どないでっしゃろ。
クロッゾの一族がなんやかんやと騒がせた次の日。大きなバックパックを担いだアクスはアミッドからの恨めしそうな視線と女性団員からの明らかに怒っているような視線を背中に受けながら治療院を出た。
何が彼女たちをそこまで怒らせたのかという疑問。家族として好きだと言って怒られる理不尽さ。神々の言う『なんかやっちゃいました系』のようなことを仕出かしたのだろうかという恐怖。
様々な思いが頭の中でごった煮を形成していたものの、彼はギルドをはじめ【ヘスティア・ファミリア】の
「では、準備させていただきます」
「アクス殿、これはどういった集まりか答えてもらえませんか?」
巨大な鍋に水を入れてから持って来た根菜類を適当に切っては入れていく。ただ、その包丁が
この場にはアクスとヴェルフの祖父であるガロンの他に彼の息子のヴィルに、【ガネーシャ・ファミリア】の団長であるシャクティ。後は【ヘファイストス・ファミリア】の団長である椿と主神のヘファイストスが居る。
なにやらヘファイストスが椿やシャクティたちに『ヴェルフがね~』とキャイキャイと話し合っているものの、彼女たちはこれから起こる『契約破棄』の未届け人兼神の護衛ということでここに来てもらっている。
ちなみにガネーシャもついて来ようとしたが、シャクティに『門番が不在でどうする』と言われて追い出された。今頃はオラリオと外部を隔てる市壁付近で無駄に大声を張って団員たちの士気を著しく下げさせてるだろうが、こちらの方が危険なので残念ながら当然というやつである。
「契約破棄……ですか?」
「はい。僕はマリウス殿下といかなる場合でも契約破棄できることを条件に
「それは致し方ないと承知しておりますが、どうしてこんなところに? 書状で片付く話ではないでしょうか?」
不肖の息子が目を輝かせながら【ディアンケヒト・ファミリア】の旗が付いた槍を見ている姿をほっこりした気持ちで診つつ、ガロンはこのような危険を冒すべきではないことをやんわりと伝える。
いかに高名な冒険者であろうとも絶対はない。
すると、姦しい会話を唐突に切り上げたヘファイストスが笑みを浮かべながらその答えを述べる。
「え、面白そうだからよ? あのアレスがどんな顔をするのか楽しみなの」
「先ほどからアクス殿が握っている魔力が籠った短刀と何か関係あるのでしょうか? そもそもあれは魔剣ですよね?」
「椿の作ったのだけどね」
安定の神の気まぐれなのは置いておくとして、世の中広しといえども魔剣で調理を行う人間がいるとは思えなかったガロンと耳だけ会話を聞いていたヴィルがあんぐりと口を開ける。
おそらく今が虜囚の身でなければぶん殴っていたことは間違いないが、そんな思惑もアクスに届くわけもない。口々に『もうちょっと切れ味の良い魔剣作ってくださいよ』と魔剣の意味を理解していないような注文を椿にし、彼女も彼女で『家事も出来る魔剣か。新しいな』と妙なやる気を見せている光景にオラリオの規格外さを肌で感じた2人は二の句も告げることが出来ずにそのまま黙ってしまった。
こうして調理を進め、やがて大鍋に入ったシチューが完成する。すると、タイミング良くラキア軍の陣地から角笛や銅鑼の音。そして凄まじい馬蹄の音が聞こえてきた。
「さて……と」
速度の関係で馬に乗った騎士が先行してくるが、アクスは慌てずに立ち上がってヴィルからブリューナクをもらう。そのまま投槍モーションに入った彼は『えいやー』と師匠譲りの掛け声と共にブリューナクを投げ放つと、弧を描きながら飛んでいった槍が重力の理に従って大地へと突き刺さった。
「なっ……! 詠唱すらなかったぞ!」
「あの威力はクロッゾのやつか!」
「停止しろ!」
突如として炎を纏った暴風が吹き荒れる。天を焦がすほどの巨大な炎はラキア軍の足を止め、天幕から
唐突の攻撃に加え、炎が晴れたところから姿を現したのは先日までラキア軍の負傷者を回収しながら治療に従事していたアクス。契約で味方になっていたはずの人間が攻撃してきたということで、部隊はすっかり混乱状態となっていた。
しかし、いくら騒いでも状況は好転しない。それならば少しでも情報を集めようと、先頭を駆けていた1人の騎士はあれほどの大火力に晒されながらも焦げの1つもない団旗が付いた槍を回収していたアクスに話しかけた。
