「出走前から好メンバーと目されている
今回のメイクデビューですが――」
「イクイノックスを筆頭に各ウマ娘、
今後に繋がるいい走りができたかと思います!」
―//―//―//―
イクイノックスは、無事メイクデビューを
終えることができた、が――
「ゲホッ、ゴホッ!
と、トレーナーさん、どうにか……」
Ωとりあえず休んで
精神的な疲労もあってか、
控え室に戻ってきたイクイノックスは
かなり弱っていた。
落ち着くまで待ってから、
今後の方針についての話し合いをする。
Ωレースはどうだった?
「はい…… えっと、やっぱり
模擬レースよりもたくさん考えることが
あって、わからなくなりそうで……」
「周りを見て走るので精一杯というか、
本当に見れていたのかも怪しいというか……」
Ωデビュー戦であそこまでできたのは凄いよ
詳しい分析と反省はトレセンに帰ってから
するとしても、ぱっと見たぶんには
メイクデビューとは思えない走りだった。
レース内容が申し分ないとなると、
今後レースに出走することを遠慮する必要は
ない、のだが――
「ふーっ……」
イクイノックスのメンタルの消耗が激しい。
彼女に負荷を強いてまで出走させたくはない。
とはいえレースを走らないという選択肢も、
実戦経験を積むという貴重な機会を失うのも
イクイノックスのこの先を考えると選べない。
つまり、選ぶべきはより経験値を得られそう、
かつ大きすぎない程度の、イクイノックスの
走りやすそうな舞台。あるとすれば……
Ω東京スポーツ杯ジュニアステークスはどう?
このレースなら、距離は今回と変わらない。
最近は出世レースとして有名で、
今年も有力ウマ娘が多く集まるだろう。
調整として出られそうなら他のレースに
出走することも考えつつ、基本的な大目標として
東京スポーツ杯JSは良さそうだが――
「え、ええっ!?
急に重賞レースじゃないですか!?」
「もう少し堅実というか……
ほら、例えばアイビーステークスとか!
オープン競走とかそういうところから――」
確かに、アイビーSなら同じ開催条件で
開催時期も近く、なおかつオープン競走だ。
こちらも出世レースとして注目されつつある。
ただアイビーSにも、
立ちはだかる大きな壁があった。
Ωそのレースにはドウデュースが出るみたいだよ
「ど、ドウが……」
ドウデュースは既にメイクデビューの後、
とくに大きな問題が無ければ
アイビーSに向かいたいと言っていた。
友人との戦いか、それとも重賞競走か。
イクイノックスの出した結論は――
「……東京スポーツ杯JSに、しましょう……」
――こちらと同じ結論だった。
きっとドウデュースとの対戦も、この先
クラシック三冠路線に進んでいけば
避けられないものになっていくだろう。
だから今はその時までの力をつける時だ。
そう心に誓って、メモに暫定目標を書き記す。
Ω大丈夫、君はどんな舞台でも戦えるよ
「あ、あはは……」
曖昧なイクイノックスの空笑いが、
少しの安堵まじりに聞こえたような気がした。