腹パン系ダンジョン配信者   作:恋狸

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別作品の原稿がヤバすぎて投稿が滞ってる現状じゃPOISON


ドッペルゲンガー的真似したくないランキング不動のNo.1

 とにかく真っ黒な空間にいた。

 まるで目を閉じたかのような──漆黒の空間に──いや、これ《心眼》じゃねーか。目を閉じたかのような、じゃなくて目を閉じてるんだわ。

 

「心のどこに眼があるってんだ? ああん?」

 

コメント

・あっ……(察し)

・相変わらずタイミングがおかしい

・パッシブスキルに好かれてるのか嫌われてるのか良く分からない男

・コイツいつか目を閉じてるのにコメント読み始めるぞ

・この世界に空間認識スキルとかあったらええのになw

・配信の神には好かれてるぞ!

・てか魔物いなくない?

 

 《心眼》が発動してるってことは戦闘状態に陥ってるってことだけども──全然魔物の気配もしねぇし、《危機感知》も一切反応がない。

 ……特殊なフィールドにでも巻き込まれたか? 

 宝箱に吸い込まれる罠なんて聞いたことねぇし、不測の事態が起きたって不思議じゃない。とりあえずは気配に頼って歩くしかないか。

 

「この空間自体が魔物だったりするか? たとえば大型のミミックに吸い込まれてるだけ、とか。だったら《心眼》が発動してることに納得できんだけど」

 

 うーむ、考えればそんな気がしてきた。

 《危機感知》が発動しないのも、ギミックタイプの罠だからだろう。……なら尚更仕掛けを解くのに視界が使えねぇと無理ゲーすぎるんですけど。

 ちなみにギミックタイプの罠とは、謂わば謎解きみたいな罠のことで、特定の条件をクリアすると罠から脱出できる上に報酬が貰えるというものである。

 ただし謎が解けなければ一生出ることができないため、末路は飢え死にである。今のところの俺の未来がソレね。

 どうやって謎を解け、ってんだよ。

 

 たまにギミックタイプの罠でも戦闘があることもあるし、それに賭けるしかねーのか……?

 

コメント

・一応普通のダンジョンっぽい場所だね

・The 石畳 of ダンジョン的な

・これがミミックの中ってマジ?

・ついに夢咲も捕食されるようになったか……

 

「なんかツッコミたくてムズムズしてきた」

 

 どうせコメント欄は碌でもないリスナーで溢れてるんだろう。ああ、ツッコミたい。配信者としての(さが)的なアレよ。

 あーーー、敵との戦闘時よりも《心眼》のゴミ特性を今感じている気がする。

 

「くっそ、何が心眼だよマジで。瞳を閉じたところで何も描けるわけねーだろ。自分の顔すら分かんねーよ」

 

 とりあえず歩くしかねぇか。

 そんなわけで、俺は壁伝いに手を這わせながら歩き始めた。

 立ち往生してたって何も解決しない。

 

コメント

・なんか目を開けてるけど見えない、とかじゃなくて目を閉じてるから見えない、って至極当然な現象を強制させるパッシブスキルに悪辣さを感じるのは私だけか?w

・#目を開けろ夢咲

・《心眼》を手に入れる回の配信知らなかったらやべーやつに見えそう

・どのみち腹パン戦士だしやべーやつなのは変わらないね

 

 コツコツと歩く。

 相変わらず魔物が現れる雰囲気もない。こういう場合は隠し部屋を発見すればギミックの進捗が進むんだけども……目を閉じてる状態でどうやって手がかりを見つけろと??

 舐めてんの?? 戦闘状態解除できないから《心眼》リセマラチャレンジも不可能だし!

 

「ああくそ、こうなったら腹パンしても良いからなんか現れろ、マジで。殴れる腹を用意しろ」

 

コメント

・殴 れ る 腹 を 用 意 し ろ 

・草

・マズイ!長時間腹パンしないことで発作が!!

・なんてバイオレンスな発作なんだ……

・早く!早く彼の前に腹を!!

