リムル達がドワーフたちと帰ってきて数日。まず、私達は場所を移った。さすがに500人のゴブリン達を受け入れるには土地が足りなかったからだ。
開拓自体は私の力を使ってパパッと済ませ作業にかかった、三男、ミルドの采配で住のめどがつき、長男、ガルムのおかげでしっかりとした服もできた。これなら衣食住は問題なさそうだね。
あと…
「急ごしらえになっちまってわりぃな、姫さん」
「こっちこそ、忙しいとこ急に頼んじゃってごめんね」
私はカイジンに短刀を用意してもらっていた。私自身は後方支援向きだから前線に出ることは少ないけど、いざ接近されると攻撃手段が限られる。そのため近接武器を用意したいと常々思っていた。それをカイジンに相談したところ、急ごしらえで用意してもらったのだ。
「ところで私のことなんで姫さんって呼ぶの?」
「それは旦那に聞くんだな」
なんでそんなにニヤついてるの?
私はそんな疑問を持ちながらも工房を出た。
『シード、今いいか?』
リムルからの思念伝達だ。
『どうかしたの?』
『それが冒険者を4人保護してな、くたくただって言うから今から連れてくことにしたんだ。腹も減ってるみたいだしリグルドに食事の用意を頼んどいてくれ』
『わかった、怪我人はいる?』
『それは大丈夫だ、頼んだぞ』
『オッケー』
どうやら客人が来るみたいだ。
冒険者ってことは人間かな?ちょっとワクワクする!
そして少しして、リムルが例の冒険者を連れてきた。あれ?仮面の人は知らないけどほかの3人って…
《解。封印の洞窟で遭遇した3人です》
あぁ、あの時リムルが友達になりたいって言ってた…
『シード』
リムル?
『どうしたの?わざわざ思念伝達で』
『後で話せるか?仮面の人と3人で』
『うん、いいけど』
なんだったんだろ…ていうかリムルは何で仮面の人に抱きかかえられてるの?
そしてリグルドに案内され彼らはテントに案内され用意していた食事をふるまわれた。
「ギドひどーい!よくも私のお肉を‼」
「食卓とは戦場なんでやすよ姉さん」
「いいわよぅ、じゃあカバルのもらうから」
「ギャー‼丹精こめて育てた俺の肉がーー‼」
テントの外まで聞こえてくる…
前世で友達が言ってた焼肉抗争ってやつかな?
「にぎやかな人たちだねぇ」
「楽しんでいただけてるようですな」
私とリグルドもテントに入った。
「お客人、寛いでおられるかな?では、改めてご紹介しよう、我らが主、リムル様とシード様である!」
「「「そこのスライムも⁉」」」
まぁ、普通はそうなるよね…
「スライムで悪いか?」
「これは失礼しました!まさか魔物に助けてもらえるとは思わず!」
「私達、冒険者やってます!お肉とっても美味しいです!」
「どうも!助かりやした!」
本当ににぎやかだなぁ…
あと、仮面の人はどうやって仮面のまま食べてるの?
その後、私はオウガに、リムルと仮面の人はランガに乗って町はずれの丘まで来た。
「それで、話って何?」
「あぁ、シード、この人はシズさん。同郷の人だ」
同郷って…日本人?
「あなたも、転生者?」
「ううん、私は召喚者。君はスライムさんと同じ転生者なんだね」
「はい、私はリムルより9ヶ月くらい前にこの世界に転生したんです」
「そっか…君も大変だったんだね」
「そうですね」
リムルと出会ってからは特に。
「シズさんは、いつごろ召喚されたんですか?」
「…ずっと昔、元の世界で最後に見たのは、あたり一面の炎。とても怖い音が鳴り響く中住み慣れた町はグレンに染まっていった」
シズさんは仮面を外し眼を伏せる。
あれ?一瞬見えたあの目…
「…もしかして、空襲か?」
「多分そう、私の教え子が教えてくれたの」
「でもシズさん、召喚者だって」
召喚されたのが昔だとしても…さっきの目…あぁ…そういうことか。
「えぇ、ある男に召喚されたの。召喚したかったのは別の誰かみたいだから、とても落胆した様子だったけど、ふとした気まぐれからか彼は私に炎の精霊を憑依させた。それは炎を操る力をくれたんだけど…同時に呪いでもあった」
「呪い?」
「この力…炎のせいで…私は大切な人たちを失ってしまったから」
周囲の空気が重くなる。
私もある事実に気づいてしまった…
「そうだ!面白いものを見せてやるよ」
すると私達の周囲にとある光景が映し出された。これってリムルの前世の記憶?パソコンの画面にエルフが映し出された。あれ?微かに映ってる男の人の顔って…
「間違った今のなし‼」
リムルがもう一度映すと、終戦後の日本の光景が映し出された。
