「――さあ、イクイノックスだ!
イクイノックスが今1着で、ゴールインっ!!」
(ワアアアアッ!!)
「っ、ゲホっ、ゲホっ!!」
(勝っ、た……)
「私が、1着……」
「いやぁ、なかなか凄いレースじゃなかった?
イクイノックス、いよいよ成熟期って感じ?」
「東京スポーツ杯ジュニアステークスの時から
追っかけてたけど、このレース見られて
よかったよ! ありがとー!!」
「今が一番強いってなったら、来年からも
めちゃくちゃ期待しちゃうな……!」
(……期待、か)
(キタサンブラック先輩、私はあなたに……)
「……ちょっとだけでも、近付けたのかな……?」
―//―//―//―
「っは、くっ……
トレーナーさんっ、どうにか勝てました……!」
レースが終わって控え室に戻ってきた
イクイノックスは、やはりレースに勝った
高揚感よりも、疲労と安堵のほうが目立った。
これからも機会はあったとはいえ、有馬記念も
キタサンブラックが勝利したレースだ。
思うところもたくさんあっただろう。
Ωとりあえず、休んで
「は、はい……」
イクイノックスが息を整える間、沈黙が続く。
とはいえ、居心地の悪いものではない。
レースの感想を聞こうと待っていたところ――
「……あの、トレーナーさん」
イクイノックスが口を開いた。
何かを確かめるように。
「……ありがとう、ございます。」
「1人じゃ何もできない私を、
こんなところまで連れてきてくれて……」
「私、トレーナーさんの期待に応えられるような
ウマ娘になれてるでしょうか……?」
不安そうなイクイノックス。
かける言葉は決まっていた。
Ωもちろん!
「トレーナー、さん……」
Ω夢を見せてくれてありがとう、イクイノックス
トレーナーは、ひとりでは何もできない。
自分が何かをできるのは、ひとえに
イクイノックスがいてくれるからだ。
それに、自分がここまで色々なことを
しようと思えるのは、イクイノックスが
イクイノックスだからだと思う。
「イクイノックスの十全の走りを本番で」。
自分の当初の目的がようやく果たせたような、
そんな気がしていた。
そういった話をイクイノックスに、
過剰にならないようかいつまんで伝える。
それを聞いたイクイノックスは、
少し気恥ずかしそうに目を逸らしたものの――
「……も、もう少し、頑張りますけど……
とりあえず、ありがとうございます……」
少しだけ、自信を持ってくれた……
のかもしれない。
ひとまず次のレースは来年決めることにして、
今は有馬記念を勝利した余韻に2人で
ひたることにした……。