転生したら5番目の竜種だった件   作:Rin1411

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安らげる場所

 …何もない、真っ暗、ここは…

 

 ゲルドが消えて目が覚めると思っていた私は、気づけば何もない暗闇の中にいた。

 

 「…許さない…」

 

 誰⁉

 

 背後から声が聞こえて振り返るが誰もいない。

 

 「よくも…」

 「痛い…苦しい…」

 

 周囲から響いて聞こえてくる。

 これって一体…

 

 「会いたい…」

 「返して…返せ…」

 

 あなたは…誰?

 

 腹部にドンッと衝撃が走る。見てみるとナイフが刺さり、赤い染みがじわじわと広がっていた。

 

 ツーーーーー‼

 

 

 飛び上るように目を覚ます、周囲を見渡すと私の部屋にいた。

 腹部に手を当てるがナイフは刺さってはいない。

 

 「今のは…」

 

 「シード様!目を覚まされたのですね‼」

 

 私の影からオウガが出て来た。

 

 「オウガ…私、どうしてここに?」

 

 「シード様は意識を失われてから、一月の間眠り続けていたのです」

 

 あれから一月も…

 

 

 

 

 

 

 それから少しして、リムルを呼んでもらった。その時町中に知られて皆仕事放り出して押し寄せてきたりでひと悶着あったけど…

 

 「それでは此度の勝利と、リムル様のジュラの大森林盟主就任、そしてシード様のご快復を祝し、乾杯‼」

 

 「「「「かんぱ~い‼」」」」

 

 リグルドの号令で皆が盃をあげる。

 あの後皆が宴だって言いだしてとんとん拍子に進んだんだよね。

 

 「それで盟主を押し付けられたり、15万のオークの名付けしたりでさぁ…」

 

 「大変だったんだね、リムル」

 

 そして今はリムルから私が眠ってる間のことを聞いていた。中でもジュラの森大同盟や膨大な人数の名付けはしんどそうにしてたね。

 まぁ、私がいてもあまり変わらなかった気はするけど…

 オークの皆のことも、なんとかまとめてくれたみたいだし良かった。

 

 「ところでさ、一ついいか?」

 

 「なに?」

 

 なんだろう、顔つきが…

 

 「お前が倒れた時なんだけど、原因について心当たりとかないか?」

 

 「原因?」

 

 「あぁ、お前のスキルのこと考えると、そもそも暴走なんて起こせないと思うんだよ」

 

 リムルの言うとおりだ、私のスキルで力を制御することは簡単にできる。だけどあの時、間違いなくスキルは私の意思に反して動いてた。特に『学習者』は…

 

 「私もリムルとは同じ考えなんだ。もしかしたらなんだけど『学習者』があの瞬間に乗っ取られたんじゃないかって思ってる」

 

 「『学習者』が?」

 

 「うん、力が暴走しそうになった時『学習者』に異常が起こったか聞こうとしたんだけど、答えが明らかに改竄されてたから」

 

 『学習者』は私のスキルを行使させられる。もし、誰かが乗っ取って暴走させたとしたら…

 

 「『大賢者』も、何者かの介入なんじゃないかって言ってたけど、そんなことできるのか?」

 

 「できたとしても、あの戦場に入ってないとできなかったと思う。でもあそこでスキルの乗っ取りなんてことしようとして誰も気づかなかったなんて、ありえるのかな?」

 

 「もしかして、ゲルミュッドが仕えてたやつとか?」

 

 魔王…か。

 

 「ま、今考えても仕方ないか」

 

 「そうだね」

 

 夢に出た人…なのかな?

