「なぁ、シード」
「何?リムル」
「こいつらって本当にあのゴブリンと牙狼?」
「それはリムルの『大賢者』が教えてくれたんじゃないかな?」
「いや、それはわかるんだよ、ただ…」
「うん、そうだね…」
「「皆変わりすぎ…」」
あの後すぐに復活を果たしたリムルはまず目に入った筋骨隆々となったリグルドに驚き、そのほか成長を果たした皆にも軒並み驚いていた。
ゴブタが全然変わってないのも驚きだけど…
それはさておき、ここまで大所帯になった以上、私達にはやらなければならないことがある。
「それじゃあ手始めに、ルールを決めようと思う」
「ルール、ですか?」
「そうだ、俺達は見ての通り大所帯になったからな、なるべくトラブルを避けるためにも必要だ」
そうだね。決まりは大事。
「ルールは3つ、仲間内で争わない、他種族を見下さない、人間を襲わない、以上だ。最低限この3つは守ってくれ」
「宜しいでしょうか?」
そこでリグルが手をあげた。
「なんだね、リグル君」
「何故人間を襲ってはならないのでしょうか?」
やっぱりそこに疑問が出たね。
「リムル様のご意思を…」
「いいよ、リグルド、その疑問はもっともだから」
「そうそう、そして理由は簡単だ俺達が人間が好きだから、以上!」
「なるほど!理解しました!」
軽いよ、リグル君…
「それに人間は集団で生活してるだろ?彼らだって襲われれば抵抗するし、数で押されたら敵わないだろ?それなら仲良くしたほうがいろいろと得だしな。」
多分、人間が好きって方が本音だろうな、私もリムルも元は人間だし。
でもね、リムル…
「そんなところだ、なるべく守るようにしてくれ」
「「「は~い‼」」」
どうしようもない悪意を持つのもまた…人間なんだよ?
それからリグルドに統治を丸投げし早速衣食住の確保に出たが…
「…建て直してこれなのか?」
「お恥ずかしい話です…」
食に関しては問題なかった。牙狼族、今は進化して
衣は…かなりきわどいけど何も着てないよりはいいだろう。最悪リムルの出番かな?
そして住なんだけど…ごめん、これはフォローできないよ…
「専門の技術や知識がないんだし仕方ないよ」
「面目ない…」
「こうなると技術者との繋がりが欲しいな…」
「それでしたら今まで何度か取引をした者たちがおります、器用な者達なので家の作り方も存じておるやも!」
ナイスリグルド!
「取引相手って何ていう者達だ?」
「ドワーフ族です」
おぉ!ゲームとかで出てくる鍛冶師とかのドワーフ!これぞ異世界!
そして話は進み、リムルと過去に取引をしたゴブタ、そして共にリグル他数名に人数分のテンペストウルフで向かうことになった。
本当は私も行きたかったが私とリムルが同時にいくのはまずいと判断したこともあり、リムルが行くことになった。
「それじゃあシード、留守は任せるぞ」
「任せて、リムル」
「オウガ、我の不在の間、群れを任せるぞ」
「兄上も、リムル様を頼みます」
「それじゃあ行ってくる!」
リムル達はテンペストウルフに乗り駆け出して行った。
「「「リムル様~‼いってらっしゃ~い‼」」」
「みんな気を付けてね~!」
私達はリムル達が見えなくなると各自持ち場に戻った。
「それじゃあオウガ、ランガに代わってテンペストウルフのまとめ役、お願いね」
「かしこまりました、シード様もお気をつけて」
オウガを見送った私はまず畑に足を運んだ私の持つスキルは『園芸師』で植物の自由な生成で食料、『治療者』の健康、『冥灯龍』の多様性と後方支援し必要な要素が詰まっている。必要な魔素も竜種という種族柄有り余っているから基本不自由ない。まぁ、使い過ぎには注意だけど。
「シード様、指示通り各種の種を植え終わりました」
「ありがとう。後は『園芸師』で時折調整しながら経過観察かな」
まず、いくつかの種子を組み替えて野菜の栽培を始めた。今の気候に合うものを選んだし、これは実験だから数日で食べれるようにするつもりだ。やっぱり肉だけじゃ栄養も偏るしね。
続いて村の各所に私の魔素を込めた杭を設置。オウガの時は準備不足で奇襲を受けたこともあり念を入れる。これで障壁を張って村への侵入をできないようにしたし、万が一侵入を許しても閉じ込めることができるようになった。障壁も私と私に触れている人を対象に出入りできるように『学習者』が改良してくれたし村の防備はこれで大丈夫かな。
「こんなものか」
「お疲れ様です。シード様」
一通りやることが終わった私にリグルドが水を持ってきてくれた。
労働の後の一杯は格別だな~…水だけど。
「ありがと、リグルド」
「いえ、ところで、一つ宜しいでしょうか?」
「どうしたの?」
「シード様とリムル様はご結魂なされているのですか?」
「ブフゥーーーー‼ゲホゲホ」
「シード様⁉」
うっかり飲んでいた水を吹き出してしまった。
結婚⁉私とリムルが結婚⁉
《告。「結婚」ではなく「結魂」です》
今はそんなこといいから!
「え、私とリムルが⁉」
「はい、同じくテンペストを名乗っておられましたし、いつも二人一緒で、てっきりそうなのかと」
「それって、皆から見たら私とリムルがふ、夫婦みたいに見えたってこと?」
「そうです」
言われてみればお兄様が胃袋に入ってからずっと一緒だったな…確かにリムルはいつも気遣ってくれるし、ペースも合わせてくれるし、何より優しいんだけど…スライムだからね!無性だからね!いやでも前世は男性だったんだし心は男?でも私だって竜なんだし…
「少なくとも、今はしてないよ」
少なくとも⁉今は⁉何言ってんの私!
「そうでしたか、ではお二人がご結魂される時は村をあげて盛大な宴を開かねばなりませんな!」
「う、うん、ありがと…」
なんで嬉しそうなの私⁉違うから!リムルは友達ってだけでそれ以上でそれ以下でもないから!
それから数日間、私は馬車馬のように働いた。このままだとリムルが帰ってきたときにどんな顔して合えばいいかわからなかったし。まぁ、3日目でリグルドとオウガに止められて1日強制的に休みを取らされたけど…
でも一回休んで冷静になれたおかげですっかり吹っ切れた。やっぱり休みって大事なんだね。
そして翌日…
「リグルド、このゴブリン達は?」
「シード様とリムル様の噂を聞き、庇護を求めて近隣のゴブリン村から集まってきたようです」
これ、どんぐらいいるの?
《解。およそ500名です》
ごひゃ…
そう、近隣のゴブリン達が押し寄せてきたのだ。
どうしよう、とてもじゃないけど受け入れられない。『学習者』このままお引き取り願ったらどうなるかな?
《解。ヴェルドラの消失により、ジュラの森は知恵のある魔物達による覇権争いが始まっています。進化前のゴブリンは淘汰されるでしょう》
私達のせいでこうなってるのか…うん。
「私の一存じゃ決められないからリムルが帰ってから決めます。それまでは村にいていいけどしっかり働くように」
リムルが4人のドワーフと共に帰ってきたのは、その翌日であった。