イクイノックス 育成ウマ娘イベント   作:土見

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[クラシック級8月後半]夏合宿(2年目)終了

 

 

 

夏合宿終了の朝。本来は荷造りを済ませて

帰りのバスに乗っている時間だが――

 

「すいません、こういうの最後に確認しないと

気が済まなくって……」

 

Ωぜんぜん! こっちとしてもありがたいよ

 

――自分は、イクイノックスと一緒に

忘れ物点検をしていた。

 

点検自体は誰かがやるものだし、と

係を変わってもらったのだが……

思ったよりも忘れ物やゴミが多い。

 

結局それらを所定の場所に置いて、

自分たちが合宿所を出たのは

一番最後だった。

 

「……天皇賞秋まで、あと2ヶ月……」

 

イクイノックスの噛みしめるような言葉に、

思わず疑問が口をついて出る。

 

Ωやっぱり、後悔……してる?

 

口に出してから、聞いてはいけなかったと

思い直す。取り消そうとするが――

 

「――して、ますよ。」

 

「後悔は、してます。

してないって言うのは簡単ですけど……。」

 

「……でも、トレーナーさんもたくさん、

いろんなことを悩んでくれたと思うんです。」

 

「だから私は、後悔するけど……

この後悔が、必要なんだと思います。」

 

「この気持ちを、無駄にしちゃ……」

 

拳を握りしめるイクイノックス。

それがきっと、彼女が今できる最大限の

感情表現、なのだろう。

 

Ω(この悔しさを、無駄にさせちゃダメだ)

 

秋になれば親友のドウデュースとも、

憧れのキタサンブラックとも

違う方針でG1レースと向き合うことになる。

 

ドウデュースもキタサンブラックも、

秋の最後は有馬記念に向かう形になるが……

 

もちろん、有馬記念はグランプリレースだ。

そこに向かうまでに、秋のシーズンでも

大きな結果が必要になる。

 

ドウデュースや過去のキタサンブラックと

胸を張ってイクイノックスが再開できるように

しよう、と思った。

 

「……よし!」

 

「トレーナーさん、とりあえず私たちも

バスに向かわないと――」

 

「……あれっ、バス、本当にこっちでしたっけ?

もしかして走って10分の反対側の駐車場に

集合だったりしませんよね……?」

 

Ωだ、大丈夫大丈夫!

 

これ以上イクイノックスが疑心暗鬼に

陥らないうちに、バスへ向かわなければ……!

 

Ωそれなら急いで向かおう!

 

「わわっ、と、トレーナーさん!」

 

手を引いて、駐車場へ向かう。

すぐにイクイノックスに抜かされてしまうが、

彼女はそのまま駐車場へ駆けていく。

 

Ω急げーっ!!

 

「――ふふっ、はいっ!」

 

ほとんど声しか聞こえなかったが……

夏合宿中思い悩むことの多かった彼女が、

久しぶりに笑っているのを見た気がした。

 

もしもそれが自分に向けて作られた

気丈なものだとしても――

 

Ω(もっと、笑ってくれればいいな)

 

――イクイノックスは、イクイノックスの道を

歩き始める。

 

自分で新しく決めた、自分の秋へ。

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