有馬記念。天皇賞秋とジャパンカップに並び
秋シニア三冠に数えられるレースだ。
当初このレースに出走する予定はなかった。
しかし、とあるニュースとそれを受けた
イクイノックス本人の希望もあり――
秋シニア三冠のかかるこの舞台に、
2人で脚を踏み入れていた。
「……ふーっ、はあ……」
「本当に、そんなことあるんですかね……?
実はドッキリでした、みたいなオチとか
ありませんよね……?」
Ω大丈夫だよ
朝から何度もやっているやりとりだ。
ブリーフィングの後片付けをしながら、
イクイノックスの肩を軽く叩く。
Ωさあ、楽しんできて!
「っ、は、はい……!」
―//―//―//―
「――さあ今、去年の覇者イクイノックスが
中山の地に姿を現しました……!」
「立ち向かうのはいずれも負けず劣らずの
精鋭ばかり、そして――」
「イクイーーーーっっ!!」
「ど、ドウ……! ちょっと落ち着いて……」
「落ち着いてなんていられるわけないじゃん!
こんなにすぐまた、最高の舞台で
レースできるんだからさ!」
「まだまだ、走り足りないよイクイ!
イクイと何度もぶつかって、
それでアタシは最強になるんだ……!」
「それに、今日は特別ゲストも
いることだし……!」
「そして最後にパドックに現れたのは――」
(ワアアアアアアアッ!!!!)
「キタサンブラック! キタサンブラックです!
この有馬記念に出走するため電撃復帰!」
「トゥインクル・シリーズの最前線を
離れていたとは思えないような、そんな
大歓声の中歩みを進めます!」
「――あなたが、イクイノックスちゃんだよね?」
「は、はいっ!
……キタサンブラック、先輩……!」
「インタビュー、見せてもらったよ。
あたしのこと、憧れてるって……」
「……はい。
私は、あなたの背中を追いかけて
ここにいるって言ってもいいと思います。」
「私にとっての憧れは。
ずっと、ずっと……あなたです。」
「だから私は、あなたみたいな輝きを
目指して――」
「目指して、いました。」
「でも、私はあなたと同じ輝きには
なれなかった。……それでも。」
「私は、あなたと違うものを背負って。
あなたみたいに、輝きたい――!」
「できるかどうかは、まだわかりません。
納得していただけるかもわかりません。
だから、あとは――」
「うんっ、それを聞けてよかった!
……あとはみんなで、お祭りにしよっ!
なんてったって、有馬記念なんだから!」
「盛り上がって、走りで伝えて……
これも、最高のレースにしよう!」
――年の瀬の祭りが、今始まる……!