sideリムル
「これはどういう状況なんだ?」
いや本当にどういう状況なんだこれ⁉
ランガから救援要請が来て駆けつけてみればほとんどのやつらが倒れてるし、シードもボロボロだし…
「ごめん、リムル。私がいたのにこんな…」
「我もいながらこのようなことに…申し訳ありません」
シードとランガがこっちに来た。
リグルやゴブタ、オウガも戻ってくる。
オーガも六人が集まりこちらを睨んでいる。
「気にするな。それであいつらはなんなんだ?倒れてる皆は無事なのか?」
「倒れてる皆は桃髪の子の魔法で眠らされてるだけ、彼らはオーガだよ」
オーガ?前世で見た映画やゲームだともっと厳ついのを想像してたんだが、随分違うんだな…なんか鎧までつけてるし、腰にさしてるのってどう見ても日本刀だよな。
シードをここまで追い詰めるほどの実力があるのにほとんど無傷で無力化してる、リグルやゴブタも傷だらけだけど致命傷ではない、訳ありか?
「おい、お前ら!事情は知らんがウチのやつらが失礼したな。話し合いに応じる気はあるか⁉」
ここは大人の対応を…
「正体を現せ、邪悪な魔人どもめ」
え?どもってシードもか?
「先ほどの女が放った斬撃もそうだが、その仮面で確信したぞ」
は?仮面⁇
「待ってくれ、何か勘違いしてないか?これはある人の形見なんだ」
「そこの女と共に、贖ってもらうぞ」
全然聞いてくれない…
そもそもシードはともかく俺の正体なんてただの愛くるしいスライムなのに…
「最初からこんな感じでこっちの話聞いてくれなくて…」
そうなのか、こりゃ一旦頭冷やしてもらった方がいいな…
力を見せつけてみるか。
「シード、魔法を使うのは桃髪のやつでいいんだな?」
「うん、でもそれ以上にあのお爺さんが厄介だよ」
「あの爺さんか?」
「さっきまであの人と戦ってたけど、ほとんど何もできなかった」
え?マジ?
『大賢者』あの爺さんってそんなにヤバい?
《解。個体名:ヴェルシード=テンペストの強みは無尽蔵の魔素を利用した波状攻撃です。周囲に味方がいたことから、戦闘手段が白兵戦に限定されたことで劣勢となったと推測されます》
そういうことか、長い年月を剣に費やしたってやつか?
どっちみち要警戒だな…
「ランガ、桃髪の牽制を頼む。残りは俺がやる」
「それでは主が五人を相手取ることになります」
「そうだよリムル、私も「問題ない」…え?」
「負ける気がしない。だからシードは寝てる奴らを頼む」
「リムル…」
「真勇か蛮勇か…その度胸に敬意を払い、挑発に乗ってやろう」
紫の髪と黒髪のオーガが駆けだす。
「後悔するなよ」
まずは黒髪のオーガが槌を振り下ろす。
リムルは飛んで後方に回る。
「お前は眠っとけ」
麻痺吐息を吹きかけ、黒髪のオーガは倒れた。
続いて紫の髪のオーガが星球武器を振り抜くがリムルはしゃがんで避ける。
「丸見えだ…ん?」
リムルの目に服を押し出しはみ出る双丘が映る。
「デカい!」
紫の髪のオーガが一瞬硬直すると表情に怒りの色が出て、武器を振り下ろす。
「あ、丸見えってのはそういうことじゃないぞ、誤解するな」
再び避けると粘鋼糸で全身ぐるぐる巻きにし、倒れそうになったので周辺の木に糸を二本吊りハンモックの様にする。
「転びそうですよ、お嬢さん」
なんちゃって…
刹那、リムルの眉間目掛けて青髪のオーガが短刀で刺突を繰り出すが、リムルは右手を身体装甲で覆って防ぎ、短刀が砕けた。
リムルは身体装甲で覆ったまま胴を殴り、青髪のオーガが吹っ飛ばされる。
後は赤髪のオーガと、例の爺さんか