「すまない、
「威嚇です。ちょうど昨日、中々処理に困る魔法を吸収したので」
『暴発の危険性は無くても万が一もあるので』と相変わらずにへらと表情を崩すものの、騎士の目には彼の目が一切笑っていないように映った。
何が彼をそこまで怒らせているのか。なにかラキア軍が怒らせるようなことを仕出かしたのか。気になることは多々あったが、彼が詳細を詳しく聞く暇は無かった。
なにせ、この戦争における
「あ、アクス殿ー!」
「あ、マリウス殿下。アレス様もお久しぶりです」
「なーにが久しぶりだ!」
慌てるマリウスに怒り狂うアレスという『なんでこんなところ来ちゃってるの?』とツッコみたくなってしまうようなやんごとなき方々の登場に、騎士たちの目はかなり冷ややかだった。すると、そんな彼らの視線に耐え切れなくなったのかマリウスは全軍に現在の侵攻を中止し、一時撤退をするように指示する。
やがて目の前の部隊や突撃を行おうとしていた部隊が引き上げ、周囲に人気が少なくなってきた頃。マリウスが大きく息をつきながらアクスに話しかけてきた。
「さて、アクス殿。一体どういう……いや、聞かなくても分かります。
「はい。つきましては捕虜の諸々や【ディアンケヒト・ファミリア】とラキア王国で結んだ契約の破棄についてお願いしたく参上しました。あちらに席を用意しています」
一応はお偉いさんのために頭の中を総動員させて畏まった言葉で移動を促すアクス。その一方で『契約破棄』という言葉に
「とりあえず、お座りください。お疲れでしょう?」
「おぉ、ラキアの。どうだ、1杯。美味いぞ」
焚火に近づくや否や、椿からシチューが入った器が差し出される。そのあっけらかんとした物言いや態度に毒殺の危険性が頭から抜け落ちたのか、『味気ない糧食以外は久しぶりだ』とうっかり受け取ろうとするアレスを慌てて止めたマリウスであったが──。
「美味しいわよ?」
「神ヘファイストス……。まさかあなたまで居られるとは」
「あら、ヴェルフは私の元眷属よ? ここに居る理由としては十分だと思うけど」
『元』という言葉が気になったものの、今回の騒動で要注意と話していた神物が出て来るとは思わなかったマリウスはすっかり委縮してしまう。この世の終わりかのようにシチューを食べているガロンたちの反応から見ても作戦は完全に失敗し、さらには【ディアンケヒト・ファミリア】との契約が切れてしまうことを嫌でも思い知らされる。
おかげでせっかくの新鮮な材料で作られたシチューも一切味が分からず、横で『美味い! 美味い!』と無駄に叫びながらがっついている
「とりあえず、喧嘩は後にしてちょうだい。今回のあなたたちの奸計でオラリオに潜入していた少なくないラキア軍の騎士と兵士は全員、捕縛されたわ。今は【ガネーシャ・ファミリア】の厳重な監視の下でギルドの牢に収容されてる」
今の状況をヘファイストスは訥々と語る。彼女の話が本当であれば──否、
そうなると、もはやラキア軍は逃げ帰るぐらいしか選択肢は残されていない。帰った後の追及や諸々を考えると非常に胃が痛くなる話だが、傷が浅い内に帰った方が賢明かもしれないとマリウスは早々に捕虜返還についての手続きや賠償金などといった戦後処理に入ろうとしたが、それに待ったをかける存在が居た。
「ふんっ、そんなことか。さっさとオラリオを制圧すれば良いだけではないか!」
「話と戦況。理解していますか?」
誰だ、こんなバカを連れてきたのは……私だ。猛烈にマリウスは隣にいる主神の顔面に拳を叩きつけ、そのままラキア王国への帰路に着きたい衝動を必死に抑えながら周囲を見渡した。
右を向けば──美の女神を主神と仰ぐ最凶の一団。
左を向けば──
オラリオと外を隔てる強固な門の周辺を見れば──象の仮面をつけた変神が大声で指示を飛ばし……誰もその指示を聞いていない光景が目に映った。
ここまで戦況が分かれば流石のアレスも国へ帰る──はずもなく。結局のところはガロンたちはそのまま虜囚のままで戦争は続行される運びとなった。
「では、こちらも改めて契約破棄ということで」
