アミッドさん、もうちょっと色気とか上げないと駄目みたいっすよ。
異様の速さでメレンまで走り抜けた
乱戦としか形容できない戦場の最中、【ロキ・ファミリア】の団員は劣勢に立たされていた。
ロキの趣向で女性陣の数は多くとも、【カーリー・ファミリア】の数には劣る。さらに先の遠征で武器を整備に出してしまっている者が多いため、いつもの半分の実力が出せれば良い方であった。
「連携しなさい! 分断されたら終わりよ!」
アリシアもその1人であった。彼女は魔導士ではあったものの、町中で魔法を放てばどういう事態になるかは容易に想像できる。
しかし、それがどうしたと言わんばかりにアマゾネスたちは喜んで接近戦を仕掛けてきている状況だ。食人花の対処も十分ではない中でよく戦ってはいたが、多勢に無勢という言葉の通りになってしまう。
「あ”ぅっ」
1人のアマゾネスがアリシアを押し倒し、異国の言葉を呟きながら短剣を振り下ろす。周囲の団員がアリシアの名前を叫ぶが、その凶刃が彼女の胸を刺し貫く──前に。
「◎×●&%#?!」
突如として
突然の助け。フィンたちが来たかとアリシア含めた【ロキ・ファミリア】の団員たちが期待の目を向けるが、そこに居たのは馬に乗った鎧兜という出で立ちのパルゥム。明らかにフィンでもないし、アクスが鎧を着ているところも見たことがない。
兜も被って顔も見えないということで、『誰?』という考えが彼女たちの間を駆け巡る。
しかし、そうしている間にも仲間を傷つけられたアマゾネスたちが雄たけびを上げながらそのパルゥムに襲い掛かった。
1人対数人という展開にすぐさま団員たちも動こうとするが、初動が遅れたせいでどう考えても間に合わない。それでも精一杯の警告として『危ない』と叫ぶが、次の起こるであろう惨状に唇を噛み締めた。
「あぁ、もしかして"エルミナ"の故郷の子たちかな」
しかし、パルゥムは小さく呟くと片手で槍を振り回すことで数人に及ぶアマゾネスを
「悪いね。おじさん、どっかの聖女様のせいですっかり男女平等に染まっちゃってるんだ」
軽い懺悔をしながらもアマゾネスを次々と叩きのめし、やがて絡んできた彼女たちを全て行動不能にしたパルゥムは【ロキ・ファミリア】の団員たちと戦っていたアマゾネスたちに向かって突っ込んだ。
いきなり猛スピードで突っ込んでくる馬に対処できなかったアマゾネスが轢かれ、それを避けたアマゾネスの腹に槍の石突が突き込まれ、馬を止めようと飛び掛かってきたアマゾネスを槍で払い落す。
「ふぅ……。やっぱり若いって良いねぇ。思った通りに動ける」
まるで老人が若返ったような口ぶりで話すパルゥムの後ろには全滅したアマゾネスと呆然と突っ立っている【ロキ・ファミリア】の団員たちしか残っていなかった。
傍から見て高レベルは間違いない強さ。しかし、鎧姿のために個人が判別できないと団員たちが小さく『誰?』『味方?』と話していると、件のパルゥムが倒れたままのアリシアに近づいていく。
接近に気付いて彼女も慌てて起きようとするが、身じろぐことしか出来なかった。
「あぁ、無理はしない方が良いよ。……っと、エルフのお嬢さんか」
馬から降りたパルゥムがアリシアの尖った耳を目敏く見つけると、手甲を外そうとした手を止めてから彼女の手を掴んで引っ張り上げる。身長差や思った以上に強い力だったのでその場でふらついたものの、助け起こしてくれたことに彼女は目の前の正体不明なパルゥムに感謝した。
「ありがとうございます」
「いやぁ、こちらこそ汚い手甲で掴んで悪かったねぇ。昔、エルフの吟遊詩人から聞いたことあるけど、おたくの種族って肌の触れ合いを嫌うっていうし……。でも、倒れた淑女を放置するのはおじさん的にどうもね。他のお嬢さん方も大丈夫かい?」
なにこの紳士。アリシア含めて全員がそう思った。
時折間延びした気怠げな中年を思わせる口調はマイナスだが、エルフに対して満点の対処に乙女への気遣い。そして先ほどまでの鬼神のような強さも合わされば先ほどのマイナス点は
