有馬記念が終わり、すぐに年が明けた。
クラシック級で活躍を残すことのできた
イクイノックスにとっても、今年は
とても重要な年だ。
イクイノックスの能力は、G1を勝利しても
いまだに天井が見えないでいる。
得意な中距離戦にさらなる磨きをかける。
菊花賞のリベンジとして天皇賞春へ乗り込む。
マイルレースでスピードの限界を測ってみる。
ドウデュースの後を追って海外レースに
挑戦することだって、今のイクイノックスなら
可能なように思えた。
その中から、イクイノックスの現在と目標、
両方に合ったレースを選ぶのは
簡単ではないが……
Ωしっかりやらないと……
ということで、元日から調べものをしようと
図書室に向かう途中。
「――あ。」
イクイノックスと出会った。
当然、彼女には去年と同じように
お正月の間は休むように言ってある。
「あ、あけましておめでとうございます……」
去年と変わらないしどろもどろした様子に
思わず笑いながらも、図書室への道を塞ぐ。
Ω今日は休みだって
とはいえこのまま引き下がらせるのも
難しいだろう。そう思い――
Ωよし、初詣に行こう!
「……はい?」
元日らしい休暇の使い方を提案したのだった。
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リフレッシュも兼ねて訪れた
トレセン学園近くの神社は、
ほどほどに混雑していた。
ひとまず参拝をして、
イクイノックスの飛躍と安全を願う。
ただ、これで解散してしまっては
さっきの二の舞だろう。
どうにか時間を稼ぎたい。
何かないかと周囲を見渡して、
ふと社務所が目に入った。
Ωおみくじ、引いてみない?
「おみくじ、ですか……?
いいですけど、私が買うとたぶん凶とか
悪いことしか書いてないのとかですよ?」
何かおみくじで嫌な思い出でも
あったのだろうか……。
とにかく、そこまで言うならと自分が1つ
買ってみる。おそるおそる開いてみると……
「……中吉、ですか?」
Ωま、まあまあ……
悪いわけではない結果が出たが、なんとなく
めいっぱいは喜びきれない部分もある。
とはいえ、詳しく見ていくと……
「『待ち人、既に来ている』
『失せ物、備えて待て』……
っこういいこと書いてありますね……?」
「最近のおみくじ、辛口じゃなくなったとか?」
おみくじの絶妙な文章になんとも言えない
空気が広がるなか。
「……あ、『好機、大きく来る。手放すな』。
トレーナーさん、順調じゃないですか?」
「はっ、もしかしてトレーナーさん、
新しく有力な子を担当する予定とか……!?」
今のところそんな予定はないが……
それに、今はイクイノックスの進路取りに
集中しなければならない時期でもある。
おみくじの指すような、明るい結果を
目指して頑張ろうと心をあらたにした。
Ω今年も2人で頑張っていこう
「えっ、あ、はい……!」
「……でも、去年より大きなチャンスって、
それに巻き込まれると私、すごく大変な
ことになるのでは……?」
ふと不安がよぎったイクイノックス。
どうにかこの場を落ち着かせるには――
Ωなら次に備えてしっかり休もう
そもそもこの場もイクイノックスを
データやレースから引き離して
休ませるための初詣だ。
まだ何が訪れるかわからない以上、
万全に備えておくべきだろう。
そんなことをイクイノックスに言う。
「……ふふっ。」
「そうですね、じゃあ……
トレーナーさんも、しっかり休んで
チャンスに備えてくださいね?」
お互いに釘を刺しあい、牽制しながら
今日1日は暖房のきいたトレーナー室で
ゆっくりすることにしたのだった。