「な……何なんだ、君は……サーシャ、なのか」
水色の髪を持つ少女は、ただ金色の瞳を細めて……にっこりと笑った。
「うん。わたしはサーシャ。キー君、あなたの幼馴染のサーシャ・クリスタロスだよ」
にこやかな表情が、一瞬にして吹き消える。
「そして…ワタシはサーシャ。あなたが作り出した命である、〝
命を吹き込んだかのように生き生きとした
「残念だけど……〝わたし〟という魂はもう存在しないの。でも、安心して?──〝ワタシ〟の性質により、このサーシャ・クリスタロスの肉体は完全に解析され、あなたとの記憶も全てがワタシの知るところです。ですから……ちゃんと、〝わたし〟としてふるまうことが出来ちゃうし、あなたに対しての思いも消えてないの。だから、末永く──〝ワタシ〟をお側に置いてほしいのです、マスター」
目まぐるしく入れ替わる〝サーシャ〟の表情。
スイッチを切り替えたようにコロコロと変わる人格に、僕はまだ呻くしかなかった。
「や……やめてくれ。も……弄ぶようなことはするな」
「では。〝ワタシ〟としてお話しいたしましょう。ワタシもそのほうがラクですので。よろしく」
「ああ……うん、それでいいから……いいから説明してほしい。あとそろそろ離れてくれないか」
サーシャは頷き、ようやく僕から離れた。
「……それがマスターのお望みであれば。──しかしですね、説明と申しましても……先ほど申し上げたこと以上の情報は、それほどありません。ですがマスターも混乱されているようですから、もう一度まとめて申し上げましょう」
サーシャはヴン、と手を振って空中に薄い魔力の板を出現させ、指の先から魔力の筆を伸ばして板に何かを書き付けようとし……動きが止まった。
「……困りました。とりあえず書くものを出しましたが……説明に必要があったでしょうか」
コイツはもしかしてあほなのかもしれない。
「まあとにかく始めてくれよ」と僕は言った。
「──そうですね、それがいいですね」
頷いたサーシャはパチリと指を鳴らして所在なさげにふよふよしていた板を消し、居住まいを正した。
「……ではまず、〝ワタシ〟についてお話しましょう」
「ああ……よろしく頼むよ。正直言って何が何やらなんだ」
僕がそう言うと、サーシャは再び頷いて口を開いた。
「はい──よろしく頼まれます。では、まず……最初から振り返りましょう」
〝
「この身体は──〝わたし〟は、あなたを守って死んだようですね」
「っ……ああ、そうだよ」
「なるほど。だからあなたはこの身体にまた、生命を宿らせようとしたのですね」
すみません、この身体は死んでいたのでそのあたりの記憶はないのです──と平坦な口調で述べたサーシャは、また言葉を続ける。
「……残念ですが。あなたの思い描いた〝
「えっ」
「じゃあなんで生きてるんだよ、と仰りたげな目ですが……お答えしましょう。あなたは〝水の導師〟タレスと同じ〝蘇生の奇蹟〟については完全に達成してもいるのです」
「なにっ」
「……なんでしょうかその紋切り型な反応は。まあいいでしょう、ぶっちゃけてしまいますが……かつての〝水の導師〟もまた、死者の蘇生には成功していません。ですが、新たな命を作り出し死者に宿らせることには成功したのです。ですから、あなたもまた同じ方法で──死んだ肉体にまた命を与えることには成功したのです」
つまり──、と。彼女はピッと指を立てた。
「新しく注ぎ込まれたワタシ達〝
流れるような動きで、自然にすり寄ってきたサーシャ。
柔らかい身体が、生命の熱を帯びて密着する。
その言葉が、至近距離から耳に入る。
「驚くことはありません……もとより〝
「ワタシは精霊として──」
「へへへ、なんだあ?
暗がりの石室に突如光が差し込む。
明かりと同時に飛び込んできた粗野な声と、声に相応しく野卑な
騒々しい罵声を飛ばす男が、にやけた顔を松明の灯りでチラチラと不気味に赤く染める。
「居たなあ──っ!気色の悪い
ぶわり、と松明の炎が膨れ上がる。
「〝
◇この男の目的は…?
次号、二人の運命は…?