 

 「ところで、リオが元気なさそうなんだけど、何かあったの?」

 

 もう一つ気になったことにリオの様子がある。

 

 「あ~リオのことか…」

 

 気まずそう…

 

 「あの戦いの後、ガビルが反逆罪で投獄されてな…」

 

 そっか、ガビルさんって謀反を起こしてたんだった。

 

 「面会させたかったんだが、戦後処理のごたつきでそんな暇なくてな。出直そうと思ったらその頃には破門された後で行方知れずだったんだ…」

 

 「そうだったんだ」

 

 

 sideリオ

 

 「はぁ…」

 

 どうにも気が乗らない。

 此度の勝利とシード様のご快復、これ自体は嬉しいんだけど…

 

 

 「もういない⁉」

 

 「あぁ、ガビルは此度の罪で破門となった。お前が来ると思いそれまでは猶予をと思ったが、合わせる顔がないとか言ってさっさと出ていきおってな」

 

 「そう…ですか…」

 

 「そう落ち込まずとも、近いうちに会えるだろう」

 

 「え?」

 

 

 どこに行ったんだろ、ガビル…

 

 「ガビルさんが心配?」

 

 「シード様…」

 

 そこにシード様がやってきて私の隣に腰を下ろした。

 すぐさま跪こうとする。

 

 「いいよ、今日は祝いの席なんだから」

 

 「し、しかし…」

 

 「いいから」

 

 シード様に姿勢を戻された。

 先ほどまで眠っておられたのにその力強さはご健在なのですね。

 

 「勘だけど、ガビルさんとは近いうちに会えるんじゃないかな」

 

 「そう…でしょうか…」

 

 「そう、だからあなたのもやもやは会った時に全部ぶつけてあげなさい。だから」

 

 シード様が立ち上がり私の手を引いて立たせる。

 

 「今日は楽しもう」

 

 「シード様の言うとおりだリオよ、そのためにも英気を養わねば」

 

 シード様に手を引かれ、影から出て来たオウガ殿に押され皆の輪に戻る。

 

 「あ、シード様っす!」

 

 「「「シード様~‼」」」

 

 皆がシード様に駆け寄っていった。

 

 「吹っ切れたようだな」

 

 「ベニマル殿」

 

 「お前のことは男の趣味以外では信用している。シード様のこと、任せたぞ」

 

 「えぇ、シード様の障害となるものは、全て私が射抜いて見せましょう」

 

 「頼もしい限りだな」

 

 そうだ、今の私はシード様の秘書兼護衛、ドラゴニュートのリオ。私の役割を全うするだけ。ガビルは会った時に全てをぶつければいい、それだけなんだ。

 

 

sideヴェルシード

 

 「は~」

 

 「いい天気だね~」

 

 縁側でリムルと二人で寛いでいる。

 ちなみにリムルは私の膝の上で。

 あれから二ヶ月、名付けによって進化したオーク、猪人族(ハイオーク)のおかげで建設が一気に進んだ。

 特にオーク・ディザスターの遺志を継いだゲルドは良く働いてくれてる。彼に負けてられないと私も頑張ってたんだけど、二人してリムルに怒られちゃったんだよね…

 そして私とゲルドは本日いっぱい強制休暇に、リグルドに前科があったことをばらされてリムルの監視つきになった。

 それで今は新しくなったリムルの自室で寛いでいる。

 

 「ようやく町ができたな」

 

 「そうだね」

 

 人口は一万を超えた。

 まだ成果が出てない分野も多いけど、体裁は整ってる以上は大丈夫だと思ってる。

 やっとここまで来たんだね。

 

 「そうだ、リオ、これ」

 

 リムルは私にシズさんの仮面を渡してきた。

 

 「ダメだよ、これはリムルが持ってないと」

 

 「これは複製したやつさ、本物はこっち」

 

 そういうとリムルはもう一つの仮面を見せて来た。

 

 「もしまた暴走した時に、これがあれば抑えられるだろ?」

 

 「ふふっ、ありがと」

 

 私は仮面を受け取ると被って見せる。

 

 『学習者』問題なく作用してる?

