転生したら5番目の竜種だった件   作:Rin1411

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出陣

 辺りの木々にいくつかの的が不規則に取り付けられている。弓を背負う女性…リオが翼を羽ばたかせ宙を舞う。上昇し森から出ると的を一瞥、急降下して再び木々が生い茂る森に入り込むと弓を取り、次々と的の中心を射抜いていった。

 すべての的を射抜き着地したリオに駆け寄る。

 

 「凄いじゃないリオ、進化したのは昨晩なのに、もう翼を使いこなしてる」

 

 「いえ、まだまだです」

 

 リオが見つめる先を見てみると、矢が刺さった的がある。しかしその的はほかの的とは違い中心から僅かにずれて刺さっていた。

 

 「動かぬ的を外すなど…未熟さを痛感させられます」

 

 「ほんの少しずれてるだけよ…」

 

 「ほんの少しずれているのが問題なのです!このざまではシード様の秘書兼護衛など到底務まりません!」

 

 「あなたって少し…というよりだいぶ完璧主義なところがあるわね」

 

 昨晩、私が名を付けた副戦士長、リオは龍人族(ドラゴニュート)へと進化を果たした。彼女の心意気を気に入った皆も快く受け入れ、すっかり町の一員として認められている。

 さらにはシオンが勝手にリオを私の秘書兼護衛役に任命、私は断ろうと思ったけどリオの輝く視線の前に折れる形で承諾した。

 リザードマンの一件はソウエイに使者として首領さんのところに行ってもらったため、そろそろ思念伝達が来る頃かな。

 そして日が昇り、リオは翼に慣れるため、得意の弓を使った訓練を始め今に至ります。

 

 「ところで、それの使い心地はどう?」

 

 「とても強力で扱いやすいです。新参者の私にこのような逸品を送ってくださるシード様とリムル様には、感謝しかございません」

 

 逸品というかなんというか…

 リオは槍もリザードマンの中ではガビルに次ぐ実力を持っているみたいだけど、弓のほうが得意だという。そこでカイジン、クロベエのアドバイスを受けつつリムルと協力して弓を作り上げた。

 それを先程渡した時のリオの感極まりようとかたら…なだめるのに少し時間を要したほどだった。

 ちなみにこれは三回目。最初はリムルとベニマル、ハクロウも見ていたけど、三人とも手放しで称賛していた。ハクロウ曰く、ここまでの弓の使い手はそうそういないとのこと。すごい人を配下にしたんだなぁ…

 

 「それでは、私はもう一度「ダメです」…はい」

 

 「これで最後って約束だったでしょ」

 

 そんなしょんぼりしていても認めません。

 

 そして私とリオの二人で食堂に向かう。

 あ、そういえば…

 

 「あなたとガビルさんって、付き合い長いの?」

 

 「そうですね、私の父と首領は親友とも呼べる間柄で、その縁で幼いころからいつもガビルと一緒でした。年も私が一つ上だったので、最初こそ可愛い弟の様に接していたのを今でも覚えてます」

 

 ガビルさんの一個上だったんだ。

 

 「そういえば、なんで戦士長にならなかったの?あなたの方がしっかりしてるし、リザードマンの中でも実力は上位に位置してたんでしょ?」

 

 私の問にリオが苦笑いする。

 

 「今朝、ベニマル殿も同じことをおっしゃっておりました」

 

 多分ガビルさんに応対した皆が思ってると思う…

 

 「最初こそ、私とガビルの実力は拮抗していました。差が出たとすれば、ゲルミュッドの名付けにガビルが応じ、私が拒否したことでしょうね。事実、名を賜ってからのガビルの躍進は目覚ましいものでしたから」

 

 やっぱり、名付けって魔物達にとってはとても大きい意味を持つんだね。

 

 「そんな中、先代戦士長…私の父が病に伏せてしまい闘病むなしく亡くなられたのです。後任の戦士長は満場一致でガビルとなったのですが、私がそこに異議を唱えたんです。父の遺志を継ぎたい、私こそふさわしい、なんて思ってました」