 

「ん? 曲がり角か。そのまま曲がってみよう。これ道に迷ったら終わりなんですけども」

 

 心の眼で目的地までナビってくれないですかね。

 俺が何をしたってんだ。腹パンか、そうか腹パンが悪いのか。じゃあ俺は悪くないですね、QED。

 

 ぐちぐちと心の中で文句を吐きながら数分歩くと、ここで初めて《危機感知》が反応を示した。

 それこそ──混沌のゴーレム並みの反応を。

 

「敵か……! 変化があるならそっちのほうがありがたい」

 

コメント

・鏡?

・こんなダンジョンに鏡?

・敵か……!(自分のこと)

・ついに自分すらも分かんなくなって……

・なんか鏡変形してない?

・ぐにゃりと

・んでもって……

・アイエーッ!?夢咲が二人!? 

・ちょっとクドいから一人でいいかな……

・夢咲(偽)は目を閉じてないぞ!

・《アイリス》あれはドッペルゲンガー……自身のスキル構成を()()()()()()()()()反映して襲いかかってくる敵……! 何が弱体化されて、なんのスキルを反映するかはランダム……。

・じゃあ満を持して腹パン戦士が二人誕生したわけか。いらね

 

「一体どんな敵なんだ……!」

 

 これだけ《危機感知》が警鐘を鳴らすのは久しぶりだ。

 それこそ前世で戦った100層のフロアボスと相対した時くらいの反応具合だ。

 

 とてもじゃないがまともな敵とは思えない。

 

 俺は全力で周囲を警戒する。いつ攻撃を仕掛けてくるか分からない。

 俺には《回避》があるからといって、多段で攻撃を仕掛けられた場合、《回避》が貫通してくる場合がある。

 

コメント

・ってことはお互い先手取れないから一生このままじゃない?

・お見合いしながら餓死とか最悪すぎる

・いや、夢咲(偽)が動くぞ

・あちゃー先手取れないスキルは引き継いでないんかー

・この分だと《心眼》も無さそうだな

・あれ?でも腹パンって必中じゃなかったっけ?お互い腹パン持ってるならどうなんの?

 

 ──空気が揺らいだ。 

 ……来るッ! だが俺の体も勝手に動く。《回避》が発動した証拠だ。ならば一回腹パンをぶち込んで、その効き具合によって次点の行動を決めよう──と、拳を握り締め、パッシブに従って撃ち放つと──スルリと、必中のはずの腹パンが回避された。

 

「まじ!?」

 

コメント

・《アイリス》互いにまったく同じスキルでぶつかった場合、恐らくその効果が打ち消されて……ただの攻撃に代わる。そうなった場合《回避》が優先されると思う

・きもきもきもきもきもきもきもきもきも!!!

・互いににゅるにゅるにゅる躱し合っとる……

・子どもには見せられないグロ映像すぎる……

・同じ人間ですか?

・ゲ☆ダンをデュエットするな

・あのね、そんなとこまでコピーしなくていいんですよ、ドッペルゲンガーさん……

・悪いところまで真似しちゃうタイプの子どもだ

 

 ──一体なんだこの敵は!!

 必中なはずの攻撃が躱されたと思ったら、俺の腹パンを真似したように腹ばっかりに攻撃が襲いかかってきやがる!!

 んでもって俺が《回避》してまた腹パンしたら、にゅるんと躱してくる。……もしかしたらこの空間じゃスキルが封印……いや、だとしたら《心眼》とか《回避》が発動してるのはおかしいか。

 一部スキルの封印とかならあり得るけども……。

 

「気持ち悪いなァ! 腹を寄越せェ!」

 

コメント

・お前だよ

・自分に向かって気持ち悪いとか言わないの!

・盛大な自虐で笑う

・腹を寄越せは草

 

 ……次々に攻撃が襲いかかってくるせいで、剣を抜剣する前に《回避》が優先されちまう。あまりに千日手……だが、俺の場合は99%の回避を抜けられたら詰む。  

 相手がどんなスキル構成か分からねぇが。

 

コメント

・これ1%抜けられたら終わるよね?

・運ゲー……ってコト!?

