「あ、えっと…… トレーナーさん、
あけましておめでとうございます。」
Ω今年もよろしく、イクイノックス
「いえいえっ、本当にこちらこそ
よろしくお願いします……」
新しい1年が始まった。
今年はイクイノックスがクラシック三冠に挑む
大事な1年になる。
そのために、有力なウマ娘の情報や
メンタルの鍛え方など、彼女に伝えるべき情報を
選別する作業を少しずつしていたのだが……
Ωイクイノックス?
「は、はい?」
Ω今日は休みって決めたよね?
「………………」
イクイノックスが目を逸らす。
山と抱えている本のほとんどは、
おそらく自分で読むためのものだろう。
きっと自分にバレないようにこっそりと
今日も勉強をするつもりだったに違いない。
気持ちはわからなくはないが、
お正月は何もせずにリラックスすると
約束したはずだったが……
「……な、」
「なんでもういるんですかトレーナーさん!
元日の朝ですよ!? 今日ぐらい休んでくれても
いいんですよ!?」
逆に心配されてしまった……。
間違いなくその言葉はイクイノックス自身に
向けられるべきものだが――
確かに、気負っていた部分もあるかもしれない。
イクイノックスと過ごすうち、手持ち無沙汰が
落ち着かないところが伝染してきた気がする。
自分も反省しつつ、イクイノックスに
お正月くらいは作業量を減らして
もらうために、ひとつ提案をする。
Ωじゃあ今日は情報収集以外のことをしよう
「え、以外……?」
本やデータと向き合い続けるのは、
どうしても体力と精神力を使う作業だ。
本来休養日であるはずのお正月から、
そんな作業をさせてはいられない。
Ωとりあえずは目下の課題の整理をしよう
「はっ、はい……
新しい情報を用意すること以外で、ですよね?」
「レース中にパニックになりすぎないこと、
皐月賞からダービーに耐えられる体力作り、
今までの知識を活かせているかの復習……」
「とりあえず、すぐに思いつく範囲だと
このくらいでしょうか……?」
確かにこの3つなら、新しく知識を入れなくとも
今日2人でできそうだ。
「ゆくゆくは全部改善するのは当然ですけど、
今日はどれにしますか?」
Ω去年の走りを見て軽く振り返り
気軽にするのであれば、
映像を見直すぐらいがいいのかもしれない。
走っているイクイノックスをもう一度振り返り、
自分の判断の正確性について検討しなおそう、
と伝えた。
「……いいですけど、やっぱり慣れないというか、
恥ずかしいですね……」
判断ミスらしい判断ミスはしていないが、
そういうことでもないのだろう。
これから先、イクイノックスは
重賞を舞台に戦っていくことになる。
いつか胸を張って見直せるような、
そんなレースができる手伝いができれば。
そう思いながら、イクイノックスと2人で
映像を見返しつつ可能性を検討して
元日の午前中を過ごしたのだった。