アクスがラキア軍の契約から一旦解き放たれた2日目。手紙のこともあって本日1日の休みをもらったアクスは、約束の昼頃まで近くを散策しながらばったり会ったミアハと一緒に辻ヒールという
「治療技術を教えて欲しい?」
「そっ、カサンドラって魔法頼りだからさ。適切な治療方法とか、ダンジョンで起きやすい症状とか教えて欲しいの。まさか1日で見つけてきてくれるなんて、ミアハ様に頼んで正解だったわ」
「あ、もちろんお金が発生しない程度で。私たちはビタ1ヴァリスも払わないから」
「これ、ナァーザ。……とは言っても我々の財布事情は知っての通りだ。なんとか頼めないだろうか」
なんでもベルの急成長の弊害というべきか。【ヘスティア・ファミリア】のギルドにおけるランクが急激に上がり、
「探索系って何やらされるんですか?」
「うーん、到達階層の更新とドロップアイテムを収拾が主かな。大抵は数日間の遠征になるんだけどね」
「水が無くて取り合いになったこともあったよね」
「あー、あったあった」
なにやら【アポロン・ファミリア】でも色々苦労があったらしい。懐かしそうにダフネたちが話すが、そう考えるといくら団長がLV.3になっていたとしても数人のLV.2冒険者とLV.1のサポーターではギルドの課す
すると、その考えは既にミアハも織り込み済みだったのか『そこなんだ』と説明を再開する。
「【ヘスティア・ファミリア】はお得意様の中のお得意様。ベルはたしかに強くはなったが、ファミリアとしてはまだまだだ。だから、いずれ困っていたらダフネとカサンドラも参加させようと思っている」
「なるほど。
「そうね。カサンドラと離れた時に困るし、うちも聞く感じ。……あ、もちろん料金が発生しない程度にね」
ナァーザのジト目に急に値段の話をし出すダフネ。それほどまでに【ミアハ・ファミリア】の財政は火の車なのか、それとも【ディアンケヒト・ファミリア】に金を回したくないのか。……おそらくは両方なのだろう。
ただ、治療技術はあって困るようなものではないのでアクスはあまり高度な技術を必要としない症例や治療方法を説明し始めた。
上級冒険者が多数居るなら中層に足を延ばすのは必然。中層の序盤で特に気を付けなければならないのはヘルハウンドの火炎やライガーファングなどから受ける重度の裂傷。後は18階層以降に登場する状態異常をかけてくるモンスターの中で特に備えなければならないこと。そして、
「あー、血を吐いてる時って
「飲ませるのも一苦労だと思いますが、瓶の中身を全て振りかけるよりも半分飲ませる方が効果があります」
「うちには
途中でナァーザが
アクス・フローレンス12歳。早くも人生のままならなさに嘆いていると、ミアハが手をポンと叩いてアクスにとある症例を尋ねてきた。
「アクス。治療院の方で何かに寄生された症例はあるだろうか?」
「寄生……ですか? 卵とかなら症例はありますが」
「卵……。うーむ、あれはそういった物ではなくてな。乗っ取るというかな……」
「もしかしてミアハ様、"アレ"ですか?」
「あぁ、"アレ"だ。ベルの持って来た物はダンジョンの外だったが、ダンジョンでも起こりえるだろうと思ってな」
ミアハのいまひとつな説明にナァーザたちは合点がいったように話すものの、肝心のアクスが置いてけぼりである。
そのことに気付いたダフネの説明によると、
「そんな症状は見たことないですね」
「ちなみにだけど、卵の時はどうしたの? 寄生ってことだから身体に入り込んだと思うけど」
卵とキノコだと厳密には違うが、寄生された状態には変わりはない。ダンジョンの──特に中層や下層といった上層よりも下にある階層では
そのため、せめて不測の事態を頭の片隅に置いていた懸念程度にしておきたいと珍しくカサンドラの方から寄生された際の治療方法を求めてきた。
別段金を取る気は毛頭なかったが、なにせこの症例は数年間【ディアンケヒト・ファミリア】で働いていたアクスが1件しか遭遇したことがないとてつもなくレアなケース。それに治療はアミッドが対応したために又聞きで聞いたことを話すという実体験よりも信憑性が薄いものになってしまう。
しかし、その前置きを言っても尚、『お願いします』と頼んで来るためにアクスはその治療法を説明した。
「割とざっくり言いますが、常に回復されている状態にします」
『うんうん』
本当にざっくりで難易度が高いが、ここまでは良い。大量の