「…エビルムカデの麻痺吐息、ブラックスパイダーの粘糸・鋼糸、アーマーサウルスの身体装甲。ほかにも多数の魔物の業を体得しているやもしれません、ご油断召されるな、若」
あの爺さん何者だ?慣れてない白兵戦だったとはいえシードを追い詰めただけじゃなく、俺が洞窟で捕食した魔物の名前とスキルを一目見ただけで言い当てやがった。
…手の内を見せすぎるのはまずいな。
「ここら辺にしないか?そろそろこっちの言い分も聞いて欲しいんだが」
「黙れ邪悪な魔人め」
うーん、圧倒的な力を見せつけて話を知る方向にもって行きたかったけど…
「えーと…だからな」
「確かに貴様は強い、そこの女もだ。だからこそ確信が深まった、やはり貴様らは奴らの仲間だ」
思うようにいかないな…
「たかが
「おい、さっきから何を「黙れ!」」
「全ては貴様ら魔人の仕業だろうが‼」
「待てよ、それは誤解…」
言いかけたところでリムルは咄嗟に体をひねらせる。そこに老いたオーガの一閃が通過した。
「あぶっ…」
リムルの言葉が途中で止まる。
身体装甲を展開していた右手がなくなっていた。
ドッと音がしたほうを見ると、そこには斬られた腕が落ちていた。
「ワシも耄碌したものよ、二度も好機を逃すとは…」
マジかよ…
あの爺さん、魔力感知をかい潜ったうえ、多重結界と身体装甲をアッサリ破ったのか。
「どうやら蛮勇だったようだな。右腕を失い発狂しない胆力は褒めてやる」
赤髪のオーガが刀を掲げていく。
「そこの女と共に挑めばよかったものを、一人で相手取ろうとしたその傲慢さが貴様の敗因だ…冥府で悔やみ続けるがいい‼」
振り下ろされる刀をリムルは横に飛んで避けると、落ちていた右手を拾い上げる。
「確かにな、すぐに調子に乗るのは俺の悪い癖なんだ。シードに何回助けてもらったか、忠告痛み入るよ、ホント」
拾い上げた右腕が吸収されていく。
「もっと慎重になっていれば右腕も失わずに済んだのに…ああ、もう超痛い」
仮面を外した。
「…まぁ」
右腕が再生し、ひらひらと動かして見せる
「痛覚無効と超速再生が無ければの話だけどな」
仮面によって抑えられていた重厚な妖気が辺りに漂い始める。それにより赤髪のオーガの顔が引きつる。
「ば…化け物め‼
炎の竜巻が発生しリムルを飲み込んだ。
「悪いな俺に炎は効かないんだ」
リムルは何事もないように出て来た。
「本物の炎を見せてやろう」
リムルは右手を掲げる。
「よく見ておけ」
これを見ても戦意を喪失しないってんなら、話し合いに持ってくのはもう無理だ。
巨大な黒い炎の塊がリムルの頭上に出現する。
黒炎に赤髪と年老いたオーガの表情が引きつる。
「ああ…」
ランガと対峙していた桃髪のオーガも黒炎に視線が釘付けとなった。
「あれは…あの炎は、周囲の魔素を利用した妖術ではありませぬ!あの炎を形作っているのは純粋にあの者の力のみ、炎の大きさがそのままあの者の力‼」
「どうする?まだやるか?」
「クッ…」
よしよしビビってるな、頼むからこれで降参してくれよ。
「若、姫を連れてお逃げください。ここはワシが「黙れ爺」」
「無残に散った同胞の無念を背負ったこの俺が、ようやく見つけた仇を前に逃げろだと?」
赤髪のオーガが刀を構える。
「冗談ではない。俺には次期頭領として育てられた誇りがある!生き恥をさらすくらいなら、命果てようとも一矢報いてくれるわ」
「若…それではワシもお供いたしましょうぞ」
老いたオーガも刀に手を添える。
…そうきたか。
まずいな完全に裏目に出た。
「お待ち下さいお兄様!この方々は敵ではないかもしれません」
一触即発となったところに、桃髪のオーガがリムル達の間に割って入った。
「そこをどけ」
「いいえ!」
お?
