転生したら5番目の竜種だった件   作:Rin1411

12 / 29
炎の魔人

 「ひっく…うぅ…パパ…ママァ…」

 

 夕暮れ時の一本道に一人の幼い少女がうずくまって泣いている。

 転んだのか所々が汚れ左ひざを擦りむき血を流している。

 

 「君、大丈夫かい?」

 

 学生服に身を包む少年が少女に目を合わせて尋ねた。

 

 「転んじゃったのか、それじゃあ…」

 

 少年はポケットからハンカチを取り出すと少女の患部に巻いた。

 

 「とりあえず応急処置はこれくらいにして、君の家は近く?」

 

 少年の問に少女は頷く。

 

 「それじゃあ、送るよ」

 

 そういうと少年は少女をおぶった。

 

 

 

 

 「…夢」

 

 目を覚まして映ったのは仮設テントの天井。

 さっきの夢は…

 

 「懐かしいな…もうずっと見なかったのに」

 

 母が亡くなって、感情がぐちゃぐちゃになって、母の生家を飛び出して転んで、そして…

 昔はよくこの光景を夢で見た、けどいつからか見なくなったあの日の光景…

 私が医者になりたいって思うようになったきっかけ。

 そして、多分だけど…私の初恋。

 

 「昨日のことがあったからかな…」

 

 原点を忘れるなってことかな…

 

 その後私は着替えていつものように村の仕事をこなしていく。

 最近は『園芸師』で畑や資材を調整することが多い。たまに料理をするんだけど、その時は皆かしこまっちゃうからちょっと大変なんだよね…

 

 「!」

 

 何これ、町の中で魔力が渦巻いてる?

 しかも発生源は…

 

 《告。町内で魔力の増大を確認。個体名:シズエ・イザワのものであると推測》

 

 早すぎる!だって、シズさんはまだもつって…

 

 「シード様!」

 

 異変を察知したのか近くにいたリグルが駆け寄ってきた。

 

 「リグル、皆を避難させて!急いで!」

 

 「はい!」

 

 私の言葉にすぐさまリグルは避難誘導を開始した。

 

 『シード、大変だ!』

 

 リムルからの思念伝達が来る。

 

 『こっちも感じた、シズさんは?』

 

 『今一緒にいる、他の四人も一緒だ。シズさんと同化してるイフリートが主導権を取り戻そうと暴走してるみたいだ!』

 

 その言葉に私はリムル達のもとに駆けだした。

 

 

 sideリムル

 

 辺りに妖気が漂いだす。シズさんの全身が赤く発光し、浮かび上がっている。

 これが彼女の言っていた呪い、イフリートか…

 

 「ハナ…レテ…」

 

 「オサエキレナイ…ワタシカラ…ハナレテ…」

 

 「心配するな、シズさん。あんたの呪いは俺達が解いてやる、任せろ」

 

 助けるんだ…必ず!

 

 「…オ…ネ…ガ…イ…」

 

 シズさんの体がイフリートに飲み込まれていった。

 

 「念のため聞くぞイフリート!お前に目的はあるか⁉」

 

 俺はダメもとで語りかけた。するとイフリートは上を指さしたかと思えば宙に炎の塊を複数生み出し俺達目掛けて撃ちだしてきた。

 炎の塊が俺達に迫ったが薄緑の障壁が張られ俺達を守る。

 

 「みんな無事⁉」

 

 「シード!」

 

 頼れる相棒も来てくれた!こっからだ!

 

 

 sideヴェルシード

 

 よかった、皆怪我はないみたい。

 …あれがイフリート、シズさんの呪い。

 

 「約束は守ります、シズさん」

 

 いける?『学習者』

 

 《解。各スキル、耐性すべて問題なく発動します》

 

 「私が、あなたを止めます!」

 

 私は天に向け手をあげる。刹那、村の各所から緑の光弾があがりイフリートに降り注いだ。着弾すると爆発を引き起こし砂埃があがる。

 

 「うぉ!なんだこれ!」

 

 《解。個体名:ヴェルシード=テンペストのユニークスキル『冥灯龍』の効果であると推測》

 

 『冥灯龍』って魔素を収束・操作するスキルじゃなかったか⁉

 …魔素?

 

 「この町は私の『園芸師』でほとんどの物に私の魔素が流し込まれていて、スキルでの役目を終えた今でも残り続けている、それは『冥灯龍』でいつでも操作できるのよ!」

 

 それってこの町全体がシードにとって盾にも矛にもなるってこと?

