お兄様との邂逅から大体1年ほどの時が経った。当初は姉が2人いることも知り会いに行くためすぐに旅立とう思っていた私だったが、力の使い方などを理由にお兄様から必死に引きとめられた。寂しかったんだろうけど何だか姉に会いに行こうって言った瞬間大慌てだった。なぜか姉の話題だけ露骨に避けるし…
そのためまずは自分に何ができるのかを『学習者』を介して確認し使ってみたり、お兄様からこの世界のことや竜種たるものの心得なるものを聞いたり。まぁ後者は「喧嘩は派手にすべし」だの「目につく都は焼き払うべし」だのろくに信用できる内容ではなかったためいずれ姉と会った時にそれとなく聞いてみよう。
聞かされた知識に関しては非常に助かった。お兄様は相当な年月を生きてきているうえ好奇心旺盛だったようでもたらされた情報はとても価値がある。情報はとても多くすべて覚えられるか不安だったが『学習者』の効果の1つ、永久記録のおかげですべてが記録されたとのことで忘れてしまっても知りたいときには『学習者』が教えてくれるということだ。前世の知識なども私の魂の情報を解析し記録してくれたため非常に助かっている。
私の能力もあらかた確認できた。例えば『
後、背も伸びた。最初はライオンの子供くらいだったのが今ではライオンの成体くらいの大きさになった。成長が早いように思ったがお兄様曰くここはお兄様から漏れ出した魔素が濃いようなのでそれが理由だろう。
能力の把握や情報の取得などを済ませた私はというと…
「なんという卑劣漢よ!いっそのこと我が消し飛ばしてくれようか‼」
「もう盛大に消し飛ばしてやってくださいよ!そこそこいい家の御曹司とかいうからどんな美男子が来るかと思って期待してたのに顔合わせしてみたら開口一番「俺の嫁になるんだから俺の3後ろ歩けよ」ですよ!しかも言い終わった後の「決まったな」って感じのドヤ顔がこれがまた憎たらしいったらありゃしないし!何か付きまとうし部屋に押しかけてきて襲おうとするし!親も見かねてようやく婚約破棄できて平和にすごせてハイスペイケメンと良い感じだったのにそいつのせいで台無しにされたしでもうヤダぁぁぁぁ!!」
愚痴りまくっていた。お兄様からいろいろと話し込んでいたのだが不意に私の前世のことを聞かれた。なんでも私のこの姿のもとになったモンハンなどにとても興味を持ったようだった。なのでモンハンを始めとしたことを話していたのだがそのうち私を刺したのが誰なのかという指摘があった。まぁごもっともな指摘だろう。それに関して私は心当たりに死ぬ1年前まで婚約者だった男ではないかとほぼ確信していた。
こう見えて私の前世は「龍川グループ」という日本でも有数の企業グループ代表の娘。つまりはお嬢様だったのだ。幼いころにあったとある出来事から医者に憧れ中学の時に父と進路に関して相談したところ目指すのは構わないが結婚相手だけはこちらで選ばせてほしいと懇願された。母は幼いころに亡くなり私は一人っ子だったため父は私か私の結婚相手に家を継いでほしかったのだ。私はそれを承諾した。父は多忙であったにも関わらず幼いころから私のために無理して時間を作ってくれていたし、いつも私に寄り添ってくれた。そんな父が大好きで何か親孝行できないかとずっと考えていた私はこれをチャンスだと思ったのだ。
…もう1つにその頃の私は夢見がちなところがあって婚約というものにロマンを感じたのだ。それで早速縁談の話が出てワクワクしながら相手の家を出迎えた。車から出てきた相手がそれまたイケメンでその時は心が躍ったものだ。
まぁ開口一番でそれは冷めたが…
その時の父の憤りぶりったらまぁ凄まじいものでもう罵詈雑言の嵐。相手方も地面に頭を擦り付けて謝罪(見合い相手も下げさせられてた)していたがそこで私が助け舟を出した。
お人好しだった私はまだ相手の男を信じたかったのだろう。それにこれ以上父の手を煩わせたくなかったのだ。
ひとまずその場では事態は収束しもしまた問題を起こしたら即座に婚約を破棄することになった。相手側にはものすごく感謝されたのを今でも覚えている。
それから相手は改心…しなかった。
