「なぁシード、俺たちに向かって複数の何かが近づいてきてないか?」
「そうだね、もうそろそろ鉢合わせにって…あ、出てきた」
森の中を歩いて少し、今度は狼ではなく30体ほどの魔物が現れた。
「あれは…ゴブリンか?」
「ゴブリン…だね」
子供くらいの背丈に緑の体。うん、人間っぽさも所々見受けられるけど基本ゲームの序盤とかでよく見るTHE・ゴブリンだね。
冒険の始まりって感じがしてテンションあがる!
「グガッ、ツ、強キ者達ヨ、コノ先ニ、何カ用事ガ、オアリデスカ?」
バンダナを付けたゴブリンが話しかけてて来た。
…喋れたんだ。
『シード、俺が話してみるよ』
『えぇ~、私も話してみたいんだけど…』
『いや、ここはゼネコンで鍛え抜かれた俺の対人テクニックの出番だ!後でシードにバトンを繋ぐさ!』
これが社会を生き抜いてきた大人の姿!カッコいい‼
リムルは自信満々に一歩前へ出る。
「えー‼初めまして‼」
「⁉」
「「「「ひいいぃぃぃぃぃぃぃぃ‼」」」」
リムル⁉なんかすごい爆音まき散らしてるけど⁉
ゴブリンさん達も萎縮してるし!
「私は‼リムルといい「リムルちょっと待って!」どうしたシード‼」
その声のままこっち向いて喋らないで!耳が!耳がああああ!
「どうしたじゃないから!すごい爆音でゴブリンさん達皆怯えてるよ!」
私が指をさした方向ではゴブリンさん達が平伏したり腰を抜かしたりしている。
「強キ者ヨ!アナタ様ノお力ハ十分ニワカリマシタ!ドウカ声ヲ鎮メテ下サイ!」
『思念できるだけ抑えたんだけどな…もしかして気合い入れたのがまずかったか?』
『もしかしなくてもまずかったんじゃないかな?もっと自然体でいこう』
『わかった、今度こそ!』
リムルはゴブリンさん達のほうを向く。
「すまんな、まだ調整がうまくできなくて」
それだよそれ!
「オ、オソレオオイ!我々ニ謝罪ナド不要デス!」
まぁ、ゴブリンさん達すっかり委縮しちゃってるけど…
「で、俺達になんか用この先に用事なんてないけど」
「左様デシタカ、コノ先ニ我々ノ村ガアリマシテ、強力ナ魔物ノ気配ガシタノデ警戒ニキタ次第デス」
「あぁ、シードのことか。安心してくれ、こいつはお前たちをどうこうしようってつもりはないぞ」
私の気配にびっくりしてきちゃったのか、なんか悪いこと…ん?気配?
「ゴジョウダンヲ、我々ハダマサレマセンゾ、タダノスライムニソコマデノ
あ…
ここまできて私はお兄様から教わったある事を思い出した。
「お兄様、誰かに襲われないようにするにはどうすればいいですか?」
「襲い掛かってくる者どもを薙ぎ払い続ければじきにいなくなるぞ」
「いや、未然に防ぐ方法です。場合によっては人間社会に溶け込まないといけませんし」
「ならば妖気を抑えればよかろう」
「妖気、ですか?」
「強者ほど強い妖気を出す、それを抑えるのだ。最も人間社会に溶け込めるほどとなれば難しいがな」
「そこはこれからどうにかするしかありませんね」
…忘れてた、半年くらい前のことだったし、妖気を抑えること自体はすぐ出来てたからすっかり忘れてた。
『シード?』
リムルも私達の妖気の差に気づいてこっちを見てくる。
『…ゴメン』
うん、ほんとごめん…
そうこうしてるうちにリムルは妖気を抑え込んだ。すごいなぁ、私でも丸一日かかったのに。
「助カリマス、ソノ妖気ニ怯エル者モ多カッタノデ」
「いやなに、妖気を出していないといろんな魔物に絡まれるからな」
ナイスフォロー!
「強キ者達ヨ、ソノ秘メタル力ヲ見込ンデオ願イシタイ事ガゴザイマス」
お願い?
…ってあれ?私にバトン繋いでくれるんじゃなかったの⁉
それから私達はゴブリンさん達が住む村…というよりは集落へと案内された。
お兄様の鼻息だけで吹き飛びそう。
私達は一番立派?に見える建物に案内され、そこでお茶を出され待っているとバンダナの子がおじいさんゴブリンを連れてきた。
「大したもてなしもできませんで申し訳ない。私はこの村の村長をさせていただいております」
村長さんだったのか。
「いえ、お気遣いなく」
「それで、俺達に頼みたいことってなんだ?」
「一月程前、この地を守る竜の神が突如消えてしまわれました。その為、縄張りを求める近隣の魔物たちがこの地に目を付けたのです」
『竜の神って…』
『お兄様だね。私の気配はお兄様に隠れてたみたいだし、今は妖気抑えてるからあまり気づかれてないと思うし…』
それからも話は続き、百匹程の牙狼族なる魔物に狙われていること。牙狼族には一匹に対しゴブリン十匹で挑んでも苦戦すること。そしてこの村で戦えるのは六十匹程度だということだった。
このままじゃ滅亡ってところに私たちが来て、その力を見込んで助けてほしいってことか。
「その情報は確かなのか?」
「はい、リグルが牙狼族との戦闘を経て手に入れた情報ですから」
「リグル?」
「リグルは私の息子で、これの兄でした。しかし、牙狼族のユニークモンスターに…」
「ユニーク?」
それって確かリムルみたいな突然変異の個体だっけ?
「有する魔素を雷に変換するスキルを持っていたようです。リグルは数で押されようとも必死に戦い、最後にはそのユニークの雷撃に…」
村長さんとバンダナの子が悔しそうに涙を滲ませている。
それにしても雷を操る狼か、それってまるで…
「俺達がお前達を助けるとして、お前達は何を捧げる?」
『ちょっとリムル!元はといえば私達が原因なんだよ!』
『確かにそうだが、体裁を整える必要がある。このことがきっかけで後々利用されるかもしれないだろ?』
私たちが念話で言い争っていると村長さんとバンダナの子が目を見合わせてうなずく。
「強き者達よ、我々の忠誠を捧げます!」
忠誠ってえ?私も⁉
応対してたのほとんどリムルだけじゃん!結局バトン繋いでくれなかったし!
…でも、助けたい。理不尽に奪われる痛さや苦しさを私は身をもって知ってる。そんな思いをこれ以上彼らに味わわせたくない!
『リムル!』
『あぁ、わかってるさ!』
私達は目を見合わせた。
すると、狼の遠吠えが聞こえてくる。例の牙狼族だ。
遠吠えに村のゴブリン達は怯え、村長とバンダナの子が落ち着かせようとしている。
「怯える必要はありません」
「これから倒す相手だ」
「では…」
「あぁ、お前たちの願い、このリムル=テンペストと」
「シード=テンペストが」
「「聞き届けた!(ます!)」」
私達の言葉にゴブリンさん達は一斉にひれ伏す。
「我らに守護をお与えください!さすれば今日より我らはリムル様とシード様の忠実なるシモベでございます!」
こうして私とリムルは、ゴブリン村の守護者となった。