「先頭はイクイノックス、ゴールイン!
イクイノックス、これが
世界が憧れる実力です!!」
(ワアアアアアッ!!)
「はっ、はっ、はっ……」
「……パンサラッサ先輩、立てますか?」
「は、ははは…… もうちょい寝かせてくれると
助かる、かな……」
「――見たか、イクイノックス。
これが、これがあたしだ……!」
「はい、先輩の背中を……また追えて、
嬉しかったです。」
「それから……ドウ。」
「……なにさ、イクイ?」
「ここまで私を連れてきてくれて、ありがとう。
ドウがいなかったら、きっと私は
ここに立ってないよ。」
「……ドウと、先輩と、みんなと走った
たくさんのレース。全部背負って走れるかは
正直わかんないけど……。」
「それでも、やってみようとする。
私が、そうしたいって思えたんだ。」
「そっか、それじゃあ――」
「もっと、イクイと一緒に走りたい。
アタシは、イクイが背負いきれないくらい
たくさんレースを走って、勝って。」
「それで、イクイと皆に消えないぐらいの
最強を刻み付ける! ……それが、当面の
アタシの目標かな? なんて――」
「うん。……受けて立つよ。」
(私を、最初にライバルだって呼んでくれた……
背中を、目に焼き付けさせてくれたひと)
―//―//―//―
「――皆さん、まずはジャパンカップの応援、
ありがとうございました。」
「今日は、お願いをさせてもらいたいと
思います。」
「……これから先、たくさんのウマ娘たちが
たくさんのレースを走って、ターフを
去っていくと思います。」
「皆さんが凄いウマ娘を、凄いレースを見たと
思う瞬間が、必ず来ると思います。
あるいは、もう来ているかもしれません。」
「もちろん一番は人それぞれで、
たくさんの思い出とか価値観とかがあって、
それを否定するとかじゃないんですけど――」
「……ううん。そうじゃなくて……」
「――今だけでいいです。この瞬間だけは、
このレースを作り上げた私たちこそが
今世界で一番だと。そう思ってくれますか。」
(ワアアアアッ!!)
「レースが終わっても、心の片隅に残して
いただけるのであればとても嬉しいです。」
「ありがとうございました。
もし次のレースがあれば、また同じことを
思っていただけるように頑張ります……!」
―//―//―//―
「あ、あはは……
結局、大それたこと言い過ぎちゃいました。」
戻ってきたイクイノックスは、
苦笑いしていた。
同じコースで開催され、イクイノックス自身も
走った去年のダービーを超える走り。
彼女がレース前に言っていた目標を思い出す。
新しい熱で、「一番」を更新し続ける。
イクイノックスが目指すのだろうそれは、
並大抵の努力では成し遂げられないことだ。
だからこそ彼女は、他のウマ娘を巻き込んで
背負って、大きなレースのうねりを
作ろうとしているのかもしれない。
「……正直、自信はないんです。
そんなことできるのかもわかりませんし……。」
「でも、せっかく背負って、巻き込んじゃうなら。
皆で大きく、強くなっていきたかったんです。
……これも、エゴですけど。」
理想がないから他人の期待に沿うのではなく、
自分の理想のために他人の期待に沿い、
それを大きく膨らませていく。
茨の道だ。今まで以上に色々な壁や、
難しい意見とぶつかることも増えるだろう。
挑戦し続ける必要も多い。
でも、だからこそ。
やるなら、自分たちが適任なのかもしれない。
Ωまた、次の準備を色々しなくちゃね
やるべきこともできることも、いくらでもある。
そう伝えると――
「……っ、はいっ!」
イクイノックスは、
嬉しそうに笑って頷いてくれた。
小さな準備と一歩から。
大きな流れを、うねりを、イクイノックスは
生み出し走り抜けていく。
いつかその先に、彼女の目指した世界が、
掲げた理想が、彼女の胸に残る背中が
待っていると信じて。
それを手助けできるなら自分はきっと――
とても幸せなのだろうと、そう思った。