「あぁ、重ねてすみませんでした。一応、市民に手を掛けないように気を付けていたのですが……。こうなっては今更ですね」
ディアンケヒトに作ってもらった契約破棄に関する資料にサインをしつつ、マリウスは今回の作戦に関する弁解を行う。
たしかに市民に被害が出ないように不動産を抑えたり、延焼という
仮にこれが
ただ、それでもアクスにとっては冒険者
しかし、それでもラキア王国は数回契約をしたお得意様。『アフターサービスは大事だぞ、アクス』と出掛けにディアンケヒトから託されたバックパックをマリウスに押し付けた。
「こちら、いきなり契約破棄ということでお詫びの品です」
「おぉ、
無遠慮に中を改めたアレスが騒ぎ出す。その騒々しさに顔を顰めながらもアクスに礼を言うが、同時に今後のことを考えて胃の辺りを擦りだした。
ラキア軍は兵力もさることながら、お財布事情も割と厳しかった。日夜オラリオからやってくる商人たちが売り込んで来る切れ味はたしかに良いけど高い剣や、痒い所に手が届くほど行き届いた代行補修といった具合に、性能は保証されようとも目が飛び出る品やサービスの数々に金を払っているせいで軍資金の底が見え始めていたのだ。
そこからさらに今までアクスたちが治療してくれていた分の
「アクス、火が小さくなってるわよ」
「あ、そうですね」
「あっ、お構いなく。話も済んだのでそろそろ……」
『お暇する』と言い終わる前にアクスは懐から短剣を取り出した。
質実剛健を体現したかのような飾りっ気の無さだが、何やら得体のしれない存在感を放つ短剣にヘファイストスと椿以外の視線が一斉に向けられる。
「アクス殿、それは?」
「とある想いを槌に乗せたヴェルフさんの作品です」
「今日の話し合いのことを話したら、"これを持って行ってくれ"ってね。あの子も当事者だけど、流石にヘスティアの了承を取らずにつれ出すのも悪いしね」
ヴェルフ・クロッゾの作品。それは先だってヴィルが壊した最後のクロッゾの魔剣に連なる存在に他ならない。
アレスとマリウスはすっかり魔剣の味に毒されてしまったのか食い入るように見つめているが、対するクロッゾの一族であるガロンたちは心底反省しているように見えた。
それこそ、先日はあれほど力に執着していたヴィルでさえも『怒りか』とヴェルフが込めた想いを正確に汲み取って項垂れている。
しかし、それは鉄や炎の住人である鍛冶師にしか分からない声ですらない言葉。軍神と王族という別枠の存在には一切理解できなかった。
「ヴィル。お前たちの葛藤は分からないが、何がどういう訳なんだ?」
「息子は我々の行いにかなり怒っているということです。ただ、我々も浅慮だった。つきましては責任……とは言いたくはないのですが、家の者と話し合って鍛冶貴族は本格的に廃業しようと考えています」
あれほど力や権力を欲していた男が発したとは思えない言葉にマリウスは驚くが、彼の目は権力闘争に塗れてすっかり汚れたものとは打って変わり、まるで目標を見つけたかのように澄んでいた。
そんな彼がアクスからブリューナクを貸してもらい、それをマリウスに見せる。旗や槍の格に合うような装飾が施され、見るからに最上位の業物だと見受けられる。
「これは?」
「神ヘファイストスが鍛えし一品とのことです。私はこれに挑みたい」
「あら、じゃあ私のところに来る?」
「いえ、遠慮しておきます。"槌と鉄。そして燃え滾る情熱さえあれば、武器はどこでも作れる"。私はラキアであなたの眼鏡に適う品を作りたいと思います。そこから始めさせていただきます」
もはや権力に縛られた悲しき鍛冶師はもう居ない。息子と同じ真っすぐな目をした鍛冶師の威風堂々たる姿にヘファイストスは『親子ねぇ』と眩しそうに目を細めた。
これですっかりクロッゾ側の和解は成ったが、問題は──
パキンとガラスを踏み砕いたような音を奏でながら刀身は粉々に砕け散る。だが、同時にエルフの魔法でも見ないような紅蓮の業火が先ほどまでシチューが入っていた鍋を一息に飲みこんでしまった。
鍋に残ったシチューは瞬時に蒸発し、煮込まれていた具材は炭化。しばらくすると鍋自体も熱されたチーズのように半液体となっていく様子にマリウスたちは息を呑む。
──作れるか?
