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四属性の祖たる〝古き冠の魔術師〟四柱のうち一人、タレスの言で、かの魔術師はあらゆるものは水により構成されると唱え、さまざまな奇蹟を起こしたという。
──だが、現代魔法において〝
あらゆる〝奇蹟〟は発達した魔法学により紛い物とされ、四属性の祖として奉られる四人の古き魔術師──
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絶えず流転し続け〝
それは燃え盛る〝火〟が止められぬからではなく、
それは吹き荒ぶ〝風〟が止まぬからでもなく、
それはただ在る〝土〟が金銀を産むからでもなく。
ただこの世全ての生物を潤す〝生命〟の象徴である〝水〟──それそのものが、禁忌への扉に近いと言われるが故の処遇である。
だから。
だからこそ。
いま僕に必要なのは。
──禁を破る覚悟はとうにあり、忌を侵す意味は問われるまでもない。
魔法陣は、すでに赫々と輝いている。
全てはもう、夜明け前の空のように──ただ、始まるのを待っていた。
「──祖よ。肇まりなる水の師よ。汝がために閉ざされし古の扉の前に、我はあり」
手をかざす。寒々しく緩やかな明滅を繰り返す魔法陣の中央に横たえた、美しき軀へと。
「──水よ。高き御座より下り賜うものよ。悪むべき処にも遍く在り、汎ゆる命を愛しむ者よ。時に荒れ、逆巻く力を持つ者よ」
その力を、もう一度この世に齎すために。
その力で、もう一度この世に蘇らせるために。
「
待っていろ、サーシャ……。
僕は今、タレスの背を見ているんだ。
〝
「奇蹟は我が手に!祖なる水より授かりしもの、淀まぬ流れは泡沫に、されど流転せよ!逆転する大河の恵み、一度授かりしものを再度此処に──」
蘇る。甦る。
黄泉還る魂が、今ここにあるのだ。
「──告げる。我、水の徒キマ・レウミデスの名は櫂にして帆なれば、汝が手は生命の流れを遡るために握られ、失われしサーシャ・クリスタロスの魂縛は軛を解かれ、自由なる魂は再びこの体に還り来よ」
息を吸う。凄まじい魔力の奔流が身体を巡り、激しく発光する魔法陣に吸い込まれていく。
「汝は澱み!戻り来て留まりし御魂!黄泉還れ────【
瞬間、吹き出した光と魔力の濁流に目を潰され、庇うように手をかざして目を瞑る。
「──す──」
何かが聞こえた。
赤く残像の焼き付いた視界が落ち着き、ようやく目を開けることができた。
瞳があった。金色の、琥珀のようにきらめく瞳。
「……な──!」
「マスター!マスター! このワタシを──、この
水色の髪の少女が、僕に抱きついている。金色の瞳を爛々と輝かせて、喜色満面で僕のローブに頬ずりしていた。
「だ…………」
「ああマスター、なんと喜ばしいことでしょう……あなたのような方とお会いできるなんて、このワタシ……」
「だ、誰なんだっ……! 君はっ……!」
僕の叫びが、すっかり暗くなった石室の中に響き渡る。
「ああ……そうでしたね」
僕の胸に頭をうずめた彼女が悲しげに呟く。
「……解析完了」とまた、顔を押し付けたまま言って、
「ごめんね、キー君♪」
てへっ♪とでも言いそうな軽い調子で謝りながら、顔を上げた彼女の表情を見て──僕は凍りついた。
混乱と、今更ながらに首をもたげる〝禁忌の魔法〟への恐怖が、僕をがんじがらめに縛っていた。
「ごめんね、怖いよね?でも嬉しいな、キー君がそんなに
母性あふれる笑みで、僕の頭に手を乗せ、上目遣いに撫でてくるその手つきは、確かにいつものサーシャだった。
瞳を合わせると、彼女はにっこり笑って……
「……そういうふうに、この身体の〝記憶〟でふるまえるから。だから、ね♪」
囁くように、耳元に唇を近づけて。
「
と平坦な口調で言った。
◇この女の正体は…?
次号、女の正体が…?