もっと端的に言えば、ずきゅんどきゅんと胸が高鳴っちゃのだ。後に彼女たちは出会いはダンジョンではなくメレンにあったと強く語り、このパルゥムの正体が分かった瞬間にさめざめと泣いたとか。
「あ、そうだ。つかぬことを聞くけど、リヴェリア様はどちらに? 鼻たれ……じゃねぇ、フィン団長から届け物があるんだけど」
「あ、それならあちらの方に……」
アリシアが指を指した先には3匹の食人花が暴れていた。アマゾネスを撃退出来た今、彼女たちの今の使命はかのモンスターから市民を守ることだと走りだそうとすると、その行動をパルゥムが止めた。
「あっちにリヴェリア様がいらっしゃるんだろ? なら、ついでに倒していくことにするよ」
「なっ! 1人では危険です!」
「大丈夫大丈夫ぅ。それよりも民の避難は頼んだよ」
そう言いながらパルゥムは指笛を吹く。甲高い音に気付いた馬が彼を乗せ、そのまま颯爽と走り去ってしまった。
少なくともダンジョンの新種を知っている全員がせめて援護をしようと駆け出すが、そんな彼女たちをあざ笑うかのような光景が両目に飛び込んできた。
「嘘……倒してる」
1匹目の食人花が根元から切り伏せられたのか大地に沈み、敵に気付いて口を大きく開けた2匹目の食人花が弓に持ち替えたパルゥムの放つ矢に寄って魔石を貫かれて灰に変わり、最後の食人花が馬から飛び上がったパルゥムの槍によって口ごと魔石を両断される。
そうして再び馬上へ戻ったパルゥムがそそくさと走り去っていく姿に、彼女たちの胸に燻っていた疑問が恐怖となった。
「本当に誰なの!」
「団長よね! あの槍って団長のよね!? そうだと言ってー!」
混乱が収まりつつあるメレンにすっかり恐怖に染まった女性の叫びが木霊した。
***
「まずいな、囲まれた」
メレンのギルドで
今の彼女には魔導士が魔法を使う補助具である杖は無く、今の彼女がそのまま魔法を放てば
さらに状況が悪いことにリヴェリアから少し離れた場所に市民たちが避難している建物がある。【カーリー・ファミリア】の意図はさっぱり分からないが、いつ考えを変えるか分からない危険な状況でもあった。
ゆえにLV.6というアビリティの暴力を用いてひたすら時間稼ぎをしているが、いかんせん数が多い。どうやって切り抜けるかを悩んでいると、けたたましい馬蹄の音と一緒に『リヴェリア様ー』と自身の名を呼ぶ存在に通りの奥を見る。
すると、馬にしては速過ぎる速度で謎のパルゥムが突っ込んで来る。慌ててその進行方向から飛び退いた次の瞬間、まるでベートが全速で走ったような衝撃波がリヴェリアの頬を撫でた。
当然、進路上に居たアマゾネスはそこら中に吹っ飛び、皆一様にノびている。通り過ぎただけで戦況を覆した猛者の登場にすっかり警戒心を露わにした彼女が構えると、酷使し過ぎて脚を笑わせている馬から降りたパルゥムが手を左右に振って敵ではないことを強調してきた。
「あー、おじさん……じゃなかった。私は怪しい者じゃないです。フィンの大将から連絡を持ってきました」
「連絡?」
「いと尊きお方、こちらを」
その場で跪きながら恭しくフィンから託されたポーチを差し出すパルゥム。昔に散々見た姿勢や口上に『イケ好かない奴だ』と鼻を鳴らしたリヴェリアは、ポーチをひったくってから中身を改める。
中には道化師のシーリングスタンプが押された便箋と
そのため、彼女はひとまず手紙を読むことにした。1行──2行──3行と読み進めていく内に『バカな……』や『そんな……』と明らかに動揺している言葉が紡がれ、やがて全て読み終わると同時に信じられないという表情でパルゥムを見た。
「お前が……、アクスなのか?」
「正確には"身体を借りている者"です。"おじさん"とでもお呼びください、尊きお方。本当は真名を明かしたいところですが、今はそのような場合ではないことはご理解していただけるかと」
「それは分かっている。だが、なんで
「この魔法。私が動けば動くだけアクスの坊への負担になるんです。そろそろ魔法の時間切れなので、早めに坊に飲ませてください」
