから聞いたんか?」
ベートの事情を察したような言葉にロキが聞くも、アクスはただ『僕も似たようなものだし』と天井を見上げるばかりであった。
アクスは自分の傷を理解しているパルゥムである。傷があるからこそ相手に優しく出来、傷があるからこそ触れないように気遣える。そんなパルゥムだ。
そんな彼からしてみれば、先日の行動は今更アミッドが蘇生魔法を覚えて他者を安々と蘇生させたような状況に近い。表面上は蘇生できたことを喜ぶが、内心では『両親を助けてくれなかった』という八つ当たり気味な恨み辛みでぐつぐつ煮えたぎっているようなもの。
軽く想像しただけでも吐き気がするため、おそらく当事者となったら真っ当な精神ではいられないだろう。
両親でさえ
「本当は君の優しい意見に縋りたい。こちらとしてもリーネの他、重傷者を回復しながら連れて帰ってきたという功績も加味してあげたい。だけど、ファミリアを預かる団長としてはベートに相応の罰則を加えなきゃいけないんだ」
「僕が良いって言ったのにですか?」
「アクス、これはファミリアとファミリアの問題になってるの。こちらは依頼された通りに人を蘇生したのに、攻撃を加えられた。これは立派な違反行為で、適当に折り合いをつけると双方が幸せにならないことなの」
真面目な表情のフィンとアミッド。気づけば周囲も同じようにベートを脱退させる気満々な雰囲気に、疎外感を感じてしまったアクスは次第に涙目になってくる。
このままベートが脱退したとあれば、それは回り回って自分がやらかしてしまった責任になってしまうとアクスは勘違いする。今まで自分の行いのおかげで人が助かったことは多々あれど、自分のせいで誰かが不利益を被ってしまうという実感があまりなかったアクスはとうとう泣き出してしまった。
「ベートさん……ひぐっ。やめさせないで……。うぇっ……、許してあげて……」
「アミッド、この子は本当に冒険者か?」
「そのはずです。……はぁ、分かりました。ベート様の脱退を抜きに話を進めましょう」
「つまり、金の話じゃな?」
急に生き生きし出した
ちなみに言うと、ディアンケヒトは他派閥の人員が脱退しようがこちらに益はないので、元々賠償の方を願っていた。ただ、案外脱退側が多くて『金にならんではないか』とヒヤヒヤしたが、良い感じにアクスが泣いてくれたおかげで方向が変わり、内心ほくそえんでいたりする。酷い神も居たものだ。
結局、ガレスが壊したブリューナクの弁償も加え、【ロキ・ファミリア】からはかなりの金額をせしめることが出来た。
ただ、それだとベート個人の贖罪にはならないのでベートに接触次第、彼の口座にあるヴァリスを全て賠償金として支払うことをロキが約束する。
「お金、全部持ってっちゃうんですか?」
「せやで。ま、ベートのことやから困ったらダンジョン潜るやろ」
上級冒険者である彼にとってはあまり痛くもないだろうが、脱退を抜きにすればこれ以上のペナルティはフィンたちには思いつかなかった。
すると、アクスとアミッドが同時に手を挙げる。
「何か、そちらで良い案があるのかい?」
「はい。私からはベート様に
アミッドが言うには、これはあまり言うことを聞かない冒険者の患者に使う治療法でかなりの痛みを伴うらしい。形容するならば『壊しながら治す』という矛盾を孕んだ治療法だが、主に動いたせいで骨が中途半端に元に戻ったりした際に使うのだとか。
「お姉ちゃん、止めて。ベートさん死んじゃう」
「大丈夫。上手くやります」
フィンすらも『うわぁ』というような悪い顔。『聖女の姿か……これが』と思わず言ってしまい、ソファから弾き飛ばされるディアンケヒトの情けない声を聞きながらもフィンはアクスの方を見る。
「アクスは何かあるのかい?」
「お金をちょっと残してあげることはできないかなって」
「ちなみにいくらや? そんなに多くは周りに示しがつかんからな」
