東京スポーツ杯ジュニアステークス。
G1のステップレースにはなっていないが、
クラシックへ向けて重要なレースの1つ。
ここで好成績を収めることができれば、
イクイノックスは憧れのクラシック戦線へ
大手を振って進むことができる。
だから自分とイクイノックスはこのレースに、
メイクデビューの時からさらに練習を重ね
対戦するウマ娘のチェックなどを経て臨む。
Ω緊張してない? 大丈夫?
イクイノックスは――
「し、してるに決まってますよ……!
重賞レースなんですから……!」
――メイクデビューと同じくらい緊張していた。
Ωやっぱり緊張はするかぁ……
メイクデビューより大舞台になったのに
あの時と同じぐらいしか緊張していない、と
取ることもできるが……
イクイノックスの能力を十分に発揮するには、
まだ緊張しすぎなように見える。
これに関しては慣れていくしかないのかも
しれないが、場数を踏んでもらうというのも
負担や限度がある。
どうにかしなければならないと考えつつ、
今日の確認事項をひとつひとつ復習する。
ここは本番ではないから無理をしないこと。
異変を感じたら無事完走を第一にすること。
そして、前回とまったく同じ確認をして
進歩が無いと受け取られてしまうのも
こちらの意図ではないので、1つ追加する。
今回不安解消のために用意した事前準備。
もちろんおまじないの意味もある。
ただなんとなく、この準備を
活かしきれていないような気がしていて。
Ω余裕があったら、内容を思い出してほしい
走るだけで精一杯なら思い出さなくてもいい。
情報通りにレースを運ぶ必要もない。
とりあえず今回は思い出すだけでいい――
そう伝えると、イクイノックスは
少し不思議そうだった。
「わ、わかりましたけど、
思い出すだけでいいんですか……?」
Ω考えすぎるのを少しでも防げればいいなって
イクイノックスは模擬レースの時から、
周囲を見て走ることができるウマ娘だった。
メイクデビューの時のように周囲を見つつ
とっさにたくさんの判断をし続けるのは、
彼女の負担になるし集中力も欠いてしまう。
とはいえ不安症のイクイノックスは、
何か状況の変化があるとさまざまな可能性を
連想せずにはいられないだろう。
でも事前情報をあらかじめ頭に入れておき、
なんとなく心の準備ができていれば、
彼女の負荷の軽減になるかもしれない。
「そう、ですね……
できないかもしれませんけど、
少し意識はしておきます……」
本当に効果があるかわからないおまじない。
イクイノックスはそれを胸に、
地下バ道へ歩みを進めていった。