イクイノックス 育成ウマ娘イベント   作:土見

30 / 47
【成功パターン】


[シニア級4月前半]ファン感謝祭

 

 

 

4月。トレセン学園ではファン感謝祭が

行われていた。が――

 

「さすがに、海外から帰ってきて急いで

何かに参加するっていうのは

難しいですよね……」

 

事前応募が必要な出し物は軒並み満杯。

飛び入り参加もできなくはないが、

それもイクイノックスの主義ではない。

 

ドバイからの帰国直後で疲れもある。

今年のファン感謝祭は出店側ではなく

一般客側で楽しもう、ということになった。

 

Ωその代わり、今日はめいっぱい楽しもう!

 

「は、はい……!」

 

とはいえ、元日にもレースの下準備を

しようとするイクイノックスのことだ。

 

放っておくと休養を返上しそうな気がして、

今日1日はイクイノックスと一緒に

感謝祭を回ることにした。

 

 

   ―//―//―//―

 

 

「すごい数の人ですね……。

どれぐらいいるんだろう……。」

 

訪れたのは、様々な種類の特殊レースが

開催されているトレーニングコースだった。

今は借り物競走が開催されている。

 

「借り物競走、ドウが登録したって言ってて……。

もしかしたらもう終わっちゃったかな……?」

 

「……聞いてみる? いやでも、見てるなら

迷惑かけちゃうし……」

 

悩むイクイノックス。

とはいえ、今日はファン感謝祭だ。

 

Ωファンサービスだと思って!

 

「ファ、ファンサービス……!?」

 

「そんな、私がそんなことするなんて

おこがましいというか!」

 

「だいたい、私を見に来てるわけじゃない人に

私がファンサービスとかしたって――」

 

「――あ、あの……

もしかして、イクイノックスさん……ですか?」

 

「え、あ、はい……

そう、ですけど……」

 

「あ、っ、その!

ドバイ、見てました! おめでとうございます!」

 

イクイノックスの背筋が伸びる。

 

イクイノックスには、他人から応援されたり

期待されたぶんは頑張るという目標がある。

 

自分からファンサービスをするのは

気が引けるが、先方から声をかけられた

からには……という思いもあるのだろう。

 

「えっと、日本だと夜遅くだったのに

応援ありがとうございます。」

 

「また応援していただけるように、

次の…… 宝塚記念でも、頑張ります。」

 

「あ、もちろんファン投票で

選んでいただけたらの話ですけど……」

 

「はっ、はい!

絶対、絶対投票します!」

 

おそらく間違いないとは言われているものの

まだ公式に発表していない次走のレースを、

イクイノックスはこともなさげに口にした。

 

秋春グランプリ制覇ともなれば、

彼女の目標でもあるキタサンブラックですら

達成していない偉業のひとつだ。

 

水を差さないように見守ろう。

そう思っていたが……。

 

「――オイ、聞いたか今の……!

イクイノックス、次は宝塚記念だってよ!」

 

「まあそりゃそうだとは思うけど……

なるほど、サプライズ発表ってことか……!」

 

「――あれ、トレーナーさん……?」

 

「……もしかして、言っちゃダメでしたかね?」

 

Ω大丈夫だよ、どうせすぐに発表することだし

 

青くなったイクイノックスをフォローして、

ひとまずその場を後にした。

 

 

   ―//―//―//―

 

 

それから後もあちこちでファンに視線を

向けられることはあったが、大きな騒ぎには

ならないまま感謝祭を終えることができた。

 

「す、すいません……」

 

Ω謝ることはないよ

 

イクイノックスなりにファンに真摯に

向き合った結果であるし、発表して

大きな支障がある情報でもない。

 

結果的にファン感謝祭でこちらのファンに

何かできたということでもある。

そうイクイノックスを慰める。

 

「……来年は、もっと何か用意したいです。

こういう形じゃなくて、きちんと……。」

 

「もし来てくれる人がいるなら、その人に

話を聞いて、応援してもらえるような。

そういうことがしたいですね……。」

 

Ωイクイノックス……

 

イクイノックスが、前向きに来年の話を

してくれた。

 

やはりイクイノックスの中でゆっくりと、

しかし大きな変化が起きているのかも

しれない。

 

宝塚記念、秋、そして来年と、

イクイノックスがさらに成長していくと

考えると、自然と口角が上がる。

 

「? トレーナーさん、どうしました?」

 

Ωううん、何でも

 

本人も気付いていない、小さな変化。

トレーナーとしては実りのある、

そんなファン感謝祭だった。

 

 

 

「……わ、イクイノックスだ……!」

 

「アレが…… ちょっと遠回りしよう……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。