イクイノックス 育成ウマ娘イベント   作:土見

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[シニア級6月後半]宝塚記念の後に・竦むような

 

 

 

イクイノックスは、先頭のままゴール板の前を

駆け抜けていった。

 

「お、おいおい…… ちょっと調子悪いかもって

思ったのに、メチャクチャ強いじゃん……!」

 

「どこまで強いんだ、イクイノックス……!」

 

Ωイクイノックス……

 

モニターの中のイクイノックスは、

明らかに挙動不審な様子だ。

 

精神的に絶不調なのは間違いないだろう。

しかし、それでもレースに勝ててしまう……。

むしろ、勝ててしまう。

 

間違いなくイクイノックスの身体は

今全盛期を迎えようとしている。

だが、メンタルはそうではない……。

 

一刻も早くイクイノックスの話を

聞かなくてはならない。

地下バ道へ駆けだす。

 

 

   ―//―//―//―

 

 

イクイノックスは、ふらふらと

足元もおぼつかない様子で歩いてきた。

 

Ωイクイノックス!

 

「……トレーナーさん――」

 

「私は、走って勝つことを望まれているって、

そう思ってたんです。」

 

「たぶんそれは間違ってなくて……

でも勝てば勝つほど、わからなくなるんです。」

 

「見てくれる皆さんの気持ちは、

だんだん離れていくような気がして……」

 

「……私は勝ち続ける意志も嫌われる覚悟も

両方無い、中途半端なウマ娘でした。」

 

「走るのも、やめるのも、私には……」

 

Ωいったん落ち着いて!

 

一息に気持ちを吐き出したイクイノックスを

ひとまず落ち着ける。

 

……ここでは誰が聞いているかわからない。

彼女の手を握り呼吸が整うまで待って、

控え室に戻ることにした。

 

 

   ―//―//―//―

 

 

「……ごめんなさい、トレーナーさん。」

 

Ω謝ることないよ、ごめんね

 

温かい飲み物を渡して、イクイノックスの

これからを考える。

 

今のままのイクイノックスが走るのは

間違いなく危険だ。精神的なダメージを

受けてしまうのが目に見えている。

 

……だが、走るのをやめてしまうのも

イクイノックスの本意ではないらしい。

 

彼女の中の「ファンの期待に応えたい」という

気持ちが失われたわけではない。

そして彼女は、あくまでも応援されている。

 

メンタルケアに関しても、自分は素人だ。

今から勉強して間に合うかは怪しいし、

それにリスクをかけることはとてもできない。

 

「次走は、ちょっと……

ごめんなさい、考えさせてください……。」

 

その言葉に、頷くしかない。

……次走をどこにするかだけではなく、

今後の進退も含めてだとしても。

 

順調なG1戦線の道のりとは正反対に、

目の前にあるのは袋小路。

 

何もできないまま事態が悪化する閉塞感。

自分とイクイノックスには、いったい

何ができて、何をするべきなのか。

 

暗闇の中、夏の足音だけが

近付いてきていた。

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