カサンドラや隣で聞いていたダフネもそう思ったのか、揃って首を縦に振って理解を示す。
──が。
「その間に身体を切って卵を体内から直に摘出します」
「うんう……え?」
「うちの聞き間違いかな? 身体を切るとか言ったけど」
「間違ってませんよ。常に回復しているので身体が修復される前にですが、身体を切り裂いて卵をこう……ズブッと掴んで引き抜くみたいです」
それは本当に治療と言えるのだろうか。いや、
後ろでは『
しかし、その治療法に是を唱えたのはこのファミリアの主神であるミアハだった。彼はイメージしやすいように近くの板を手に取り、卵が植え付けられるということについて図解を書く。
「
ミアハの言葉もあってとりあえずとして寄生された際──本音を言えばそんな状況に陥らないことが1番なのだが、対処法を知ることが出来たダフネとカサンドラ。相変わらず『出来るか分からないよぉ』と涙ぐむカサンドラを『そうなったらやるしかないでしょ』と面倒がるダフネという寸劇を粗方見せられた後、他に聞くことも無くなったことでアクスは退出した。
とある
***
昼頃。今日もバカップル……失礼、男女が並んで歩く姿が散見されるアモールの広場でアクスがひたすら手紙の差出人を待っていた。
現在の彼の姿はノリが効いた背広の上下にネクタイと、普段の恰好とは大きく逸脱していた服装をしている。
どこか畏まった所でディナーに連れて行かれる子供のような出で立ちだが、無論アミッドと同じく服装に無頓着なアクスが自分で決めたわけではない。『デートならもっと良い服装に!』や『アミッド様が居るのにデートとか失敗して……あぁ、でも予行演習に……』と女性団員の様々な思惑が入り混じった結果である。
なぜパルゥム用のきっちりした服装があることについては……、
しかし、待てども待てども手紙の差出人が現れない。人々の往来を見ながら呆然と突っ立っていたアククからちょっと離れたところにあるカフェでは、そんな彼を女性冒険者の集団が見張っていた。
***
「アクスって黙ってればその辺の子供よりも大人びてるよねー。治療お化けだけど」
「そうですね、色々紳士的ですし。ところかまわず治癒魔法を使う変な子ですけど」
「うん、ここに来る間も何人か治療してたよね」
「うちの子を不審者みたいな風に言うのは止めてもらえますか? ……まぁ、否定はしませんが」
『休みだから診察代は無料』という行為はアミッドも時たまやっていたが、そこまでは似なくても良いだろうと思いながらも、密かに自分に似てきたことをやや喜んでいる自分も胸中に居る。
すると、どうやら思いのほか嬉しかったらしくレフィーヤが微笑を浮かべながらアミッドに指摘すると、彼女は咳ばらいをしてから毅然とした態度で店員を呼んだ。
「すみません、このケーキをください。……それとレフィーヤさん、先日のことについて私はまだ許してませんからね?」
「はい、本当にすみません。どんどん頼んじゃってください」
先日のこと──アクスだと気付かずに魔法を叩き込んでしまったことについて平謝りするレフィーヤを前に、アミッドは皿に残っていたケーキを食べ終えてから
一体小さな身体のどこに入っているのかと思ってはいけない。今の彼女は団員たちの好意(という名の面白がり)に甘え、連日続いた徹夜仕事を終えた直後の1匹の猛獣なのだ。カロリーの補給は急務といえる。
それでもベートと違い、とんでもないことをした割には罰が軽いことについてアイズは気になった。
「アミッド。ベートさんは"あれ"だったのに、レフィーヤはケーキだけで許すの?」
「アイズさん、だけは流石に酷いと思います」
「レフィーヤさんの人となりは私も信用してますし、むやみやたらに魔法で相手を傷つける方ではないですから」
信頼してくれていることに嬉しくなる半面、
やってきた内容が治療の妨害と
「そういえば、そろそろ約束の時間ですね。フィン様はまだいらっしゃらないみたいですが?」
「多分、ティオネを撒いてるんだと思う」
「今日、朝早くから黄昏の館を徘徊してましたものね……」
実を言うとアミッドは降って湧いた休暇であれよあれよと着替えさせられてから治療院から放り出された際、出くわしたアイズたちから手紙のことについて事情を聞いていた。
今回の差出人はあのフィン。ただ、内容に関してはアクスを適当な場所に呼び出し、そのまま彼がお見合いする場所の防衛と何かあった時のフォローを頼みたいということだったのだが、ここで手紙の書き手との認識に齟齬が起こった。