 …うん、今後シードを怒らせるような真似は良そう。

 

 砂埃が晴れると僅かによろめくイフリートが姿を現す。

 ここに来る前にオウガから精霊種に物理攻撃は通用しないって聞いたから魔素を圧縮して撃ち込んでみだけど、効果ありそうで良かった。

 魔素を利用した攻撃は効く。なら私はイフリートに対して有利、このアドバンテージを活かさない手はない。

 

 「お前だけに良いかっこさせないぜ、シード」

 

 リムルがランガに乗り私の横に並ぶ。

 

 「俺達も混ぜてもらうぜ」

 

 「俺達の仲間でやすよ」

 

 「ほっとけないわ!」

 

 カバルさん、ギドさん、エレンさんも…

 

 「シード様、私もお供します」

 

 オウガ…

 本当は私だけでどうにかしたい…だけど…

 

 「エレンさん、攻撃魔法は使える?」

 

 「は、はい、私は法術師(ソーサラー)ですから」

 

 これなら手札が一つ増える。

 

 「ならエレンさんが魔法で攻撃、カバルさんとギドさんでエレンさんを守ってください。リムルはランガと攪乱、オウガは攪乱しつつ攻撃を加えて。その間に私が力をためて一気に無力化します!」

 

 シズさんを長く苦しませないためにも短期決戦で決める。

 そのためなら変なこだわりなんて捨ててやる!

 

 私は短刀を抜くと『冥灯龍』の力で魔素を収束させ、抜いた短刀に流していく。

 今回は急造の一振りなのが功をなした。全力でやったらシズさんもろとも消し飛ばしちゃうけど、この短刀の耐久いっぱいなら大きな隙を作れるくらいまで威力を落とせる。

 

 「なに…これ…」

 

 「凄まじいまでの妖気でやんす…」

 

 「…魔王?」

 

 まぁ、抑えたとしても私の発する妖気はイフリートの比じゃないけど…

 イフリートもそれに気づきサラマンダーを複数召喚しけしかけてきた。

 

 「水氷大魔槍(アイシクルランス)!」

 

 「水刃!」

 

 「ウォオオオオオオオオオオン‼」

 

 エレンさんの魔法、リムルの水刃、オウガの雷撃が迎撃、オウガとランガに乗ったリムルが左右に分かれ走り出し、それに二体ずつかかって追随していく。こちらにも二体残ってるけど、いざとなったらこっちでどうにかできる。

 けどリムルの水刃だけ当たる直前で蒸発した。オウガの雷も効果があるだけで決定打にならない以上、やっぱり私じゃないとダメか…

 

 「エレンさん達は危なくなったら撤退を「できるわけないじゃないですか!」」

 

 「シズさんは私達の仲間なんです!それにこっちだって命張って冒険者やってるんですよ!」

 

 エレンさんは魔法を撃ち続けサラマンダーを攻撃していく。

 そこにランガに乗ったリムルがこちらに向かってきた。リムルはエレンさんが撃ちだした魔法を捕食する。

 

 「うぇえ⁉私の魔法、どうなっちゃったんですか⁉」

 

 そっか、魔法を取り込んで解析すれば…

 

 「よし、今度はこっちの番だ!水氷大魔散弾(アイシクルショット)!」

 

 リムルは追ってきていたサラマンダーニ体とこちらにいた一体を無数の氷塊で撃ち抜き倒した。

 

 「えええ⁉何今のアレンジ‼」

 

 …あとで教えてもらおう。

 

 「グゥルアア!」

 

 オウガも纏っていた雷を爪に圧縮させ追ってきていたサラマンダーを二体切り裂いて倒す。

 後はサラマンダー一体とイフリート、また召喚される前に…

 

 「こっちに向かってきやがった!」

 

 サラマンダーがエレンさん達に、突貫してくる。同時に発光しだした。

 

 「こいつ、自爆する気か⁉」

 

 しまった!無理やりにでも数を減らす気だ!

 魔素収束させてる間は動けないのに、このままじゃ…

 

 …あなたに、何一つ壊させはしない…

 

 「ッ…させない!」

 

 私は収束を解くと魔素を流した短刀を振り抜く。

 自爆を許さず倒すなら一撃で消し飛ばすしかない。今たまったのじゃイフリートを弱らせるには不足だけど、サラマンダーくらいなら!

