ある日の夕方、新しい教本を買うために
イクイノックスと街を歩いていると――
「ん? 人だかり、ですかね……?」
「さあさ、新春・大福引祭り開催中だよ~!
特賞はなんと『温泉旅行券』!」
「1等は『特上にんじんハンバーグ』
2等は『にんじん山盛り』
3等は『にんじん1本』!」
「さあさ、楽しい楽しい福引だよ!
どなたでもどうぞ~!」
「福引…… そういえば、さっきの本屋さんで
何か貰ってませんでしたか?」
Ωそういえば……
財布の中からレシートを取り出すと、
その後ろに福引券が挟まっていた。
「せっかくですし、引いてきたらどうですか?
私、ここで待ってますよ?」
こんなタイミングで商店街を利用するのも
そこまでない。忘れないうちに抽選を
しなければと思ったところで――
ふと、好奇心が沸いた。
道の端に寄ろうとしたイクイノックスを
慌てて呼び止める。
Ωイクイノックスが引いてきて
結局、初詣の時おみくじは自分しか
引かなかった。どうせならイクイノックスも
ここで運試しを……と思い、券を差し出す。
「えっ!? いやいや、トレーナーさんが
引いてきてください!?」
「私がこういうのを引いてちゃんとしたものが
当たったことないので……!」
Ω別にハズれても大丈夫だよ
「いやいやっ、トレーナーさんがそう言うのは
わかりますけど、いいのが当たったほうが
嬉しいに決まってるじゃないですか!」
「わざわざ私でそんなチャンス消費しなくても
トレーナーさんが引けばいいですって!」
せっかくおみくじの後押しもある。
ささやかとはいえ、ここでイクイノックスに
チャンスを掴む練習をしてほしい。
少しのイタズラ心もあったが、
これぐらいの軽いところで気楽に挑戦を
繰り返してほしいというのも本心だ。
しばらくの押し問答の末――
「……なんで、私はこういうとき
断れないのかなぁ……」
イクイノックスは肩を落としながら
抽選器のレバーを回した!
その結果は――
「3等賞~!
賞品は『にんじん1本』です!」
【にんじん1本】
『にんじん1本』を獲得した
「や、やっぱり、こんなもんですって……
私の掴めるチャンスって……」
ややショックを受けた様子の
イクイノックスに、フォローの言葉を
投げかける。
Ωにんじん1本でも十分だよ!
ここで運を使わないことで
もっと大きなチャンスを掴めるのかも
しれない、と励ました。
「運は使っても減らない」派の
イクイノックスはその慰め自体には
そこまで納得していないようだったが――
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当たったにんじんは、ドウデュースや
同室の子と少しずつ分けて
食べたということだった。