ティオネの目がどこにあるか分からないため、裏を突いてティオナに手紙を書かせた上で蘇生のリハビリがてらレミリヤに戦況をギルドへ報告するついでに治療院へ手紙を送るよう手配したわけだが、肝心のティオネがフィンの言葉の大半を理解出来ていなかった。
それでも『2人になる場所なら人気の所だよねー』という判断からアモールの広場。『朝からだとアクスも疲れちゃうし、昼間だよねー』と正午ごろ。といった具合に最低限のことは書かれているし、差出人が無いのもティオネをかく乱するのに一役買ってくれると判断したフィンがGOサインを出したわけである。
現にどこからかフィンが今回オラリオに戻ってきた理由である『お見合い』を阻止しようと、ティオネが今朝から鬼気迫る勢いで黄昏の館──主にフィンの部屋周辺を徘徊しているのをアイズやレフィーヤ含め、
「アミッド、お腹大丈夫?」
「大丈夫ですよ? 秘薬調合中はまったく食べれなかったので」
そんな具合に時が過ぎ、アミッドが4皿目を通り越して5皿目に突入した頃。アクスの側にようやく動きがあった。
***
「やぁ、アクス。突然呼び出して申し訳ない」
「あれ、フィンさん? この筆跡はフィンさんのではないですよね?」
いつもの服装とは違い、ラフだが決して粗雑ではない大人びた雰囲気を醸し出す服装。そして伊達であろう眼鏡という休日のイカした大人を思わせる組み合わせに面食らったものの、オフなのでアクスは
すると彼は『道中で話そう』とせわしなさげにあるきはじめた。
「お見合い……ですか? よくティオネさんがその話を許しましたね」
「開口1番で僕の懸念点を言わないでくれるかな。いや、普段の僕たちを見てそう思うのは普通か」
道中でアクスも手紙の経緯が説明され、そこから即座にティオネの存在を聞いたアクスにフィンは苦笑いを浮かべる。
『執務中。僕のことを分かっている人は邪魔しないでくれるとありがたい』というティオネに特攻のプレートを掛けてから音もなく窓から脱したおかげで自分の部屋の前でうろうろするティオネを撒いたフィンだが、正直に言えばそれも時間稼ぎにしかならない。
なので、あらかじめ時間稼ぎ役のアイズ、ティオナ、レフィーヤといった面々に壁役を頼んだが、それもお見合いが終わるまでに保つ確率は限りなく低い。
「そういう訳だから、最終防衛ラインは任せたよ」
「死ねと?」
「まぁ、大方は冗談さ。君にはティオネが傷つけた人の治療と多分色々壊すだろうから、この証文を小人の隠れ家亭のマスターに渡してくれたらそれで良い」
随分と用意が良いというべきか、ティオネの行動を読み過ぎているというべきか。それでも今のアクスは何も武器は持っていないため、怒り狂ったティオネに相対すれば吹き飛ばされて終わりなことをフィンに納得してもらったうえで話を見合い相手のことに変えた。
「そういえば、今日のお見合いはどなたで? パルゥムの女性と言えばヘルメス様のところのメリルさんですか?」
「あぁ、彼女か。彼女は……ちょっと苦手というか、ね」
「じゃあライラさんに返事出しとけばよかったじゃないですか」
フィン・ディムナ年齢40余り。その姿形や物腰柔らかな性格から言い寄ってくる女性は数知れず。その中にも同族は居たが、彼の『弱さを知りながらも前へ進む勇気』という条件に合致する者は1人しか居なかった。
ライラ。
ただ、その結果は『前世的に嫌な予感がするからやめておく』といった拒否。両親の料理屋関係でそのことはアクスも知っており、『舎弟とかパシリってなんだよ! あたしは尽くすタイプだぞー!』と言っていたのをよく覚えている。
その後、事あるごとに親分全開のことをアクスに要求してきたのだが、まぁ故人のことなのでそれはそれとしておく。
「まったく、そのままじゃ行き遅れますよ」
「そう言わないでくれ。僕も内心やってしまった感がするから」
鳩尾にズンと決まった嫌みに耐えつつもフィンたちは件の小人の隠れ家亭へ到着する。なぜかファミリアに入らずに給仕をしているルアンに首を傾げるアクスだが、フィンが店主に事情を話したうえで2階の席を確保。後はもう待ちなため、アクスはカウンターで適当に飲み物を頼む。
「ほら、注文の品だ」
「どうも、ところでルアンさんは他のファミリアに移籍しないんですか?」
「もういくつのファミリアから門前払いを食らったか分からねぇよ! みんな揃って