 

 あれ?なんかリオの顔が赤く…

 

 「最初こそ非難の的にされたのですが、ガビルは私と決闘し、勝った者こそ戦士長となると宣言しました」

 

 「結果は…」

 

 「完膚なくまでに負けちゃいました、あの時は大勢が見てたのに大泣きしてしまいましたよ。そしたらガビルが…」

 

 

 「戦士長の座を譲るわけにはいかん、我輩にはリザードマン首領の息子として、皆を導く義務があるからな。しかし、困ったことに若輩の身である我輩にできることは限られている。そこでだ、幼馴染よ、お前に副戦士長を…我輩の右腕を任せたい」

 

 

 「副戦士長なんて役職、実はガビルが勝手に作ったものだったんです。首領だってこんな勝手なことは認められないってお怒りになられたんですが…」

 

 

 「では親父殿はリザードマンの衰退を望まれるか!幼馴染はこの決闘で上に立つにたる資質を証明しているのだぞ!それを活かさぬことこそ愚かとは思わないのですか⁉」

 

 

 「あれほど慕っていた首領に啖呵きって大喧嘩になったんですよ、それで数日間首領に口を利かなくなって、首領が折れる形で認められたんです」

 

 なるほどなるほど…

 

 「それで認めてくれて、尚且つ自分のために必死に行動してくれたガビルさんが好きになったってことだね」

 

 「そ!そのような…ことは…」

 

 「バレバレ♪」

 

 多分昨日会議室にいたほとんどの人は気づいてるんじゃないかな。

 

 「でも、私の配下になったらリザードマンのところにはいられないけど、いいの?」

 

 私の問にリオは真面目な表情になった。

 

 「…思うところはあります。ガビルや首領には恩があるのは確か、ですがシード様は本来無関係で、それも無礼に無礼を重ねたリザードマンを助けてくれると決めてくださり、名前まで賜ってくださった。このご恩を返さずのうのうと戻ったとあれば、それこそリザードマンの名を貶めることとなります。なにより、私はシード様こそが終生の主であると定めたのです。悔いなどございません」

 

 「そっか、じゃあリオの想いに報いるためにも、絶対にリザードマンの皆を助けなきゃね」

 

 「はい!」

 

 すごくいい笑顔だね。

 

 『シード、ソウエイから伝達が来た』

 

 リムルからの思念伝達…

 ついに来たんだね。

 

 『首領は何て?』

 

 『同盟の話は受けてもいいそうだが、俺達に出向いて欲しいそうだ』

 

 まぁ、会ってもいない相手を信用することはできないよね。

 

 『わかった、出発はいつにする?』

 

 『武具の準備が終わり次第だ、準備しておいてくれ』

 

 『うん』

 

 リムルとの思念伝達を終わらせた私はリオを見る。

 リオの表情も引き締まっていた。

 

 「行こう」

 

 「ハッ!」

 

 

 そして二時間後、私達の武具の調整が終わった。

 私は稽古の時に使っていた袴が元々戦闘衣だったから特に新鮮さはないけど、皆は装いを新たにしている。

 ちなみにリオは急だったため、以前私に服を用意してもらった時の様にリムルに作ってもらった。彼女の要望は動きやすく翼の収納に困らない、あとできれば私のに似たものということだったので形状に悩んでいたところ、リムルがあっという間に用意した。あれって確か月牙天衝が出てた漫画の二番隊隊長さんが着てたやつだっけ?

 そして準備ができた私達は各々のテンペストウルフに騎乗、私はオウガに乗る。

 行くのは私とリムル、ベニマル、ハクロウ、シオン、ソウエイ、ランガ、オウガ、ゴブタを始めとする狼鬼兵団(ゴブリンライダー)100名、そしてリオ。

 

 「じゃ、行くとするか」

 

 私達はリザードマンの支配領域を目指し駆け出した。

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