ロキたちにしてみれば全額が最低ラインであるため、とても容認することは出来ない。それでもアクスが必死に考えた罰として聞いてみたい気持ちもあった。
ロキの言うこともあってかしばらく悩んだ末にアクスは──。
「んーと、50ヴァリス」
全員が噴き出したのは言うまでもない。
***
「と、とりあえず、ベートの処分はそのように取り計らうとして。そろそろ始めさせてもらうよ」
子供の駄賃レベルの金しか口座に入れない罰に満場一致で決定した後、少々笑いながらもフィンは今回の結果を報告する。
纏め上げているのが下界の子供ならば問題はないが、フィンの重傷を見るにおそらく無所属となった高レベルの冒険者にファルナを刻んだ邪神の存在が居る。そこまで考えを巡らせていたディアンケヒトは、半ば決めつけるような口調でフィンに尋ねた。
「
「レフィーヤの話では神タナトスが率いているらしい。だが、彼の他に"エニュオ"という未知の存在が居る」
ミアハやゴブニュたちとは違って『同郷』ではないタナトスは名前だけ聞いたことはあるが、エニュオという存在は
そもそも本当に神なのかと問いかけるディアンケヒトに、ロキはあっさり『偽名やろな』と暴露した。
「つまり、主神を持った
「みたいだね。だけど、今回は"手札"が違うらしい」
そう言ってフィンが1枚の紙を差し出した。紙の中央には異形の存在が大きく書かれ、その周囲を囲むように長い髪を垂らした人間が合計6人配置されている。
レフィーヤとフィルヴィスが見つけた壁画を記憶を頼りに書き写させたので所々が違うとのことだが、ディアンケヒトはこの壁画が刻まれたと思われる年代を推測する。
「古代じゃな、それも遥か昔」
「うちも同意見や。"アルゴノウト"や"フィアナ騎士団"よりも昔のもんやで、これ」
アルゴノゥト。『喜劇』と称されるほど滑稽なのに、最後の最後で偉業を成し遂げた異端の英雄。彼の後に続いて数多の英雄が名を馳せたことから、『英雄の船』と称される男の物語だ。
そして、フィアナ騎士団。言わずと知れたフィンが神聖視している集団だ。アルゴノゥトと近い時代にモンスターと戦い続けた騎士たちで、1度壊滅の憂き目にあったが2代目がこのオラリオまでの道を
ディアンケヒトとロキは別段本の虫ではないが、それでも物語を嗜む程度には読んでいる。今まで見た蔵書に『そう言った描写などがない』という観点からこれは神々が地上に降りる前の時代──遥か古代の壁画ではないかというロキの話にディアンケヒトは頷いた。
「その手札の名前も分かっとる。"ニーズホッグ"って分からんか?」
「知らんな」
「モンスターでしょうか? それほど強大となると、強化種や階層主?」
「階層主Tシャツにそんな名前なかったー」
1人やや異なる反応を示すが、案の定知らないということでロキはがっくりと肩を落とす。
何はともあれ、主犯格の名前と謎の存在。後は謎の手札という疑問塗れの概要を伝え終わり、続けてクノッソス内部で起こったことについてフィンとガレス視点で共有される。
「オブシディアン・ソルジャーの欠片にアダマンタイト……。クノッソスと言ったか、えらく豪勢なアジトじゃの」
「あぁ、それについてはモンスターを見世物として密売していたファミリアなどが協力していたらしい。そこで儲けた金で細々と作られてたらしいね」
「それ、大丈夫なんですか? ほら、犬猫だって子供攫ったら親が怒るじゃないですか。凶暴化とかするんじゃないです?」
「アクス、私の授業を聞いていなかったのか?」
資金源の話になった時、今まで理解があまり出来ていない様子のアクスが手を上げる。
アクスの言いたいことは分かるが、モンスターはダンジョンで生み出された存在である。縄張りや別種族を攻撃したりという凶暴性はあれど、両親といった情は無いというのが通説なため、上級冒険者であるフィンたちは『あり得ない』と論じた。
「とりあえず、話を続けよう。アジトの特徴だけど──」
その後も報告は続く。
クノッソスの扉はアダマンタイトよりも固いオリハルコンで出来ており、開閉には特別な『
