(ワアアアアッ!!)
「おお、イクイノックスが勝ったか……
来年のクラシック、楽しみになってきたな……!」
「他の路線からも強い子来るだろうけど、
イクイノックスも全然ワンチャンあるよな!
これからちょっと追っかけてみようかな……」
「ハア、ハア……
勝っ、た……?」
―//―//―//―
「事前準備を思い出すの、できました……!
ちょっとだけ楽になった気がしますっ、
ゲホッ、ゴホッ!」
イクイノックスは控え室に戻ってくると、
息も整えずにこちらに報告してくれた。
Ω話は聞くから落ち着いて
「は、はい、すいません……」
長い時間をかけてどうにか呼吸を落ち着けた
イクイノックスは、レース中のことを
つぶさに報告してくれた。
「隣の子がどういう戦法で来そうかとか、
全体的なペースがどうなりそうかとか……」
「意識があっちこっちに行かなくなって、
頭の中はだいぶ落ち着きました……!」
思ったよりもおまじないは効いていたようだ。
ここまでの事前準備は、あくまでも
自分が「これだけやった」と納得するために
手を動かす意味合いが強かったのかもしれない。
情報と努力を積み上げるという意識が強すぎて、
それを実戦で心がけるというところまで
気が回らなかったのだろう。
他人に指摘されたからか本番効果なのか、
とにかくこの場ではしっかりそれを
活用することができたのはかなりの前進だ。
……しかし、このおまじないには
難点がいくつかある。
Ωイクイノックス、次のレースなんだけど……
「? は、はい……?」
ひとつは、イクイノックスの負担面。
レース中に意識がふらふらはしないが、
頭をフル回転させながら走ることにはなる。
それを考えると、あまり短期間にいくつも
レースを走るというのは考えものだ。
もうひとつ大きな問題は準備期間。
最低でも有力ウマ娘がどのレースに出るかは
わかっていないと、こういう情報は作れない。
なるべく情報を増やしたいということもあって
間隔は空けたいし、事前に動向が明かされやすい
大レースでやるのが望ましい。
このおまじないに頼らなくてもよくなるのが
一番ではあるが、どちらにせよ次にするなら――
Ω『皐月賞』にしよう
「……え、ええ~~~~っ!?」
「ホープフルSも春の重賞も出走せずに
皐月賞に直行って、やっていいんですか!?」
ダメということはまったくない。
イクイノックスの実力なら皐月賞で
太刀打ちできないということはないだろう。
半年弱のトレーニング期間があれば、
メンタルに関してはわからなくとも
体力面では本格化が進むことも期待できる。
Ω皐月賞からダービーに行ける体作りからだよ
「そ、それは、そう、ですけど……」
「でも、大丈夫なんですか……?
『重賞1つ勝ったぐらいで天狗になってる』とか
ネットで書かれたりしませんか……!?」
Ωストップ、イクイノックス!
不安症が再発しそうになった
イクイノックスをどうにか制する。
結局、イクイノックスに半ば押し切られる形で
「あまりに直行が不安で体調もいいなら」……
という条件でレースに出る可能性も残した。
Ωとはいえ、本番はクラシックだからね
「……はい。少しでも、応援してくれた人の
期待に応えられるようにならないと……」
Ωキタサンブラックみたいにもなれるようにね
課題はまだまだ残されてはいるが、
方針も決まって改善の傾向も見られた。
ここから皐月賞まで、どれだけ彼女を順調に
ターフの上へと連れて行けるのか。
気が引き締まる思いだった。