イクイノックス 育成ウマ娘イベント   作:土見

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[メイクデビューまであと4ターン]最強の定義

 

 

 

メイクデビューに向けて、イクイノックスと

トレーニングを重ねていたある日のこと――

 

「おっ、イクイー! トレーニング……って、

もしかしてその人が例のトレーナー?」

 

「ドウ! そ、そういうことに、なるのかな……?」

 

Ωもしかして、君が――

 

「アタシ、ドウデュースです!

イクイノックスがお世話になってます!」

 

ドウデュース。話は聞いていた。

イクイノックスのクラスメイトのウマ娘で、

彼女も近くデビューする予定らしい。

 

「ドウのお世話にはなってないって……!」

 

「ま、お互い様ってことでいいじゃん!」

 

「何言ってるの……」

 

ドウデュースの前では話しやすいのか、

イクイノックスも肩の力が抜けているようだ。

 

深刻な顔をよくしている彼女の笑顔に、

自然とこちらも笑顔になる。

 

「っていうか、ドウは何しに来たの?

さっき、トレーニングって言ってたけど……」

 

「いや並走でも頼もうかなーって思ってたけど、

そっちのトレーニングありそうだし大丈夫!」

 

「――それに、折角だしそのトレーナーさんにも

聞いてみたいことがあるし!」

 

ドウデュースがこちらを指さす。

呆気に取られていると――

 

「ズバリ! 2人の思う『最強のウマ娘』って

どんなウマ娘だと思いますか!」

 

Ω『最強』……?

 

ドウデュースからの質問に、

思わず考え込んでしまう。

 

最強。もちろん好成績を残したウマ娘は

その称号を得る権利があるとは思うが……

 

好成績を残したうえで、なお他のウマ娘より

飛びぬけた何かがあること。取り立てて

語りたくなるようなものを持っていること。

 

たとえば、自分の長所を伸ばし続け、

得意条件では絶対的な存在となったウマ娘。

 

たとえば、観客全員の目を奪うような

強烈な走りで勝利したウマ娘。

 

たとえば、不屈の闘志を見せつけて

栄冠を勝ち取ったウマ娘。

 

どれもがきっと、方向性は違くとも

『最強』と呼ばれうるような気がして。

 

それに順番をつけるのも違う気がして、

どう答えるべきか悩んでしまっていると。

 

「……私は、ただ1着を取るだけじゃなくって

大レースでずっと活躍し続けるのも、

最強のひとつだと思う、かな……」

 

イクイノックスが、気恥ずかしそうに

そう答えた。

 

「なるほど? ……あー、

確かにキタサン先輩ってそんな感じか!」

 

「なっ、ちょっ、ドウ!?」

 

言われて思い出す。

 

キタサンブラックは、クラシック秋以降は

常にG1戦線を賑わせていたお祭りウマ娘だ。

 

確かに彼女であれば、イクイノックスの言う

『最強』に近いかもしれない。というか――

 

Ωキタサンブラックに憧れてるの?

 

「~~っ!」

 

「ああもうっ、ドウが余計なこと言うから……!」

 

「……その、私なんかが憧れてるっていうのも

おこがましいですけど……」

 

イクイノックスが言い出しづらかったのも、

なんとなく理由がわかる。

 

もちろん本人が言った通り、自己評価もあって

自分が目指せるようなウマ娘じゃないと

思っているのは間違いない。

 

キタサンブラックはかなりタフなウマ娘で、

体質的に弱いところのある自分は同じ道を

歩めないだろう、と思うところもあるだろう。

 

ただ、それでも。

 

Ωありがとう、イクイノックス

 

「……え?」

 

Ω君の憧れを知れて嬉しいよ

 

「い、いやっ、そんなこと……」

 

イクイノックスの前向きな感情は、

ひとつでも多く知っておきたかった。

 

もちろん今すぐに

「キタサンブラックを目指そう」とは、

とてもじゃないけれど言えない。だが――

 

彼女の思う『最強』に、少しでも近づけるような

手伝いができるなら。そう思ったところで、

最初の質問に対する答えを思いついた。

 

Ωドウデュース、さっきの質問だけど

 

「おっ、忘れられてるかと思ったけど……

答えてくれるんですね?」

 

笑うドウデュースに、今思いついた答えを

提案してみる。

 

Ωなんでも思い通りにできるウマ娘、とかどうかな

 

トレーニング中もレース中も、自分の思う通りに

身体と頭を動かせる。アスリートの目指すべき

コンディションのうちの1つだ。

 

まだまだすべては未知数だが、

イクイノックスはそれができる可能性を

十分に秘めていると思っている――。

 

そうドウデュースに説明すると。

 

「なるほど…… トレーナーさんの答えも

イクイの答えも、アリだね!」

 

「ま、アタシもアタシで別の『最強』があるし!」

 

「……まあ、そうだとは思ったけど……」

 

苦笑いするイクイノックス。

ただ、自分としてはこのウマ娘の描く『最強』が

どこにあるかを知ってみたかった。

 

Ω君の『最強』って?

 

「最終目標は、クラシック三冠と凱旋門賞!

勝って、兄ちゃんを日本一のトレーナーにする!」

 

「あ、えーっと…… ドウのトレーナーさん、

昔ドウの家の近所に住んでたんです。

だからずっと兄ちゃんって呼んでるみたいで……」

 

「そう! だからアタシと兄ちゃんの絆は、

誰よりも強いっ! 強くなってやる!」

 

「それが一番わかりやすいのが三冠と凱旋門賞!

全部勝てば、間違いなく兄ちゃんが

日本一のトレーナーになる!」

 

要するに、ドウデュースの目標は

自分のトレーナーを最高のトレーナーに

することらしい。

 

それができるウマ娘こそが『最強』……

ということだろうか。

少し自分たちと視点が違う気もするが……

 

初対面でも伝わるほど、明朗快活に燃え上がる

ドウデュースの闘志と夢。

もし同期としてクラシックを競うなら――

 

Ω手ごわいライバルになりそうだね

 

軽口で言ったその言葉に笑うドウデュースと、

不安そうに顔をしかめるイクイノックスだった。

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