 『学習者』!

 

 《解。永久記録の情報から『月牙天衝』を出力。刀身に対する魔素圧縮完了。いつでも放てます》!

 

 「月牙…天衝‼」

 

 短刀から放たれた魔素の奔流がサラマンダーを飲み込み、跡形もなく消し飛ばした。

 

 「月牙天衝⁉あいついつの間にそんなの覚えたんだ⁉」

 

 《解。以前個体名:ヴェルシード=テンペストからあった記憶提供の要請に応じた際に習得したものと推測》

 

 そういうことか、俺もかめはめ波とかやってみたいな…『大賢者』できる?

 

 《解。可能です》

 

 マジか!今度やってみよ!

 

 イフリートを全滅させたのはいいけど今ので刀身が砕けた…

 どうしよう、うまく加減できるかな…

 

 「シードさん!逃げて!」

 

 エレンさん?

 

 《告。足元を中心に魔法陣の展開を確認》

 

 しまっ…

 

 「…炎化爆獄陣(フレアサークル)

 

 魔法陣から火柱があがり私を飲み込む。

 …『学習者』これ、足りる?

 

 《解。イフリートを弱らせるには十分だと推測》

 

 よかった、敵だけど感謝しかないね、イフリート。これなら…

 

 

 sideリムル

 

 「シード様!」

 

 オウガが火柱に駆け込もうとする。

 

 「待てオウガ、お前が突っ込んだら焼け死ぬぞ!」

 

 「ではどうしろというのですか!このままではシード様が!」

 

 その通りだよ…クソッ!どうすれば…

 『大賢者』決死覚悟で突っ込んだとしてどんぐらい保つ?

 

 《…解。熱変動耐性の効果により炎の効果は無効化されます》

 

 あ、忘れてた…

 つか『大賢者』!今呆れたろ⁉

 

 《……個体名:ヴェルシード=テンペストに関しても問題はないと推測》

 

 話そらしやがった…

 ん?問題ない?

 

 あがっていた火柱が弾けシードに集約した。

 

 《ユニークスキル『冥灯龍』の効果により吸収が可能です》

 

 

 sideヴェルシード

 

 助かったよ、イフリート。あなたのおかげで纏まった魔素が調達できた。

 やれるね?『学習者』

 

 《解。イフリートの無力化成功率は…80%と推測。しかし、個体名:シズエ・イザワと切り離す手段がありません》

 

 弱らせられれば十分だよ。

 

 私の右手に魔素が乱回転し球状に圧縮される。

 

 「リムル!」

 

 私とリムルは視線を合わせる。

 

 「あぁ、任せろ!」

 

 その言葉を受け私はイフリートに向け駆けだす。

 イフリートは炎の塊を生み出し放つが雷撃に相殺される。

 

 「シード様!あなた様が進まれる道は私がお守りいたします‼」

 

 ありがとう、オウガ…

 

 私は浮かんでいるイフリートに向け跳躍すると右手の魔素の塊をぶつける。

 

 「螺旋丸‼」

 

 周囲に衝撃が走り砂埃が舞う。

 螺旋丸をまともに受けたイフリートは後方に吹っ飛んだ。

 

 「リムル!お願い‼」

 

 「おうよ!」

 

 砂埃からリムルが飛び出しイフリートの眼前に迫る…

 

 「イフリート!シズさんは返してもらうぜ‼」

 

 《ユニークスキル『捕食者』を使用しますか?》

 

 YES!

 

 『捕食者』を発動させたリムルにイフリートは飲み込まれた。

 イフリートがいた場所にシズさんがいてたリムルに倒れこむ。

 

 「シズさん!」

 

 私はシズさんとリムルに駆け寄る。

 ほかの皆も駆け寄ってくる。

 

 「スライムさん…菜種さんも…ありがとう」

 

 シズさんは意識を失った…

 

 

 リムルに取り込まれたイフリートは何もない暗い空間にいた。

 虚空に向け炎を放つが何も起きない…

 

 「観念せよ、イフリート。貴様にこの空間は破れん」

 

 イフリートは声のする方を向けると唖然とする。

 

 「リムルは我が盟友、シードは我が妹だぞ、貴様の敵う相手ではないわ‼」

 

 「暴…風…」

 

 「クァーーーーーーハハハハハハハハハハハハ‼」

 

 何もない空間にヴェルドラの笑い声が木霊した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。