おいおいとルアンは泣き出すが、そこは『冒険者は自己責任』という理論でアクスは聞かなかった振りをする。
ただでさえ【アポロン・ファミリア】は色々やり過ぎてしまっているため、風当たりが強いのは当たり前だろう。それにダフネやカサンドラはまだ良いとして、ルアン本人の評判は『虎の威を借るなんとやら』がしっくりくる。
店主と目が合ったアクスはそのまま店主に向かって幾度か瞬きをすると、彼は黙って首を振る。その反応からここでもいろいろ仕出かしていることは明白だ。
仮に先だって話題に出てきたメリルや亡くなったポット、ポックの姉弟ならば
未だに自身の境遇を泣きながら話すルアンにそろそろ店主の堪忍袋が限界に達しようとした時、唐突に店の扉が開かれた。
外から入ってきたパルゥム──リリルカは不安そうに周囲をきょろきょろと見まわしていたため、2階から覗いているフィンに目を向けると彼は小さく頷く。
人の色恋について馬に蹴られたくはないが、『マジで
そんなことを想いつつもアクスがリリルカに手招きすると、彼に気付いたリリルカが近づいてきた。
「神父様……と、【アポロン・ファミリア】のルアン様? どうしてここに」
「元だけどな! お前らのせいでこうなったんだよぉ!」
目の前に自分がここまで落ちぶれた元凶かつ、自分が数々のファミリアから門売払を食らった原因が現れたことにルアンは叫ぶが、その大声でとうとう店主の堪忍袋が切れて雷が落ちた。指で注文を取ってくるように半ば脅迫されたルアンがすごすごとテーブルの間に消えて行ったところで、ようやく落ち着いて話が出来ると彼女はアクスの方を見据える。
「神父様はどうしてここに?」
「おそらく、リリルカさんを呼んでいた人に頼まれましてね」
そう言って階上を指差すと、店内の視線が一気に眼鏡を外して変装を解いたフィンに集まっていく。
オラリオ──否、
「リリルカさん、少しお話ししましょうか」
「えっ、あの……。リリはフィン様からお誘いをしてもらったのですが?」
招待されたにも拘らずアクスと話すことに疑問の声を上げるリリルカだが、彼は気にせずフィンに合図を送る。
遠征時、『これだけは覚えておいてくれ』と無理矢理覚え込まされた緊急を告げる手信号。それを確認したフィンは片手で持っていた本を掲げて返答すると、そのまま席に座って読書を始める。
ティオネが向かってくるかもしれない以上はそんなに時間はかけられないが、これで多少の時間は出来たとアクスはリリルカを自身の隣の席へ着くように促した。
「カウンターの隅なので人には聞こえないです。それで……どうしました?」
「神父様、本当に転職したらいかがですか?」
自然と話を聞く姿勢になっていることに転職を勧めたリリルカだが、席に座って少ししてからポツポツと自分の闇を吐き出していく。
リリルカは自身のことを罪人と思っている。冒険者にサポーターと言って近づき、しばらくは共に行動をすることで『報酬の割には使える弱いサポーター』という簡単に切られないような関係性を築く。
そうして相手の情報を集めて行き、ここぞというところで金品を強奪。後は完全に姿をくらまして終わりだ。
度重なる窃盗は冒険者の間で噂になるほどだったが、彼女にはそんな追跡を免れる
しかし、それでも彼女は力の弱いパルゥムだった。冒険者を手にかけても殺しきれず、金品を盗まれた冒険者はLV.1のサポーターが相手にするには荷が重い。それを繰り返す内にリリルカの中にあった欠片ほどの良心が揺らぎ、汚れていく。
そうして出来上がったのが、自身を
そんな自分が
「別に良いんじゃないですか? 薄汚れてても」
「はっきり言いますね」
「そりゃそうですよ。以前と比べて"今のリリルカさん"は十分綺麗です」
前までの──【ソーマ・ファミリア】に居た頃のリリルカであったならばアクスは同情し、彼女から叱責されていただろう。
ただ、今は違う。
【ヘスティア・ファミリア】──ベル・クラネルという己のすべてを掛けるにふさわしいと決めた人物に出会ったことで『前へ』と進み始めたのだ。
おそらくそこがフィンの琴線に響いたのだろう。ただ、この様子だとこの縁談は失敗するのではないか。アクスがそう思っていると、なにやらリリルカがジト目でアクスを見ていた。
「なにか?」
「妙に人を励ますのが手慣れてますね。後ろから刺されても知りませんよ?」
「僕、憎まれてるんですか?」
