「おおおおおおおっっ!!」
日本ダービー。
ガッツポーズとともに雄叫びをあげたのは、
ドウデュースだった。
「ドウデュース、日本ダービー制覇!
場内はドウデュースコールです!」
「――ドウ……」
(……ドウの背中に、届かなかった)
「イクイ!」
「ドウ、おめでとう――」
「イクイも!!」
「他のみんなも、すごい走りで……
正直、勝てないって一瞬だけ思った!」
「勝った私が言うのもおかしな話かも
しれない! でも言う!」
「今、この順位なんて、
いろんな偶然が重なっただけかも
しれないけど――」
「それでも! このレースに出られて、
イクイや他のみんなと一緒に走れて……
このレースに勝てて、本気で嬉しいっ!!」
(……ドウ、ドウは――)
「そんなことないよ、ドウ」
「……私も、ドウと、
みんなと走れてよかった。」
「ほら、ウイナーズ・サークルに行ってきなって。
ドウのトレーナーさん、きっと待ってるよ?」
「っ、そう、だよな……
兄ちゃーーーんっ!!」
「………………」
「……眩しい、なぁ――」
―//―//―//―
控え室に戻ってきたイクイノックスは、
相変わらず落ち込んでいるようだったが……
「……ごめんなさい、トレーナーさん。
勝てませんでした……。」
Ωううん、今回もいい走りだったと思うよ
気のせいかもしれないが、
少し気持ちが軽くなっているようにも見える。
それがどういう方向で軽くなっているかは
考えないといけないところだが……
今はとりあえずダービーでの好走と、
このクラシック2戦を無事に
走りきれたことを喜びたかった。
もちろん、今後のレース予定も
決めたいところ……なのだが。
Ω基本的には、次の大目標は秋だね
クラシックという大きなプレッシャーのかかる
レースを、今までにない間隔で走った後だ。
どんな変化があるかわからない。
とりあえずは様子見をしたい。
イクイノックスにそう伝えると――
「はい…… それなら、クラシック競走で行けば
菊花賞ですよね……」
菊花賞。クラシックの最後の冠にして、
10月に開催される3000mの長距離戦。
そしてそれ以上に、イクイノックスにとっては
大きな意味を持つレースだ。
Ωキタサンブラックが勝ったレースだね
憧れている先輩、キタサンブラック。
彼女が取った菊花賞の舞台には、
イクイノックスも立ちたいことだろう。
だから自分も、「何事もなければ菊花賞に
向かおう」と言おうとして――
ふと、口が止まる。
先を見据えて読んでいた菊花賞の資料と、
今日のレースの内容。
さらに言うなら、イクイノックスという
ウマ娘の走り方と強みそのもの。
……自分の中で、わずかな不安が膨らんだ
ような気がした。