イクイノックス 育成ウマ娘イベント   作:土見

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[シニア級5月後半]焼け跡

 

 

 

宝塚記念のファン投票が始まって、

しばらくの時間が経った。

 

実績を考えれば、イクイノックスも

おそらく選ばれているだろうが……。

 

Ω(他の出走する子は誰になりそうなのかな……)

 

中間発表はURAの公式からも発表があるが、

ウマッターなどでの声も大事な情報源だ。

 

それに、イクイノックスがどういった期待を

向けられているのかも、彼女の次の目標を

定めるうえでも知っておきたかった。

 

キーボードを叩き、検索にかける。

たくさんの投稿が表示された。

 

結果の上位にある応援の声をひとつひとつ

確認していくと、ひとつの動画付き投稿が

目に留まった。

 

Ω……『イクイノックス 恐怖映像』?

 

タチの悪いものならきちんと対処する

必要がある。念のため確認すると――

 

Ωこれ、ドバイのレース映像……?

 

そこに表示されたのは何の変哲もない、

イクイノックスが輝かしい勝利を収めた

ドバイのG1レースの映像だった。

 

訝しみながら、コメントを確認する。

 

「練習みたいな勝ち方」

「正直戸惑いのほうが大きいかも」

「久々にレース見て血の気が引いた」――

 

Ωこれは……

 

SNSの検索結果に戻って、一覧を

スクロールしていく。

 

もちろん、インターネットで簡単な検索に

引っかかる範囲では本気で危ない発言が

拾われることはなかった。

 

ただ…… オーバー気味に書かれた

悪意のある文脈ではないとはいえ、

なかなか強い言葉を使っている投稿もある。

 

「正真正銘、本物の化け物だ」

 

……咎めるような投稿ではないと思うが、

イクイノックスはあくまでただのウマ娘だ。

言葉が通じない無敵の生き物ではない。

 

彼女には見せないほうがいいな……と

思いながらさらに探る手を進めていく。

 

自分が、見なければならない。

受け止めるのは自分でありたかった。

そして――

 

「これから俺たちはあと何回           

『イクイノックスがいなければ』って       

言うんだろうな……」              

 

悪意なく放たれた致命的になりうる一言も、

そこにはあった。

 

 

   ―//―//―//―

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ……!」

 

Ωペース維持して! もう1周!

 

「ぇ、あ……! はい!」

 

明らかに、イクイノックスのキレが

悪くなっていた。

思いつめた表情の回数も増えている。

 

ひょっとして、と思い、トレーニング後

イクイノックスにたずねることにした。

 

Ωイクイノックス、何か言われたりした……?

 

「――っ!」

 

図星らしい。

ネットの書き込みの件は変に意識させないように

彼女には伝えていなかったのだが……

 

「……その、ファン感謝祭の時、

ちょっと皆に避けられてるような気がして……」

 

「クラスメイトの子に聞いたんです。

そしたら『まあ怖い人は怖いでしょ』って

言われて――」

 

「それで、ちょっと調べたんです……!」

 

おそらく、それであの投稿たちを

見てしまった……ということだろう。

 

「……わかってるんです。

あの人たちは私を本気で

嫌ってるわけじゃないこと。」

 

「そんな人も少なくって、今私はたくさんの人に

応援して、支えてもらってることも……」

 

「全部、ぜんぶ、わかってるのに――」

 

理解できるからといって、飲み込んで

納得できるとは限らない。

普通の年頃の学生なら、それが当然だ。

 

……当然だから、何も言えない。

 

「トレーナーさん、私……」

 

「私、どうすればいいんでしょう?」

 

「私は、走ることを本当に

望まれてるんでしょうか……?」

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