・こんな気持ち悪いダンス踊っておいて決着が運ゲーなのワロタ

・《アイリス》一体彼のどのスキルが弱体化してるのか……

・夢咲(偽)は剣持ってないし《剣術》は実装されてないんかな

・だとしたらマジで1%抜けたヤツが勝ちだな

 

 ビュンビュンビュン風切り音がする。うるせえ。

 腹パンを回避されるというあまりない体験の数々に若干苛つく俺氏。心なしか対戦相手が臭いように思えてきた。

 

 何十回かの攻防の果て──先に《回避》の女神が微笑んだのは──相手のほうだった。

 

「ぐはっ……!!」

 

 息が漏れるほどに強烈な一撃。

 おまけに食らった瞬間、まるで麻痺したかのような硬直が生まれ──もう一発俺のお腹に拳が突き刺さった。

 

「ぐっ……こんっ、ちくしょう!」

 

コメント

・夢咲が夢咲に!!

・大丈夫か夢咲!!……ん?どっち?

・頑張れ夢咲!……違うお前じゃない!

 

 気絶しそうになるのを必死に堪える。

 痛ぇ……痛ぇけど諦めるわけにはいかない。こんな姿も見えないまま良く分からん攻撃で死んでたまるかよ。

 

 ──配信映え……しねぇだろ!!!

 

 実況できずに死ぬのは余りにも悔いが残る。

 ……せめて腹パンが当たれば剣で仕留めることができる。

 

 だからこそ──もう一回やろう。運ゲー対決を。

 

 

 ──にゅるんにゅるんにゅるんにゅるんにゅるん!!

 

コメント

・うわぁ!また始まった!

・SAN値削られる……

・せめてまともに回避してくれれば見映えするのに……

・人体の限界を超え続けないでください

 

「うおおおおおおお!!!」

 

 叫ぶ、叫ぶ、叫びながら拳を振るう。 

 俺は本能に従って全力で叫んだ。

 

「あぁぁぁぁたぁぁぁぁれぇぇぇええ!!!」

 

 そしてついに俺の拳が相手の腹を捉える。

 

 ──ドゴッッッ!!

 

 と何かを砕くような破砕音が拳に感触として、伝わり、同時に腹パンのスタン効果が訪れる──刹那、俺は剣を構える。

 ここまで来れば相手の位置など手に取るように分かる。

 

 そこはすでに──俺の《抜剣》の範囲内だ。

 

「──《抜剣》」

 

 俺の剣はいとも容易く敵を切り裂いた。

 もとより腹パンで瀕死寸前だったようで、最期の感触としてはあっさりだった。

 

「おっ、目が開けられ──ぎぇぇぇぇええ!!! 俺ぇぇぇえええ!?!?」

 

 目が開けられるようになった俺。

 最初に視界に映った光景は──俺が真っ二つになって地に伏している映像だった。グロ画像は勘弁だっぴ!

 

コメント

・草

・やかましいなw

・ドッペルゲンガーは死んだか……

・さらば夢咲

・なんだオリジナルは生きてるのか

 

「あん? ドッペルゲンガー? なる」

 

 どうやら俺は自分と戦っていたようである。やべ、臭いとか言っちゃった。余裕でフローラルな香りしてたわ。さすが俺。

 

「いやー、自分なだけあってめっちゃ強かったな。今までで一番の強敵だったわ」

 

 はっははー! と笑いながらそんなことを言っていると、ゴゴゴと石畳のエリアが次々と崩壊を始めた。

 アイエーッ!? 崩落死とか折角強敵倒したのに最悪なんだけど!?

 

 と、混乱したところで、あぁ……そういえばギミック罠はこんな感じでエリアが崩落するんだった、と思い出した。

 落ち着きを取り戻すと同時に、視界が白く光る。

 眩い光に目を焼かれながら待っていると、俺は宝箱に飲み込まれた地点へと戻ることができた。

 

「あちぃ……戻ってきたな」

 

コメント

・そういう罠だったわけか

・なんか落ちてない?

・報酬的なヤツか

・なにそれ、テープ?

・いや、包帯か?

 

「──バンテージだコレ!!!!?」

 

 拳に巻くやつじゃねーか。

 しかもちょっと汗臭いんですけど。

 おまけに魔道具か……道理で手に取った途端に使用方法が分かったわけだぜ……。

 

「おF☆ck!」

 

 




拳から逃れられない運命、夢咲氷織。
以前募集したSideストーリーに、ドッペルゲンガーという本編で使いたいアイデアが出たので使わせていただきました。

次回の更新は原稿が落ち着いたら。
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