それだけでも厄介なのに、敵は大抗争でも使われていた魔石製品の撃鉄を用いた自爆兵にミズグモのような新種のモンスター。さらにはヴァレッタという暗黒期の遺物やどこからか雇った暗殺者。後はアイズを必要以上に付け狙う
もはやそれだけでお腹いっぱいなところに
ゆえにフィンはアミッドに対抗策を講じるように頼んだ。
「そういうわけで、アミッドにはこの
「それは
「任せる。だけど、間違えないでくれ。完全に癒せる物だ。それさえ出来たらなんでも良い」
危険な敵は多数居れど、この
特に1人でいた場合に大勢で襲撃された挙句、動けないほどの重傷を負わされたらそこで終了だ。【ロキ・ファミリア】はその間にクノッソスを開閉させる
「承知いたしました。他に我々が出来ることはありませんか?」
「うーん、個人的にはアクスも治療院の中に居て欲しいんだけど。無理かな」
「嫌です無理ですできません」
レフィーヤがたまに全力で嫌がる時に見せる壊れかけの魔石製品のような拒否を延々と流すアクス。彼にとって往診とはアミッドの願いを叶えるために必要なことで、自らが彼女に追いつくための手段なのだ。
いくら【ロキ・ファミリア】から言われようと、大金を積まれようと、それだけはしたくないとそっぽを向くアクス。そんな覆せるような雰囲気に、リヴェリアは1つの提案をしてきた。
「なら、1つのパーティにアクスの護衛を兼用させるのはどうだ? どのみち、オラリオ内の捜索もするんだ。ついでに鍵の特徴を教えておくから、情報収集を行ってくれればありがたい」
「そうだね。ファミリアを渡り歩いているアクスなら情報も集まりやすいだろう。その線で行こう」
知らない内に情報収集要員にされた気がするが、往診できるのであれば多少の不便は飲み込もうとアクスはリヴェリアの意見を承諾する。
後は今回の戦いで用いたアイテムの補充や必要になりそうなアイテムの注文といった細々としたことをフィンが頼み、後は
「本来は最初に言うことだったけど、ベートの件があったからね。改めて、僕たちを助けてくれてありがとう」
「いえ、前にも言ったはずですよ。僕はお姉ちゃんの信念に従って皆さんを癒しただけです」
「それでもや。失った命すらも癒した自分に、うちらは本当に感謝しとる。……で、賠償のことは抜きして何が欲しい? それこそなんでもえぇわ。ベートのこともやけど、それぐらいやないとうちらはアクスに申し訳が立たん」
これは1つのケジメだ。物品を要求してもらってそれを叶えることで信頼関係を生み、同盟を強固にする儀式だ。特にベートの1件でファミリア同士の信頼は少々落ち込んでいる今だからこそ、必要な手段である。
ディアンケヒトも【ロキ・ファミリア】の『なんでも』に心を躍らせるが、徐々にアクスの機嫌が悪くなってきている雰囲気を感じ取ったアミッドは主神を無理矢理黙らせてからアクスの方を見た。
「アクス、ちゃんと言いなさい。どんな答えでも私は支持するし、多分だけど私と同じことを思ってるはず」
「ん、分かった」
居住まいを正すアクスにロキは何を頼むのかを内心ワクワクしていた。
以前は自信の力を高めるためにグリモアを強請った。その結果が
今回はどのような物を欲し、どのような成長を遂げてくれるのか。眷属ではないが、ロキにとって三首領並みに注目しているパルゥムの次の言葉を期待して待っていると──。
「お断りします」
『……は?』
フィンたち【ロキ・ファミリア】側だけではなく、ディアンケヒトまでも呆気にとられた表情でアクスを見る。その中でアミッドだけは分かっていたように目を伏せていると、アクスは続けて理由を語り出した。
「ロキ様、人の命は物品やお金で買えません。それに、僕はお金が欲しくてレミリアさんたちを癒したわけじゃないです」
「それは分かっとる。せやけど、これは誠意っちゅーもんでな?」