言うが早いか、パルゥムの身体が輝いたと思えばアクスがその場に突っ立っていた。周囲を見回した彼がリヴェリアの姿を見つけると、『お母さーん』と周囲にエルフが居ない時に呼ぶ呼び方で手を振ってくる。
その無邪気な姿に先ほどまでのイケ好かない鎧姿のやつの印象が一気に霧散した彼女は、『まったく』と言いながらも微笑を浮かべるが……。
「アクス、早く
「もう戻ってますよ、尊きお方。まったく、状況判断が早い早い。それだけあなた方を信用してるんでしょうねぇ」
周囲の残骸から敵意が漏れ出てくる。先ほどまで気絶していたアマゾネスが再び意識を取り戻したのだろうとリヴェリアが慌てて指示を出す前に、
まさか本当に変身するとは思わなかった彼女はせめてそのむず痒い言葉遣いを止めるように言うと、彼は『はいはい~』と相変わらず飄々とした態度で前に出る。
「おい、お前より私の方がレベルが高いぞ」
「だからこそです。先方はお任せを こちらは人、村、砦と"守る戦い"は嫌というほどやってきましたからねぇ。慣れたもんですよ」
建物の窓から手を振っている子供を見た
結果的にリヴェリアやその後ろにある建物までアマゾネスは迫ることなく、途中でフィンたちが合流したことで【カーリー・ファミリア】との前哨戦は終了。後はティオネとティオナ。そして捕まったレフィーヤを奪還すればこちら側の勝利となる段階までこぎつけた。
「本当に助かったよ。おじさん」
「大将がやれと言ったからねぇ。それに知り合いに似てる子の命令があったから、ついつい張り切っちゃったよ」
彼が単騎掛けをしたおかげで被害なくメレンに到着したフィンたちは、そのまま意識を取り戻したアマゾネスたちを襲撃。その勢いで捕縛に成功した。
【ロキ・ファミリア】という最上の雄を前に目がハート形になっていることを除けば全て予定通り──否、
それもこれも目の前で飄々としている
「おっと、まだおじさんに働かせるのかい? あまり坊に無茶はさせるもんじゃないと思うんだけどねぇ……」
「おじさんの力は必要ないよ。捕まったエルフの子が傷つかないように守ってもらうだけさ」
「あぁ、あの子か」
明らかにオーバーワークだと苦言を呈するが、アクスの役割を話すフィンに彼は合点が行ったのかなにも反論せずに
「団長ー、頑張ったー!」
「うん、ご苦労様。それで、体調はどうかな? 出来れば新たな仕事を頼みたい」
フィンの頼みにアクスは自身の現状を確認する。怪我や疲労感といった行動に支障が出るような症状はなく、精神力も魔法を使ってすぐに倒れるほど減ってはいない。一切の問題がないことを伝えると、フィンはガレスを呼んでからアクスたちにレフィーヤの救助を命じた。
「大半はガレスが片づけてくれるだろうけど、その間にレフィーヤを人質に取られたら面倒だからね。そのためにアクスにはオハンで彼女を守ってもらいたい。出来るね?」
「アイズではないから残念がられそうじゃのぉ」
「髭ごと金髪にしてみたらどうかな?」
明らかに冗談の類だったが、ドワーフにとって髭などは
「アクス、お主はああいった奴にはなるでないぞ」
「ドワーフにとって髭は神聖な物だもんね」
「そうじゃよ。よく覚えとるの」
年々
「あ、ガレスさん。アクス君も」
「ラフタ、レフィーヤの位置は分かったか?」
「はい。あの岩場の下には洞窟があるんですが、そこに捕まっています。地上の見張りを出し抜いて隙間から確認しましたが、洞窟内にもかなり見張りも居ますね」
方角を指しながら淡々と報告を済ませたラフタにガレスは少し考え込む。
このまま真正面からぶつかっても良いが、それだとレフィーヤが傷つく恐れがある。女同士のことについてはよく分からないガレスだが、
彼女は次代の【ロキ・ファミリア】の主力となりうる存在。優先付けをする気は毛頭ないが、出来得る限りは無事に助け出したいというのが上に立つ者としての望みであった。
後、なによりもリヴェリアが怖い。最終的にはハイエルフの怒り方に屈した形だが、ガレスはアクスに強行突破を提案した。
「真正面から入るの?」
「それだとレフィーヤが危ないじゃろ。アクス、耳を貸せ。ラフタは巻き込まれんように隠れとれ」
