「今日はこの辺で野営にするぞ」
町を出発して3日、オウガやテンペストウルフのおかげで道のりはすこぶる順調。このペースならもう少しで湿地帯にたどり着けるね。
「ソウエイ、周辺の状況を確認せてきてくれ」
「リオ、あなたもお願い」
「はっ」
「承知」
リムルはソウエイに偵察を任せてたけどこの辺ならリオに土地勘があるため、一緒に行ってもらった。
そして少しして野営の準備が落ち着いてきたところでゴブタが…
「そういえばリムル様、約束の褒美っすけどちゃんとクロベエさんに頼んでくれたっすか?」
ガビルさんと一騎打ちした時のだね。
「あ‼…うんもちろんだとも」
忘れてたんだね…
ゴブタにもバレバレだね。
「いや、帰ったらちゃんと頼むって…あ、今ソウエイからメッセ入った」
ソウエイから?
『シード様…その…よろしいでしょうか?』
リオだ、でもなんか様子が…
『偵察中に交戦している一団を発見しまして…』
交戦している一団?
『片方は上位個体と思わしき一体とその取り巻き50体ほどのオークです』
いつか遭遇すると思ってたけど、こんなところにまで…
『オークと交戦してるのは?』
『その…知り会いでして…』
知り会い?リザードマンかな?
『それが…いてもたってもいられず…オークを殲滅してしまいまして…』
そういうことね。
リムルもソウエイから聞いたらしく苦笑いしていた。
「とりあえず、側近さんにも聞きたいこともあるし、向かうか」
知り会いって側近さんだったんだね。
そして野営を中止しリオのいる所へと急行、到着すると辺り一面血の海になり数十のオークの亡骸が転がっていた。
そしてソウエイとリオ、彼女に介抱されるリザードマンがいる。
「ソウエイ、そのリザードマンが首領の側近か?」
「はい」
所々傷を負ってるみたいだけど、無事みたいだね。
「シード様…その…」
リオは気まずそうにしている。独断先行を気にしてるんだね。
「気にしなくていいよ、まずはその人の傷をどうにかしよっか」
私は側近さんの傷を癒した。
「すごい、こんな一瞬で…」
「私のスキルです、お加減はいかがですか?」
「問題ありません、あなたは?」
「シード=テンペストです、リザードマンとの同盟のために来ていたんだけど、偵察に出てもらっていたリオからあなたのことを聞いてここに来たの」
同盟という言葉に側近さんは思いつめたように俯き、少しして土下座してきた。
「お願いがございます!どうかわが父たる首領と、兄たるガビルをお救い下さいませ‼」
その言葉にリオが側近さんに飛びついた。
「親衛隊長、何があったんですか⁉首領は、ガビルは無事なんですか⁉」
「その呼び方…もしや、副戦士長ですか⁉」
側近さんはリオが副戦士長だって気づいたみたいだね。
「はい、シード様よりリオの名を賜り、ドラゴニュートへと進化したのです。それよりも、何があったのですか⁉」
「…ガビルが謀反を起こし、首領を幽閉したのです」
「…は?」
側近さんの言葉にリオが愕然とした。
「兄はオーク軍を自ら退けるつもりのようです。ですが、兄はオークロードを甘く見ており、このままではリザードマンは滅亡するでしょう。虫のいい話であるのは重々承知しております。副戦士長にあれほどまでの力を授けた貴女様なら我らを救う御力があると愚考致しました。どうか…」
私は側近さんの肩に手を乗せる。
「助けますよ。リオとの約束ですから」
私はリムルに目配せする、彼は頷くとと、側近さんに歩み寄った。
「君は首領さんの娘さんだっけ?」
「は、はい」
「では、君を首領の代理と認める。ここで同盟を締結することに異論はあるか?」
「いえ…いえ、異論など!では…」
「同盟相手なら助けに行く、当然だろ?」
sideガビル
「
「
ガビルの槍と
「あだッ…こいつら、我輩を喰おうというのか⁉」
ガビルに悪寒が走った。
「ガビル様、今助ける!」
「手を出すなと言ったはずである!」
噛みついた妖気を振り払う。
「お前達に敵う相手ではない」
次々に襲い掛かってくる妖気を避け、振り払っていくが次第に疲弊していく。
「さすがトカゲよ、地を転げまわっているのがよく似合っているぞ」
オークジェネラルが戦斧を掲げていく。
「だが、その滑稽なダンスも飽きた。そろそろ死…」
戦斧を持つ腕が肉体から千切れ宙を舞う。同時にガビルを襲う妖気が四散した。
「グッ…アァ…」
オークジェネラルは傷を抑えよろめくが、次の瞬間には首が飛び、その体は崩れ落ちた。
ガビルの眼前には翼と角をはやす人間が立っている。左手には弓、右手には血が滴る短刀を携えていた。
「…貴殿は…副…戦士…長?」
sideリオ
「ガビルが謀反を起こし、首領を幽閉したのです」
「…は?」
何で?どうしてガビルがそんな…
だって、首領をあんなに尊敬して、リザードマンの未来のためにってあれほど…
ありえない…
ありえない、ありえない、ありえない、ありえ「リオ」ッ!
