天皇賞秋。秋シーズンにおいてシニア級の
中距離ウマ娘が最初に目標にできる
レースでもあり――
マイラーやステイヤーであっても
好走しやすく、実力の高いウマ娘が
集まりやすいレースともされている。
このレースでイクイノックスは、
シニア級ウマ娘と初めて対戦することになる。
そうそう簡単に超えられる壁ではない。
それを承知でここまで努力を重ねてきた。
なんとしてもここで爪痕を残したい。
そんな想いで控え室の扉をくぐる。
「――と、トレーナーさん!
おはようございます!」
Ωおは……よう?
今日のイクイノックスは、
不思議と落ち着いていた。
夏前には、レース前といえば
なかばパニックになっていた気がするが……。
「とりあえず、レースの確認からしますか……」
Ωい、イクイノックス?
「は、はい? なんですか?」
Ω……無理してない?
「無理なんてしてませ――」
(ブーッ、ブーッ!!)
「わひゃっ!?」
机の上に置いてあった、連絡用の携帯が鳴る。
とびあがるイクイノックス。
……やはり、無理をしていたのだろうか。
その件については後で話を聞くとして……
通知の内容を確認して、驚く。
Ωイクイノックス、これ
「? 私に何か――」
「イクイノックスに、お前ならできるって
伝えてください」
それは、ドウデュースからの
メッセージだった。
「ドウ……」
自分で直接言うのは重荷になるのかもと
考えたのかもしれない。
でも、今のイクイノックスには
ドウデュースからだと伝えたほうが
いい影響になると思った。
イクイノックスの肩の力が少し抜けて、
代わりに闘志が再燃しだしたように見える。
「……すいません、トレーナーさん。
ヘンに頑張ろうとしたかもしれません。」
「緊張は、してます。無理もしました。
今も心臓が口から出そうで――」
「――でも、私がやるんだ。」
「私が勝って、証明しないと……」
いい具合にスイッチが入った、かもしれない。
とにかく今はこの流れを切らさないことだ。
Ωよし、じゃあいつもの確認から!
「っ、はいっ!」
―//―//―//―
(ワアアアアッ!!)
(……相変わらず、すごい歓声)
「――あ、キミが噂のイクイのちゃん?」
「い、イクイのちゃん……?」
「そ! あたしはパンサラッサ!
覚えててくれれば嬉しいなって♪」
「よ、よろしくお願いします……。」
(パンサラッサ先輩。間違いなく今日のレースの
カギを握る、大逃げウマ娘――)
「あ、そうそう。イクイのにひとつ
言い忘れてたことがあるんだけど……」
「――あたし、今日も逃げるよ。」
「……っ!?」
「それだけー♪ んじゃ、またターフで!」
「あ、そこのキミ!
あたし、今日も逃げる予定のパンサラッサだよ!」
(心理戦を仕掛けられた……?
いや、それ以上に……)
(これが、シニア級ウマ娘のプレッシャー……!
襲い掛かられるかと思った……!)
(でも、ここで頑張らないと。
頑張って、証明するんだ……!)
(ドウの、トレーナーさんの積み上げたものは、
無駄じゃないって……!)