逃げていくラフタを尻目に、ガレスは強行突破の概要について話す。彼の言いたいことを把握したアクスは少し悩むが、他に方法が無いと分かるや肯定した。
「よし、さっそく準備……いかんな。先走りおったか」
両者が合意を取れれば話は早い。すかさずアクスを片手で持ったガレスであったが、前方にある岩場から
「爺ちゃん!」
「レフィーヤを頼むぞ、アクスぅ!」
もはや一刻を争う状況。カウントダウンすら省略したガレスの剛腕により、アクスの身体は空高く舞い上がった。
──黄金の角よ。黄金の覆いよ。我が声に耳を傾けたまえ。
──我の周囲は災厄を拒絶する。
誰もすり抜けることは出来ず、範囲は半径10Мほどを想定。徐々に地面が近づいて来るものの、そこに恐怖はない。
──災厄を呼ぶ者よ。忘れるな、3度吠える盾の叫びを。
──その叫びを聞いた同胞が必ず我らが敵を滅するであろう。
上空からの接近に気付いたアマゾネスが矢を射かけて来るものの、満月の明かりが味方してくれている。
──焼け焦げた家々。壊された石畳。亡骸を抱く者。
──全てを過去の物とし、我の周囲に安寧を約束せよ。
勝負は一瞬。後はガレスが片づけてくれるだろうが、レフィーヤの安全だけは守らなければならない。
突入と同時にオハンを解除。近くに障害が居れば排除し、再びオハンを唱える。アマゾネスが障壁の中に入り込まれるのだけは防がなければならないので、アクスは乾いていた口元を唾液で湿らせる。
──オハン
魔法名が告げられると同時に
「○×△☆▲★※!」
「×☆♯♭●□▲」
突然の襲撃によって洞窟内に混乱が起こる。異国の言葉が錯綜する中、アクスはオハンを解除し壁際に繋がれているレフィーヤを確認。すぐさま詠唱しながら飛び出すと、相手が認識できない後ろから殴りつけた。
「アクス君っ!」
レフィーヤが叫ぶのとアクスが障壁を展開するのは同時だった。半径数Мという狭い空間だが、障壁が展開されたこの状況においてここは世界で有数の安全圏となる。
現にアクスに殴られて激高したアマゾネスが何かを叫びながら殴って来るが、ちっとも割れる気配がない。
そうしていると先ほどアクスが空けた穴がさらに広がり、
「さて、帰るか」
「レフィーヤお姉ちゃん、帰るよー」
「アクスく~ん、私酷いことされてぇ。全然動けなくてぇ……」
後には気絶したアマゾネスの山だけな状況下でレフィーヤが珍しく我が儘を言ってくる。
彼女の気持ちを代弁すれば、『アイズさんが助けに来なかった代わりに、アクスにおんぶしてもらうぐらいなら罰は当たらないのではないか』と中々にストロングな考えが出力されるわけだが、この場に居たのは人の好意などはあまり気付かない朴念仁パルゥムに枯れ始めている爺ちゃん。当然ながら彼女の気持ちに気付くことなくお互いに顔を見合わせると、ガレスは『たしかにな』とため息をつく。
「爺ちゃんがおんぶしてくれるって」
「あ、アクス君? お姉ちゃんをおんぶしてくれると……嬉しいなぁ……なんて」
「やれやれ、そういう魂胆か」
思惑がすっかりバレてしまったレフィーヤ。彼女の言い分は、ひたすら『アクス君におんぶしてもらいたかった』という細やかな願いであったとか何とか。
なお、その言い分に何人かの団員が『分かる』と激しく同意。『背の問題も考えろ』とリヴェリアから雷が落ちるのだが、それはまた別のお話。
***
【カーリー・ファミリア】を含めたメレンの騒動から1日が経った。ティオネとティオナは無事に【ロキ・ファミリア】に戻り、レフィーヤも多少の暴行の跡はあったが数日すれば治るだろうと診断が下された。
そんな折、アクスはロキや三首領に呼び出された。お題は当然、新たに発現した魔法についてである。
「さて、アクス。自分の魔法についてやけど、ほんまに記憶はないんか?」
「ないよー。魔法を唱えたら眠くなって、朝を感じて起き上がるみたいに意識がはっきりしてくるの」
嘘は言っていない。そうなるとアクスの意思は介在しないまま、その『おじさん』という人物は彼を動かしていることになる。