「これは?」
「俺も自分で見たわけじゃないけどな。終戦後、復興に励む様子だ」
「これが、あの炎に包まれた町?」
「みんなが頑張ったんだよ」
「そっか…こんなにキレイになったんだね」
シズさん、嬉しそう。
やっぱりリムルはすごいな。
「こっちでもみんなで楽しく暮らせる町を作る。それに向かって俺達も頑張ってるんだ。よかったらまた遊びに来てくれ」
「…ありがとう、きっとお邪魔する」
「それじゃあもど「リムルは先に戻ってて」どうした?」
「シズさんと少し話したいことがあって…オウガも戻ってて」
「私と?」
「わかった、じゃあ先戻ってるぞ」
「シード様、何かあればすぐ駆け付けます」
リムルはランガに乗って、オウガもランガに追従し町に戻っていった。
「それでシードさん、話って何かな?」
「…」
私は顔をうつ向かせたまま上げられない。
だって、これは…
「シードさん?」
シズさんは私の顔を覗き込む。
「すいません…こんなこと…むやみに聞くことじゃないってわかってるんですけど…」
「何かな?」
「シズさんはもう、自分は長くないんだって気づいてるんですよね?」
「!」
私の言葉にシズさんの顔が驚愕に染まった。
やっぱりそうだったんだ…
「どうして…わかったの?」
「私、前世では医者になりたくて、医学を学んでたんです。それで一度、おじいさんを一人、看取ったことがあって、シズさんの目が、その時のおじいさんの目とそっくりだったんです」
「そうだったんだね」
シズさんは目を伏せ、意を決したように私を見た。
「私、もう何十年も生きてるんだ、見かけほど若くないんだよ」
そう…だよね…
「この仮面のおかげで、精霊の力をある程度使えるようになって、冒険者として活動してたんだけど、制御が難しくなって、引退して指導者になったの」
「指導者?」
「学校の先生。異世界から来た子達のね」
達…結構いるんだ…
「楽しかった、平和な日々で、私のもとを去っていった子もいたけど…でもギルドの最高責任者になった子もいたんだよ」
「すごい…ですね」
「すごいでしょ?私の教えられることは、もうなくなったと思った。そして、寿命が残り少ないのか、精霊の意識を抑え込めなくなってきてね、一つ思い出したことがあったの」
「思い出したこと?」
「私を召喚した男に確かめたいことがあるんだ」
「そう…なんですね」
シズさん…
「ねぇ、本当の名前、教えてくれないかな?」
「…龍川…菜種です」
「菜種さんか…私は井沢静江」
静江さん…か
「菜種さん、あなたと話せてよかったよ」
シズさんが悲しそうな笑みを浮かべる。
何かできないのかな、私にできることは…
「そんなに思いつめないで。こうなることはずっと前からわかってたことだから」
そうだ…今私にできることは…
「…ヴェルシード=テンペスト」
「え?」
「今世の名です。私、転生したら5番目の竜種だったんですよ」
「5番目?竜?」
「井沢静江さん」
私からシズさんにできることは同情なんかじゃない…
「あなたがその身に宿す精霊が暴走したら、その時は…」
涙を流すことなんかでもない。
「私が止めます」
同じ大きな力を持つ者として…
「あなたに、何一つ壊させはしない」
シズさんの苦しみを終わらせることだ。
「…そっか、最初に見たときに大きな力を秘めてるとは思ったんだけど、そういうことだったんだね…」
「このこと、リムルしか知らないんで、出来れば秘密にしてくださいね」
「それがいいよ、新しい竜種がいるなんてバレたら、世界中が大騒ぎになるし」
やっぱりそうなんだね…
「それじゃあ、お願いしようかな」
「任せてください。それじゃあ、暗くなってきたし戻りましょうか」
私は町に戻ろうとしたが後ろからシズさんに抱きしめられる。
「シズさん?」
「ありがとう、怖かったんだ。炎の力のせいで大切な人たちを失って、人と親しくなるのが…」
「もう大丈夫です。確かに私はまだ半人前の竜ですけど、リムルだっているんですから」
「それと、もう一つだけいいかな?」
「はい」
「日向のことを気にかけてあげてほしいの」
日向?
「坂口日向。西方聖教会にいるから菜種さんには難しいかもしれないけど…」
西方聖教会。カイジンが言ってた魔物を絶対悪とする教団…
多分今後敵対する、だけど…
「確かに西方聖教会にいるなら難しいかもしれません、最悪敵対するかもしれない。だけど、絶対に一度は助けます。どんなことがあろうと…約束です」
「ありがとう…菜種さん」