──無茶を言わないでください。そもそも無理です。
少なくともそんな言葉が交わされたのだろう。目を合わせたマリウスとガロンであったが、その横ではアクスが炎を指差しながらアレスと話していた。
「次はこの火力をアレス様にぶち込む……という意思表示ではないのでしょうかね? 知りませんけど」
「送還されるわ!」
「良いんじゃない?」
味方が居ない中でぎゃいぎゃい騒ぐアレス。逆にこんな状況でもまだオラリオを攻め落とそうとする気概に尊敬すら覚えるが、
「アレス様、マリウス殿下。
「いや、もう帰ろう 「無論だ!」」
マリウスが消極的な言葉を言いきる前に被せられ戦争続行の宣言。もはやなるようにしかならないとマリウスは2本目の
***
やや時間がかかったものの、契約破棄や諸々を済ませたアクスが再び牢へ戻っていくガロンたちを見送ってから治療院へと帰還する。既に昼休憩は終わって午後の仕事が始まっているのだが、帰ってきたアクスを捕獲した団員がそのまま調合室へと彼を持って行く。
「あれ、皆どうしたの? 集まって」
「あぁ、アクス君。昨日の詳しいことを団長に話してたのよ」
調合室に居たのは団長であるアミッドを含めて古参と呼ばれる面々で、その中には昨夜に行動を共にしたクライブも居た。
彼らはすっかり在庫が少なくなった秘薬やその中間素材となるものを制作する傍らで昨日のことを報告しており、
ただ、どうやらアミッドに関しては
「昨日……アクス……うぅっ!」
「おい、バカ止めろ! 今のアミッドさんは傷心中なんだぞ!」
「そうよ、言葉には気を付けなさい! この朴念仁パルゥムのせいで有耶無耶になったのよ!」
「あの……、皆さんはいったいどこで聞いたのですか?」
『普通に聞こえました』
秘薬を持っていたので微動だに出来なかったが、全員の返事にアミッドは机に突っ伏したいほどの羞恥心を覚える。
余談だが、宿舎の壁は場所によっては結構薄い。それと飲酒をしている人の数割は声が大きい。
つまりはそう言うことである。アクスは話の大半が分からなさそうに首を傾げるが、会話が筒抜けであったことに顔を真っ赤にさせたアミッドは話を昨日の出来事──ラキア軍が起こそうとした放火に切り替える。
「未遂とはいえ、放火です。1つ間違えればオラリオ全体を巻き込む大火になっていたはず。今回は
【ディアンケヒト・ファミリア】の運営する治療院はオラリオの重要施設の1つだ。
ゆえに
ただ、いつまでもおんぶに抱っこというわけにはいかない。【ディアンケヒト・ファミリア】側でも何か手段を講じるべきだと判断したベルナデットは、誰も手を上げない中で挙手をして自分の意見を述べ出した。
「講習会を開くべきでしょうか?」
「いえ、その点に関しては既にディアンケヒト様が……ちょうどいらしたようですね」
どうやらアミッドよりも
「ぶわっはっは! 講習会なんぞ開いても、身にならない言葉はすぐ忘れるわ! 実践に勝る経験なしっということで、明日は防災訓練を始めるぞ!」
「営業はどうするのですか?」
「そんなの、臨時休業するしかなかろう」
おかしい。目の前の神は本当にあの銭ゲバで有名なディアンケヒトなのだろうか。自らその日、1日の金儲けの手段を封じた彼に全員は驚きを露わにしていると、その分かりやすい反応にディアンケヒトは先ほどまでの威勢をどこかへ吹き飛ばしたように元気なく呟いた。
「暗黒期を知る者はお前たちだけになったからな。今一度、ロキたち……ひいては我々が相手にしようとしている存在がどういうものかを再確認させたいだけだ」