シードがリオの頬に手を当て顔を寄せていた。目をしばらくジッと見つめると頷いて離れた。
「行ってよし」
「え?」
「このまま正気に戻らないようだったら戦線から離れてもらうことも考えたけど、今のあなたなら問題なわね」
シードは二振りあった短刀のうち一つをリオに差し出す。
「一足先に行ってガビルに真意を問いただしてきなさい。知りたいんでしょ?」
「し、しかし、それではシード様の護衛は「心配いらぬ」…オウガ殿」
「その者にはきついお灸でもすえてやれ。お前の分も、シード様は私がお守りして見せる」
「大丈夫、私達もすぐ追いつくから」
私は本当に良き主、そして仲間に出会えた。
シード様から短刀を受け取る。
「お借りいたします。ではお先に」
天に上がり最高速でリザードマンの領地に向かう。戦場の上空に到着したところで目に入ったのはオークの軍勢に囲まれたリザードマンとゴブリンの混合隊。そしてガビルと黒い鎧に身を包むオークが一騎打ちをしている。しかし、実体化した妖気に翻弄されたガビルが疲弊しており、オークが斧を掲げていった。
それを確認すると素早く数本の矢をつがえ射る。矢は妖気と斧を持つ腕を射抜き、妖気を四散させ腕を吹き飛ばした。そして急降下し着地際に痛みでよろめくオーガの首を短刀で刎ねた。
「貴殿は…副…戦士…長?」
自分だとわかってくれた嬉しさが込みあげてくるのを必死で抑え、ガビルに歩み寄る。
「む?」
力いっぱい張り飛ばした。
「ブフォァッ!」
「「「ガビル様ーーー⁉」」」
部下たちの声が聞こえるが気にする余裕がない。
そのままガビルの胸ぐらをつかみ上げる。
「今の張り手…間違いなく副戦士長だ!着替えに鉢合わせた時にもらったのと酷似しているからな!無事であったか!あと、その姿は一体…」
もう一発食らわせてやりたいが今ので確信した。本物のガビルだ。しかも正気、操られてるわけでもすり替わってるわけでもない。
「えぇ、あなたが置き去りにしてくれたおかげでそれはまぁ素敵な主と出会えて名を頂き進化しましたよ…それより、何を考えてるの?」
「はい?」
「あなたは!何を考えてるの⁉」
怒りで濃密な妖気が漂っていく、オークだけじゃなくリザードマン達も委縮してるがそんなの気にしてられない。
「同盟の申し出がきてたのは帰った時知らされたでしょ⁉こんな数で太刀打ちできるとでも思ってたの⁉」
「し、しかし「しかしも何もない!」」
「どうせオークロードなんかほかのオークよりも少し優れたくらいだって思ってたんでしょ!あなたはいつもそう!」
だめだ、止まらない。
「すぐに調子乗って後々しっぺ返しがきて首領の頭を抱えさせて!」
戦場なのに…
「私が何回あなたの尻拭いをしたかわかってるの⁉」
すぐに済ませるつもりだったのに…
「腕っぷしだけで!余計にカリスマ性なんて持ち合わせるものだから手に負えない!」
これまでの不満があふれ出てくる。
「リザードマンを導く義務ってなによ!滅亡に導くつもりだったの⁉」
「断じて違う!我輩は「うっさい‼」」
なんで…
「出来ることは限られてるから私を副官にしたんでしょ⁉」
「そ、そうだ…」
だったら…
「だったら何で私が戻るまで待てなかったの⁉」
「ッ…」
「私のことが…信じられなかったの?」
私を待ってくれなかったことが何よりも悔しい。
視界が滲んでいく。
「違う‼信じていたからだ‼」
ガビル…
「来てくれると!光明をさしてくれると信じていたから構わず戦う決断ができた‼それに例え間に合わず我輩が倒れたとしても、親父殿やお前がいてくれればリザードマンが潰えることはない。だから…グボェッ!」
今度は思いっきり殴り飛ばした。
「とんだ押し付けね。あなたが倒れたら私は後追いするわよ」
「な、何を言うか!そんなことをたらリザードマンはどうなる‼」
ガビルが私の胸ぐらをつかんでくる。
「私はね、あなたほどリザードマンを想うことはできないのよ」
「きさま「だって」」
「リザードマン以上に…あなたを想ってるから」
「…え?」
ガビルの目が丸くなった。
「最初は弟みたいに思ってたのに、私のこといつの間にか追い抜いて、ずっと隣に立ちたかったけど、どうしても追いつけなくて…」
一体のオークが私達目掛けて斧を振り下ろす。
「だけど…」
リオは短刀で受けると弾き飛ばして体勢が崩れたところで首を刎ねる。
「私は強くなった!もうあなたの背中を見ない!隣に立つ‼」
「副戦士長…」
「それと、さっき言ってた光明なんだけど…」
刹那、オーク軍の先端から黒いドームのようなものがあがる、その場にいたオーク達は燃え尽きていった。
そしてランガ殿、ゴブタ殿が率いるゴブリンライダ―が影より現れる。
「とびっきり眩しいのを連れて来たわ」
「貴殿は…あの村の主殿⁉それに牙狼族の」
「なに言ってるっすか?」
ゴブタが困惑する。
見上げるとシード様とリムル様が戦場を俯瞰しておられる。
私は槍を構え、高らかに宣言する。
「我が名はリオ!ドラゴニュートにして、シード=テンペスト様の秘書兼護衛を務める第二の臣である!死を恐れぬ者からかかってこい‼」
「ふっ…はははははは‼」
私を見つめていたガビルが高笑いした。
「副官にそこまで言わせた以上、我輩が燻るわけにはいかぬな!」
私の隣に立った。
「しかし、そこまで隣で戦いたいならそう言えばよかったであろう」
「…はい?」
「我輩の隣に立ちたいと思っておったのだろう?」
ガビルの言葉に私は唖然とする。
ランガ殿やゴブタ殿達も「コイツマジか」って目で見ている。
…うん、後で殺そう。