「誠意ならば僕ではなく、ファミリアに向けてください。今回、命を落とした方々は心に傷を負っているはずです。それを癒すのが他でもない、主神であるロキ様のやるべきことだと思います」
アクスの心からの説得にロキは頭から真っすぐ落雷を受けたような衝撃を受けた。
神であるロキは死ぬことはない。下界から天界に戻る際も、命を失う前に神の防衛機構でアルカナムが発動して強制送還される仕組みなため、
痛かっただろう。怖かっただろう。辛かっただろう。
もしかしたら、それが原因でもう戦えないかもしれない。そこまで含めてフォローをしてあげなければならないことに
「ほんまにうちはアホや。せやな、あの子たちの今後をちゃんと話してあげんとな。分かったわ、今回は"貸し"にしといて」
「そうしてください。それにとある女神様も言ってましたよ。"帰って来てくれた者の無事を喜ぶのは神も子も関係ない"って」
「ははっ、アストレアやな。しかし、昔はアイズたんみたいにすきっ歯作っとった子がここまでとはなぁ。やっぱ、下界楽しいわ」
「あんなに泣いてた子がこんなに立派に成長して……。 「アミッドぉ、なにやっとるかぁ!」」
さりげなくディアンケヒトから渡されたハンカチで鼻をかむアミッドはともかく、なんだかすっかり昔を懐かしむような空気になる。
暗黒期──それも大抗争という市民も冒険者も大勢が無くなったあの地獄のオラリオを経て、どうしてここまで善良で人の痛みに寄り添える人物が出来上がるのかは甚だ疑問だが、おそらくは様々な出会いの連続でこうなったのだろう。
そんな出会いの中に
「明日はリハビリついでに着いていくよ。【ヘファイストス・ファミリア】にも説明しないとね」
「あい」
こうして長々とした報告会は幕を閉じた。
ベートがいきなり殴ったことへのペナルティが軽いかもしれませんが、これ以上だとガチ脱退ぐらいしか道が無いと思うので…。
傷ついた癒し手
傷ついた治療者のみが癒すことができる。
心の傷を自ら治した者は、傷ついている苦悩や治し方を身をもって知っているのだから、他者の傷も癒すのが可能だろう、という考え。
ただ、安易に許してしまうのがベートにとって赦しとなるかは別のこと。アクスもまた、ひよっこなのだ。
アクス
すっかりポメラニアン系主人公が板についたナマモノ。指近づけると舐めて来るのはペット飼ってる人にとってはあるあるかと。
ベートの事情はまったく知らないが、両親を亡くした関係で薄々感づいている。なので、今回のことで怒るのは当たり前のことだし、それでファミリアを止めさせられるのは自分の責任みたいで嫌だった。
大人からは状況判断的に『そうじゃない』と言えるが、まだまだ12歳なのでね。勘違いもすれば、罰則という仰々しい言葉を異常に恐れてるんです。
冒険者の姿か? これが…。
ベート
今回の騒動の発端。現在、やってしまったことに落ち込みながらクノッソスの鍵を探して徘徊なう。
なお、この後ロキたちと接触して貯め込んだヴァリスを押収することを承諾したが、いざ残高を確認すると50ヴァリスだけ残っていたことに『あのクソガキャー!』と吠えたとか。
アクス君、聖人過ぎない?
アミッド「私が育てました」
ヘイズ「私が育てた」
その他複数の教育者表記
死者蘇生について(設定集にも追記)
冥府に放り投げる対価とはレベルの減少のみ。(回復量によってLV.2~3程度)
記憶を失っていたのは死亡した後に時間がたち過ぎたことで魂の漂白が始まっている最中に呼び戻したから。
つまるところ、死にたてほやほや(もしくは少しの猶予内)ならば記憶の消去は行われない。
ただ、
LV.1の場合はギリギリの体力で蘇生されるものの、
他はℍP50%回復の対価がLV.2、ℍP100%回復の対価がLV.3ではあるものの、アミッドのように切り替えのような柔軟な切り替えは出来ないためにLV.3以上は自動的にℍP100%が選択される。
※なお、これも治癒魔法なので
※モンスターに関しては灰になるため、多分無理。やったらあの骨骨ロックの出番奪いそうだし