今は味方だから良いが、話を聞くに敵に回ると厄介なことこの上ない存在となる。最悪、件の魔法の使用を禁止する考えも検討しなければならない。
「話してみるほか……無いな」
「あぁ、我々が護衛につく」
一気に本性を現し、ロキを殺す──なんてことがならないように三首領は慎重に慎重を重ねた上でアクスに魔法を使用させる。覗き見しているギャラリーの視線がアクスに集中する中、件のおじさんが姿を現した。
「本当にあの鎧の方が……アクス君なんて……」
「わ、私。アクス君にキュンと……ロキの言ったことが本当に……。ふしだらな種族……」
「シャロン! アリシア! しっかりぃ!」
なにやらギャラリーは騒々しいが、この魔法は時間制限があるためにフィンはロキを紹介する。はじめこそ多少の神威を放出しながら『ロキやでー』と気楽な挨拶からの詳しい事情を聞こうと彼女は考えていたが、
「神ロキ、お初に……。いえ、アクス・フローレンスの中で見ていました。自分はマクール騎士団の末席を汚しておりました、キアンと申します。本日はどのようなご用向きでしょうか?」
「……なぁ、フィン。もう用件の半分ほど終わってもうたんやけど。あれ、フィン?」
出会って1秒と足らずに相手の素性が分かってしまったことにロキはフィンへと視線を移す。
だが、彼はひたすらその場で硬直していおり、何やら呪文のようなものを呟いていた。
「キアン……キアンってあの施しの騎士? マクール騎士団が壊滅した中で唯一生き残って、しばらく放浪生活をした上で王都ラクリオスの腕自慢でガルムスと引き分け。その後、故郷であるエランの森に帰って初代騎士団長であるフィアナを鍛え上げてからフィアナ騎士団を結成。数々の武勲を上げながら初代フィアナ騎士団の全滅を見届けられず、出奔。2代目騎士団長も同様に鍛え上げた後に2代目フィアナ騎士団に参加した……あの?」
「おぉう、中々の長文お疲れさん。つーか、リュールゥとルアーノの奴。あれほどおじさんの部分消しとけっつったのに残ってんじゃねぇか」
厄介オタクの片鱗を見せるフィンにドン引きしつつも、
「とりあえず、キアン。単刀直入に聞くんやけど、自分はアクスの身体を借りて悪さはせんよな?」
「神ロキ、私は既に死んだ身。この世にあることこそ異常なのです。なので、アクス・フローレンスに力を貸すことはありましょうが、この身体を使って今のパルゥム蔑視を無くそうということや悪逆の限りを尽くそうなどとは一切考えておりません。それに、今の世を謳歌するには私は歳を取り過ぎました」
「ハハハハッ、たしかにそうや。自分何千歳やって話やわ。……フィン、リヴェリア、ガレス。キアンは大丈夫や、うちが保証する」
鶴の一声ならぬ神の一声によってキアンは安全であることが周知される。三首領からしてもアクスの戦闘能力がズバ抜けて高くなることを含めれば悪いどころか良い話だし、無茶した後の反動は
つくづくアクスを『困った時にとりあえず切る手札』と扱っている感じは否めないが、その分地上ではウンと可愛がってやろうというのが三首領の結論となった。
えっ、
そんな具合に話が纏まり、後は魔法の効果時間まで適当にダベっていようとロキが言った。
その時だった──。
「す、すみません!」
「アリシア! 何事だ!」
「失礼は承知の上で発言をお許しください。あなたは……アクス君なのですか?」
あいつ、言いやがった。事情を聞いてもいまいちピンを来なかった団員たちが彼女の蛮行に拍手を送る。
魔法に関してずば抜けているエルフだからこそ、アリシアはキアンの存在を
その異質性からアリシアは声を大にして問いかけると、何やら考え込んだ末にキアンは首を左右に振った。
「おじさんに言われてもねぇ。おじさんは魔法に疎いから、"こうなった"ってことしか分からんのよ。ただ、昨日のアマゾネスを相手に一歩も引かなかった気高くも美しいあなたやそちらのお嬢さん方の記憶はアクスの坊にはない。おじさんと君たちだけの秘密ってわけだ」
「なっ! ななにを言ってるのですか!」
