夏を越えて、イクイノックスの精神は
安定していた。
そしてそれにつられるように――
Ωすごい!新記録だよ!
イクイノックスの身体も、さらなる進化を
遂げていた。まるで、彼女自身の覚悟を
待っていたかのように。
もしかすると、今までで一番心身ともに
充実した出走になるかもしれない。
そんな予感がしていた。
短い調整期間を感じさせないほど
密度の濃い、そんなトレーニングを積んで――
―//―//―//―
「今年の天皇賞秋ですが、昨年からG1を
勝ち続けているイクイノックスが
出走を表明しており――」
「現在出走予定の腕自慢たちの中で
このウマ娘の快進撃を止めるのは誰か、
注目が集まっています!」
「しかし、なかなか珍しいことになりました……」
Ωそうなるよなぁ……
報道を眺めながら、出走予定に名を連ねている
ウマ娘たちをもう一度確認する。
夏合宿の後すぐに次走を発表した以上、
天皇賞秋に出走してくるのはそれを見て来た
選りすぐりの強者たちということだ。
誰もがイクイノックスに対して何かしらの
勝算を持ってきているだろうというのは
想像にかたくない。
トレーナーとして、可能な限り
相手のやってきそうなことを洗い出したが……
とはいえ、完全でないのも確かだ。
だが、イクイノックスを不安にさせるわけには
いかない。そう決心したところで、控え室の
扉が開いた。
「――すみません、お待たせしました!
ブリーフィングお願いしても大丈夫ですか?」
――イクイノックスは、落ち着き払っていた。
Ω(もう今までのイクイノックスじゃない……!)
こちらも気合を入れ直し、資料を呼び出す。
自分の見つけた情報、考えられる手段。
全部を伝えても大丈夫だと、確信していた。
―//―//―//―
「来たぞ、イクイノックスだ……!」
「やばっ、なんか今日オーラ違くない……?」
「――っしゃあっ!!」
「来たね、イクイノックス……!
今日はお互い、いいレースをしよう!
そんでもって――」
「アタシは、最強になる!
今度は別の称号をもって!」
(ザワザワ……)
(ドウ、マイクパフォマーンスなんて
普段は全然しないのに……)
(よし……)
「……大丈夫だよ、ドウ。
それに、それを言うなら――」
「いいレースにしよう、
……私は、準備万端だよ。」
「なっ――」
「おいおい、イクイノックスが……!?
前と雰囲気違いすぎないか……!?」
(大丈夫だって伝わったかな……)
(ドウのおかげで、少しだけ……
ほんのちょっとだけ、自分にできることが
わかった気がしたから)
(だから、あとはレースで伝える。
……ドウを、巻き込む……!)
「……っ。
イクイ…… アタシは――」
「……ううん、アタシも走りで伝えるよ。」
「――さあ、クラシックの続き!
最高の第2ラウンドにしよう!!」