轟々と燃え盛り、渦を巻く爆炎が──瞬く間に部屋を制圧する。
強力すぎる
「───〝
「───〝
二つの
そして僕はその壁に大量の水を吸わせ、魔術的な火への対策を施した。
「……ふう。
「……サーシャ!?」
火の収まった部屋で、汗を拭いながらニヤッと笑ったサーシャ。
その感情豊かな声に、僕は驚いて振り返った。
「ん……?ああ、急に〝わたし〟になってビックリした?ごめんね、今替わるから──はい。すみません、〝ワタシ〟は戦闘経験が薄いので……
表情の掻き消えたサーシャが、淡々とそう言った。
そして、「それに──」と言葉を続ける。
「ワタシではこの身体に刻み込まれた
「えっ?」
そんなバカな。
「ああ、それは──」
僕の疑問をぶつけられたサーシャは、いとも簡単に頷いて、淡々と答える。
「──それはワタシの〝
「に……二属性の魔術師だとっ! そ……それは──」
「──はい、
ぎこちなく口の端をつり上げ、拙い笑みを見せるサーシャ。
「──〝禁忌〟なのはマスターひとりではありません。ワタシもです」
ひとりにはしませんよ、と続けたサーシャを──抱きしめる。
そうか。見た目が変わっても、中身の魂すら変わっても。
この少女には変わらない優しさがあって──
二人で記憶の奥底の封印の中にしまい込んだ約束……その果ては、まだ来ないのだ。
「ま……マスター……くるしいです。ワタシを死体に戻らせるつもりですか」
「ああ、ごめんごめん……離すよ」
「あ……まあ、いいのですが……」
撫でる。
「あ……あの」と困惑するサーシャの、
「ま……マスター!そろそろこんな部屋は出ませんか?わ……ワタシには現在地がよくわかりませんが、暗いし場所もバレているようですから……長居することはないと思います」
「ん?ああ、そうか……僕が運び込んだからサーシャはここを知らないんだね。ここはこの国の犯罪者の巣窟……いわゆるスラム街の、とある廃屋の地下室だよ」
ま、そんな場所だから──誰かにチクられててもおかしくはない。どこそこで怪しい魔術師が怪しげな儀式をやってる……なんて情報、よくあることだがよく売れる。チンピラの方はどうだか知らないが、まず間違いなく
「出よう、サーシャ。君の言う通り……ここにいる意味はもうないからね」
粗末な木のドアが付いて
何年前に誰が住んでいたのかもわからない、ゴミと壊れた道具が転がるだけの廃屋だ。一度息を潜めて、辺りの様子を探る。
──〝
地面に溜まった汚水の水溜まり。
廃屋と廃屋の隙間を駆ける小さな水……これはネズミだろう。
壊れた樽の底に雨水が溜まって虫が湧いている。
打ち捨てられた瓶にわずかに液体が残っている。
……人間大の水分反応は見当たらない。ヒトは居ないようだ。
「……〝
後ろから忍び寄ったサーシャがこそっと囁いた。
僕は頷いて、「じゃあ行こうか」と言った。
浮浪者たちに焚き付けのために木を抜かれてスカスカになっている扉を引いて、外に出る。
雑多なゴミが壊れた樽や木箱に突っ込まれ、あらゆるものに壊そうと殴打した形跡が残るこの国で最も卑しい街……
それがここ、魔術の総本山たる魔術都市〝
「とりあえず……見つかった以上隠れても仕方ない。堂々と人に紛れてしまおうか」
「ん、そうだね……人を隠すなら人の中、って言うもんね。わたしも賛成です」
横に並んだサーシャが僕の腕を取る。
「じゃ、いこっか?」と笑い、腕を絡めて歩き出す。
その後ろでは、あばら家とあばら家の隙間から差すわずかな太陽の光を、眠たげな野良猫が占拠していた。
◇二人で行く道…
次号、二人の行先が…?