イクイノックス 育成ウマ娘イベント   作:土見

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[クラシック級10月前半]握りしめた拳

 

 

 

天皇賞秋を控えた10月の夜――

 

イクイノックスは、トレーナー室に

来ていた。本来ならすでに門限の時間を

過ぎているところだが……

 

「! 始まった……!」

 

「さあ今年も始まりました!

日本のウマ娘とトレーナーたちの夢、

凱旋門賞!」

 

「小雨の降るなか、日本からは幅広い層から

4人の選手が出走しています!」

 

今日は凱旋門賞の中継がある。

日本から有力なウマ娘が多数出走しており、

分析としても大事なレースだ。

 

でも、それ以上にイクイノックスにとっては

大事なレースでもある。

 

「そして今回唯一のクラシック級からの出走、

ドウデュースも今パドックへ向かって

ゆっくりと歩を進めていきました!」

 

「ドウ……!」

 

ドウデュースは夏の間も順調に調整を重ね、

フランスのレースを経験してから

今日を迎えていた。

 

イクイノックスはどうしてもそんな彼女の

レースを大きな画面で見たいらしい。

 

そのために、わざわざ外出届を出して

テレビのあるこの部屋まで来ているらしいが……

 

Ω(応援ならここまでできるのになあ……)

 

練習終わりに突然話を持ちかけられた時は

驚いたが…… あくまで友人のためとはいえ、

積極性が出てきたのは喜ばしいことだ。

 

自分も、手に入れられるデータがないか

注意しながら観戦する。

 

「さあ、今最後のウマ娘がゲートに入って――」

 

「凱旋門賞のスタートが今、切られました!」

 

どっと駆け出していくウマ娘たち。

ドウデュースはいつも通り後方に控える。

 

「頑張れ、ドウ……!」

 

レースのゆくえを固唾をのんで見守る。

しかし――

 

「最終直線、やはり後方は苦しいか!

日本勢は伸びない!」

 

「先頭のウマ娘、今ゴールインっ!

日本のウマ娘たちも頑張りましたが、

後方での入着となっていそうです……!」

 

「ドウ――」

 

中継の最後に一瞬だけ映った

ドウデュースは、荒い息づかいのまま

天を見上げていた……。

 

画面の中では結果が流れている。

イクイノックスは、ぼう然とそれを

見つめていた。

 

やがて、イクイノックスは

絞り出したように。

 

「……トレーナー、さん。」

 

「私がこんなことを言うのも

絶対におかしいことだってわかってます。

それでも――」

 

「それでも、私がどこかで勝ったら……

ドウは、喜んでくれるでしょうか?」

 

「ドウに引っ張られてばっかりな私でも、

これだけできるんだって見せれば。

ドウは、元気になってくれるでしょうか?」

 

一瞬、答えるのをためらう。

 

ドウデュースの心情はわからない。

もしかしたら今回の敗戦を引きずらずに

明るく帰ってくるのかもしれない。

 

……とはいえ、きっと純粋な友人として。

 

Ω君の好走で元気づけられるのは確かだと思う

 

そう伝えると、イクイノックスは

ぎゅっと両手を握りしめた。

 

「……頑張ります。」

 

もうひとりぶんの想いを背負って、

イクイノックスは目前に迫る天皇賞秋へ

歩みを加速させていく。

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