イクイノックス 育成ウマ娘イベント   作:土見

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[シニア級7月前半]夏合宿(3年目)スタート!

 

 

 

「イクイノックス先輩だ……!」

 

「今日元気ないのかな……?

でも、私なんかが声かけてもダメだよね……」

 

「…………」

 

2度目の夏合宿。

去年も悩みながらの参加ではあったが、

今回はより重い問題を抱えている。

 

イクイノックスは今、とてつもなく強い。

だが、その強さがイクイノックスの

進みたい方向と噛み合っていない。

 

確かに過去には、強すぎて悪役のような

扱いを受けるウマ娘たちや、強さを求めて

周囲から孤立するウマ娘も多かっただろう。

 

ただ、イクイノックスは応援されたまま

距離を取られている。

 

彼女自身の目標である「皆の応援や期待を

背負って立つウマ娘」の姿とは、あまりにも

かけ離れた自分の立ち位置が、彼女を苦しめる。

 

……とはいえ、この問題は誰も悪くないうえに

明確な解決方法も見当たらない。

 

しいて言うなら、イクイノックス自身が

自分がどうありたいのか、どうすべきかの

指標を見つけるのを待つしかないのだが……。

 

Ω(……待つしか、できない)

 

トレーナーは、レースを走らない。

だからこそ、イクイノックスの悩みの芯を

本当の意味で理解はできない。

 

それが、ただただ悔しかった。

 

 

   ―//―//―//―

 

 

「えっと、トレーナーさん。

練習メニューって……」

 

Ω最低限身体がなまらないようにするだけ

 

「……はい……。」

 

行き先もわからないまま、漠然と

練習を積み重ねても効果は薄い。

それには納得したようだったが――

 

「……じゃあ、私がここにいる理由って……?」

 

一瞬だけ、言葉に詰まる。

夏合宿はあくまで自由参加になっている。

 

わざわざここまで来る理由は

無いといえばなかった。とはいえ。

 

Ω気分転換、必要だと思って

 

わざと笑って、緊張感を与えないように

イクイノックスに伝える。

 

夏合宿中はトレセン学園のほとんどの人手が

こちらに割かれることになる。

もちろんそれは当然のことだ。

 

……だが、今イクイノックスだけが夏合宿に

不参加ということが知れれば、メディアや

ファンはその話を知りたがるだろう。

 

メディア対応の人員がいないとなると、

結局イクイノックスの心の平穏は

守られない可能性が高い。

 

そう思って無理やり連れだしたわけだが――

 

「……そう、でしょうか。

走ってもない私に気分転換がいるかは

わからないですけど……。」

 

「……とりあえず、そうします。」

 

少しの間はあったものの、イクイノックスも

どうにか納得してくれたようだった。

 

Ωイクイノックス

 

部屋に帰ろうとする彼女を、つい呼び止める。

 

「? なんですか?」

 

Ω君が何を選んでも、それを応援するから

 

「…………」

 

返事はない。それでも、

こちらの意図は伝わったと信じるしかない。

 

トレーニングを見る合間に、イクイノックスが

何を選んでもいいような準備を。

そして、彼女が選ぶ手助けを。

 

またしても大きな分岐点となりそうな、

そんな夏合宿が始まった。

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