人を励ますことと後ろから刺されるほどの敵意は何の因果関係があるのだろうか。もしかするとこの世の酸いも甘いも味わったリリルカだからこそ分かる感性なのかもしれない。
そう深く考えるアクスの姿に、リリルカはまるで
「好きな人をたくさん作り過ぎて恨みを買うってことですよ」
「あー、たまに治療院に運び込まれてくる人ですね」
「治療院でどんなことが……。いえ、聞かない方が良いかもしれません」
【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院は冒険者一般人問わず、オラリオの病院のようなものだ。なのでたまにそういった
しかし、それでもリリルカのいう『好きな人』という概念についてはアクスはピンと来ていなかった。
アミッドや【ディアンケヒト・ファミリア】の団員たち。……まけにまけて主神であるディアンケヒトは『家族』という括りから好きだとアクスは断言できる。それ以上でも以下でもないし、主に15歳頃に感じる異性に対する恋愛感情は今のアクスには持ち合わせてはいなかった。
「そう言って油断してる人を食べちゃったりするんですよねー。なんでしょうかね。神父様がお年を召されると、"おじさんだからねぇ。そういう積極的な恋愛はもう良いんだよね"と言いながらちゃっかり据え膳しそうなのが目に浮かぶというか……、生々しく浮かんだというか」
「食べる? 僕、人は食べませんよ?」
「あぁ……、もう良いです。ありがとうございます」
何やら疲れた表情を浮かべたリリルカが階上へと上がっていく。
本気で意味が分からない。そもそもおじさんと反対方向の立場に居る子供だし、『据え膳』とはどういった意味でつかわれる言葉なのかアクスにはよく分からなかった。
思い出した時にでもアミッドに聞こうと脳内に記憶しておくことにしたアクスは、リリルカとフィンが色々話し込んでいる内容が気になってソロソロと2階の様子を伺う。
「ごめんなさい、フィン様。この縁談お断りします」
「あぁ、やっぱりそうか……」
アクスも薄々感じていたが、どうやらリリルカはフィンの手を取らなかったようだ。後ろを向けば店主も聞こえていたらしく、しきりに『もったいねぇ』と呟いている。
たしかにフィンは現在侵攻して来ているラキア王国と比べたら数段劣るが、小国の王族と同等ぐらいの財力や名声は持っている。店主の言いたいことは尤もだが、そんな物に釣られて首を縦に振る存在であればそもそもフィンのメガネには適っていない。
ただ、一介の店主がフィンの内情なんて知る由もなく、グラスを拭きながら世間話をし始めた。
「なーにがそんなに不満なのかねぇ」
「不満はないと思いますよ。おそらく、2人とも遅かったのかと」
「なんだそりゃ」
──そう。まさしく
人生は選択の連続で、選んだ結果に付随して状況が変わるのは茶飯事だ。
アクスは知らないが、あの日。バベルの前でベルとリリルカが出会わなければ。そこから数日経ち、だまされても尚リリルカを助けようとベルが駆け出さなければ。
そもそもだが、ベルより早くリリルカが耐え切れないと声を上げるか、彼女のことをフィンが見つけてさえいれば……。
様々な『IF』が樹形図のように広がっていくものの、それらを選択するにはあまりにも時が経ち過ぎている。結局は
「まぁ、これで
半ば残念そうに言葉を漏らす店主がいきなり店へ入ってきた
最近の1幕
「アクス、来月は労働上限の180時間を取っ払います」
「あい…」
ということなので、ストックを増やす暇が消失しました!自転車操業の始まりだぜ!
アクス・フローレンス(ロキ・ファミリアの姿)が書きたいのに、なんてこったい!
※本当に無理ならお知らせに書きます
ナマーコ!
OVAネタ。まさかあの寄生が最新刊の伏線になるとは…。なまじ考えてそうで怖い。
手紙
まさかの【勇者】。…まぁ、カタギに迷惑かけるんだから保険は用意するよねという話。
ちなみに最初はアイズに頼もうとしたが、簡潔に書き過ぎる可能性が。次点でリヴェリアに頼もうとすると周囲が煩い。男性団員はぽろっと漏らしやすいし、自分もティオネの常軌を逸した監視があるので、最終的にティオナに代筆してもらった。
メリル
ヘルメス・ファミリアの魔導士。作中では苦手と書いてたが、顔を合わせづらいというのが本音。理由は…ライラと同じ(決して親分と子分になるということはない)
ライラ
婚約してたらじゃが丸君戦で生き延びてたりしたのかな。