sideリムル
「シオン、そろそろ交替です」
「いいえシュナ様、リムル様のお世話は私がします!」
「シオンったらもう…シード様には二人でするよう言われていたでしょう」
なんか声が聞こえる、目を覚ますとそこには桃髪の美少女と紫の髪の美人さんがいた。
二人がリムルが目を覚ましたことに気づいた。
「リムル様!おはようございます」
「えっと…どちら様でしたっけ?」
リムルの言葉に二人はショックを受ける。
待って?なんか記憶があやふやなんだけど…確かオーガ達に名付けしようとしてて…
「お目覚めになられましたか、リムル様」
そこに赤髪のイケメンと白髪の爺さんが入ってきて跪く。
「…お前、オーガの若様だよな?」
「はっ。今は
思い出した!名付けしたとたんスリープモードになったんだった。
ってかなんだって?鬼人⁇オーガじゃなくて⁇
大柄だった体躯が一回り小さくなったけど、内に秘めた魔素量がびっくりするくらい増えてるんだけど…
オーガから鬼人に進化したってことだよな…
「リムル様、シュナです。お目覚めになられて本当に良かった」
シュナ…オーガのお姫様か、もともと可愛かったけどさらに美少女になったな。
「シオンです。リムル様につけて頂いた名前、とっても気に入っています」
このおっぱい美人がシオン…
野性味が薄れて知的な雰囲気になったな。
「ベニマルの後ろに控えてるのは、俺の腕を斬り飛ばしてくれた爺さん、ハクロウだな」
「ほっほっほっ、いじめてくださいますな。一瞬で再生され焦ったのはこちらでしたぞ」
随分若くなったみたいだ。それも進化の影響か…
「鬼人ねぇ…」
「鬼人とは、オーガの中から稀に生まれるという上位種族のことです。一度に6人もの鬼人が誕生するなど前代未聞」
そこに青髪のイケメンが入ってくる。
「お前は確か…」
「ソウエイの名を賜りました。ご快復、お慶び申し上げます、リムル様」
「お、おう」
《上位の魔物に名付けをした場合、それに見合う魔素を消費します》
つまり、たった6人に俺の魔素のほとんどを持っていかれたのか。
先に行ってほしかったな…
《告。名付けの際に個体名:ヴェルシード=テンペストが忠告しています》
あ、そういえばシードが何回かにわけたほうがいいって言ってたような…
…後で謝ろう。
「ん?あと一人はどうした?」
「ああ、ヤツはカイジン殿の工房に入り浸ってて…お、来ました」
そこに一人の男がやってきた。
「リムル様、元気になって良かっただよ。分かっかな、オラ、クロベエだ」
おお!あんま変わってない!
イケメン、美少女、美女、ロマンスグレー、イケメンときて、最後に普通のおっさん。
すごくホッとする!
「仲良くしような、クロベエ!」
「んだ!」
…しかし、正直、コイツ等ちょっと強くなりすぎてコワい。オークを倒した後裏切られたりして…
一方その頃、ジュラの大森林に存在する湖、シス湖。
そこに武装したオークの軍勢が進軍している。近くの岩陰に隠れた
偵察していたリザードマンが本拠地に駆け込んだ。
「ほ、報告します!」
「騒がしいな、どうしたというのだ」
リザードマンの首領が応対する。
「シス湖南方にてオークの軍勢を確認!我らリザードマンの領域への侵攻と思われます!」
「オークだと?」
「それで数はどのくらいなのだ?」
そこで親衛隊長がオークの数を訪ねる。
「…」
リザードマンが思いつめるように黙り込む。
「どうした?オーク共の数はと聞いている」
「それが……オークの軍勢…その数およそ20万…」
20万という数に同じ空間にいるリザードマンの全員が呆然とする。
「馬鹿な!我々の20倍もの軍勢だと⁉」
「ワタシにも信じられませんでした!ですから魔力感知と熱源感知で何度も確認したのですが……間違いありませんでした」
話が現実味を帯びたことで周囲がざわつき始めた。
「有り得ん…!」
「そもそも奴らは勝手気ままで協調性のない連中だ」
「20万などという途方もない数を統率などできようはずもない!」
「噂ですが、オークの軍勢がオーガの里を滅ぼしたとか…」
「なんだって⁉」
「与太話と思っていたのですが、数で圧倒したのならあるいは…」
「…
いままで話を聞いていた首領が口を開き、視線が集まった。
「20万の軍勢をまとめ上げているオークがいるのならば、伝説のユニークモンスタ―の存在を疑わねばなるまい」