キアンの言葉にアリシアたちは顔を赤くさせる。明らかに動揺しているが、民を守ることを由とするキアンから見て昨日の彼女たちの動きや連携は満点に近かった。
その後は具体的にどこが良かったやらどこが素晴らしかったなど、褒めては伸ばすタイプのキアンが次々と褒めていく。
「そろそろ時間も無くなってきたかな。とりあえず、皆無事で良かった良かった」
「キアン様……」
「鎧のお方……」
「キアンさんっ!」
予め冒険者のステージをあっという間に飛び跳ねていくベル・クラネルという白兎のせいでメッタメタに自尊心を砕かれたことも相まってか、傷ついた自尊心を『よしよし』と優しく包み込んでは慰めてくれる存在を嫌う男女が居るだろうか。──否。決して否である。
特にアリシアやシャロンといった実際にキアンに助けてもらった冒険者には致命的だった。すっかり沖に戻っていった『あら、良いですねぇ』という感情が先ほどの褒め殺しにも近い紳士的な振る舞いでぶり返してしまったのだ。
「なぁ、フィン。キアンってモテるん?」
「どっちかと言うと、相手に寄り添えるタイプなのかもね。あ、でもリュールゥの詩にはフィアナと非常に親密な様子が書かれていたし、マイナーだけど彼女の暴走を愛の力で止めたという伝記も存在しているよ。たしか、ルアーノの本にもたまに無自覚に口説いて、刀傷沙汰になりかけたって物もあったはず」
「あかん! うちのハーレムが塗り替えられるぅ!」
その後、魔法の効果が終わる直前のキアンとの間に女性団員相手に過度な会話はしないという約束が交わされたとか。
キアンが強すぎる? まぁ、アルゴノウトの時代からフィアナ騎士団の時代を駆け抜けた騎士なので。
アクス
ガレスとの合わせ技で南斗パルゥム砲弾を完成させ、キアンという存在で『憑依100%』を会得したどこを目指しているのかよく分からないクソガキ。
魔法を使った反動で筋肉ブッチブチ状態をエリクサーで癒した結果、パルゥムの癖に【耐久】アビリティが伸びまくったことでロキに驚かれた。
なお、キアン状態は兜を被っていたから。レフィーヤ救援時は土煙で見えなかったこともあり、カーリー・ファミリアのアマゾネスたちから『防御だけご立派な小物』扱いされている。
キアン
普段は間延びした口調とおじさん呼びだが、偉い人の前では畏まるTPОがちゃんとしている大人。どこかの美の女神だけに畏まる団長は見習って欲しい。
戦闘力は考えていないが、おそらくすぐにLV.5にランクアップした冒険者ならばいい勝負をするぐらい。フィンを軽くあしらえていたのは単純に『見慣れた槍術だった』ため。
様々な経歴を持つが、主に『守る戦い』と『単騎駆け』は無類の強さを誇り、かのフィアナの単騎駆けと同じく有名になっている。
そんな彼の弱点は人の気持ちに寄り添い過ぎることと、間の悪いことである。
人の気持ちに寄り添い過ぎては『お、こいつ自分に気があるな?』と思わせる天才のため、度々問題を起こすのがリュールゥやルアーノの詩集に書かれており、フィアナ騎士団の中でも問題を起こしたために謹慎したことも少なからずある。
間が悪いことについてはマクール騎士団の際には腹が痛くなって遅れていると、いつの間にか騎士団は壊滅。初代フィアナ騎士団の際は『わぁ~、鮭だぁ~』と隊列を離れていると、いつの間に壊滅していた。
某ゲーム的に言うと幸運EX。高いのではなく、ただ単に悪運が強いから一緒に死ねなかったことを悔やんでいる。
元ネタは推測している方もいらっしゃる通り、兜輝くあの人。それに史上最速の勇者を合わせて暁のホルスをちょっとブレンド(盾と小さい身長)したナマモノ。
とある1幕
「ねぇ、アクス君」
「なーに、シャロンお姉ちゃん」
「鎧の人…に変わってくれる?」
「……」
「アクス君」
「アリシアお姉ちゃん、なにー?」
「キアン様に代わってくれるかしら?」
「……」
「アクス、ちょっとキアンに…」
「グレてやるぅ!」
その後、数日ヘファイストス・ファミリアに家出し、アクス以外の全員リヴェリアからしこたま怒られた。
日曜日にプロット書いて2万文字に行きそうだから急遽2話方式にして…チカレタ。