sideリムル
オークロードから放たれるオーラに包まれたオークの亡骸が腐っていく。これが奴の能力か。シードの離脱は痛いな。
「オレの名はゲルド。
「…!我らが父王よ」
「王よ」
「魔王ゲルド様」
オーク達が一斉に跪く。
…なるほど、これが魔王か。
「シオン!」
「承知しています!」
ベニマルとシオンが動く。
「おい?」
「ここは俺達にお任せを。どうやらなめてかかれる相手ではないようです」
シオンが振るう大刀をゲルドは剣で受ける。僅かに押し合うとゲルドはシオンを押し返した。ゲルドは追撃しようとするが、背後からハクロウが首を刎ねる。
しかし、着地したハクロウに首を刎ねられたはずのゲルドが剣を振り下ろしたが飛んで避けた。
「首を断たれてなお動きよるか!」
ゲルドは首を戻すと瞬く間に再生しくっつく。
「…うまそうなエサだ。あぁ…腹が減った…⁉」
ゲルドに無数の糸が絡みつき、繭の様になっていった。
「操糸妖縛陣…これでもう逃げられん」
糸はソウエイが放ったようだ。
「腹が減ってるならこれでもくらってな。黒炎獄‼」
ベニマルの黒炎獄がゲルドを包み込む。
「ランガ!黒炎獄が消えたら即ぶち込んでやれ」
「承知した」
黒炎獄が薄れたところでランガは黒稲妻を落とす。
ランガがふらつき始めた。
「ランガ、魔素切れか?」
「はっ…面目ありません」
「ちょっと待ってろ」
リムルはランガに触れる。
『大賢者』やれるか?
《解。ユニークスキル『冥灯龍』の魔素収束、魔素操作を発動。個体名:ランガに譲渡します》
少ししてランガの魔素が回復した。
「申し訳ありません。我が主」
すごいな、周囲に魔素がありさえすればいくらでも戦えるのか。
でも、シードはこれがあったのになんであんなことになったんだ?
《解。個体名:ヴェルシード:テンペストに対し、何者かが妨害工作を働いた可能性が高いと推測されます》
妨害工作?ほかに誰かいるのか?
いや、今はゲルドだ。今ので生きてたら笑うしか…
「…ハハハ」
ゲルドは自身の腕を喰らい回復していた。
さすがは魔王といったところか。
このまま戦っても平行線。シードから借りたスキルを使えば魔素は問題ないが…
「あとは任せろ」
「リムル様!」
ゲルドのもとに進む、お手並み拝見だ。
「出番だぞ『大賢者』お前に託す!さっさと敵を討ち倒せ」
《了。
「喰らい尽くせ、
ゲルドの妖気が実体化し蛇のようになってリムルに襲い掛かる。襲い来る妖気をかわしながらゲルドに接近、黒炎をまとわせた刀で腕を斬り飛ばす。
腕が黒炎によって阻まれ再生しない。
おぉ、すごい。さすが『大賢者』さんだ。
さらにゲルドに斬りかかるが剣で受けられる。しかし、黒炎によって焼き切れ、落ちた刀身が溶けていく。
距離をとるとゲルドは黒炎が残る腕をちぎって再生させ、両手に光弾を生み出す。
「今こそお前を喰ってやろうぞ!デスマーチダンス‼」
ゲルドから放たれ、正面から迫る無数の光弾を捕食していく。背後に回り込んで迫ってきたが、そちらも捕食した。
しかし、ゲルドが接近してきてリムルを捕らえる。
「ハハハハハ!このまま喰らってくれるわ‼」
刹那、周囲に次々と光弾が生み出され、一斉にゲルドを襲う。
「ぐぅッ…今のは…」
さらにフレアサークルによりゲルドは炎に包まれた。
「うぉああああああああ!」
流石は『大賢者』完璧だな…だが…
炎に焼かれていたゲルドは次第に炎を受け付けなくなり、火傷も修復されていった。
《緊急事態が発生しました》
やはり、炎への耐性を獲得しやがったか。そんなこったろうと思ったよ。
《至急、再演算を行い「交代だ『大賢者』」…》
悲観するなって、お前のおかげでこいつの倒し方が分かった気がする。
だから、あとは俺に任せてくれよ、相棒。
主導権がリムルに戻る。
「俺はお前を敵として認めた、今こそ本気でお前の相手をしてやるよ」
「ハハハハハ!笑止‼今までは本気でなかったとでも?もはや貴様には、何も出来ぬ!このまま俺に喰われるがいい!」
ゲルドは握っているリムルに対し、腐食を使う。
「お前に喰われる前に、俺がお前を喰ってやるよ」
リムルの体が溶け、ゲルドの腕を伝っていく。