その数日後私はまずは相手を知ろうとお茶に誘った。男の人が好きそうなものうをネットで調べたりクラスメイトの男子に聞いてみたりと徹底して準備した私を褒めてほしい。
まぁ結果は散々だったが…
まず待ち合わせに一時間も遅れてきやがったのだ。いや別に迎えに行ってもよかったんだけど深入りもよくないと思ったのだ。さらにはどこ行っても文句しかないししまいには少し前に出た私を後ろに突き飛ばして「俺の3歩後ろつったろ!」と怒鳴ってきた。しかもそのまま帰ってったしこれには周囲もドン引きだった。
それからは私も怒って連絡はしなくなった。だがなぜか男は私を付きまといだしたのだ。しまいには通学中も付きまといだした私は身の危険を感じ父に内密で相手の両親に苦情を入れたのだ。そしたら後日家に呼ばれご両親に何度も土下座された。
聞けばこの男、最初の顔合わせの時に私が許したことで自分に気があると思い込んだらしい。さらにその数日後にお茶に誘われたことからその思い込みは決定的なものとなったのだとか。さすがにただ事じゃないと思った私はあの時許したことを後悔したが今回だけは父に知らせないことにした。ご両親はとてもまともで気の毒に思えたからだ。男を徹底的に再教育することで話はついたがそれから一月と経たずに男がとんでもないことをしでかしたのだ。
ある日父が両家との食事会を提案し我が家に招待しディナーを楽しんでいた。そんな中私が誤ってお酒を口にしてしまい部屋で休んでいると男が襲ってきたのだ。私も抵抗したが酔って思うように力が出ず恐怖に染まりかけたが異変に気付いて駆けつけてきた父に男が殴り飛ばされ事なきを得た…
その後当然だが婚約は破棄、男は勘当され警察に突き出されたことですべてが終わった。
…と皆が思っていた。
「釈放されたと聞いてからしばらくの間は警戒してたんですけどねぇ…」
「息をひそめ機会を淡々と窺っておったのだろうな。それにしても不憫なものよ…親孝行しようとした結末がこれとは…」
お兄様が目に涙をためつつも私を気にかけてくれている。やはりお調子者というだけで根はいいドラゴンなのだろう。
「いつか、もう一度お父様に会いたいですね…」
「難しいであろうな。異世界召喚された者の全てを我は知らんが、今まで召喚されてきた者はこの世界で生涯を終えているはずだ」
「そう、ですか…」
やはり不可能なのかもしれない。そもそもこうしてもう一度生きることができるだけでも奇跡なのだ。もう一度父に会おうとまで願うのは「何を諦めようとしておる。我は不可能とは言っておらんであろう」「え?」
「呼び出すことが可能なのだ。繋がりはあるのだから逆ができてもおかしくはなかろう。それに我らは悠久の時を生きる竜種。試す時間などいくらでもあるのだぞ」
そうだ。人間だったころとは違って時間なんていくらでもあるんだ。試そう。何度でも。もしお父様が生きてる間に間に合わなくてもお墓の前で手を合わせるでもいい。いつか絶対に、もう一度お父様と会うんだ!
「ありがとうございます。お兄様。私、これからに希望が持てました!」
「そうか、そうか!我も協力は惜しまんぞ!」
こうして私のこれからが決まった。この世界で生きて元の世界に戻る方法を模索する。そのあとのことはまだわからないけどこの世界で生きるんじゃないかと思う。なんでかわからない。だけどそんな気がした。
「それじゃあまずはお兄様を外に出さないといけませんね!」
「おぉ!この封印に気付いておったか!全然触れないものだから我もいつ切り出すか悩んで…」
「お兄様?」
突然お兄様が前方を一点に見つめだした。
「何かが近づいてきておる」
「何か…ですか?」
「うむ、これは…スライム…か?」
「スライム?」
私たちの運命の出会いまで、あと少し…
ユニークスキル『
効果
思考加速:通常の1000倍に知覚速度を上昇させる。
解析鑑定:対象の解析および鑑定を行う。
並列演算:解析したい事象を思考と切り離して思考を行う。
永久記録:取得した情報を永久に記録する。
ユニークスキル『
効果
魔素収束:定めた範囲内に漂う魔素を自身に収束させる。収束可能魔素に上限あり。魔素収束中は行動不能。
魔素操作:収束、内包された魔素を操作する。操作可能魔素に上限あり。