 

 《解。仮面の効果は問題なく作用しています》

 

 「リムル、どう?」

 

 「あぁ、似合ってるぞ。それに仮面の機能も問題なく働いてるみたいだ」

 

 なら、問題なさそうだね。

 仮面を横にずらす。

 そうか、まだ…

 

 「リムルと出会って、半年くらいが経ったんだよね」

 

 まだ半年か…

 

 「そうだな、いろいろあってあっという間だったけど」

 

 「本当にいろいろあったね、最初は私の頭の上に飛んできたり、お兄様をハゲ呼ばわりしたり」

 

 「うっ…」

 

 あの時の慌てようときたら、私も笑っちゃったしお相子かな。

 

 「リグルド達やオウガたちに会って、カイジン達が来て、そして…」

 

 「シズさんと出会って」

 

 「そうだね、リムルが人間の姿になった時はびっくりしちゃっなぁ。あと、エレンさんと仲良くなった」

 

 一緒にイングラシアに行くって約束、いつになるかな。

 

 「次に出会ったのが、ベニマル達だな」

 

 「そうそう、ハクロウが凄く強くてコテンパンにされちゃったんだよね」

 

 「よく言うよ、物理攻撃無効のおかげで傷一つなかったくせに」

 

 「そういうリムルだって、斬られた腕すぐ治してたじゃん。あと、考えなしの名付けとか」

 

 「うぐっ、痛いところを…」

 

 あの時かな、リムルの強さを改めて知れたのは。

 

 「そういうお前だって、リオに名前つけてたろ」

 

 「だって、応援したかったんだもん」

 

 「応援?」

 

 「リオはずっとガビルさんの隣で、同じ歩幅で歩きたかったんだよ。でも、名前の有無であっさり差がついて、悔しかったんじゃないかな、だからほっとけなくて」

 

 「その割にはガビルを通り越してないか?ベニマルと同格くらいに強くなってるぞ」

 

 うっかり魔素を多くあげちゃったんだよね…

 

 「そこはガビルさんの頑張り次第かな、これまで散々リオを振り回してたみたいだし」

 

 「容赦ねぇな」

 

 「そして、今回の戦いだね」

 

 「あぁ、お前が暴走しそうになった時は肝が冷えたぞ」

 

 ご心配おかけしました。

 

 「後処理、全部押し付けちゃってごめんね」

 

 「いいさ、もう終わったことだしな。ただし、これからとことん付き合ってもらうからな」

 

 「うん、これからどんどん働くよ」

 

 そうと決まれば早速「今日は休めよ」…そうだった。

 

 「返事は?」

 

 「…はい」

 

 「リムル様!」

 

 リグルドが駆け込んできた。

 

 「リグルドか、どうした?」

 

 「それが、休養を取らせていたはずのゲルド殿が建設現場にて作業しておりまして」

 

 「なに⁉あぁ、もう!」

 

 リムルは人間態になりゲルドのもとに向かって行った。

 

 やっぱり私も「いけませんよ」うっ…

 

 縁側の下からリオが顔を出した。

 

 「リオ、あなたいつからいたの?魔力感知にも引っかからなかったし」

 

 「最初からお傍に控えておりました、気配に関してはハクロウ殿よりご教授頂いたのです」

 

 最初から縁側の下にいたんだ…

 

 「ちなみに私はオウガ殿と交代制ですので休みはしっかりとらせていただいております、現にオウガ殿は近くの丘で寛いでおりますし」

 

 あらやだ完璧!

 

 「聞いてた?」

 

 「いえ、耳を塞ぎ聞こえることがないようにしておりました」

 

 気遣いも完璧ね。

 

 「それはそうと、本日はしっかりと休養を取っていただきます。働くことなど許しませんからね」

 

 本当によくできた部下だなぁ…

 

 

 

 

 

 「…井沢静江、三上悟、あと少しだったのに!」

 

 何もない暗闇の中、憎しみのこもる声が響き渡った。

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