「なぜだ?里を襲ったやつと同じく、仮面をつけた魔人ではないか。お前もそう言っただろう⁉」
「はい、ですが…昏睡の魔法に
ナイス!お姫様。
もう一押し!
「よく考えろよ、この娘が本当はどっちをかばおうとしているのかを…なぁ、若様?」
「む…」
ようやく話を聞いてもらえそうな空気になったな。
「もうこれいらないよな」
リムルは出現させていた黒炎を取り込む。
「今、何を…っ」
「捕食したんだよ。あんなのテキトーに投げたら死人が出るだろ」
「…結局お前達は何者なんだ?」
「俺はただのスライムだよ。スライムのリムル」
「スライムだと?馬鹿な、いくら何でも…」
リムルはスライムの姿に戻った。
「ほ…ほんとに…」
「ちなみにこの仮面はある人の形見だ。何ならお前らの里を襲ったやつのと同種の物か改めてもらって構わないぞ」
仮面を取り出し赤髪のオーガに手渡す。
桃髪と年老いたオーガもその仮面を見る。
「似ている気はするが…」
「これには抗魔の力が備わっているようです」
「しかし、あの時の魔人は妖気を隠しておらなんだ」
「では…」
オーガの三人はリムルを見つめる。
「…一応聞くが、あの女もスライムなのか?」
「いいや、シードはスライムじゃないさ。だけどずっと俺達といたし、多忙だからお前達の里を襲ってる暇なんてない、そもそもそんなことをする奴じゃないしな」
数瞬の静寂の後、赤髪のオーガが跪き頭を下げる。
「……申し訳ない、こちらの勘違いだった。どうか謝罪を受け入れてほしい」
「うむ、苦しゅうない」
「お疲れ様、リムル」
シードがリムルを抱き上げる。
sideヴェルシード
すごいなぁリムルは、私じゃこんな風に収束させることはできなかった。
「シード、皆は大丈夫か?」
「うん、何人かいたから時間はかかったけど、もう目を覚ますよ」
「あれ…?リムル様…?」
眠っていた皆は次々に目を覚ましていく。
「そっちの人達も回復させちゃうね」
私は負傷したオーガ達に魔素を流し『治療者』で治療した。
「どこか違和感などはありますか?」
「特にない、助かった」
「それじゃあ全員で町に戻るか」
私から飛び降りたリムルはランガに乗った。
「全員て、俺達もか」
「そうだよ、いろいろ事情も聞きたいしな」
オークか、もしかしたらこの胸騒ぎの原因だったりするのかな…
「招待はありがたいが…いいのか?そちらの仲間を傷つけてしまったが」
「そりゃお互い様だしな、死人は出なかったんだし、良しとしよう」
「そうですね、そもそも、私達が最初に攻撃仕掛けちゃいましたし」
私もちょっと冷静じゃなかったかも。
「それに今日、うちは宴会なんだ。人数が多いほうが楽しいだろ?」
オーガ達はリムルに促されるまま帰路を共にした。
「そういや、お前ら名前は?」
「いや、俺達に
「あ、そっか、普通はないんだっけ」
何はともあれいっけ「ところでお嬢さんや」
「お、お爺さん⁉」
びっくりした!
「先程の剣さばき、見事なものじゃったぞ」
「ありがとうございます」
「見たところ独学のようじゃが、指導者はおらんのか?」
「そうですね、独学じゃ限界があるってわかってるんですけど…」
「もったいないのう。優れた指導者につけば、優れた戦士になれると思うのじゃが…」
私のことを真剣に考えてくれてる。
いい人なんだな…
「ところで、一つ謝らねばならんことがあってのう」
「さっきの戦闘に関してはもう「いや、そっちではなく」」
え?
「いや、お嬢さんの短刀なんじゃが、二振りとも一か所を集中的に斬りつけたが故、恐らく折れておるじゃろう」
お爺さんの言葉に急いで短刀二振りを鞘から抜くが、どちらも刀身が途中までしか出てこず、鞘をひっくり返すと残りの刀身が落ちて来た。
「…」
辺りに微妙な空気が漂う。
そんな中、リムルは人の姿になると私の肩に手をポンと乗せる。
「まぁ、その、ドンマイ…」
今日できたばかりだったのに…