ディアンケヒトの言葉に全員はどう答えたら良いか分からずに黙り込む。
【ディアンケヒト・ファミリア】は
【ディアンケヒト・ファミリア】の役割は基本的に後方支援だが、『危険性はない』と見逃してくれるほど
ただ、いくら防災訓練と銘打っても何をするかも見当が付かなかったアミッドが手を挙げた。
「防災訓練とは言っても、何をするのですか?」
「ひとまず、
そう言いつつディアンケヒトは樹脂で出来た玩具のナイフを数振り机に並べた。刃先にはインクが付いているのか赤く、試しにアクスが『みょんみょ~ん』と弾力を楽しみながら遊ぶと瞬く間に手が真っ赤に染まる。
「あー、もう。アクス君あんまり触らない! ほら、綺麗にして」
「この汚れようなら傷付けた場所が分かりやすかろう。後は不審者役を適当に決めて総評をすれば立派な訓練になるだろう。アミッド、後で儂と不審者役を見繕うぞ」
「はぁ……。分かりました」
新たなタスクの始まりに秘薬を作る手を止めたアミッドは深いため息をつく。『幸せが逃げるぞ』と言ってくる主神を本当にどうにかしてやりたい気持ちを抑えながらも、彼女は夜中にディアンケヒトの部屋へと向かい──。
「あやつにするぞ」
「あの子……ですか?」
なにやら怪しげな会話を繰り広げるディアンケヒトとアミッド。その中央には明日行われる防災訓練の不審者役として挙げられた何人かの名前が書かれている。
最近入ってきた団員。昔から居る団員。ヒューマン。エルフ。獣人。ドワーフにパルゥム。多種多様な人材を前にどうするべきかと散々悩んだのか、名前の上には×や〇といった記号が乱雑していた。
「どうせなら予想外の存在にした方が薬になるだろう」
「それもそうですね。どうせ、すぐに見つかって捕獲されると思いますが」
「いや、分からんぞ? ああいう存在が1番引っ掻き回すのは鉄板じゃろうて」
そう言ってディアンケヒトは『アクス・フローレンス』の名前に大きな〇印を付ける。しかし、アクスにこういった不審者役は似合わないと思っていたアミッドの脳裏には、すぐさま誰かに捕まって『あ"ー』と泣きながら宙にぶら下げられる弟の姿が過ぎっていた。
(訓練にならないでしょうね)
あの子はたしかに不審者と呼ばれることは多いが、それは辻ヒールしてお礼も受け取らずに去っていく類のものだ。人を傷つけるのに長けているはずがない。
そう思っていたアミッドであったが……。
***
「なんですか……これ」
その数十時間後の防災訓練終了後。
なぜ、アクスが全滅させることが出来たのか。不審者が不審者らしい恰好や挙動しているとは一概に言えないとだけ。(某スレッド談)
魔剣(メイドイン椿)
ブリューナクのついでに渡された魔剣。しばらく日の目を見なかったが、包丁として使用。
ただ、そろそろ砕けそうだからか切れ味はいまいち。
ガロン、ヴィル
双方ともブリューナクを前に盲従していた魔剣の呪縛から逃れる。
現在はヴェルフの怒りを前に反省し、『あの神々の工芸品にも劣らない武器を作りてぇ…』となっている。
魔剣(メイドインヴェルフ)
魔剣に固執した一族。家名だけで迫害してきた記憶。そして、その身を賭して脱出に協力してくれた女神に対し、ただ逃げることしか出来なかった自身の不甲斐なさ。そんな諸々の怒りだけを鉄に乗せた魔剣。
鍛冶師にとっては落第レベルだが、腐っても魔剣鍛冶師の作品。耐久力はゴミだが、威力だけはそこら辺の江古の魔法よりも強力だった。
ちなみに銘は
アミッド
未だダメージを引き摺っている可哀想なお方。