(――キタサン先輩は、何度も走って、勝って、
それでみんなに愛されるウマ娘になった)
(私は、その背中に憧れた。
私の中に、どうしても諦められない目標が
できてしまった。なら――)
(私も、そうなりたいなら……!)
「や、あああっっ!!」
「イクイノックス、イクイノックスだ!!
すべてを蹴散らす天賦の才!
これが、イクイノックスだあぁっ!!」
(ワアアアアッ!!)
「おいおい、宝塚記念の時は
『これでも勝てるのか』って思ったけど……」
「ガチになったらこんなヤバいのかよ……!
今日のイクイノックス、誰が勝てんだよ……!」
―//―//―//―
「イクイノックス! 鮮やかに颯爽と駆け抜けて
今、ウィナーズ・サークルに立ちました!」
「――あの、っ!」
「これを見ている観客の皆さん、それに……
今トゥインクル・シリーズを走っている皆。」
「次は、ジャパンカップに出走します。
誰が相手でも、全力でお相手させて
いただきたいと思っています。」
「……最高のレースを、一緒に走りましょう。」
「お、おいおい……!
トゥインクル・シリーズ全体に対する
挑戦状かよ……!?」
「い、いやでも、実際今の中距離路線なら
イクイノックスは最強の一角だろ……?
そんな子が発破をかけたってことは……」
「ジャパンカップ、ヤバいことになるだろ……!」
「イクイノックス、こういうことやるイメージ
全然なかったけど…… 案外、アツいタイプの
ウマ娘だったりするのか……?」
―//―//―//―
地下バ道から戻ってきたイクイノックスは、
扉を閉めるなり大きく息を吐き出した。
Ωお疲れ様……イクイノックス?
「ぅ、ううう……!
なんかノリで言い過ぎた気がします……!」
「いや、心にもないことを
言ってるわけじゃないんですけど……
それでも、大言壮語が過ぎるというか……」
久々に不安そうなところを見せた
イクイノックス。思わず笑いそうになる。
ただ、それと同時に少し安心している
自分もいた。イクイノックスの本質は、
大きく変わってはいない。
Ω誰も君の言葉をそう思ってはいないよ
イクイノックスを諭す。
彼女が去った後の観客席のざわめきは、
間違いなく発言を笑うようなものではなかった。
一瞬だとしてもきっとたくさんの人が、
自分の理想の「今年のジャパンカップ」を
思い描いただろう。
「……なら、いいんですけど……」
とにかく、あらためて次のレースは
ジャパンカップになった。
間違いなく今までで一番の激戦になるのは
わかっているが……
Ωイクイノックス、いける?
「――はい、いけます。……いきます!」
力強い返事だった。1ヶ月後のジャパンカップが
素晴らしいレースになるよう、こちらも全力で
サポートすることを心に誓う。
今年の集大成は、もうすぐそこまで
迫ってきていた。