リザードマン達が静まった。
「…可能性の話だ。だが、打てる手は全て打つべきだな」
首領は王座を立った。
「我が息子と副戦士長はおるか⁉」
そしてある二人を呼ぶ。
「ここにおりますよ」
「ここに」
この空間に二人のリザードマンがやってきた。
「ですが親父殿、その呼び方は些か無粋ではありませぬか、吾輩にはガビルというゲルミュッド様から頂いた名前があるのですから」
「ちょっと、ガビル!」
副戦士長がガビルを諫めた。
「呼び方などどうでもよかろう、それよりお前達にやってもらいたいことがある」
「伺いましょう」
「仰せのままに」
sideヴェルシード
「「…」」
食堂で休んでいた私のもとにシオンに連れられたリムルが訪れ、私に気づくとスライムの体を折りたたんで謝ってきた。前もこんなことあったような…
「…何に対する謝罪?」
私はジト目でリムルを見る。
「その…ベニマル達に名付けをする時に、忠告を無視したことに対する謝罪です」
数瞬の静寂が食堂を包み込む。
そして私は溜息をつく。
「もういいよ、終わったことだし、いつまでも引きずってるのもなんだしね」
「シード‼」
心なしかリムルの目が輝いて見える。
「そういやシード、その着物はどうしたんだ?」
そこでリムルは私が着ていた着物に気づいた。
「ああ、これ?シュナが用意してくれたの。どう?」
私は席から立つと両手を広げて回りリムルに全体を見せる。
着物は私の緑色の髪に合うように同じ色の一着だった。
「すごく似合ってるよ!和装美人ってやつだな‼」
「…ありがと」
自分で聞いといてなんだけど、そこまでストレートに褒められると照れるな…
「そういえば、なんでシオンと一緒に来てたの?」
「ああ、シオンが俺に昼飯を用意してくれてな!」
「…」
…ゴブイチから預かってくれてたんだよきっと
いや、でも、一応…
「それって、手料理?」
「ああ!」
救いはなかった!
「あ、私リグルドに呼ばれてるんだった。それじゃ!」
私は早口になっていたがそんなことを気にする余裕はなく、早足に食堂を後にした。
「え、ちょ、おい!」
後ろからリムルの声が聞こえたけどゴメン!これでおあいこってことで!
sideガビル
「全く親父殿ときたら、ゴブリンの村々を巡りその協力を取り付けてこいだと?オークに恐れをなすなど誇り高きリザードマンの振る舞いとは思えぬ、昔はあんなにも大きく偉大な男だったというのに…」
「そんなこと言わないの、私達の20倍の軍勢なんだから、数を増やして少しでも対抗しないといけないでしょ?」
「しかし…」
「ねぇねぇ、ガビル様はいつ首領になるの?」
ガビルの不満を副戦士長が窘めていると部下が首領の座について聞いてきた。
「いや、少々不遜なことを言ってしまったが、我輩など親父殿には遠く及ばんよ」
ガビルは否定するが…
「今のガビル様ならきっと全盛期の首領にも劣らねぇぜ」
「然り」
「え?いやそんなことは…」
「だってガビル様ネームドだし」
「うむ、その槍さばきにおいて右に出る物無し」
「あんた今立たないでいつ立つんだよ」
部下達の視線がガビルの視線が集まる。
え、なに?ひょっとして我輩ってば…けっこうイケてる…?
「ちょっと、ガビル?」
副戦士長が不穏な空気を察しガビルに話しかけるが…
「…うむ、そうだな」
「え、ちょ…」
「親父殿も年だ、少々強引なやり方でも我輩が支配者足る力を持っているところをお見せしよう。それで安心して引退いただけるというもの」
「いや、だから「じゃあ?」ちょっ、あなた達…」
副戦士長が諫めようとするがガビルに見惚れる部下たちに押しのけられる。
「オークの軍勢の撃退をもって、リザードマンの首領の座を受け継ぐとしよう」
「さっすがガビル様だぜ!」
「かっくいー!」
「至極当然!」
「「「ガ・ビ・ル‼ガ・ビ・ル‼ガ・ビ・ル‼」」」
部下達の歓声が響き渡る。
そこに…
「ちょっとガビル!あなたなに言って…「お前は妃だな!」な、ななななな何言ってんの⁉」
ガビルの言葉に副戦士長の顔が真っ赤になりテンパる。
「行くぞお前達!未来は明るいぞ‼」
「「「オーーーーーー‼」」」
ガビルと部下達はいきあいあいと次のゴブリン村に向かっていった。
そこでテンパって一人取り残された副戦士長が正気に戻る。
「え、あ、ちょ、待ちなさーーーーーーい‼」
急いでガビルたちの後を追った。