「俺は、スライムだ」
スライムとなり、ゲルドに纏わりついた。
「ぬぉッ、き、貴様ぁ…」
「喰うのはお前の専売特許じゃねぇんだよ、お前が俺を喰うのが先か、俺がお前を喰うのが先か…相手を喰い尽くした方の勝ちだ!」
ゲルドは纏わりつくリムルの一部を引きちぎり腐食させるが超速再生で再生、ゲルドも自己再生で捕食された部位を再生させていく。しかし、ゲルドの再生が遅くなっていき、リムルの再生速度が上がっていった。
「なんだこれは…再生が遅く…魔素の減りが速すぎる…」
「もう一人の相棒からとっておきを借りてるんだよ、纏わりついてるおかげで、お前の魔素も奪いたい放題だ」
「あの女か…そうだ、あの女を喰えばぁ!」
ゲルドはリムルに打ち勝つため、痛みを堪え
「ぐぅおぁぁ…」
「シード様には指一本触れさせない!」
「ナイスだリオ!」
抵抗が弱まったところでゲルドを一気に包み込んだ。
sideヴェルシード
気がつくと荒れ切った荒野が広がっている。
「なに…この風景」
「シード、どうしてここに⁉」
隣にはリムルもいた。
「気がついたらここに…ってリムル?人間体だったよね?」
「ゲルドを捕食しようとしてスライムに戻ったんだ」
「そうだったんだ、でも、ここは…」
辺りを見回すと数人のオークの子供が泣いていた。そこに大人のオークがやってくる。
「腹が減ったのか、少し待っていなさい」
オークは腕を引きちぎり子供に与えた。
「さぁ食べなさい、しっかり食べて、大きくなるのだぞ」
子供のオークは与えられた腕を食べ始めた。
「これって、ゲルドの記憶…なのか?」
「スキルで繋がってるから、私も見てるってこと?」
そこに一人のオークがゲルドに跪いた。あのオークって、ゲルドの傍にいた…
「王よ、もうおやめください。この大飢饉の中、王であるあなたまで失っては、我らオークにはもはや絶望しかありません」
大飢饉…だからオーク達はあんなまねを…
「…一昨日生まれた子が今朝飢えて死んだ。昨日生まれた子はもう虫の息だ。この身はいかに切り刻もうと再生するというのに、これが絶望でなくて何だというのだ」
ゲルドはどこかに向かって歩き出す。
「王よどちらに⁉」
「森に入り食糧を探す」
「しかし、あの地は暴風竜の加護を受けし場所…」
「その暴風竜は封印されて久しい、少しばかりの恵みを…」
ゲルドはしばらく歩くが、ついに力尽きて倒れる。そこにゲルミュッドがやってきた。
「…飢えたオークの若者か」
ゲルミュッドがしばらくゲルドを見つめる。
「中々に強い力を秘めている。うまくすればオークロード…いやオーク・ディザスターすら視野に入れていい」
ここでゲルミュッドに出会ったんだ。
「…あの方はオレに食事と名を与え、そしてオークロードの持つ『
そこにゲルドが現れた。
「オークロードとなったオレが喰えば『飢餓者』の支配下にある者は死なない、飢える仲間を救えるのだと。邪悪な企みの駒にされていたようだが、それに賭けるしかなかった。だからなんでも喰らい、力を奪うスライムだとしても、オレは喰われるわけにはいかない」
仲間を守るための決断、そのための侵攻か。
「腐食の過程がないうえ、魔素を奪い続けてる以上喰い合いは俺に分がある。お前は負ける」
「同胞が飢えているのだ、オレは負けられぬ。他の魔物を喰い荒らした、ゲルミュッド様を喰った……同胞すら喰った。オレが死んだら同胞が罪を背負う、もはや引けぬのだ」
ゲルドの目には決意の色がある。
「皆が飢えることのないように、オレがこの世全ての飢えを引き受けてみせよう‼」
全ての飢えか…
「それでもお前の負けだ。お前が『
「罪を喰う…だと?同胞も含めて?」
「そうだよ、俺は欲張りだからな。だから、安心して眠れ」
「…俺は負けるわけには…皆の飢えを「私が満たすよ」…なに?」
「リムルが罪を喰らうなら、私は飢えを満たす」
私を中心に荒野は自然の緑に包まれていく。
「おぉ…」
広がっていく緑に、ゲルドは涙を流した。
「だから、あとは任せて」
「…眠いな…ここは…暖かい」
ゲルドは崩れ落ちた。
「強欲な者よ…優しき者よ…感謝する…オレの飢えは今…満たされた…」
ゆっくり休んでね、ゲルド。